Sleeping Beauty

昏々と……眠ったままのグラジオラス。

彼女とお揃いな洗霊巫女のロールは、
六花にとって思い入れの深い、大切なロール。

しかし彼女の召喚権を魔女から奪い返し、再び目覚めて貰うには、
クローン体を悉く撃破せねばならぬという。

如何に魔法威力が高かろうと、神威を扱えぬままでは、できることには限界がある。

……今必要なのは、お揃いのロールではなく、思い出に浸ることでもなく、
敵を撃つための力。

六花は洗霊巫女を封印し得たイデアを費やし、
闇花を、百花を、魔鋼を、そして闇双の力を得た。

彼女の留守を預かり、彼女が大切にしていたモノを代わって守り、
彼女の意識を、魂を、かの魔女から奪還するために。

●

眠ったままでもグラジオラスの姿は、変わらず美しく、安らかそうで。
それはせめてもの、朗報だったかもしれないが……一方で、
魔女に敗北し、片手で持ち上がる程に『軽くされてしまった』痛ましい彼女の姿が、
脳裏に焼き付いて離れない。

生前、復讐のために殺戮を続けたことを……己の罪と、自覚してはいるのだが。

魔女への憎悪が。
同じように『軽く』した骸に変えて、
うち捨ててやらねば気が済まぬという、ドス黒い感情が。

渾々と……とめどなく湧き上がる。