1. シナリオ参加
  2. リプレイを読む
  3. マスター
  4. 連動シナリオ

聖樹界イルダーナフ


フルフル

ア……ウ……。ウァァ……ウゥ……。
ア……アー……アー……。言葉……メンドウ……。
意味ナイシ……イルミン、ドシテ、作ッタ?
言葉アルカラ、別タレタ。言葉アルカラ、繋ガラナイ……ドシテ?


更新情報(2022/5/16)

聖樹界に現れた「不死者」たちと、それを取り巻く新たな物語。
アナザーストーリー『黒キ眠リノ園』に纏わる新情報を特設ページにまとめました。
関連シナリオと合わせてお楽しみください。

ストーリーノベル

●不死者(アンデッド)
「えぇ~~~!? 死んでも復活するやつらがいるのかい!?」
 イルミンスール (mz0084)は大げさに驚いた後、ギャグでも何でもないとわかるとちょっと真剣な顔つきになって、最後に大きく唸った。
「なるほどそういうことか……」
「1人デ勝手ニ納得スルナ!」
「僕たち凡人にも分かるように言えこの元神がぁ!」
「よーし、君たち本当に態度デカいなぁ!?」
 ロウ・ル・ザノス (mz0080)と魔族のサブナックが二人で詰め寄ると、イルミンスールは半ばあきらめたように叫んで、それからテーブルの上に図を書き出していく。

<ロウ>
「いいか。まずそもそも、この世界に生きている者は原初の時代『死ななかった』んだよ。死ぬというのはマナの循環と同時期に作られた、エネルギーリサイクル機構ってわけだ」
 生物は死ぬとマナになる。マナは地脈を巡って聖樹に吸収され、聖樹はこのマナを使って再び命を世界に満たしていく。
 死んで、また生まれる事。
 至極当たり前の概念だが、『誰も生まれる必要がない』時代、つまりイルミンスールたち神々の時代には、そもそもリサイクルの必要がなく、それ故に死の概念すらなかった。
「ツマリ……ドウイウコトダ?」
「『死』っていう概念が壊れて来てんじゃないの? 生物の死は聖樹と密接な関係がある。僕はもちろん、君らとか咎人も聖樹にさんざん攻撃したじゃない? それでぶっ壊れたのかなー」
 ケロっとイルミンスールが言い放つと、ロウもサブナックもギョっとする。
 確かに……聖樹は何となく以前と同じように動いている『っぽく』見えていたし、『たぶん』大丈夫なんじゃ『なかろうか』ってコトだったが、時間経過で異常が表面化した可能性もあるのだ。
「なんとかしてくれ」

<イルミンスール>
「無理だよ。だって、死という概念を生み出したのはバロルなんだ。バロルの権能があれば僕でも代行できるんだけど……」
 闇の神バロルの力は二つに別たれていた。
 片方は、光の神であるナイトハルト・ロス・テラス (mz0082)が古代に闇の神バロルを両断した際に持ち帰られ、イルミンスールが保持していた。
 そちらは聖樹が咎人により解放された際に飛び散り、世界の『法則』に溶け込んで消えたとされている。
 そしてもう片方は魔王エリゴール (mz0081)に宿っていて、そちらは簒奪者である氷堂アラタ (mz0055)に持ち逃げされてしまったので、この世界にない。
「つまりアラタをとっ捕まえて僕に差しだすか、この世界のどこかに散ってしまった、僕が元々保持していたバロルの神権を手に入れるしかないってわけだね」
 わかったかな、愚かな被造物諸君……と高笑いするイルミンスールの足をサブナックが踏みつけ、ロウがそのわき腹に拳をめり込ませる。
「というかちょっと待て。つまり、不死者の出現は誰かが散逸したバロルの神権を使って行っている『事件』なんじゃないか?」
「可能性はあるね。それなら、魔族の復活装置が動かない理由もわかる」
 魔族の復活装置はやはり完全な状態に修復されていたのだ。
 そして地脈に関しても問題はなかった。ただ、世の理そのものである『死』という概念を何者かが手に入れ、それを使って何かをしようとしているのなら……。
「うーん、まいったなあ。以前の僕なら止められたんだろうけど……。この世界に刻まれてしまった世界法則に今から手を入れることはできないし……」
「ココロアタリガアルノカ?」
「逆算的に一つしかなくない? 闇の神バロルの力を扱うことができて、世界のどこかに定期的に自然発生するように仕組まれている『災害』って」
 イルミンスールは図面に書き出された『エリゴール』を指さす。
「闇を統べる者。つまりさ――新しい魔王じゃない?」


「うーん……そうなったか……」
 ロウはイデアゲートを使えない。よって、連絡役も咎人が担当する。
 オルカ (mz0049)と意見を聞くために呼ばれたヴェイグル・ベルゲ (mz0042)を交え、聖王国は王城にてリーゼロッテ・ロス・テラス (mz0045)がぼやく。

<リーゼロッテ>
「確かに、ずいぶん大暴れしたからなあ……聖樹そのものが……」
「わしはそういったことは無関係だと思うがの。以前、聖王円卓会議でわしが話したことを覚えておるか? わしが、『並行世界でも魔王を見た』という話を」
 地霊王ヴェイグルは咎人になったが、彼の出身世界は『この聖樹界』ではなかった。
 彼の聖樹界は結局魔王との戦いに敗れるという別の可能性を辿ったらしい。
 だが、その世界には簒奪者に寄る介入はなかった。だというのに魔王と呼ばれるものが君臨していて、口利く種族は危機的状況にあった。
「イルミンスールも言っていたけど、魔王っていうのは一種の自然現象らしい。ひとつの時代に魔王は一人だけとか、色々細かいルールがあるみたいで、それによってエリゴール存命中に別の魔王が現れることはなかったみたいだけど」

<オルカ>
「確かに、エリゴール以前にも力を持つ魔族の話は聖王国に伝わっているんだ。それらはエリゴールほど強くはなかったみたいだけど」
「強い魔王が出るかどうかは、イルミンスールによる世界の『逆行』が進んでいるかどうかも関係あるんだと思う。計画が完遂される直前に現れたエリゴールはかつてないほどの強さを持つ災害だった」
 これは聖樹界だけではなく、他の世界でも見られる兆候だ。
 『世界』は、『星』には一種の自衛本能があり、世界を台無しにしようとする存在が力をつけた場合、カウンターとしてそれを撃破し得る存在を補強することがある。
 世界にとって重要なのは世界そのものの存続であって、その世界を支配する種族の繁栄ではない。
 『特異点』に絡めば絡むほど、突然変異的な力を持つ者が現れやすくなる。それも一種の『ライト能力』の発現なのだ。
 リーゼロッテが戦いの中で原始の神に近づいて行ったのも、彼女が聖樹界の重要な『ライト能力者』の1人であり、一種この世界の物語をまとめる『主人公の1人』として世界に後押しされたからだ。
「だとすれば、今のこの世に産み落とされる魔王は、どういった存在なのだろう」
 リーゼロッテがぽつりとつぶやく。
 魔王。魔族を率いる能力を持ち、闇の神バロルの現身にも等しい怪物。
 嵐のように現れて、『口利く種族』の世を乱していく自然現象。
 イルミンスールが野望に敗れ、今や口利く種族にコキ使われているこの世界で、魔王という存在と人々がどのように向き合えばよいのか、それがわからない。
「とにかく、まずは緘口令だな……。魔王が復活した『かもしれない』など、復興途中の今の世界にとってあまりにもダメージが大きすぎる」
「しかしのう……隠してもすぐにバレることになりそうじゃぞ?」
「ああ。ヴェイグルの言う通り、仮に魔王の出現が確定なら、結局この西部……聖王国や復興中の周辺諸国も影響から逃れることはできないだろう。地脈や聖樹と関連しているとするなら、その聖樹が『西部』にある以上、東部からの影響は時間の問題なんだ」

<ヴェイグル>
 リーゼロッテは極めて冷静にそう分析して、腰に携えた剣を見やる。
「いざとなれば私が出陣て、魔王を斬ることになる。だが……まず、本当に魔王の出現なのかどうかを確かめたいし、その魔王と話し合う余地がないのかも確かめたい」
「基本的な方針は変わらず、ということじゃの」
「実際に人命が奪われるような事件になれば、話し合いの余地はなくなってしまう。これ以上現象が悪化する前に、こちらから原因を特定し対策を打つ必要がある。……オルカ、ヴェイグル。申し訳ないが、今一度咎人の協力を依頼したい」
 二人の咎人は顔を見合わせ、当たり前のように頷く。
「応とも! 乗りかかった舟じゃし、故郷の問題じゃからなあ!」
「今更水臭い。引き続きダウバランとの連絡役は私に任せてくれ」
「ありがとう。今の話、ロウにも良く伝えてくれ。彼を指揮官として『蒼薔薇騎士団』に送り込んでおいてよかった。こんな緊急事態、他の者では対応できないからね――」


●闇花騎士(デッドウォーカー)
「初めて不死者と戦った咎人が優秀で良かったな。おかげで対策は出来そうだ」
 蒼薔薇騎士団が不死者に関する調査を進めることになり、急に忙しくなってしまった。
 本当はもっと『魔族との友好関係の構築』とか、そういったノンビリめの仕事も蒼薔薇の担当だったはずだが、とにかく戦力が不足している。
「咎人はテラスが使っていた『不死殺し』の技を使ったのか。まあ確かに魔族って元々再生能力がすごくて全然死ななかったからな。一時バロルが魔族から『死』を取り除いて死ななくするというズルをしてきたこともあった」
 そこで白羽の矢が立ったのはまたもイルミンスールである。
 咎人から提供された情報を分析し、対不死戦略を構築しなければならない。
「この神導殉教者っていうの、なんだ? まるで対不死者を想定して作ったみたいな能力だな。こいつを作ったヤツは先見の明がある」
「おい、真面目にやれ。ボクたち聖樹界の魔法騎士にも不死を殺すための技は身に着けられないのか?」
「ロウなら出来ると思うけどね。君は『神器』持ってるし」
 ロウ・ル・ザノス。彼はナイトハルト・ロス・テラスと共に作り出された始祖たるミンスクたちの末裔であり、大魔法使いザノスの遠い子孫にあたる。
 そんな彼が持っている杖を指し、イルミンスールは『神器シャイカーン』と呼んだ。
「神器って……ハルク王が持っていたようなヤツなのか? このオンボロが?」
「もう神の加護はスッカラカンだからそういう力はないよ。でも神造兵器には違いないから、あとからエンチャントしやすい素材になってるね。この杖しばらく預かるよ。僕が今から神器として作り直しておく」
「神器を持ってないやつはどうすればいい?」
「無理だね。咎人だったら話は違うけど」
 イルミンスールはほぼ万能の存在だが、それに対してミンスクという『器』は脆すぎる。
 魔族が言葉を話せるようにする『知恵の実』がそうであるように、『今存在しない力を後から付与する』ということは、一種の人体改造である。
 技術の研鑽や魔道の修得といった正攻法でさえ多少なりは肉体改造を伴うものだが、それを一気にやろうというのなら反動があって当然なのだ。
「咎人って仕組みを作った神はスゴいな。あいつらなんであんなに存在改造しまくってへっちゃらなのかっていうと、後付けの改造を受けて発狂しないようにできてんだね~」
「ボクらがやるには人間やめるしかないってことか……」
「別にやめていいんなら改造してやってもいいけど?」
「最終手段で頼む。それなら使えそうな『武器』を量産する方法を考えた方がましだ。神の力をインストールしやすい『神器の残骸』なら心当たりあるしな」
 冷や汗を流しつつロウがニタリと笑う。
 墓から出てきた連中が身に着けていた装備。ボロくなってたけどアレたぶんそうでしょ。
 そのまま使うのは無理だろうけど、ドヴェルグとかに鍛えさせればなんとか。
「墓を漁って素材を集めればいい!!!!」
「お前、本当に貴族なのかい?」
「何とでも言え! 死ぬよりマシだ! なんなら国が滅んで誰も整備しなくなった墓をきれいにしてくれる慈善事業と言い換えてもいいぞ!」
 というわけで、一般の魔法騎士が戦うための『武器』の用意には時間がかかる。
 そうなると結局、それまでの『つなぎ』が必要になるわけで……。

「よう。お前が聖樹神イルミンスールか。まあよろしくな」

<コルニ>
 天獄界から呼び出されたコルニ(mz0016)がイルミンスールと握手する。
「どうも。早速だけど、咎人の改造を許可してもらいたい」
「別に構わんが、咎人は死ぬと『正常な状態』に戻ろうとするから人体実験には向かんぞ」
「そうなの? こう、対アンデッド用の能力を創りたいんだけど。神導殉教者みたいな」
「じゃあ神導殉教者を使えよ」
「不死者を止めるのならそれでいいけどね。僕の予想では向こうが不死な『だけ』でいてくれるのはむしろ序盤だけで、最終的にはコッチまで『死』を操作されると思う」
 イルミンスールはそう考える根拠をコルニに説明する。
 現在の事象は正しくは『不死者の発生』ではなく、『死という現象を操作する者の発生』であり、その現象は『味方』だけではなく、『敵』に向けることも可能ではないか、と。
「……つまり、即死させて来るということか?」
「うん。肉体の死ではなく概念の死……まあ、超強力な呪詛の類だね。咎人は復活できるとは言え、いちいち即死させられてたら嫌でしょ」
「そうだな。で、どうやって実現する?」
「魔族のイデアと、テラスのイデアを使いたいんだ。百花騎士をベースに、魔族の因子を拡張する。咎人限定になるけど、短時間で使いこなせるようになるはずだ」
 始祖王テラスはイルミンスールが作ったものだ。
 そして、魔族に関してもテラスは一時バロルの力を奪い、研究を進めていた。
 一から作り出すことはできない。ならば、既にあるものを掛け合わせる。
「――ふむ。ま、いいだろう。手を貸してやるよ、聖樹神」
「ありがとう……って、逆じゃない? 僕がお前たちに手を貸してやってるのでは?」
「そうだな」
 素直に言葉を返し、コルニは元聖樹神を見やる。
「最近のお前は少し協力的すぎるんじゃないか?」
「僕が? ……そうかい?」
「自覚がないのか……」
 きょとんとしたまま、イルミンスールは考える。
 さっさと死んで消えてなくなりたかった。この世界に『還った』家族と同じように、『個』ではなく『世界』の一部に溶けて消えてしまうのが最後の望みだった。
 だが、その『世界』の構造に問題が生じているのなら何とかしなければ、オチオチ『世界に還る』こともできない。それに――
「まあ、割と今、楽しいよ。なんでだろうな?」
 生命の種を作って、この庭をどんなに素晴らしい世界にしよう?
 神々が集まって語り合った。ああじゃない、こうじゃない。みんなの意見は一つにならなかったし、ラタトスクやバロルには随分振り回されたけど……楽しかった。
 世界が壊れかけて、それを復元するために人々は新しい時代を歩もうとしている。
 それは、この世界をどんな世界にしようかと語り合うに等しい。
「僕らができなかった何かを、見届けたいのかもな」
 意図せず零すような小さな言葉を聞き逃さず、しかしコルニは指摘しない。
 さあやるぞと一声かけて、イルミンスールの背中を叩いた。

(執筆:ハイブリッドヘブン運営)

ページ先頭へ

ページ先頭へ