1. シナリオ参加
  2. リプレイを読む
  3. マスター
  4. 連動シナリオ

エリス王国連動


ジィト

正直、厳しい戦いだと思うが、状況は待ってちゃくれねえ、か。
俺たちは邪神勢力を排除できればそれでいいのかもしれねえけど、
やっぱ、目の前で誰かが不幸になるのは……少しでも食い止めてえなあ……。
俺に何が出来るか。迷う暇もねえ。やるべきと思ったことを、やるしかねえよな。


更新情報(2021/06/14)

聖樹界イルダーナフで繰り広げられた連動シナリオが最終局面へ!
特設ページでは決戦を紐解くストーリーノベルと、戦況の解説を掲載しております。
6月14日、決戦を描く連動シナリオが公開されました。
より深く決戦を楽しむために、ぜひお役立てください!

ストーリーノベル

●戦いに備えて

「あの兵隊長さんに会っておきたいなら、多分少なくとも『ジークフリート殿』は行けば会えるようになってると思いますよ」
 リベラ内で、決着に向けての戦いの機運が高まる中、悩むジィト(mz0039)に、同じく咎人である謝 雷峰は妙に確信するようにそう言ってきた。

ジィト
「あんたとあの兵隊長さんって、知り合い……なのか?」
「知り『合い』っていうと違うんじゃないですかね。どういうわけか僕が一方的に良く知ってる気がするだけです」
 一見すると滅茶苦茶な言い分だが、咎人という立場に限って言えば思い当たる話はある。……多元宇宙における類似人物。といっても、完全に同一とは限らないとのことだが。
 それでも近しいと感じたのならばと、半ば駄目元で兵士たちの詰め所を訪れてみれば、「貴方が訪ねてきた場合話を通すようにと言われていた」と兵士は返してきて。雷峰の読みの通り、あっさりと面会は叶う事になった。
「この度は、お忙しいところ時間を取っていただきありがとうございます」
 会いに行った時点では手が離せない業務があるという事で、話し合いの場は改めての時間を取ってのことになった。というわけで、兵隊長──改めてここでヤン・シリングスと名乗られた──は第一声でそう言ってきた。正直、それは何かの皮肉で言われたんだろうかと思うくらい、向こうの方が多忙な間を無理矢理縫ってきたのだろう事が制服などのくたびれ具合からうかがえたが。
「……手短に用件のみお話してよろしいでしょうか」
「そうしていただけると非常に助かります」
 察したのを向こうも察したのだろう。ジィトがすまなそうに切り出すと、ヤンも恐縮気味に頷いた。
「この先の戦い、既存の魔族たちとは異なる力を持つ存在が確認された場合、まずは私と……咎人と呼ばれる者たちで対応に当たらせてもらえませんか」
 ヴェルナー・ブロスフェルト(mz0019)から、じきにベアトリスに出撃を促すとは聞いていた。それまでに自分に何か出来る事はと考え思い付いたのがこれだ。強力な個体に対し、咎人たちが優先して向かえるように予め話をつけておく。
「──どうか、故郷を亡くし、今は邪神なるものを追う事が目的の私に、情けをかけていただけませんか」
 そして、その為の話の筋はこうだ。決してそちらを下に見ての事でなく、むしろ誇りある者と見込んで、『敵討ち』の為にここは譲っていただけないかと。
「……。貴方のお気持ちについては理解できます」
 暫し考えてから、ヤンは答えた。
「ですが、その目的を遂げるための協力相手として、我々より『咎人』という者たちを選んだ理由をお聞きしても?」
 鋭く、見定めるような目で聞いてくる。その疑問に対する答えも、用意はある。
「目的、という面で言えば、私にとっては貴方方よりも彼らの方が近しいと考えたからです。……貴方方にとって勝利とは、『リベラの未来の為になる』形であってこそでしょう」
 自分と咎人は、言ってしまえば「邪神勢力が倒せればそれでいい」。だから、どんな力を持つか分からない邪神勢力には自分たちが向かい、貴方たちは「陣営の勝利」を見据えた戦いにそれそれ注力すべきだと。
 決して力の優劣でのことでは無く、それぞれの目的を思えばこれが適切な役割分担ではないかと、ジィトは話を進めた。
「しかし、つまるところそれは……貴方は、自らの信念、そして命をも、『咎人』に託すことになります。……貴方は、『咎人』がそれに値すると、判断された、と?」
 投げかけられているのは、疑いの目では無かった。真剣に、何かを知ろうとしている。そう感じたからこそ……ジィトは、ここで慎重に、答えるべき内容を考えた。
「……『咎人が』という話だと、はっきりとは『そうです』と申し上げるべきではないかもしれません」
 これまでの事をじっくりと思い返しながら、ジィトは答えを導いていく。
「……ですが、ここまでで。私自身で、共に戦い、見て、言葉を交わしてきた者たちについては……信じてみようと、思っております」
 暫く沈黙が生まれた。
 ジィトの返答の意味を、ヤンは時間をかけて吟味し、そして理解しようとしていた。
「成程──貴方に答えを聞くのではなく、私で見たもので、考えろと……。そう、その通りですね」
 そうして、ジィトの想いは、どうやら正しくヤンに伝わった。それはやはり、これまでに咎人たちに見せてもらった物から辿り着いた形だった。信じるという事、決断するという事とは、と。
「分かりました。一先ずは、ジークフリート殿、貴方が勝算あってのことならば、それを信じましょう」
 故国を失い、捨て鉢な想いで自分たちの為に犠牲になろうというのでなければ、と。ヤンは、まずはそうして納得したようだった。確かに目的を考えれば適切で、それをあくまで『持つ者』であるジークフリートが主導する体裁をとるならば、兵士たちも素直に受け入れるだろうと。
「次の戦いまでに、兵士たちにはしっかりと話しておきましょう」
「……ご理解、感謝します」
「いえ、こちらこそ。度重なるご協力の申し出に、改めて深くお礼申し上げます」
 互いに、頭を深く下げ合って。
 そうして互いにやはり、これ以上の無駄な時間は惜しいと、ここで解散になった。

「『咎人』ですか……」
 独りになり、ヤンはまた考える。
「強力な力を持つ者であることは間違いない……しかし彼らは、我々と『同じ』なんでしょうか」
 力あるものとしての責務、志。自分たちと近しい在り方なのか、それとも、全く異なる『理』がそこにあるのか。
 ……そして、今自分が求めているのは、そのどちらなのか。
 己に迷いが生じていることを、ヤンは今、認めていた。先代から引き続き、リベラの領主を支える身として。己に課していたのは、先王と変わらぬ態度で彼女に仕える事。その言葉は先の領主と同等の重さで受け止め、ただ命に対し己の出せる最高の結果を出せるよう力の限りを尽くす。
 しかし……理想では支えきれぬとなったら、己はどうするべきなのか。今のままで……良いのか。
 己が今欲しているものは何なのだろう。理想を叶えてくれる、思い通りの強力な援軍なのか、それとも……。


●在りし日の……

「ねえジゼル、きいてちょうだい、今日ね、おさほうの先生ってば……」
「まあベアトリス様。それは大変でしたね」
 拗ねた顔で戻ってくれば、ジゼルが微笑って、お茶の準備を整えてくれる。
 貴族の子女として、幼いころから学ぶべきことは多かった。
 でも、この頃は。
 ケニングの修行を始めるのはまだ先のことで、『持つ者』としての責任も、まだよく知らなかった。
「ねえジゼル、刺繍がしたいわ。つきあってくれる?」
「ふふ、ベアトリス様は本当に刺繍がお好きですね。ええ、喜んで」
「本当? こないだ見せてくれたあの縫い方、教えてちょうだい? 今日はできるまでつきあってもらうわよ」
「ええ。ええ」
 ベアトリスが無邪気にそう言えば、ジゼルも、それでベアトリスの気が少しでも晴れるなら喜んで、と、心から笑っていた。

 ………………
 …………
 ……

 父を、兄を失ってからのベアトリスには、悲しむ間も赦されなかった。
 いっそ打ちのめされてしまえばよかったのだろうか。しかし、先王もその世継ぎも、正しく戦局を見定めるほどの才覚があった故に、「こうなる」ことは予め可能性として考慮し、用意も残していた。
 当面の間は、やれないことは無い。ベアトリスは『持つ者』として、その責務を果たすべしと、失意に沈むことより、忙しさに悲しみを埋めることを選んだ。
「ベアトリス様……お疲れ様です」
 ジゼルは変わらず彼女の侍女として傍にいる。疲れを少しでも解そうと丁寧に湯あみを手伝ってくれて、楽な室内着へと着替えさせてくれる。
 そうして僅かな時間だけ息を吐いて。
 ベアトリスは、自室の机へと向かう。今からでももっと学ばねばならない事、頭に入れておかねばならない情報、幾らでもあった。
「ベアトリス様……今日はもうお休みになられた方が」
「そんな余裕はないのよ、ジゼル」
 意を決して言ったジゼルの言葉を、ベアトリスは僅かな迷いの空隙もなく切り捨てる。
 怒りはない。『持たざる者』であるジゼルに、今の状況を理解しろというのは難しいのだろうと思うだけ。
「では……わたくしに何か、出来ることはございませんか?」
 少し沈んだ声で更にいうジゼルに、ベアトリスは小さく息を吐いた。
「貴女は貴女がすべきことをきちんとしてくれているでしょう? 毎日、丁寧に私の世話をしてくれているのは分かっていてよ? ──それ以上、貴女に望むことは無いわ」
 ジゼルを『役に立たない』などと思うわけではない。『持たざる者』として、日々繰り返していけばいい仕事を、十分以上にやってくれている。そして、それ以上を求めることは決してない。
 告げると、ジゼルは、「過ぎたことを申しました」と深く頭を下げる。頷いて机に戻る──下がっていくまでの彼女がどんな顔をしていたのか、そう言えば見ていなかったことがふと気にかかった。
 何故だろう。自分は……『持つ者』として当然の考えをもって、それを言っただけ……の、筈。なのに。
 胸に残る、この、しくりとした痛みのようなものは、何なのだろう。

 分からない。思い返しても。
 ジゼルはずっと、変わらず丁寧に自分を世話してくれた。
 ずっと変わらず……自分を気遣ってくれていたと……思うのに。
「どうして貴女が居なくなるの……ジゼル……」

(執筆:凪池シリル

ページ先頭へ

ページ先頭へ