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エリス王国連動


サヴィトゥール

リベラ卿の打診を受けてエリス王国の王都オブライトへ来たが……。
どうもこの国も焦臭い。何がおかしいと指摘はできぬが。
だが、我らが手を引けばこの国の滅亡は時間の問題だ。
魔王軍が現れるのであれば、手を貸す他あるまい。


更新情報(2021/08/18)

一時の平穏が訪れたエリス王国。
しかしそれも束の間、魔王軍は王都「オブライト」へ兵を差し向ける。
この状況に隣国「パンテーラ公国」は精鋭「翼狼騎士団」を派遣する。
新たな戦いの幕開けとなるストーリーノベルと解説を公開しました!
連動シナリオの更なる展開にご期待ください!

ストーリーノベル


 貿易都市『リベラ』を巡る戦いは、一端の区切りを見せた。
 エリス王国の国境にあるハンセル砦を奪還した事で、魔王軍の侵攻を食い止める事に成功したのだ。咎人の活躍により、リベラで発生した被害は最小限に食い止められ、多くの命が救われる事となった。
 この功績はリベラの兵士や市民に多く知られ、咎人の地位にも変化が見られ始めた。

 だが――この変化が咎人へ新たなる試練を課す事となる。

「あれがオブライトか」
 馬車に乗っていたサヴィトゥール(mz0030)は、視界に飛び込んできた城を前に呟いた。
 エリス王国の王都オブライト。リベラが貿易の拠点であれば、エリス王国の要がオブライトだ。分かりやすく言えば王様が住む街。リベラと異なり、城壁から堅牢な白亜の城という印象を与える。
「はい。我々はリベラ卿からの増援という体でオブライトへ派遣されています。ジィトさん、分かっていると思いますが……」
「分かってるって。何度も言わなくても大丈夫だって」
 口うるさく注意してくるヴェルナー・ブロスフェルト(mz0019)を、ジィト(mz0039)は面倒そうな態度で対応する。
 リベラを守り切った咎人達であったが、あくまでリベラから魔王軍を追い出したに過ぎない。
 魔王軍が次に打ったのは、王都オブライトの襲撃である。

ジィト
 リベラは大きな街道が通っている事から狙われたのだが、魔王軍はリベラの陥落に時間がかかると判断。リベラを迂回する形でオブライトへの侵攻を開始したのだ。王はこの状況を危機と判断して各領主へ救援を要請したが、魔王軍をはね除けたばかりのリベラに派遣するだけの戦力はない。そこでリベラ領主のベアトリス・リベラはリベラ防衛に協力してくれた咎人達を増援として送り込む事にしたのだ。
「しかし、大丈夫なのか? 咎人の待遇は良くないのだろう?」
 サヴィトゥールは懸念を示した。
 確かに咎人達がリベラを防衛した事で咎人の地位は向上した。だが、それはあくまでリベラ周辺に過ぎない。オブライトでは咎人の活躍を漏れ伝えでしか聞き及んでいない。おそらく他の騎士同様、咎人は外様の扱いをしてくるに違いないのだが――。
「それが……リベラ卿によれば、問題無いだろうとの事なのです」
 ヴェルナーは問いかけにそう返した。
 リベラ卿は既に咎人についてオブライトへ報告してくれているのだろう。口添えしてくれる事である程度待遇を向上させてくれるのだろうが、ベアトリスによれば口添え以外にも何か理由があるのかもしれない。
「その割には不安そうな顔だな」
 ジィトはヴェルナーの顔を見た。
 そこには一抹の不安を感じている表情があった。
「勘の良い方ですね。
 少し気がかりな事があります。リベラでの戦いを思い起こせば、この国は……」
 

 王都オブライト――イーディー城謁見の間。
「よく来てくれた!」
 エリス王エイトオーク二世は、意外にもリベラから来た咎人達を歓迎した。
 咎人達の予想では冷たく遇われると覚悟していたのだが、予想に反して王が玉座から降りて直接握手を求めてきたのだ。
 流されるままにジィトは右手を差し出す。
「勿体なきお言葉にございます」
「恐縮する事はない。貴殿等のおかげでリベラが助かった事、聞き及んでおるぞ」
 上機嫌なエリス王。
 ジィトも相応に対応するが、何か違和感を否めない。
 目の前の王は、あまりにも気さくなのだ。
 それを見かねたのか、アントニオ公爵がわざとらしく咳払いをする。
「オホン。陛下、あまり気軽に接されると王としての威厳が損なわれます」
「む。そうであったな」
 気を取り直すように玉座へ戻るエリス王。
 後で知った事だが、エイトオーク二世の先代、つまりエイトオーク一世は蛮勇な戦士として有名だったそうだ。先代は一度の戦で攻め寄せたオークの軍勢に対して短期で八つの部族を撃ち倒したとされている。その先代から引き付いたのが現国王であるが、咎人達からみた印象では、先代と正反対と言った具合か。
「貴殿等がリベラから救援として参った事、感謝しよう」
「陛下。一つ伺いたい事がございます」
「……貴様、陛下に無礼であるぞ」
 口を開いたヴェルナーに対し、公爵が厳しい口調で制そうとする。
 無理もない。咎人でなくとも傭兵同然の立場である物が王に謁見する事も例のない話だ。エリス王の希望で謁見が叶ったのだが、質問してくるのは公爵も我慢ならなかったようだ。
 だが、エリス王はその質問についても怒る素振りもない。
「よいよい。構わぬ。何を聞きたいのだ?」
「リベラ卿がエリス王へ救援を打診された際、救援は送れぬと連絡があったと聞き及んでおります。王都に危機が迫っていたと推察致しましたが、王都の危機は無事回避されたのでしょうか」
(ヴェルナー、直球で聞きおったか)
 ヴェルナーの問いかけにサヴィトゥールは少しだけ驚いた。
 王都の危機とは言っているが、リベラ卿によれば新参領主に対して大貴族からの嫌がらせをされていたと聞いている。それを敢えて王都の危機と称したのはヴェルナーがエリス王の立場を鑑みた為なのだが、それでも微妙な問題に直接聞くとは意外な行動だった。
 ヴェルナーの問いかけを受け、エリス王は傍らにいた公爵へ視線を向ける。
「ふむ。アントニオ、どうであったかな?」
「はっ、魔王軍の侵攻で混乱が発生した故、各貴族へ連絡が遅れたものと思われます。リベラは早急な救援を要請していた為、編成が間に合わず援軍が送れないと判断致しました」
「だそうだ。これで回答になったか?」
「……十分でございます。エリス王に重ねて感謝致します」
 ヴェルナーはそこで引き下がった。
 咎人達には公爵の答えが体の良い言い訳だとすぐに分かった。魔王軍の侵攻は今に始まった訳はなく、リベラを助けるのであれば少しの戦力でも送れたはずだ。おそらく先代リベラ卿の救援には送ったのだろうが、戦死してしまった事から各貴族は様子見でもしていたのだろう。下手に揉めれば戦いにならないと判断したヴェルナーは、この問題をこの場でこれ以上触れるべきではないと考えていた。
「そうじゃ。伝えておくべき事があったな。公爵」
「は。
 我が国に迫る魔王軍に対して周辺諸国が援軍を派遣していただけた。これは偏に我が国が他国と友好関係を築いてきた為である。我が国は各国の部隊を諸国連合軍として再編する事とした。貴殿等もそこに加わっていただく」
(リベラからの救援なのに、諸国連合軍か)
 サヴィトゥールは素早く事態を把握した。
 国内からの救援にも関わらず、諸国連合軍への編入。つまり外様扱いは変わっていない。おそらくエリス王自身は純粋に咎人を歓迎しているが、貴族達からは邪魔者扱いなのだろう。
「なお、先程パンテーラ公国よりハルク王太子と翼狼騎士団が到着した。間もなくこちらへお出でになる」
 公爵の言葉から少し間を置き、謁見の間に漆黒の鎧に身を包んだ騎士が現れた。
 威風堂々。歩く佇まいかあら誇りと畏怖を振りまいているようにも見受けられる。
 騎士はエリス王の前で礼儀作法を守り、少しだけ頭を下げる。
「エリス王よ。古き盟約に従い、パンテーラ公国ハルク王太子が推参致した」
「おお、ハルク殿。お父上の不慮の死からあまり時間も経っておられるのに……。援軍感謝するぞ」
 エリス王はハルクの到着に感激している様子だ。
 パンテーラ公国はエリス王国の隣国にあり、長きに渡って交流があるとされていた。
 そのパンテーラ公国は周辺諸国でも最強と呼び声の高い翼狼騎士団を率いるのがハルクである。先日、先代パンテーラ大公が死去した事から次期大公をハルクが継承すると目されているらしい。
「エリス王よ。既に打診していた物資とエイス王国の兵士を借り受けたい。それがあれば、魔王軍など簡単に叩き潰してみせよう」
「それなんだが……公爵」
「は。現在、エリス王国はリベラが攻撃を受けた影響で食料が不足。餓える民が出ております。王はこの状況を鑑みて民に食料の施しをされました。その為、ご要望の食料が準備できません。また領内にはぐれの魔物が多数出現しており、各地の守りに当てる必要が出ておりました。王は民の身を案じて各地にオブライト駐留の兵士を派遣した事からハルク殿へお貸しする兵士の余力がありませぬ。残念ながらハルク殿が要望された物資は……」
「なにっ!?」
 公爵の言葉を遮るようにハルクは怒声を響かせる。
 その言葉は謁見の間を揺らすかのような勢いだ。
 だが、すぐにハルクは落ち着きを取り戻す。
「……失礼した」
「ハルク殿、我が国の民も苦しんでおるのだ。持つ者として我らは持たざる者を助けねばならん。察して欲しい」
「…………」
 ハルクはエリス王の言葉を黙って聞いていた。
 思う所もあるのだろうが、事を荒立てないようにしたのだろう。
 そこへエリス王国の兵士が飛び込んできた。
「陛下! 魔王軍です! シルバ平原へ現れました!」
 斥候らしい兵士が駆け込んできた。
 オブライトの南東に位置するシルバ平原に魔王軍が姿を見せたようだ。既に陣を張って人類側の兵士を待ち受けている。正面から挑むのは、魔王軍が物量で勝っているという余裕からなのか。
「ふん、いくら集めても烏合の衆。恐るるに足らん」
 ハルクはマントを翻して踵を返す。
「……え?」
 ハルクが振り返る瞬間、ジィトは言葉を漏らした。
 ハルクの視線が自分に向けられていると気付いたからだ。

(執筆:近藤豊

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