1. シナリオ参加
  2. リプレイを読む
  3. マスター
  4. 連動シナリオ

人幻界テンペスト


安達

鮫島がどっかに消えちまってから、東京の治安は目に見えて悪化したな……。
なんだかんだあの馬鹿のおかげで悪さしづらいところはあったんだろう。
超能力消失に『人幻』の出現……これらをどう解釈すればいいんだ?
本当に全部、天羽の仕業なのか……?


更新情報(2022/6/3)

元天獄機関の超能力者、天羽総一郎。
彼の手により鮫島兆次が失踪してから1か月近く。東京の状況は少しずつ変化しようとしていた。
N-SGPの来日に反応するように東京で発生した「サイコフィールド」。
人幻事件の謎を追う、ストーリーノベルを掲載中!
人幻界アナザーエピソード『ガイアセンチネル』の関連情報をまとめております。

ストーリーノベル

●安達蘭の追想

 鮫島兆次 (mz0053)の失踪から、はや一か月ほどが過ぎようとしていた。

<安達蘭>
 その間、安達蘭 (mz0052)だけでなく『煉獄』の全面協力による鮫島の捜索が行われたものの、結局彼が発見されることはなかった。
 天羽総一郎は鮫島を『別の場所に移した』といったことを言っていたが、それは事実だろう。鮫島はこの東京であまりにも有名人だし、一般市民の目という網さえも潜っているとなると、もう『東京にいない』と考えた方が丸い。
 そうこうしているうちに、小山内に続いて『人幻』における事件が連発した。
 元天獄機関員、小山内平治(25)が発生させた、『振動の人幻』。
 煉獄の一員、田茂良助(28)が発生させた、『穿通の人幻』。
 超能力を秘匿していた新井三美子(24)が発生させた、『雷花の人幻』。
 いずれも大型化した強力な超能力をっぶっ放すタイプの『災害』であった。
 そしてそのいずれの現場にも天羽総一郎の姿が確認されている。
「人幻を暴走させた三名はいずれもその後、超能力の消失が確認されている。人幻が暴走すると超能力が消える……いや、超能力が所有者から『離れた』結果、自律行動を開始したものが『人幻』だったとも考えられるか……」

<焔城己龍>
 焔城己龍 (mz0046)はそう言って状況に想いを馳せる。
 安達はあれから鮫島捜索と対人幻事件への対応のため、煉獄がまだ勝手に本拠地として使用させていただいている浅草寺に身を寄せていた。
 浅草寺で『天獄機関』の制服を着ている男は既に安達のみであったが、悪目立ちはしていないようだ。
「小山内を絞っても何もでなかったしな。天羽にはどうやら超能力者から『人幻』を引っこ抜く能力があるみたいだが、そう言う意味じゃ小山内も田茂も新井も被害者だろ」
 尤も、超能力犯罪者で元々安達が追っていた小山内のようなケースもある。
 そういう意味では目立ってくれて捕まえるのが楽にはなったが……。
「どう? 妙案は浮かびそうかしら?」
 男二人がしかめ面を浮かべる縁側に湯呑を運ぶ月舘頼子 (mz0047)。
 二人は頭を下げてお茶を受け取るが、明らかに進捗は芳しくない。
「この三人以外にも『大型』ではなかっただけで人幻が出現した事件はいくつもある。煉獄と咎人の初期対応が早いおかげで何とかなってるが、そのうち人死にが起きてもまったくおかしくはないだろうぜ」

<月舘頼子>
 広域に振動をぶっ放す人幻。アレでもまだ被害範囲が少な目だった。
 穿通の人幻は高速で回転してビル群を薙ぎ払いながら町中を横断していくつか生活拠点が潰されたし、タンポポの綿毛のようなものを大量に振りまいてそれが全部爆発するっていう雷花の人幻は避難誘導が遅れていたら100人単位の人間が死んでいたかもしれなかった。
 もう、人幻事件は後手に回っていられない喫緊の課題となりつつある。
「わからないのが、天羽の目的だ。あいつは結局何がしたいんだろうな」
「人幻の事件は海外でも発生しているそうだな。つまり、東京固有の現象ではないということだ。天羽が人幻事件の元凶だとすると、天羽が世界中を移動しながら事件を起こしているということになるだろう」
「ああ……でもさすがにそりゃないだろ? あいつには瞬間移動能力があるみたいだから物理的な距離はさておき、世界中で『テロ』を起こす必要性が感じられない。テロリズムってのは単なる無差別破壊行為じゃなくて、建前だろうと何かしらの主張とセットだろ? 天羽は僕らに何も主張してこない。それがおかしいんだよ」
 安達がそうぼやくと、頼子が首をかしげる。
「あら。安達くんならわかりそうなものだけど……」
「は?」
「世界に何も主張しないテロリストって、東京に前例がいるじゃない」
 腕を組んで考えてみる。
 確かにいた。鎖神貴一 (mz0051)っていう人類史上最強最悪のヤツが。
「鎖神は全く主張していなかったわけじゃないけどな。あいつは『わかるやつにしかわからなくていい』って態度だっただけで……ん、まさか同じなのか?」
「鎖神が咎人に最初からあけすけに何もかもを語っていたのは、奴の目的と咎人の存在が不可分だったからだろう。天羽がそうではないのは、咎人に……いや、俺達煉獄にすら『わからない』と思っているからなんじゃないか?」
「そして、『わかりそう』な鮫島くんだけを拉致した」
 一応筋は通るが、だとすると余計にわからない。
 鮫島は生物としては最強クラスだが、自分が強くなるということ以外の主張なんてないし、お世辞にも頭がいいとは言えない。極端にシンプルな性格をしている。
 つまり、鮫島の『強さ』以外を利用するというのは考えづらいのだ。
「逆説的に、鮫島の強さがなければ成し遂げられない何かが……そしてそれに鮫島が共感をしたり、同意したりするような目的があるってことか……?」
 舌打ちし、安達は考えるのをやめた。
 これは、あれだ。必要なピースが揃っていないのに必死こいてジグソーパズルをやっているかのようだ。ピースが足らんのだから考えても絶対に絵は完成しない。
「人幻に関する情報が欲しいな。特に海外のやつだ。東京で天羽が起こしている事件と相対的に照らし合わせられる情報があれば、見えてくるものもあるかもしれん」
 安達がそういうと、己龍が切り出す。
「実は、アメリカから『煉獄』に接触があった」
 煉獄は『天獄事変』により有名になってしまった。
 あの鎖神貴一を捕らえ、天獄事変を終わらせた超能力集団ということなら、その実情を知らなければ相当なエリートにも見えるのだろう。
 諸外国から公にならないものも含めれば相当数の接触があったのだが、これらの対応は元『闇の組織』のデクスターやイヴリン (mz0083)の力をかなり借りた。
 少なくともそれにより、表向き『煉獄』は中立を保てているはずだ。
「N-SGPについては知っているな?」
「ああ。SGPって名前と人員を継承した、国連直属の対超能力警察機構だろ? 警察とは名ばかりで高級兵器と超法規的措置を持つっていう」
 SGPは元々米国が私有する超能力研究機関と、そこから派生した武力行使が可能な秘密部隊の総称であり、リーダーはイヴリンが務めていた。
 ルーツを辿ると第一次世界大戦から第二次世界大戦くらいにあって、当時のリーダーはイヴリンではなかったらしいが、現在の形になったのは日本人だったイヴリンが米国に渡ってからであるとされている。
 異端者として差別の対象となっていた超能力者を世界中から集め、超能力者の『居場所』を作り上げるという理想とは程遠い能力者による殺し屋めいた組織となってしまったことは、イヴリンにとっても心外なことだったのだろう。後にSGPが米国からすべての責任を押し付けられ、天獄事変もろとも闇に葬られる可能性が高いとなると、あっさりイヴリンは米国を裏切っている。  その後、SGPはざっくり二分された。
 イヴリンと共に日本に亡命――というよりは不法住居し、煉獄に身を寄せている者。
 そして――米国に残った者たち。
 天獄事変後、デクスター文書によりその存在を公のものとされたSGPは正式に解体され、しかし『人幻』という新たに世界中で発生した超能力事件への対応戦力として親元を米国から国連に移し――その現状においても米国の影響力が大であることは言うまでもないが――国連加盟国の要請に応じて各地で人幻事件の対処を行っている。
 それが『N-SGP』と呼ばれる、新たなSGPのすべてだ。
「そのN-SGPが日本に来ている」
 海外から正式なルートで『東京』に直通する便はない。
 かつての闇組織であったSGPならさておき、N-SGPは国連が正式に存在を公にしているものであり、勝手にコッソリ東京に上陸! なんてことはできないらしい。
 日本政府と正式に交渉し、東京入りの許可を得たのだろう。
「表向きには人幻事件関連の調査と聞いているが、N-SGPは『超対法』により、他国の領土内での兵器使用などが許可されている」
「裏の目的はわからんってことか」
 空になった湯呑を置き、安達は溜息を吐いた。


●鎖神貴一の溜息

「ふう……」
「どうした鎖神、溜息なんて吐いて珍しい」

<イーサン・クーパー>
 イーサン・クーパー (mz0015)のカレー屋でバイトをしている鎖神貴一は、人幻界での出来事に胸を痛めていた。
 鮫島が天羽の手により連れ去られた? らしいということを聞いて、鎖神はまるで一般人のように、ごく普通に鮫島の安否を心配していたのだ。
「私が行ってどうにかなることではないし、むしろ状況が悪化する可能性のほうが高いのだがね」
「そりゃそうだな。ま、咎人のジレンマでもあるな。グラジオラスなんかも同じように自分の世界との関わり方で悩んでいたし」
「天羽総一郎……確かに珍しい回帰主義者ではあったが、特別な素養を感じたことはなかった。私が死んだあと、あの世界で何が起きているのか……」
 鎖神は実は、世間知らずだ。
 自分が無価値として切り捨ててきた多くのことを、知識としても経験としても知らないまま、彼は短い生を終えてしまった。
 鮫島や安達がそうであったように、稀有な超能力者ではあった天羽ともっと親しくしていれば、何かしらヒントのようなものも与えられたかもしれない。
「イーサン、私に何かできることはないだろうか?」
「人幻ってやつに何か思い当たることはないのか?」
「あるが?」
「じゃあそれを教えてやれよ」
「教えられるものではないと思うが……確かに私もその気になったらソレが可能だったと思う。肉体から超能力を切り離したり――あとは、他人に与えたり、か」
 人幻界における超能力は何なのか、実はよくわかっていない。
 ただ、世界の特異点でもあった鎖神貴一を中心に周囲に感染するように広がってゆき、だからこそ東京では強力な超能力者が多数出現した。
 当たり前だが、本来の超能力とは本当に些細な手品程度のもので、第三者を殺傷したり、建造物を破壊したりといった物理的干渉ができるようなものではなかった。
 だから鎖神が当たり前のように軍隊を超能力で撃退した時、世界が震撼したのだ。

<鎖神貴一>
 今や超能力は際限なく強くなって、今や咎人のような異世界の異能者でも手を焼くような者が現れるに至った。人幻という現象も、超能力の強化――いや。本来不必要なまでに強くなりすぎてしまった超能力の在り方を『暴走』と定義するのなら、それらはすべて暴走という言葉の延長線上に並べてよいのかもしれない。
「超能力は世界に元々存在していた。イヴリンが言うには第一次世界大戦の頃にはすでに存在自体は確認されていたらしい。尤も、実戦レベルではなかったそうだが。つまり私という『特異点』が生じるより前から、超能力は世界に存在していた。こういったものを『世界法則』というのだったかな?」
「だな。それがどうしたってんだ?」
「いや。どうして『特異点』に『超能力』を集めたのだろう、と思ってね」
 咎人になってから、鎖神は勉強した。
 特異点とは何か。世界とは何か。自分が歩んできた短い人生はいかなる運命の中にあったのか。それらを知ることは、己の罪と向き合うことにも等しい。
 特異点を特異点たらしめるものは何か。それは天獄界でもよくわかっていない。
 ただし、それらはいつも世界にとって『必要』なもの……『世界法則』と関係する。
 例えば聖樹界では世界そのものの維持に必要な世界法則、『マナと聖樹』に関係した。
 そう考えれば、人幻界の特異点が『超能力』という世界法則とセットであったのはさほど違和感がない――と思っていたのだが。
「そもそも超能力とは、何のために存在したのだろうか?」
 人幻界には、『敵』がいなかった。
 人間同士の政争などはあったものの、それは超能力があってもなくても変わらない。
 超能力という世界法則があるから、『●●である』、という式が成り立たない。
 そういうものだと言ってしまえばそこまでだし、実際そうなのかもしれない。だが、鎖神貴一の死後に人幻が出現したということに関連性があるように思えてならなかった。
「聖樹界の特異点――神々の遺骸は、特異点の安定化と共に世界に還ったのだったね?」
「らしいな。あっちもなんかまたモメてたが」
「では、私が持っていた力は――どこに還ったのだろう? 消えてなくなったのか?」
 話半分くらいに聞いていたイーサンが眉を顰める。
「お前、つまり特異点から失われた力が世界に還った結果だっていうのか?」
「だとしても、私にそれを封じる力はもうないのだがね……」
 しょんぼりした様子の鎖神の肩を叩き、イーサンがニカっと笑う。
「だとしても、なんか出来る事があるんじゃねぇか? ちょうどコルニが小山内と天羽のデータを研究して対策を練ってるって言ってたぜ? 別に現地に行って暴れるだけが咎人の戦いじゃないだろ?」
「ああ……その通りだ。ありがとう、イーサン」
 バイト用のエプロンと三角頭巾を脱ぎ、鎖神はいそいそと走り出した。


●イヴリンの憂鬱

「はー、めんどくさい」
 煉獄がボランティアと共に進める瓦礫の撤去や舗装などにより多少は道も良くなって、こうしてオープンカーでかっ飛ばしたりすることもできるようになった。
 スタイリッシュなデザインの車はしかし市販のものではなく、安達に作ってもらったもので、言ってしまえばミニオンの一種だ。
 故に得意げにサングラスを装着し、風に髪を靡かせるイヴリンはハンドルに手を添えているだけで、実際のところは自動運転だったりする。
「N-SGPっていっても、中身は元SGPなんだろ? 顔見知りじゃん」

<イヴリン>
「だからなのだよタイガー。ここに向かっているクリス・レオニードは私の弟子なんだ」
「弟子って……会うのも嫌なもんか?」
「弟子だからというのは語弊があるなあ。クリスは私を除いたSGP超能力部隊の中では最強の男だった。ただ、精神的にちょっと問題を抱えていてね」
 クリスは幼少期から強い超能力を持っていた。
 彼は典型的なかつ天才的な創造主義者であり、Elementary School(小学校)にあがってすぐに意図せず事故を起こしてしまった。
 大好きなアメリカン・コミック・ヒーローの『武器』を具現化してしまい、それをいじめっ子に向かってぶっ放してしまったのだ。
 これによりクリスの人生は破綻した。彼は小学生で殺人者となってしまった。
「制御されない、教育を受けない超能力者はこんなもんなんだよ。子供の超能力者は善悪の判断以前に、そもそも超能力が特別なものだっていう自覚がないんだ」
 クリスはその後、SGPに保護されるまで悲惨な人生を歩んだ。
 SGPに所属した後も彼は自分の罪である超能力を憎み、超能力犯罪を憎んだ。彼にとって『異能』とは世界から消し去るべき『悪』だったのだ。
「だからといって無差別で超能力者を殺し回るようなヤツでもなかったけどね。基本的にはいい奴だよ。ただちょっと暴走しがちなのと、アホなだけで」
「聞いた感じそこまでヤバくはなさそうだけど」
「うん。ただ、私とはソリが合わないというか……私ってホラ、超能力者の生きていける楽園を作りたいっていう裏の目的があったでしょ? でもクリスは逆なんだよ。この世界からすべての超能力を消し去って、望まずに起きてしまう超能力犯罪を止めたかったんだね」
「それって……」
「そう。まさしくタイガーと鎖神くんがやったコトそのものだ。そういう意味でクリスは世界の現状を肯定しているし、咎人に対しても好印象を持っているだろう」
 そう言われても焔城大牙 (mz0043)は微妙な心境だった。

<焔城大牙>
「それって、生き甲斐っていうかさ。人生の目標を俺が奪ったことにならない?」
「ならない……と、思いたいね。アレから会ってないから反応わからないんだけどね!」
 わははーっと笑うイヴリンに助手席の大牙が眉を顰める。
「ま、気にするなって。夢なんて、なかなか叶わないものなんだ」
「そりゃそうだろうけどさ……。それで、クリスたちは何をしに来るんだ?」
「表向きは人幻事件の調査ってことになってるね。実際、東京でも急激に人幻の出現件数は増えてきているし、『特異点』があった場所だから地理的な意味で核心に近い可能性はあるから、十分な調査装備を持っているだろうN-SGPが協力してくれるならいいことだよ」
 そう言いながらもそれだけでは終わらない可能性があるから、きっとイヴリンはクリスという弟子に会うことを面倒だと感じているのだろう。
 そしてだからこそ、こうして咎人からも代表者として大牙を護衛に着けている。
「当たり前のことなんだけどさ。世界って、ずっと続いていくんだな……」
 鎖神を倒せば終わりだなんて、そんな風には思っていなかったけれど。
 いつまでも遅々として進まない東京の復興とか、世間から超能力者に向けられる冷ややかな視線とか、そういうものが全部消え去るにはきっと途方もない時間が必要だ。
 大牙の呟きに、イヴリンはまた「わはは」と笑う。
「そうだよ。世界は続いていくんだ。キミたちがいなくなってもね」
 当たり前のことじゃないか――と。
 それは否定ではなく、肩をそっと叩くような、優しい声色だった。

(執筆:ハイブリッドヘブン運営)

ページ先頭へ

ページ先頭へ