1. シナリオ参加
  2. リプレイを読む
  3. マスター
  4. 連動シナリオ

聖樹界イルダーナフ


オルカ

……ん? ああ、なんだキミか。これかい? 
これはサガルトへいつも渡している報告書だよ。
興味があるなら見ても構わないが……ふむ、そうだな。
ライブラリに登録して、いつでも見られるように頼んでおこう。
確かに色々あったからね。現状の再確認に役立つかもしれないな。


更新情報(2021/07/22)

23日のグランドシナリオ「星の継承者」の公開に合わせ、特設ページを公開!
聖樹界イルダーナフでのこれまでの物語をまとめております。
過去に確認されている敵情報の解説など、グラシナにお役立ちの情報もございます。
ストーリーノベルとあわせてお楽しみください。

また、今回のグランドシナリオをはじめ、ロンデニオンの防衛に関連したシナリオにご参加しただきました全キャラクターに、「聖樹界のマスターキー」をプレゼントします!
アイテムは1シナリオへの参加につき1つずつ、プレイング締切までにプレイングを提出されているPCを対象に、結果公開時に配布とさせていただきます。
プレイングが提出されないと対象となりませんので、ご注意ください!

■対象シナリオ
「星の継承者」
「顔の無い聖職者たち」
「森と穴倉から」
「因陀羅網」
「厭穢欣浄」
「皆の為の、皆の戦い」
「道は国家なり」
「ロンデニオン要塞の「持たざる者」たち」
【聖騎士】孤児院の騎士

ストーリーノベル


ジィト
 ロンデニオンへと魔王軍が迫っているとの報に、ジィト(mz0039)はオルカ (mz0049)を急ぎ訪ねていた。
「……俺はリオールの騎士たちに会いに行った方が、……いや、行ってもいいか?」
 ほんの少し前にも似たような相談があったばかりだ。その時は二つ返事で有難い、と答えたが、今回オルカに先に過ったのは迷いだった。
 いや、今もそうしてもらうのは有難いのは間違いない。リオールや、その他にもいる亡国騎士たちが、少しでも早く動いてくれるほど状況にはプラスとなるはずだ。そして、それを促す役としては咎人の中なら彼が最も適任だろう。
 だが。「話をしに行く」のでは無く「出撃を促す」となれば。
(その騎士たちに大きな被害が出れば、君が背負う事になるんだぞ……?)

オルカ
 オルカはじっと、その見目に似合わぬ、長き年月をそこに写してきた瞳をジィトへと向けた。彼は……彼が自覚している「生きた年数」は、その外見相応の20と少しといったところだったはずだ。子供ではないとは思っているが、オルカくらいにもなると、まだまだ危なっかしくも見えてしまう。だが。
(その、経験の少なさ故の『危なっかしさ』がないと、為せなくなってしまう事も、あるのだよな)
 まさに今のオルカがそうであるように。
 ……亡国騎士たちを纏め上げて援軍とすることは、オルカも思いついてはいた。だけどそれを彼に頼むべきかを迷ったところで、彼の方からやってきた。
(そうして、彼自身で気付いてしまったなら、どのみち、か)
 援軍が遅れ、ロンデニオンが落ちたとなれば、「自分が動いてさえいれば」という形で背負う事になる。ならば、せめて勝ち目のいい方、負けた時の負債の大きさ、そのどちらから見ても、こちらの方がマシか。
「……分かった。今ロンデニオンには少しでも多くの戦力が、いち早く必要だ。『騎士』たちを取りまとめてくる役目を、君に任せよう」
 だけど、せめて。
「そして、これは今の言葉をもって、第2次派遣部隊の現場指揮を任されている私からの正式な指示となる。この件の現場における判断は君に任せるという点も含めてだ」
 キョトンとするジィトに苦笑して、それから、オルカは表情と声を和らげて、更に言った。
「──思うようにやっておいで。責任は私が取る」
「……っ!」
 オルカのその言葉に、ジィトは胸を塞いでいた物を落とすように、塊のような息を呑んだ。そのまま、やっとというように、深く、ゆっくり一つ呼吸する。
「言われて意識してみると……ほんと、難しいもんなんだな」
「何がだい?」
「自分のやることを……自分だけで『これでいいのか』って信じ抜けるのかってのは、よ」
 きっと根は同じことなのだろう。今自分がオルカの言葉にひどくほっとしたのと、聖王国の騎士たちが神を見失い不安になるのは。
 今までもずっと、何もかもをすべて一人で出来ていたわけではないのだ。無意識に、自分の想いを支える何かがあってくれた。
「……有難うな。あんたも……いいリーダーだよ」
 自覚した今はだから、ちゃんと言葉にする。そうやって、互いを支え合うために。

 リオールの騎士たちに会いに行けば、既に出陣の準備は整っていて……その出立を決意する為の「あと一押し」を必要としているような状態だった。そうして……『ジークフリート』がやってくるのを見届けると、彼らはそれに向かってただ一度頷くと、ロンデニオンへと進軍を開始した。カッシールから向かう途上、声をかけられる者あらば、強制にならない程度に声をかけ、戦力を増やしていく。
「聖王国には恩があります。そして、これはロンデニオンに限らず、イルダーナフ全ての危機です。勿論、我々も戦わねばならないと思っていました」
 その途上、一人の騎士が話しかけてくる。その声はしかし、重い。
「……ですが、彼らは我々の参戦を良しと思ってくれるでしょうか。我々はこれから……彼らとは、神との在り方を異にするのかもしれません」
 それはある意味、「客人」であり「はなから異なる存在」であると割り切れる咎人よりも、一層溝となるのかもしれない。騎士たちにはそんな不安があった。
「同じ神を奉じていた……いえ、今も、そうでないとまだはっきりは言えません。ですので、彼らの気持ちもわかります。……否定するつもりは、無いのです」
「ええ……そう、ですね」
 彼らは間違っているのか。
 今の状況から正直に思うことを言えば、ロス・テラスの騎士たちよりリオールの騎士たちの方がしっかりしているように見える。だけどそれは彼らが『間違ってる』『情けない』からなのか。ジィトは、また考える。先日の交流でまた理解を深めた、神の存在の意味。そうして自覚した、己自身にもある不確かさ。
 騎士はこうも言う。
「こう言っては何ですが、我々が立ち上がることが出来たのは、『故郷を奪還したい』という目標を掲げられたからです。逆に、今もなお、リオールで平和に暮らしていたとしたら、どうだったのか。……勿論故郷が滅んでよかったなどとは思いませんが」
 成し遂げたい、確かな己の想いがある。それを成し遂げたとき、喜んでくれる者が間違いなくいる。それを新たな「正しさ」に据えて、彼らは決意した。
 なら、今の聖王国の者たちには目的が無いのか。『今のままであってほしい』、その想いに、未来は無いのか。
「……では、彼らの願いは。『昨日と同じ今日、今日と同じ明日が、ずっと続いていってほしい』とそんな未来だとも言えるのかもしれませんね」
 ふと閃いて、ジィトは零れるように言った。
 それを、停滞と呼ぶのか安定と呼ぶのか、それは外側の人間が決める事だろうか。そうやって暮らしている本人が、幸せであるかどうかじゃないか。
 聖王国には今もなお、沢山の笑顔がある。納得して、精一杯今の自分としての日々を暮らす人たちが居る。
 ならば。今の聖王国の騎士たちの真の願いは『これまで通りの神話に縋りたい』でも『変化を受け入れたくない』でもなく……『今ここにある笑顔を、そのまま守りたい』ではないだろうか。
 もはやそれは、ただ願い、何もせずいれば叶えられる物では無いだろう。邪神の介入で、これまで通りでは乗り越えられぬ危機を迎えている。マナ枯渇の問題もあるし、それに……。
 ……不幸な例を、エリス王国で見てきた。その様に、『持つ者』と『持たざる者』、その歪さが引き起こしたものに、今のイルダーナフはこれで良いのか、と歯がゆく思った。
 ……何の話だったか。ジィトは一度深呼吸した。向かう先はロンデニオン。そこに居る騎士たちは──自分たちの参戦を良しとしてくれるのか。『変わらないでほしい』と願う者たち。ここは変化を望まない世界だ、と誰かが言った。その象徴とも言える。
「『変わらずにいる』。その願いに、努力は、助力は、不要でしょうか。むしろその願いこそ、ここが正念場であるとも思えます」
 暴かれた真実はあまりにも衝撃的で。邪神の介入も含んだ魔王軍との戦いに対抗しながらの状況ではただ『彼らを信じて見守る』だけでは足りないのではないか。その願いが、「今この世界にある笑顔を守りたい」なのであれば……彼らとも、「何かやりようは無いのか」を考え、手を伸ばさなくてもいいのだろうか。『変わりたい』と願う者たちを支えたいという気持ちと同じように。
 戦いの中で、この国を、世界を見てきた。そこには常に、共に真剣に向き合ってくれる仲間たちがいた。彼らと共に、沢山考えた。毎回、彼らの働きかけによって、新たな発見があった。その結果……答えは、益々分からなくなった、と言うのが、今のジィトの正直な心境だ。
「何が正しいのか、など、私には決められません。それこそ……『神』ではないのですから。己がどうするのか、その決断は、必要でしょうが」
 でも、不思議と暗い気持ちにはならなかった。何も知らずに自分の先入観だけで進むより、前向きな迷いに思えるからだろうか。
 そして、こうも思う──だから、まだ焦って決めるべき時ではないのかもしれない、と。
「はっきり分かるのは、ここでロンデニオンが落ちれば、今皆が願うそれぞれの未来への道、そのどれもが険しく閉ざされる、と言うことです」
 答えは出せなくても、今やるべきことは、はっきりしているのだから。
「我々は彼らを『助けに行く』わけでも、ましてや否定しに行くわけでもありません。互いの未来の可能性を守るために、共通の障害を排するために協力を願い出る、そうではないですか?」
 ジィトの答えに、騎士はおぉ、と感嘆の声を上げ、そして俯きがちだった顔を上げる。
「そう言えば、ジークフリート殿」
 そうして、気を取り直した騎士が、ふと気付いたように、軽い調子で言ってきた。
「馬に乗っておられるところは初めて見ましたな」
「あー……その。戦闘の前には降りることになります。お恥ずかしながら、騎乗戦闘は苦手でして……」
 向こうからしたらほんの雑談だったのだろうが、少々ぎくりとした気持ちを隠して、ジィトは答える。嘘だ。別に技能としてできないわけでもない。ただイルダーナフでは出来ない──この世界の人たちの目の前で消えたら困るから!
 実は、人目に付く場所のイデアゲートが使えない、とか、この立場ゆえに、この世界での活動が不便になってる点もあったりする。
 そんなジィトの内心を知らずに、騎士はなんだか、余計に安心したように笑った。
「では、早駆けが必要な際は是非お申し出ください! 逆に私は馬術だけは自身がありましてな!」
「ええ。頼りにさせていただきます。……互いの力を合わせて、乗り越えていきましょう」
 何気にちょっと危ない場面だったが、結果オーライな気もした。そう、それぞれの力を合わせなければ、ここは乗り越えられない。今の魔王軍の勢いは、咎人の力だけで止められるものではないだろう。ロス・テラスの騎士たちも。彼らが本来の意志と戦い方を取り戻してくれれば、対魔族の戦いはむしろ彼らにこそ一日の長があるはずだ。
(上手く……繋がれると良いんだけどな……)
 心に秘めて、ジィトはロンデニオンへと続く空を見上げた。

(執筆:凪池シリル

ページ先頭へ

ページ先頭へ