闇掟界オルメタ

エディ・ジャクソン(mz0067)
時代遅れのマフィアが、足掻いてますねぇ。
ノスタルジーなんて流行らないんですよ。
それより、主人公諸君は特異点について……。
あ、まだですよね。ヒントが見つかれば良いですね。
更新情報(2022/07/14)「闇掟界オルメタ」が更新!ワールドガイドなどに加え、更に現在のワールドの状況を詳しく解説する特設ページとなっております。 シナリオが更新されておりますので、合わせてお楽しみください。 |
ストーリーノベル
●ツインフィールズの囚人
「ツインフィールズトリビューンの記者、ハナ・コムラサキです。議員、先日立案された『反社会的組織による不当行為防止法』について市民へ説明をお願い致します」
「我らの住むツインフィールズは、長きに渡ってマフィアに搾取されてきました。暴力を振るい、市民を傷付けて利益のみを奪っていく。そのような存在を看過して町の未来はあるのでしょうか。その答えが先日発生したジャパンシアターの一件です。私はこれ以上、市民を傷付ける存在を許す訳にはいきません」
「法案の具体的な内容を教えて下さい」
「警察組織への予算増額と権限拡大が主となります。治安維持強化を行い、マフィアの一掃を図ります。同時に犯罪行為を事前に防ぐ取り組みを行います。私が映画業界に投資している事は知られていますが、映画業界の持つ映像技術は優秀です。私は町の随所にカメラを設置して犯罪を防ぐ事ができるのではないかと考えています」
「それは一般市民の行動を監視するという事でしょうか?」
「あくまで犯罪行為を発見して未然に防ぐのが目的です。犯罪に無縁な皆様に不安を抱かせる事はありません」
「議員、町の噂では『友愛騎士団なる市民団体がマフィアを弾圧しており、彼らは議員を敬愛している』というお話が……」
「あー、失礼します。議員には次の予定がございますので取材はここまででお願いします」
「大丈夫です。あくまでも噂です。私と友愛騎士団は無関係です。ですが、ここで思い返していただきたいのです。マフィアに対しての怒りとは、所謂虐げられた者達の怒りです。マフィアが虐げられた者達は、決起したのではないでしょうか。その思想が反マフィアを掲げる私と結びつけられた。私は平和的な解決を求めますが、彼らの感情を一市民として無視する事はできません」
●
<ウォルター・アンダーソン>
「いやー、参ったな」
「……参っているのは、ダンの方だろ」
アンダーソンファミリーのアジトで、ウォルター・アンダーソンの愚痴にリカルド・マエストリ(mz0056)は正論で返した。
ウォルターが愚痴る理由。
それは届けられた一通の手紙にある。消印はない。おそらく誰かが直接ポストへ投函したのだろう。
問題はその手紙の内容だ。
「ダンが『手打ちをしたい』ねぇ」
腕を組んで思案するウォルター。
ダンはアンダーソンファミリーとの手打ちを申し入れにきたのだ。
ダンが率いるカークランドファミリーは、元々アンダーソンファミリーに属していたマフィア達だ。アンダーソンファミリーにいてはシノギ、つまり日銭を稼ぐ事ができないと考えたダンがアンダーソンファミリーを出たのが始まりだ。ダンは仲間達と共にカークランドファミリーを立ち上げ、瞬く間にウエストサイドを支配下に置いた。
通常であればボスを裏切ったのだ。手打ちなど許されるはずもない。
「……ダンが、そこまで追い詰められているって事だ」
ダンの口から紫煙が立ち上る。
ジャパンシアター襲撃事件の後、ウエストサイドを中心に友愛騎士団なる存在が暴れ回っている。マフィアを見つけては集団で暴行。警察も友愛騎士団を黙認している状況で、マフィアは命の危険を感じながら逃げ回っている。既にマフィアとしての活動も難しく、ダンはウォルターへ救援を求めた形になっている。ダンとしても頭を下げたくなかった相手だろう。
「本来ならそんな事は許さないんだが、うちのシマにも影響が出て来たからなぁ」
ウォルターが頭を悩ませる理由は、先日イーストサイドのイタリア地区で発生した友愛騎士団による襲撃だろう。
友愛騎士団の暴走はアンダーソンファミリーのシマであるイーストサイドへ飛び火。その場にいたマフィア達が襲撃されて死者を出す騒動になった。咎人達の迅速な救援で被害は抑えられたが、送れれば反マフィアの炎が町の東側にも大きく及んでいただろう。
「……反マフィアの旗印を無視できなくなってきたって事か」
「リカルド。その騎士団なんだがな」
「……なんだ?」
「人間じゃないかもしれないって本当か?」
ウォルターがリカルドへ詰め寄った。
何処かで聞きつけたのか、ウォルターは騎士団の者が人間でない話を聞いてきたようだ。
確かに現場にいたリカルドも不自然さを感じていた。マスクを奪おうとした咎人が、マスクを引っ張っても剥がせない。まるでマスクと顔が一体化しているような状況だった。騎士団が一般人であった可能性もあった事から過度に傷付ける事は避けていたが、ちょっとぐらい銃弾で撃っても死なない予感がリカルドにはあった。
「……かもしれないって話だ。だが、次に会った時は一般人と思わないようにする」
「そうだな。これ以上一般人にビビるようならマフィア稼業もおしまいだ。容赦する必要はないぞ。
でも、もしそうなら騎士団の背後に誰かがいるって事だよな? そんな事をする奴なんて限られているぞ」
「……そうだな。裏に誰かいるなら、騎士団を潰してもまた形を変えて出てくるだけだ。そしてその活躍に何も知らない市民は熱狂する。支持が集まれば集まるほど、ヤバい。だからこそ、ダンは手紙を寄越したんだろ」
「そうだな。ダンも何か情報を持っているかもしれねぇしな」
ウォルターは腕を組んで考え始める。
リカルドも思い返してみるが、ジャパンシアターでのダンは誰かに騙されていた可能性もある。
もし、この流れが一本に繋がっているのであれば、間違いなく『アイツ』が関わっている。
「……クソ」
「ん? どうした?」
「……いや、何でも無い。それより、どうするんだ?」
「ダンに会って話を聞いてみようと思う。これでも元はダンの親代わりだ。無碍にもできねぇ」
ため息をつくウォルター。
血は繋がっていなくても杯を交わした親と子だ。本来であれば殺されても仕方の無いダンの話を聞くなど、マフィアとして考えられない。それだけ身内に甘いという事だ。
「……ダンが指定してきた場所は?」
「イーストサイドの港湾地区。ヘッドリッセン社第三番倉庫だ。時間は深夜か」
●
「やっぱりおかしい。マフィアといえど市民でしょう? 暴行されたら班員を捕まえる。それの何がいけないんです?」
警察署長の陽念庭を相手に捜査官のマット・マートンは言葉をぶつける。
マットは、事実上友愛騎士団が放置されている状況に納得していないのだ。
それにマットはイタリア地区で騎士団を見ている。一目であれば普通ではないと感じ取っていた。
「理解はする。しかし、マフィア逮捕に協力している点を考えれば……」
「集団で暴行して殺している連中が協力者? 冗談でしょう。法を則れば連中も逮捕すべきです」
「あー、それは……特別措置というか」
「は? 何をどうすれば特別措置が降りるんですか?」
マットは半ばヤケクソだった。
警察の対応があまりに理不尽である事から、キレてしまった。警察署長? 関係ない。文句あるなら連邦捜査局にクレームでも入れてくれ。
「キミの担当は違法酒だろう。暴行は別の班が担当だ」
「じゃあ、その連中のケツをさっさと蹴り上げて下さい。さっきそこで交通課の女性警官を夕食へ誘ってましたよ」
「ええい! 後で言っておく!」
怒鳴り返す署長。
後で言っておく。マットは署長のその言葉をそのまま受け取る気にはなれなかった。
踵を返して部屋を出て行こうとする。
「何処へ行く!?」
「パトロールですよ。市民の安全が優先ですから」
不機嫌そうに警察署を後にするマット。
この時、足が自然とイーストサイドへ向かった事について、その後マットは『気付いたら向いていた』と述懐する。
まるで何かに引き寄せられるように。
●
<ウェンディゴ>
「この町に血脈が生きていましたか」
ウェンディゴは、月下の光に照らされながら呟いた。
絶えていないとは思っていたが、明確に現在まで血脈続いていた事実が分かった事を嬉しく思う。
ただ、その事と血脈が起こした行動は別問題だ。
「同胞を事実上の使役ですか。それ自体は否定しません。力を合わせてこの町を破壊しようというのなら、手を貸しても構いません。しかし……」
ウェンディゴが空を見上げる。
闇の中に輝く光。月の薄明かりが町を照らすが、町の放つネオンの光が月の光を打ち消しているようだ。
「同胞を斬り捨てるつもりならば、容赦はしません。血脈であろうとも報いは受けて戴きます」
ウェンディゴは町の東へと向かう。
そこに同胞が気配を察したからだ。
血脈が何を為そうとしているのか。それを見極める為に――。
(執筆:近藤豊)
「ツインフィールズトリビューンの記者、ハナ・コムラサキです。議員、先日立案された『反社会的組織による不当行為防止法』について市民へ説明をお願い致します」
「我らの住むツインフィールズは、長きに渡ってマフィアに搾取されてきました。暴力を振るい、市民を傷付けて利益のみを奪っていく。そのような存在を看過して町の未来はあるのでしょうか。その答えが先日発生したジャパンシアターの一件です。私はこれ以上、市民を傷付ける存在を許す訳にはいきません」
「法案の具体的な内容を教えて下さい」
「警察組織への予算増額と権限拡大が主となります。治安維持強化を行い、マフィアの一掃を図ります。同時に犯罪行為を事前に防ぐ取り組みを行います。私が映画業界に投資している事は知られていますが、映画業界の持つ映像技術は優秀です。私は町の随所にカメラを設置して犯罪を防ぐ事ができるのではないかと考えています」
「それは一般市民の行動を監視するという事でしょうか?」
「あくまで犯罪行為を発見して未然に防ぐのが目的です。犯罪に無縁な皆様に不安を抱かせる事はありません」
「議員、町の噂では『友愛騎士団なる市民団体がマフィアを弾圧しており、彼らは議員を敬愛している』というお話が……」
「あー、失礼します。議員には次の予定がございますので取材はここまででお願いします」
「大丈夫です。あくまでも噂です。私と友愛騎士団は無関係です。ですが、ここで思い返していただきたいのです。マフィアに対しての怒りとは、所謂虐げられた者達の怒りです。マフィアが虐げられた者達は、決起したのではないでしょうか。その思想が反マフィアを掲げる私と結びつけられた。私は平和的な解決を求めますが、彼らの感情を一市民として無視する事はできません」
●

<ウォルター・アンダーソン>
「……参っているのは、ダンの方だろ」
アンダーソンファミリーのアジトで、ウォルター・アンダーソンの愚痴にリカルド・マエストリ(mz0056)は正論で返した。
ウォルターが愚痴る理由。
それは届けられた一通の手紙にある。消印はない。おそらく誰かが直接ポストへ投函したのだろう。
問題はその手紙の内容だ。
「ダンが『手打ちをしたい』ねぇ」
腕を組んで思案するウォルター。
ダンはアンダーソンファミリーとの手打ちを申し入れにきたのだ。
ダンが率いるカークランドファミリーは、元々アンダーソンファミリーに属していたマフィア達だ。アンダーソンファミリーにいてはシノギ、つまり日銭を稼ぐ事ができないと考えたダンがアンダーソンファミリーを出たのが始まりだ。ダンは仲間達と共にカークランドファミリーを立ち上げ、瞬く間にウエストサイドを支配下に置いた。
通常であればボスを裏切ったのだ。手打ちなど許されるはずもない。
「……ダンが、そこまで追い詰められているって事だ」
ダンの口から紫煙が立ち上る。
ジャパンシアター襲撃事件の後、ウエストサイドを中心に友愛騎士団なる存在が暴れ回っている。マフィアを見つけては集団で暴行。警察も友愛騎士団を黙認している状況で、マフィアは命の危険を感じながら逃げ回っている。既にマフィアとしての活動も難しく、ダンはウォルターへ救援を求めた形になっている。ダンとしても頭を下げたくなかった相手だろう。
「本来ならそんな事は許さないんだが、うちのシマにも影響が出て来たからなぁ」
ウォルターが頭を悩ませる理由は、先日イーストサイドのイタリア地区で発生した友愛騎士団による襲撃だろう。
友愛騎士団の暴走はアンダーソンファミリーのシマであるイーストサイドへ飛び火。その場にいたマフィア達が襲撃されて死者を出す騒動になった。咎人達の迅速な救援で被害は抑えられたが、送れれば反マフィアの炎が町の東側にも大きく及んでいただろう。
「……反マフィアの旗印を無視できなくなってきたって事か」
「リカルド。その騎士団なんだがな」
「……なんだ?」
「人間じゃないかもしれないって本当か?」
ウォルターがリカルドへ詰め寄った。
何処かで聞きつけたのか、ウォルターは騎士団の者が人間でない話を聞いてきたようだ。
確かに現場にいたリカルドも不自然さを感じていた。マスクを奪おうとした咎人が、マスクを引っ張っても剥がせない。まるでマスクと顔が一体化しているような状況だった。騎士団が一般人であった可能性もあった事から過度に傷付ける事は避けていたが、ちょっとぐらい銃弾で撃っても死なない予感がリカルドにはあった。
「……かもしれないって話だ。だが、次に会った時は一般人と思わないようにする」
「そうだな。これ以上一般人にビビるようならマフィア稼業もおしまいだ。容赦する必要はないぞ。
でも、もしそうなら騎士団の背後に誰かがいるって事だよな? そんな事をする奴なんて限られているぞ」
「……そうだな。裏に誰かいるなら、騎士団を潰してもまた形を変えて出てくるだけだ。そしてその活躍に何も知らない市民は熱狂する。支持が集まれば集まるほど、ヤバい。だからこそ、ダンは手紙を寄越したんだろ」
「そうだな。ダンも何か情報を持っているかもしれねぇしな」
ウォルターは腕を組んで考え始める。
リカルドも思い返してみるが、ジャパンシアターでのダンは誰かに騙されていた可能性もある。
もし、この流れが一本に繋がっているのであれば、間違いなく『アイツ』が関わっている。
「……クソ」
「ん? どうした?」
「……いや、何でも無い。それより、どうするんだ?」
「ダンに会って話を聞いてみようと思う。これでも元はダンの親代わりだ。無碍にもできねぇ」
ため息をつくウォルター。
血は繋がっていなくても杯を交わした親と子だ。本来であれば殺されても仕方の無いダンの話を聞くなど、マフィアとして考えられない。それだけ身内に甘いという事だ。
「……ダンが指定してきた場所は?」
「イーストサイドの港湾地区。ヘッドリッセン社第三番倉庫だ。時間は深夜か」
●
「やっぱりおかしい。マフィアといえど市民でしょう? 暴行されたら班員を捕まえる。それの何がいけないんです?」
警察署長の陽念庭を相手に捜査官のマット・マートンは言葉をぶつける。
マットは、事実上友愛騎士団が放置されている状況に納得していないのだ。
それにマットはイタリア地区で騎士団を見ている。一目であれば普通ではないと感じ取っていた。
「理解はする。しかし、マフィア逮捕に協力している点を考えれば……」
「集団で暴行して殺している連中が協力者? 冗談でしょう。法を則れば連中も逮捕すべきです」
「あー、それは……特別措置というか」
「は? 何をどうすれば特別措置が降りるんですか?」
マットは半ばヤケクソだった。
警察の対応があまりに理不尽である事から、キレてしまった。警察署長? 関係ない。文句あるなら連邦捜査局にクレームでも入れてくれ。
「キミの担当は違法酒だろう。暴行は別の班が担当だ」
「じゃあ、その連中のケツをさっさと蹴り上げて下さい。さっきそこで交通課の女性警官を夕食へ誘ってましたよ」
「ええい! 後で言っておく!」
怒鳴り返す署長。
後で言っておく。マットは署長のその言葉をそのまま受け取る気にはなれなかった。
踵を返して部屋を出て行こうとする。
「何処へ行く!?」
「パトロールですよ。市民の安全が優先ですから」
不機嫌そうに警察署を後にするマット。
この時、足が自然とイーストサイドへ向かった事について、その後マットは『気付いたら向いていた』と述懐する。
まるで何かに引き寄せられるように。
●

<ウェンディゴ>
ウェンディゴは、月下の光に照らされながら呟いた。
絶えていないとは思っていたが、明確に現在まで血脈続いていた事実が分かった事を嬉しく思う。
ただ、その事と血脈が起こした行動は別問題だ。
「同胞を事実上の使役ですか。それ自体は否定しません。力を合わせてこの町を破壊しようというのなら、手を貸しても構いません。しかし……」
ウェンディゴが空を見上げる。
闇の中に輝く光。月の薄明かりが町を照らすが、町の放つネオンの光が月の光を打ち消しているようだ。
「同胞を斬り捨てるつもりならば、容赦はしません。血脈であろうとも報いは受けて戴きます」
ウェンディゴは町の東へと向かう。
そこに同胞が気配を察したからだ。
血脈が何を為そうとしているのか。それを見極める為に――。
(執筆:近藤豊)