1. シナリオ参加
  2. リプレイを読む
  3. マスター
  4. 連動シナリオ

闇掟界オルメタ


リカルド・マエストリ

……負けなければ、良い。
……いや。その代償はあまりにも、大きい。
……俺達は、本当に最善を尽くせたのか。
……俺は、今でも自分にそう問いかけている。


更新情報(2023/1/18)

「闇掟界オルメタ」が更新!
ワールドガイドなどに加え、更に現在のワールドの状況を詳しく解説する特設ページとなっております。
シナリオが更新されておりますので、合わせてお楽しみください。

ストーリーノベル

■君に届け

『ニューツインフィールズ計画、全面的な見直しが決定。
 議会は、ランディ・スタンリッジ議員より提出されたニューツインフィールズ計画を事実上否決が決定された。
 予算が十分に確保できない点や一部議員から反対の声が上がり、議会では反対多数で計画は否決された。この事態を受け、スタンリッジ議員は計画が頓挫した訳ではなく、より現実的な計画とするべく再検討するというコメントを寄せている。
 本誌記者が本計画について町内に監視カメラを導入する事で相互監視社会を導入する狙いがあったとして継続取材を行っている。
 今後も本計画について取材を続け、続報が入り次第本誌誌面で追求する予定である』
 
 ツインフィールズトリビューンに、速報として載せられたこの記事。
 記者のハナ・コムラサキは、計画見直しを受けて記事を執筆。取材の中でランディ・スタンリッジ議員の派閥だけで法案を可決する力はなかった。他派閥の切り崩しも思うように行かず、ランディは計画の見直しをせざるを得なかった。
「計画は見直し。つまり、計画はまた提出されるかもしれないという事ですよね」
 早刷りの新聞に目を通していたハナは、ため息をつく。
 一連の騒動はこれで一旦の終結となるが、すべてが終わった訳ではない。
 ランディが機会をみて再度法案を提出してくるかもしれない。そうなった時、意を唱えるのはハナを始めとしたメディアの役割だ。
「妨害はあるでしょうね。それでも……」
 ハナは視線を逸らさない。
 この町に市民が生き続ける限り、記者の矜持を決して捨てない。
 真実を追究する役割を、ハナは全うすると誓っていた。
 

「……という訳で、秘書を解任します」
「ええ。ようやく呪いのネックレスから解放されますよ」

<エディ・ジャクソン>
 ランディは秘書として雇っていたエディ・ジャクソン(mz0067)を解任した。
 度重なる無断欠勤や遅刻を理由にしているが、その実体は聖地を巡る戦いにケリがついた為だ。
「いやー、てっきり呪いで縛って働かせ続けるのかと思ってました」
「聖地へ近寄れない以上、この町の支配も手法を再検討する必要があります。正直、咎人や簒奪者の介入は勘弁願いたいです」
 聖地レイムディアーを目指したランディは、咎人の追求を買わして聖地目前まで迫っていた。
 しかし、聖地の道を塞いでいたのはクリーチャーの力を吸収して強大化したウェンディゴであった。
 ウェンディゴが健在である以上、ファリフも撤退したと察したランディ。
 ランディもウェンディゴを撃破できないと判断して撤退していた。
「正直、あそこで戦って勝てれば簒奪者側の勝利だったのですがねぇ」
 思い返してもエディに残念そうな顔が浮かぶ。
 ランディが先に聖地へ到着していれば、オルメタの世界は破滅で終わっていただろう。
 ランディもファリフも指導者として聖地へ到着できていない以上、現状維持同然の結末を迎えている。今から再度聖地を目指したとしても、既に聖地は特異点ではなくなっている。
「いずれ、ウェンディゴも何とかしなければなりません。おそらく何らかしらの方法で封じ込めるのが最善でしょう」
「できるんですか? そんな事」
「しなければ、この町に未来はありませんよ。おそらく今後もクリーチャーは増え続けます。それに対抗する手段を考えなければ……」
 ランディは早急に対クリーチャーの戦力を整える必要があった。
 ウェンディゴは強大な力を手に入れたが、ファリフとの戦いでダメージを負っている。
 その間に友愛騎士団を増強して対抗する手段を手に入れなければならない。
 この町を支配する以上、脅威から守らなければ――。
 

「……叔父貴は、未だに昏睡状態か」
「ああ。ランディのヤツを始末しなけりゃならない」
 アンダーソンファミリーの拠点でリカルドは、ダン・カークランドと状況を確認していた。
 アンダーソンファミリーの運営自体は問題ない。シノギも充分と言えるだろう。心配な点はボスであるウォルター・アンダーソンの後継者だろうか。
「ジュニアは相変わらず警察か?」
「……ああ。戻る気は無さそうだ」
 息子であるマット・マートンは、今日も犯罪捜査に全力を尽くしている。
 警察という職務が性に合っていたのだろう。マフィアに戻る気は一切無さそうだ。
 そうなると現行の体制からアンダーソンファミリーの次期ボスを決めなければならない。
「なあ」
「……なんだ?」
「お前、残ってボスにならないのか?」

<ダン・カークランド>
 ダンの問いかけ。
 それはリカルドの引き留めであった。
 咎人なる存在のリカルドは、この世界の住人ではない。
 それでもアンダーソンファミリーにとっては必要な人材だ。ファミリーを立て直すには、不可欠。旗印となる存在に誰かがならなければ。そして、ダンはその人物こそリカルドだと考えていた。
 しかし、リカルドは頭を横に振る。
「……俺は、俺のファミリーがある」
「そうか」
「……ボスは、お前がなればいい」
「!」
 突然の申し出に、ダンは目を大きく開いた。
 何を馬鹿な。それがダンの率直な意見だった。
「俺は出戻りだ。裏切った者がボスなんて……」
「……だが、今のファミリーはお前を中心に回っている。それで十分だ」
 否定するダンだったが、リカルドはダンを推した。
 今でこそリカルドが代理ボスだが、カークランドファミリーから戻った一派が信頼を取り戻そうと必死になってダンを支えている。
 これからツインフィールズという町が、どのような未来を迎えるのか。
 それは誰にも分からない。
 ただ、アンダーソンファミリーが未来にまで続くならば、誰かがこのタスキを引き継ぐ必要がある。
 それが偶然、ダンだった。リカルドにとっては、それだけの事だった。
「俺か」
「…………」
 ダンの一言に、リカルドは沈黙で答えた。
 

 雨が、降る。
 ツインフィールズ教会の中庭が、雨音を立てる。
 地面から土の匂いが流れ込む。

<ファリフ>
「…………」
 ファリフは、雨に打たれるのも構わずに立ち尽くす。
 目の前にあるのは、一つの石。
 死体のない墓。石には何も刻まれていないが、ファリフの心にはある者の思い出が去来する。
「フローズ」
 名を呼んでも、誰も答えない。
 ウェンディゴの戦いでフローズは、ウェンディゴに吸収されてしまった。
 戦って救出できるならば救出したかった。だが、強大なウェンディゴを前にファリフは地上へ戻るしかなかった。
 フローズを奪われた悔しさ。無力な自分を呪いたくなる。
「ごめんね。ボクが、もっと強ければ」
 後悔を口にしても、遅い。
 おそらくウェンディゴを撃破する事は難しい。対応方法を模索しているが、今の所ウェンディゴを撃破する術は見つかっていない。
 その事がファリフの心を暗くする。
「ファリフ……」
 雨に濡れるファリフを見つめるシスターアンジェラ。
 多くの者の悩みに耳を傾けてきた彼女であっても、ファリフに伝えるべき言葉が見つからない。
 できるのは、ファリフを見守る事だけ。

 戦いは、終わった。
 だが、勝ちか負けかで言えば負けになるだろう。
 被害は大きく、戦いはこれからも続く。
 オルメタは様々な人達の想いを内包しながら、未来に向かって進んでいくだろう。

(執筆:近藤豊)

ページ先頭へ

ページ先頭へ