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闇掟界オルメタ


イクタサ

これがキミ達にとって決戦なんだね。
成功すればウェンディゴは封印。
失敗すればこの町は壊滅する訳だ。
失敗が許されない事、理解できてるよね?


更新情報(2023/5/18)

「闇掟界オルメタ」が更新!
ワールドガイドなどに加え、更に現在のワールドの状況を詳しく解説する特設ページとなっております。
シナリオが更新されておりますので、合わせてお楽しみください。

ストーリーノベル「最終封印計画」



<イクタサ>
「聖地レイムディアーを失われれば、ワカンタンカと意志疎通ができなくなる。その事態を想定して、大精霊であるボクが地上で眠っていたという訳だ」
 ツインフィールズ教会へ戻ってきたファリフは、大精霊イクタサから話を聞いていた。
 聖地を失われれば、指導者を選ぶ事ができなくなる。それだけではなく、ワカンタンカも地上の様子を窺う事すら困難になるらしい。そこでワカンタンカは万一の際に万物に宿る精霊を統べる存在、大精霊を生み出した。
 大精霊イクタサは神と民を繋ぐ存在として、目覚めたそうだ。
「それなら、早く言ってくれればいいのに」
「ボクはワカンタンカと違ってすべてを信じるような事はしないよ。手助けするべき人間を見定める。スターネイクで戦ってきたキミ達は、ボクが力を貸すに値する存在だと認めたんだ」
「そうなんだ。ところで精霊って?」
「万物に宿る力の象徴ってところかな。目に見えないだけで、精霊はそこら中に存在するんだ。でも、悪しき存在が強くなれば、精霊はその地から消え失せる。言ってみればクリーチャーの対照的な存在ってところかな」
「…………」

<ファリフ>
 スターネイクから戻る途中、リカルド・マエストリ(mz0056)はイクタサこそが探していた精霊そのものだと聞かされた。
 元々、スターネイクへ赴いたのは精霊の力が宿る白狐の瞳を探しに行ったからだ。それがまさか白狐の瞳から大精霊そのものが目覚めるとは思わなかった。
 事態を理解していないダン・カークランド(mz0112)は、リカルドの脇腹を肘で突く。
「リカルド、これはどういう事だ?」
「……白狐の瞳に眠っていた精霊が目覚めた。それがあのイクタサだ」
「その流れは分かるけどよ。神の使いだったら、ウェンディゴを倒せるんじゃないか?」
「あ、それは無理だよ」
 ダンの言葉を耳にしたイクタサは、言葉を遮る勢いで答えた。
「何でだ?」
「スターネイクでボクを探している間にも、彼はせっせと力を蓄えていたみたいだね。おかげで以前よりも力を増してる。あれを倒すとなれば簡単じゃない。少なくともこの町は壊滅するだろうね」
「そ、それはダメだよ」
 ファリフが慌てて釘を刺す。
 ツインフィールズを犠牲にする策は取りたくない。だからこそ、封印という手段に拘っていたのだ。
「だろうね。ボクもそれは分かっているよ」
「そろそろ良いかな?」
 会話を聞いていたランディ・スタンリッジが、周囲の視線を集める。
 封印するにも時間があまり残されていない事を知っているのだろう。
「ふぅん、じゃあ早速作戦って奴を説明してもらおうか。議員さん」
「ダンさん、棘がある言い方ですが……良いでしょう。
 まず封印に参加する面々は、レイムディアーへ繋がる聖十字教会へ集合して下さい。その際、万一を考えて周囲を封鎖します。その手配はマットさんと警察の皆様に打診します。新興勢力のマフィアが爆弾を製造したとでも言ってもらえれば、周辺の住民は退避してくれるでしょう」

<ダン・カークランド>
「了解。万一が起こらない事を祈ってるよ」
 捜査官のマット・マートンが大きく頷いた。
 仮にウェンディゴが大火力を放つ事で地上に影響する恐れもある。被害を最小限に抑える意味でも、警察が周辺住民を退避するように指示してもらう必要がある。
「残る面々は聖地レイムディアーへ向かいます。おそらく、ウェンディゴもイクタサが現れる事を想定しているでしょう。相応の抵抗が予想されます。ダンさん、ウェンディゴが送り込むクリーチャーをアンダーソンファミリーで撃退して下さい」
「分かった。徹底的にぶっ潰してやるよ」
「さて、ここからが重要なところです。我々がやり遂げねばならない点は二つあります。一つは封印の儀式。これは血脈である私とファリフさんが行わなければなりません」
「儀式にはボク自身も手を貸さなければならないんだ。その間は三人とも無防備になるよ」
 ランディの言葉にイクタサが続けた。
 儀式の間、無防備になる。つまりそれはウェンディゴがクリーチャーを差し向ければ、簡単に儀式を妨害できる。儀式を守る為に戦力を分ける必要がある。
「もう一つは、ウェンディゴを抑え込む事。送り込んだクリーチャーが撃退されると知れば、ウェンディゴ自身が儀式を潰そうと動くはずです。リカルドさん、咎人の方々を連れてウェンディゴを可能な限り抑えて下さい。倒す必要はありませんが、可能な限り時間を稼いで下さい」
「……分かった」
 あのウェンディゴを相手に時間稼ぎ。
 倒せないまでも、儀式が成功するまで舐めプしようというのだ。
 以前よりも力を増したウェンディゴ相手にリスクはかなり高くなるのだが……。
「ふーん。キミ達だけだとちょっと危ないかな?」
「…………」
「ボクからも少し力を貸すとしようかな。……おいで」
 イクタサが手を前に差し出すと、そこには小型のキツネが姿を見せる。
 突然の事でファリフが瞳孔を開いて驚いた。
「わ! キツネが出てきた」
「精霊の白狐だよ。ツインフィールズに伝わる封印のキツネは、この子の事だよ。ウェンディゴと戦うなら、この子達に力添えをさせよう。封印や結界はこの子達が得意だから、きっと役に立ってくれるはずだ」
 イクタサに呼び出され、小首を傾げる白狐。
 肩にも乗るぐらいの小さい体であるが、精霊であるが故に秘められた力は想像以上だろう。
「あの、イクタサ。一つ教えて欲しいんだ」
「なんだい?」
「……ウェンディゴにボクの大事な友達が捕まっているんだ」
 友達。
 それは先住民達の良心から生まれたクリーチャーであり、ファリフを導いてきたフローズと呼ばれる狼だ。
 先の戦いでフローズはウェンディゴに取り込まれて力を奪われている。ファリフとしてはフローズを助け出したいのだ。
「ああ。気配で分かる。ウェンディゴの中に異質な何かがある」
「フローズは生きているの!?」
「生きてはいると思う。だけど、あまりにも時間が経ちすぎた。仮にその異質な存在をウェンディゴから分離できたとしても、元通りかは分からない。ボクにも予想は付かないよ」
 イクタサによれば、可能性はゼロじゃない。
 戦いの中でフローズを奪還できるかもしれないが、時間が経過し過ぎている上に力を奪われ続けていた。
 戦いの中でフローズが消滅する未来も考えられるらしい。
「…………」
 リカルドは白狐の視線を送りながら、来るべき決戦に闘志を燃やす。
 雪辱を果たす為。
 このツインフィールズを守る為に。
 

 くそ。
 こうなる事を避ける為に、ドン・マネーに白狐の瞳を処分させたのに。
 まさか金欲しさにオークションで売り飛ばそうとするのは。
 クリーチャーとジェスチンも貸してやったのに、それも無駄にしました。
 やはり、愚かな人間に任せるのは間違っていました。
 
 矮小で愚かな地上の人間に恨みを晴らすのであれば、自らの手を行使する他無い。
 精霊も手を貸してくるようだが、関係ありません。
 邪魔するならば力で破壊するだけです。
 
 ――良いでしょう。
 愚かな民よ、我に挑んでみなさい。
 その命を対価として。

(執筆:近藤豊)

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