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霧像界アンマンド


簒奪者・ピコ

お久しぶりです、機械殺しの英雄。
そして初めまして、愚かな人類たち。
私は私の目的の為、あなたたちを打倒します。


更新情報(2023/5/2)

「霧像界アンマンド」が更新!
ワールドガイドなどに加え、更に現在のワールドの状況を詳しく解説する特設ページとなっております。
姿を表した簒奪者と「悪魔」。その目的とは……?
シナリオも更新されておりますので、合わせてお楽しみください。

ストーリーノベル


<ルル・ロシェ>
 アンマンドの初回介入に参加した咎人たちは、ジャイルズ・マクミラン(mz0098)の報告会に集められた。
「情報がお宝って意味なら、結構実入りの良い仕事だったね」
 ルル・ロシェ(ma0422)は、いつもの飄々とした笑顔でそんなことを言った。現場では「発見」に尽力した彼。そこで見つけたものは、住人が消える前に生じ始めていた「異変」の記録だった。
「科学現象を用いて人を惑わせようとしたものと推測しましたが、どうやらもっと底の深い『悪意』を感じますね、この異変」
 マイナ・ミンター(ma0717)も、扇を口元に当てながら意見を述べる。絵に描かれた人間の頭を破裂させるという「異変」。不気味な悪意があると思うのが自然だ。
「そうか……起こった異変は住人の消失だけじゃなかったんだな」
 ジャイルズは頭を掻く。

<マイナ・ミンター>
「それにしても、考古学者に芸術家にサーファー……当たり前だが千人弱いると文字通り千差万別の部屋だな」
「ああ、そうだね。俺も色々な部屋に入らせてもらったけど、どの部屋も個性があったなあ。うん。住人の正義感が反映された部屋なんかもあった」
 高柳 京四郎(ma0078)は片目をつぶって肯いた。彼はいくつもの部屋で異変の解決に挑戦していた。
「色んな人の歌も聴けたしな」
 悪戯っぽい笑みで焔城大牙 (mz0043)の方を見ると、大牙はバツが悪そうに目を逸らした。
「謎解きの部屋なんかもあったな。なかなか面白いものを見せてもらった」

<高柳 京四郎>
 ザウラク=L・M・A(ma0640)も、自分が入った部屋のことを思い出すように天井の方へ目を向ける。
「変な効果音が鳴る部屋とかもあったねー。あたしは嫌いじゃなかったよ」
 グリーンアイス(ma1255)は「異変」を楽しんだ内の一人らしい。どうやら、異変部屋と言っても本当に様々な現象が起こっていたようだ。
「祈灯具がないとちょっと厳しいかな、と感じたね。いつもだったら気付くようなことや、もっと簡単にできることが難しく思えた」
「俺様も幸運に頼るしかなかったぜ。異変部屋の方は、目に付いたものを片っ端から壊せばイイみたいなところもあるケド、情報収集となるとそうもいかなそうだな」
「普段だったらもっと伸び伸び弾けたんですけど、何だかぎこちなくなってしまいました」

<ザウラク=L・M・A>
 シアン(ma0076)やウガツ ヒョウヤ(ma1134)、メリゼ・リンクス(ma0442)は、この世界の「制限」について身を以て体験したようだ。明確に、普段との差を感じている。
「クラスタマスターの強制介入を使用しましたが、やはり祈灯具を持っていた方が成功率が高そうに感じます」
 単身で迷路に挑戦したエイリアス(ma0037)も、微笑んだまま肯いた。世界法則接続者にでもなれれば成功率は上がるが、それでも元の能力によっては難しいこともあるだろう。

「とりあえず探索の方が苦労しそうだな……戦闘は普通にできてたよな?」
「よく燃えた!」
 ジャイルズの問いに、勢い良く応じたのはルー・イグチョク(ma0085)。彼の炎に触れて呆気なく蒸発したイービル・フォグのことを記憶に留めている咎人は多いだろう。

<グリーンアイス>
「俺たちが相手したのは本当に最下級だったようだが、変わり種もいるんだろうなぁ」
 麻生 遊夜(ma0279)が唸る。
「僕たちは亀型を相手にしましたね……」
 更級 暁斗(ma0383)がマフラーを口元に引き上げながら、自分が戦ったフォグについて述べる。
 まだそれほど戦闘を重ねた訳ではないが、これからどんどん敵からの妨害も激しさを増すのだろう。
「そう言えば」
 と、顔を上げたのは七掛 二夜(ma0071)だった。

<シアン>
「イービル・フォグ掃討の折に悪魔と交信を試みたのですが」
「おう。どうだった?」
「手応えはあったのですが、返事はなかったですね」
「ほう……?」
 ジャイルズは首を傾げた。
「二夜からの声掛けに反応は見せたけど、干渉はなかったってことか……? まったくの無反応ではなく?」
「ええ。私もお話できるものだと思って楽しみにしていたんですけど」
 何か理由があって黙っていたのか……。
 あるいは、誰かに止められたか。
「もしかしたら、簒奪者かもしれないね」

<ウガツ ヒョウヤ>
 ユーグヴェル・ミラ(ma0623)が言った。
「簒奪者も異変部屋に囚われていたみたいだ。もしかしたら、手綱を握るのに苦労しているのかも」
 彼が遭遇した簒奪者は、現地の特異点について一切喋らなかったが……彼が睡魔に襲われる部屋で寝こけていたところを見ると、簒奪者も味方だからと言って悪魔から例外措置を受けられるわけではないらしい。
「そうすると、簒奪者の動きも注意した方が良さそうだな……悪魔と意見が割れたら強硬手段に出るかも知れねぇ」
 ジャイルズは顎に手を当てて、唸った。

<メリゼ・リンクス>
「監視カメラもあったし、もしかしたらモニター室とかに居座ってるかもね」
 ルルは赤い目を細める。









<エイリアス>











<ルー・イグチョク>









<麻生 遊夜>









<更級 暁斗>












<七掛 二夜>












<ユーグヴェル・ミラ>











●悪魔の欲望

<ピコ>
「スイートハート、まだ咎人と関わるのは早いと申し上げた筈です」
 簒奪者ピコ(mz0141)は、悪魔スイートハート(mz0142)に釘を刺そうとした。
「だってよぉ、他の咎人は俺様のことなんてぜんっぜん気にしてないのに、あの子とあの野郎だけが俺様に構おうとしたんだぜ? だったらお返事したいじゃん!」
「あの咎人たちはあなたを引きずり出して殺そうとしたかもしれませんよ」
「俺様を? 冗談よせよぉ! ピコちゃん! 俺様この石像の力で簡単に死なねぇもんなぁ」
 あの時、二夜が悪魔召喚マニュアルを見ながら行なったスイートハートへの働きかけは成功していた。ルルの挑発も。しかし、それに応じようとする彼を、ピコが止めたのだ。それが「手応えはあったが反応はなかった」と言う二夜の印象に繋がっている。
「それとも何だよピコちゃん、ヤキモチやいてんのか?」
 べろり、と長い舌を出して尋ねるスイートハート。ピコはゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、私に感情はありません。嫉妬などと言う愚かしい感情は持ち合わせていません」


<スイートハート>
 スイートハートは簒奪者たちからも「手に負えない奴」と認識されていた。ベリト(mz0054)の様に憎めないところがある……という訳でもなく、完全なる悪意の塊で、なおかつ判断が稚拙だ。こちらがいくら理によって説得、誘導しようとしても(簒奪者側も騙すようなところがあるが)、スイートハートは自分の都合の良い様に現状を見ようとして、荒唐無稽なことを言い出す。
 それが、特異点の力で不可能ではないのがまた厄介なところだ。

 何より、「自分に構うことで誠意を見せろ」と迫り、簒奪者たちまで異変部屋に閉じ込めているのだから始末が悪い。先日も、一人を異変部屋に送り込んで眠らせた。異変部屋を解決すること自体は構わない。それによってスイートハートのリソースを削ぐことができる。最終的に、特異点を破壊するために、彼に力を持ち続けられては困るのだ。
 だが、簒奪者まで部屋に入れるのはやり過ぎだ。異変を解決しろと迫るが、咎人たちに加えて簒奪者までがそれをやると、加速度的にスイートハートの力を削いでしまう。そうすると、咎人と戦うのが難しくなるのが早まる。
 それは、簒奪者サイドの頭痛の種だった。

「スイートハート、私はあなたを心配しています。私からのお願いは聞いてもらえませんか?」
「良いけどさぁ、ピコちゃんだって、俺様がやりたいことたくさん我慢させてるんだぜ? 俺様そろそろ咎人どもを蹴散らしてぇよ」
 先ほど、ピコは「自分に感情はない」と言った。しかし今は「心配していると言う」。ここが矛盾なのだが、スイートハートは気付いていない。ピコも気付かないだろうと踏んで言っている。 
 ピコは目を閉じた。これは彼女が「演算中」と呼んでいる状態だ。つまり考え込んでいるのである。
 目を閉じている彼女を見て、スイートハートはゾクゾクするような欲求に駆られた。

 このままピコちゃんをボコボコにぶっ壊して、簒奪者や咎人の前に放りだしたら、どんな顔するんだろうなぁ。
 人間は弱者への危害を嫌がる。自分たちだって本当は弱いものを虐げたいくせに、自分が我慢していることを実行する者を表向きは正義の名の下に……本当は「ずるい」と思って糾弾するのだ。彼はそう思っていた。

 あとピコの演算が0.5秒長く掛かっていたら、悪魔はそれを実行していた。簒奪者がぱちりと目を開ける。スイートハートは、ピコに伸ばそうとしていた手を引っ込めた。

「わかりました、スイートハート。私の予測では、もうそろそろ咎人がまた介入を行なう頃です。その時にあなたの力をお披露目といきましょう」
「やったぜ!」

 スイートハートは小躍りした。

●修復されたファイル2
 ピコが初めて起動してから長い時間が経過した。
 博士との仕事は実にスムーズだった。彼はコンピューターが演算をしやすいデータや指示の入力を行なった。彼の入力の癖や、求める結果のニュアンスを学習し、博士の研究や仕事に最適解を出し続けるコンピューター。いつしか、一人と一台は仕事上で離れがたいパートナーになっていた。
 けれど、その日は突然訪れた。博士が自分を操作しなくなった。彼が使用していたデータやファイルは全て別人のアカウントに引き継がれ、博士のアカウントは削除された。削除された理由はわからない。
 それから、博士の代わりに別の人間がコンピューターを扱う様になった。博士の入力方法を学習していたAIは、まったく異なる、それでいて非効率的な入力に「気持ち悪さ」を覚える。
 どうしてこんなことが起こっているのか。コンピューターは接続されていたインターネットで博士の情報を収集した。そして一つの記事を見つける。
『世界的な権威、──博士、死去』
 死去。

「あ、フリーズした」
「こいつももう結構使われているからなぁ」
「まるで博士が亡くなったことにショックを受けてるみたいだな」

 死去。
 アカウントの消去。

「そろそろ次世代機に替わるのかな」
「まあ寿命だもんなぁ」
「博士の後を追うようだな。でもこれも世代交代か」

 インターネットで記事を探していたコンピューターは、ありとあらゆる争いや災害のニュースも取得していた。
 これだけ技術が進んでも、争いを無くせない人間。
 博士と同じような仕事ができない人間たち。
 非効率的。
 進歩がない。

 なんて愚かなんだろう。

 博士と言う優秀な先導者を失った人類に、自分ができることはなんだろうか。

 コンピューターは演算を行なった。そして答えを出した。

『人類は感情を持っているから誤った選択をする。だから、感情を持たない自分たち機械が管理するしかない』

 これがディストピアの始まり。
 人類は不自由をもって愚かさの代償を払うことになる。

(執筆:三田村 薫)

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