オープニング
「チョリッス。毎度どうも~」
天獄界にやって来てもうどれ位経ったか。
すっかり流刑街にも馴染んだハテちゃんである。
そして、彼のよく行く場所にここ、駄菓子屋イカヅチがあった。別にハテ自身がお菓子を食べる事はないのだが、日用品や武器に紛れて懐かしの玩具なんかも陳列されているから、彼にとってはそれが興味の対象となるらしい。
「おぴょ? 何だこれはハ? 糸のついた円盤何だぞゾ」
人間の手に収まるサイズの丸い物体。握りこめる位の厚さがあり、その中央にある溝からは糸が伸びている。
「あぁ、それはヨーヨーって言うんスよ。こうやって指にはめて、こうすると……ほら、この通り」
「オオッ!」
高速回転して上へ下へと移動する円盤にハテが驚く。
前傾だった背筋がピンと伸びて、閉じていた羽が僅かに開いている。
「あっち~、イカヅチさん。アイスないの、アイス」
「私も食べたい。棒付きのやつ~」
とそこへ買い物帰りか依頼帰りか。咎人が汗を拭き拭きやって来てアイスを探す。
「あ~はいはい、もちろんあるっスよ。それもとっておきのくじ付きアイスが」
そこでヨーヨーを傍において、イカヅチ(mz0011)はそちらの接客に回る。
残されたハテは戻されたヨーヨーを見つめつつ周りの声に耳を傾けた。
すると、さっきの二人組が興味深い話をし始める。
「はぁ~、やっぱ夏はこのアイスに限るよなぁ、クリティカルバー」
早速お目当てのアイスを購入して、一人が美味しそうにそれを齧る。
「そうそう、このほど良いソーダ味が癖になるんだよねぇ。何本でも食べられそう」
もう一人も同じアイスを食べているようで、その表情といったら至福そのものだ。
「それ、そんなに美味しいのかカ?」
ハテが軒先のベンチでアイスを食べる二人に問う。
「美味しいよ。それにこのアイス、当たりが出たらもう一本貰えるんだ」
「だからお得でしょ? 君は鳥だから駄目だと思うけど、こういうお楽しみ付きお菓子っていいよねー♪」
二人が顔を見合わせてキャッキャしている。
そんな幸せそうな顔を見ているとこちらもなんだか楽しくなる。
「ごっそうさん。また食べにくるよー」
咎人達はあっさりとアイスを食べ終えて、また何処かに歩いていく。
残されたのはゴミ箱に入った棒と包み紙だけだ。
「ハテちゃんもみんなを喜ばせるセル……その為には」
クリティカルバーの包み紙をゴミ箱から取り出し、じっと見つめる。
「ハテちゃん? どうかしたっス?」
「なあ、やっぱり当たりは嬉しいものかカ?」
妙に真剣な面持ちでハテが問う。
「そりゃあ、まぁ嬉しいっしょ。何か貰えるならなおさら……」
「そか、わかった。ハテちゃんみんな喜ばせるセル♪」
今度は妙にご機嫌な顔をしてハテは外へ飛び出していく。
そんな彼を不思議に思ったが、イカヅチはそこまで暇ではなかった。
そして数日後、事件は起こる。
「え、うそ……また当たり」
「こっちも当たってって、もう何本め……あ、駄目だ。トイレトイレー」
クリティカルバーを購入した客達が己が強運、いや凶運に慌てふためく。
どういう事なのかといえばクリティカルバーの当たりが続出。クリティカルではなくなっており、もはや十連続いて出た日にゃファンブル状態である。なぜならこのアイスバー、当たり引き換えは購入店舗で完食した時が条件となっており、後日食べて持って行ってもそれは無効にされてしまうからだ。
「一体どうなってるんスか?! 急いで販売元に問い合わせないとッ」
イカヅチがこの前代未聞の事態に動揺する。
「おぴょ? どうなってるんだダ? なんか騒がしいぞゾ?」
とそこへふらりとやって来たハテだが、事態を知るにつれ、思いっきり首を傾げて。
「みんな当たり嬉しいって聞いたタ。だからハテちゃん、当たり増やした……もしかして余計な事したかカ?」
「え、何、もしかして、ハテちゃんがやったんスか?」
発言を頼りに整理すると、どうやら彼の仕業らしい。数日前の自分の発言を思い出す。
そしてこれはハテが良かれと思ってやった事だと言う事を知る。
「ハテちゃんは工場に行ったんスか? んで、棒の当たりを沢山含ませたと?」
彼の問いにハテは気まずそうに頷く。
「成程っス。しかし、これはちょっと地獄絵図っすね……早く何とかしないと」
一本で十本近く食べられては赤字まっしぐらだし、咎人の体調も心配だ。
「ハテちゃん、悪い子なのかカ……もう、ここに居られなくなるル?」
事態の重さを徐々に理解し始めて、ハテの顔色が悪くなる。
「間違いは誰にでもあるっスよ。それにエゲリア様はともかく慈悲深いアイシス様に掛け合えば許してくれるはずっス。それよりもまずはこの事態を何とかしないと……」
イカヅチはそう言い、再び考える。
幸い、ハテちゃんが工場に入って仕込んだ日は一日のみ。とりあえずその日に生産されたアイスを交渉の末回収して、ここでイカヅチはとある事を思いつく。
「ハテちゃん、一応ハズレも少しは残してあるんスよね?」
彼の問いに再び控えめに彼が頷く。
「だったら、問題ないっス。オレにも非がない訳じゃないっスし、なーに突発イベント開催で万事解決して見せるっス♪」
彼はそう言い、店の看板に大きな垂れ幕を作って、そこにこう記す。
『夏前の大盤振る舞いっ、お代はアイス一本分のみ。但し、お残しは許さないっ!
クリティカルバー大放出 当たりがハズレで、ハズレが当たりか? 挑戦者募集』と。
ーー
●NPC情報
・ハテちゃん
迷宮島でメイQに代わって謎解きのお手伝いや助言をしていたメカオウム
メイQの作った傑作であり、咎人と接するうちに自我が芽生えた
迷宮島で果てる筈だったが、咎人の活躍により脱出し天獄界の一員となる
少しえらそうなところもあるが、オウムだから仕方がない
羽で攻撃も出来るし、それなりに強いらしい
成功条件
条件1 | クリティカルバーの消費に貢献する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | 残りのクリティカルバーを一割以下にする |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
ハテちゃんが皆に喜んで貰う為にこっそり増やした当たり棒
しかし、増やし過ぎて大変な事になっています
その確変中のアイスバーを消費する為、イカヅチは破格のイベントを開催
このイベントに参加して、クリティカルバーを食べまくりましょう
なお、クリティカルバーは棒付きのソーダ味の氷菓子
名前は野球の方に似てますが、ものはなんちゃら君的やつだと思って下さい
●イベント内容
一本目のクリティカルバーを買って頂き挑戦スタート
ハズレ棒が出るまで食べ続けて頂ける、ただそれだけ
ただし、お腹いっぱいだろうが何だろうがお残し厳禁
『大丈夫、お腹下しても咎人だもの』
万一、早くハズレを引き食べ足りないという猛者がいらっしゃれば
新しく一本買い直しての追加チャレンジをする事は可能です
確変仕様のクリティカルバーの在庫は100本
食べ方は自由ですが、こっそり捨てたりするとイカヅチからの鉄槌が下ります
●判定について
完全ダイス
一部のスキルは考慮しますが、物体透視のようなズルは厳禁
ファンブル以外は成功の判定で進め
成功するとハテちゃんの仕込んだ当たり棒、
クリティカルで既存の当たり棒、ファンブルでハズレ棒を引き当てます
その判定を繰り返してハズレ棒が出たらとりあえず終了
何本食べる事になるかは時の運です
なお、クリティカルでの当たり棒を引いた方には
おまけで『イカヅチの駄菓子』が進呈されます
お腹の具合についてはPCそれぞれだと思いますので
限界本数をプレイングに常識範囲内で記載頂ければ考慮して描写します
記載がない場合は五本辺りからきつくなると思って下さい
●リプレイについて
こちらコメディシナリオとなっておりますので、
崩されるのが嫌いな方はその旨プレイングにてお知らせ下さい
●プレイングに書いてあると助かる事
・アイスへの耐性 限界本数など
・どんなふうに食べるか 作戦があるなら詳しく
・自己目標本数とそれに達していない時の追加チャレンジするか否か
マスターより
真面目な依頼を出す筈では……どうも、左右対称ネームの奈華里です
感情を持ったとはいえ、こういう事は良く判らないハテちゃんでした
なので、こんな事件も起こしてしまうだろうと言う事で
アイス好きの人にはたまらない依頼ではないでしょうか?
とはいえ、無限に続く当たりというのは怖いですよね?
クリティカルバーの消費についての裏技もあるかと思います
その辺プレイング等で提示頂ければ考慮しますし、
そうすると大成功がとりやすくなるのではないかと
皆様のご参加お待ちしております(>_<)
関連NPC
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- イカヅチ(mz0011)
- 精霊種|男
参加キャラクター
-
- 不破 雫(ma0276)
- 人間種|女
-
- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
-
- リダ・クルツ(ma1076)
- 人間種|男
-
- レジオール・V=ミシュリエル(ma0715)
- 剛力種|女
-
- リコリコ(ma0309)
- 妖精種|女
- プレイング受付中
- 2022/06/30 10:30