オープニング
幽体になる超能力の持ち主である少女が彼の元を訪れ言う。
今にも消えそうだった彼女の超能力であるが、少女自身の体力が戻るにつれて幽体の方も安定し、まだこうやって会う事が出来ていたりする。
「仲いいねー、トラ。いつから幼女趣味になったのかな~?」
茶化すように彼の一番の友人が虎侍に言う。
「誰が幼女趣味だよ。こいつが勝手に押しかけてくるから」
「あーひっどぉい。あの時はすごく心配してくれたのにぃ」
宙に浮いた状態で少女が頬を膨らませた。そんなやり取りに和んだのも束の間、話を蝙蝠に戻し問題の所に偵察をかけてみれば、その途中虎侍にとっては忘れもしない、あの顔に遭遇する。
(なんで、アイツが)
それは天獄機関の一員ではあった男。だが、やる事はゴロツキ同然。そんな彼に虎侍も目を付けられて、今目の前にいる友人が瀕死に陥った記憶は未だに脳裏に焼き付いている。
「どうしたの、トラ? 顔色が悪いようだけど」
「はな、お前はもう蝙蝠を追うな。お前も当分ここから出るなッ、いいか絶対だぞ」
いつになく声を荒らげて、慌てた様子で彼が飛び出す。
(くそっ、神来寺だけでも厄介だっつーのに……俺には死神でもついてるのかよッ)
だとしたら、仲間達を巻き込む訳にはいかない。またあんな光景を見るのは辛過ぎる。
虎侍はその想いに駆られて、後先が見えてはいなかった。
「ン? お前どっかで見た顔だなぁ……何だったっけか?」
男が虎侍に気付き、面倒臭げに振り返る。
「テメェこそ何でここにいんだよ。刑務所にいたんじゃなかったのかよ?」
それに負けじと虎侍が言い返す。
「あぁ、いたよ、いたいた。少し前までナァ。けど舞い戻った。何の為か判るかァ金髪マダラ? テメェを八つ裂きにする為だ……正直、そっちから顔出すとは思ってなかったが、ちょうどいい。今までの分、きっちり返してやるゼ」
すくりと立ち上がり、男が不気味に笑う。
彼の名は夜霧 音――超音波を駆使して、こちらの動きを封じてくる超能力者だ。
だから、先手必勝とばかりに虎侍が動く。
最近作れるようになった小型のミニ4車。それは消しゴムサイズであるが、素材を金属にし軽く助走をつけ飛ばす事でピッチングマシン程のスピードは出す事が可能だ。しかし、それを以てしても虎侍の攻撃が彼に届かなかった。なぜなら、突如現れた蝙蝠の大群が彼への攻撃を阻んだのだ。
「へぇ、あの時よりはやる気出てんじゃネェか。しかしなぁ、本気で殺しにくるつもりなら話しかけるべきじゃあない……狂気は腹に溜めて、密かに出すもんだ。ヒーロー気取りか何だか知らネェが、正々堂々なんて今時流行んねぇんだよ」
音はそう言い、虎侍のミニ4車を防いだ蝙蝠達に指示を出す。
「チッ、何だってこんな」
「おっと動くんじゃあネェぞ」
その言葉に虎侍は頭を殴打されたような衝撃。この感覚には覚えがあり、それが音の超音波によるものだと悟る。しかし、それにしてもあの時とは格段に威力が上がっていて、一撃が重い。けれど、虎侍だって意地がある。どういう訳か音の命令で襲ってくる蝙蝠達を払い除け、距離を取ろうと走り出す。だが、虎侍を襲う蝙蝠は一体ではないし、これらの蝙蝠は合体の技を有していて。
「グッ……ッ、カハッ!?」
蝙蝠達が人型を形成し、虎侍を首から掴み上げる。地面から足が離れると、途端に息が出来なくなって、意識を保つのが難しい。
「ひゃははっ、いいネェその顔。けど、すぐには殺さないゼ、あの異世界人共にもてめぇがもがくさま見せてや……」
「虎侍を離して―――ッ!」
とそこへやってきたのはあの少女だった。もちろん幽体ではあるが、果敢にも蝙蝠の人型に飛び込みコアを抜き取ろうとしている。
「あぁ? なんだテメェは、邪魔してんじゃネェよ」
ひゅっと小さく口笛を吹くようなしぐさを見せて音が彼女を弾き飛ばし、あっさりと花の幽体が霧散する。
(俺のせいで、また……こんな)
「音、お前だけは許さねぇっ!」
虎侍が怒りに任せて、瞬時に残り二台の小型ミニ4車を形成し、自分を掴む人型に撃ち込む。一台はかろうじてコアを掠ったのか形を崩し、それによって何とか虎侍はその拘束からは逃れる事が出来る。しかし、
「動くなっつってんだろうがよォ!」
音がいつの間にか距離を詰め、虎侍の鳩尾に拳を食らわせる。
(あぁ……おれ、何やってんだ、ろ……)
その一撃に虎侍はあえなく崩れ落ちた。
「いい加減助けを呼べや。お前のお友達なんだろう、あいつらは?」
柱に磔にし、終始虎侍の血を蝙蝠達に吸血させつつ音が言う。
しかし、勿論の事彼の言いなりになるなんてまっぴらで、虎侍は無言のままそれに耐える。
「強情な奴だなァ、もしかして死にてぇとか?」
吸血でぎりぎりまで体力を削がれて、死ぬのが怖くないのかと聞かれれば怖いものなのだろうが、こんな状態であれば何だか眠るように逝けそうだと思ってしまう。そんな腑抜けの彼に飽きてきたのか、音は食糧調達にその場所を離れる。
(はは、焼きが回ってきたな……俺も)
家族は天獄事変で亡くしているから天涯孤独。今自分がいなくなっても世界は回る筈だ。
(だけど、このまま逝ったら俺の為に動いてくれたあいつらは?)
「あぁ、くそ……だりィ」
昔から身体だけは頑丈だったからか、まだ何とか気力は残っていた。
しかし、腕のロープを外す事は叶いそうにない。
(つくづく俺は馬鹿だよな……一人で突っ走って、裏目ばかり)
「虎侍さん、大丈夫ですか?」
そこで届いた声にハッと顔を上げれば、花が再び彼を見つけやってくる。
「馬鹿、ここは危険だ……早く帰」
「大丈夫です。もうすぐ咎人さんが来るから、それまでの我慢っ、きゃあぁ!」
出て行ったと見せかけて、隠れていたのか音が再び花を霧散させ、虎侍を柱から引き剥がす。
「何処連れてくつもりだよ」
「あぁ、そりゃ決まってんだろ。お前の友達を出迎える為の最高の場所だ」
音はそう言い、虎侍を連れ出した先は巨大お化け屋敷だった。
そして、入口にはこんな貼り紙をつけ、咎人の到着を待つ。
『金髪マダラのお友達に告ぐ。あいつはこの中にいる。助けたくば一人ずつ入ってこい。
そうだな、前との間隔は十分程度空けて貰おうか。もしルールを守らなければあいつは死ぬ。
とはいえ時間がかかってもヤバイがなぁ。ま、真夏のワクワクお化け屋敷だ。存分に楽しんでくれ』
成功条件
条件1 | 虎侍の救出 |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | 蝙蝠エネミーのコアを三個以上破壊 |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
蝙蝠エネミーを追っていた筈の虎侍が目にしたのはなんとあの夜霧 音
因縁のある相手に虎侍は動揺するも、相手が超能力者であるなら自分も同じと駆け出します
しかし、音には強力な助っ人がついていました それがあの蝙蝠エネミー達
超音波同士同調したのか、細かい経緯は判りませんが蝙蝠達は音のいう事を聞いているようです
そんな事とは露知らず返り討ちに遭い、あろう事か捕まってしまった虎侍
咎人にも恨みを持っている音は虎侍をダシに復讐を狙っています
ここは指示通りにしつつ、まずは虎侍の救出を最優先にお願い致します
なお、小型のミニ4車が作れるようになった事に関してはPC情報として扱って頂いて構いません
●現場情報
虎侍の捕らわれている場所は少女からの連絡で
廃遊園地の巨大お化け屋敷である事が判明
このお化け屋敷は屋内型で大型病院を模して造られ、三階まで存在する
一階は一般外来に、急患受付や手術室などが配置され
二階と三階は一般病棟や小児科病棟がある
ただ、昔は監獄病院として使われていたという設定から
所々に鉄格子があったり、窓のない部屋があったりとかなり不気味
ほぼ一方通行だが、当然スタッフ用とリタイア用の通路は存在する
中は当時の装飾のままであるが、電気がきていない為動く仕掛けは停止している
虎侍の居場所は不明だが、彼の事だからただ待っているという事はない筈だ
●蝙蝠エネミーについて
小さい個体が集まって人型を形成するが、状況によって分解し攻撃を回避
コアを持った個体を倒す事で再構築を防ぐ事が出来る
超音波による命中低下や吸血による直接ライフへのダメージの他
引っかくなどの攻撃は数の暴力により侮りがたい 光が苦手
【補足】
こちら連作シリーズ物となっており、こちらのみでも楽しめるかと思いますが
「学校再開への道のり」がつくシナリオおよびピックアップしているシナリオに
目を通して頂く事でより敵の情報や立ち回りの組み立てに役立つかもしれません
マスターより
原点回帰、という訳ではないですが……帰ってきた悪役・音です
お絵描きメーカーで姿絵を作った事により、結構ノリノリで書いております
ご挨拶が遅れました 左右対称ネームマスター・奈華里です
虎侍も成長しているのですが、新技が刺さらなかったのはうーん、残念
でも頑張ろうとする彼にどうかお力をお貸し下さい
皆様のご参加、お待ちしています(^^)
なお、音の超能力に関してはOP描写にあるように前回よりもパワーアップしています
彼にエンカウントした場合、隠れたスキルがリプレイで登場する可能性がありますので、どうぞご注意下さいませ
そして、字数カツカツによりNPC情報を入れられず、ご不便おかけしてすみません
関連NPC
-
- 轟 虎侍(mz0072)
- 人間種|男
参加キャラクター
-
- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
-
- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
-
- レジオール・V=ミシュリエル(ma0715)
- 剛力種|女
-
- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
-
- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
- リプレイ公開中