オープニング
この一件は、ツインフィールズでも激震が走った。
反マフィアを掲げる友愛騎士団がマフィアのボスであるウォルターを追い詰めた。この事実は、マフィアに虐げられてきた市民からは受け入れられる。一方、イーストサイドを始めとするアンダーソンファミリーのシマに住む市民は、敬愛するボスが襲撃された事による驚きと不安が入り交じっていた。
ボスであるウォルターが倒れた今、アンダーソンファミリーは誰が舵を取るのか。
今、ツインフィールズは大きな岐路に立たされていた。
「いらっしゃいましたね」
「…………」
ツインフィールズ教会のシスターアンジェラは約束の時間に現れたリカルド・マエストリ(mz0056)を迎え入れる。
今日は密談の為に教会の一室を貸し出す。それは許されない事なのかもしれない。だが、今のツインフィールズが不穏な空気に包まれていると感じるシスターアンジェラは、リカルドの申し出を受ける事にした。
「……あいつは?」
「もういらしてます」
シスターアンジェラの案内された一室に足を踏み入れたリカルド。
目の前には先に到着していたカークランドファミリーのボス、ダン・カークランドの姿があった。
「来たな」
「…………」
ダンに促されるよりも前に、リカルドは椅子に腰掛けた。
ダンはジャパンシアターの襲撃以来、身を隠していた。この間に友愛騎士団がカークランドファミリー攻撃し、警察が次々とファミリーの面々を逮捕。カークランドファミリー自体は存在するが、闇に隠れながら活動する状況へ陥っている。
「ボスはどうだ?」
「……叔父貴は、まだ目を醒まさない」
会って早々、ダンはウォルターの容態を案じた。
簒奪者のエディ・ジャクソン()に刺されたウォルターは、咎人の奮戦で命は取り留めた。しかし、目を醒ます気配はなく昏睡状態が続いている。病院へ入院している状況だが、回復の傾向は見られない。
「……真っ先に叔父貴を心配するのだな」
「今、アンダーソンファミリーが潰れれば連中の望み通りになる。それだけは避けてぇんだ」
ダンは視線を外しながら呟いた。
カークランドファミリーもアンダーソンファミリーも機能不全の状況は、反マフィア勢力にとって好ましい状況だ。このままマフィアを撲滅すれば、逆らう者はいなくなる。一見、平和な日常が送れるようにも感じられるが、リカルドが引っかかるのはエディの存在だ。簒奪者であるエディが反マフィアに協力するのは何故か? リカルドへの嫌がらせだけとは思えない。
「リカルド。お前、アンダーソンファミリーを引き継ぐ気はあるのか?」
「……ない。俺は、マエストリファミリーのボスだ。引き継ぐ資格ない。お前はどうなんだ?」
「同じだよ。カークランドファミリーに付いてきた連中を見捨てる訳にはいかねぇからな」
リカルドもダンもウォルターの代わりにファミリーの代理ボスになるには抵抗がある。
特にリカルドは咎人だ。見知った顔があり、構成員に慕われていたとしてもボスの器になるには抵抗がある。一方、ダンもアンダーソンファミリーを離れた身だ。信じて付いてきた仲間を考えれば、アンダーソンファミリーへ戻る事は難しい。
「アンダーソンファミリーを誰かが引っ張らなけりゃ、反撃もできねぇぞ」
「……一人、心当たりがある」
「ジュニアか」
ジュニア。
ダンがその言葉を口にした瞬間、再び部屋の扉が開く。
そこにはシスターアンジェラへ案内されて姿を見せた男がいた。
「最初に言っておくが、俺は親父のファミリーを継がない。引き継げる訳がない」
それがウォルターの息子であるジュニア――捜査官マット・マートンの第一声だった。
●
「失礼ですが、ハナ・コムラサキさんですか?」
「え? あ、はい」
ツインフィールズトリビューンの記者、ハナ・コムラサキは教会近くで話し掛けられた。
今からマットに呼び出されて教会へ向かう最中なのだが、目の前にいる黒いスーツの男に見覚えはない。
「あの、どなたでしょうか?」
「あー。私はタカツと申します。マット君の元上司です」
「という事は、刑事さんですか?」
「ええ、殺人課の」
タカツと名乗った刑事によれば、現在友愛騎士団が引き起こした殺人事件について捜査しているらしい。
記者であるハナにとっては興味深い話だ。
「騎士団の捜査ですか」
「いやー、実に厄介な話です。ハナさんもマット君から呼び出されたのでしょう? 私も同行させて下さい」
タカツがにこやかに微笑みかける。
声だけ聞けば甘い声なのだが、どうにも胡散臭さを感じてしまう。
「ところで、ハナさん。ランディ・スタンリッジ議員について調査されたのでしょう?」
「はい。同じ会議に呼ばれているのであれば、後でご説明できると思います。彼の想い描く町の未来が」
「そうですか。興味深い」
「タカツさんは何故、呼ばれたのですか?」
「それは……」
「タカツさーーん!」
タカツの言葉を遮って、教会前にいる男が大声で叫ぶ。
デコの広く、ヨレヨレのスーツを着た男。おそらくタカツと同じ刑事なのだろうが、かなり頼りない。
「うるさい。人の名前を大声で叫ぶんじゃない」
タカツは男の額を叩く。
ペチンという心地良い音が響く。
「だって、タカツさんが連絡くれないから」
「ご婦人の前で……。あ、ハナさん。こいつはチャーリー君です。気持ち悪いでしょ? 無視して下さい。マット君の依頼で現在の捜査状況をお教え致します。記事にはしないでくださいね」
「た、タカツさーーん」
ハナを連れてタカツは教会へと入っていく。
チャーリーは情けない声を上げながら、後へとついていった。
成功条件
条件1 | アンダーソンファミリーの代理ボスを決める |
---|---|
条件2 | ハナとタカツから情報を仕入れる |
条件3 | - |
解 説
概要:
ウォルター・アンダーソンが襲撃された。咎人の尽力で命は取り留めたが、エディ・ジャクソンが使ったナイフには何らかの仕掛けがあったらしく、昏睡状態が続いている。カークランドファミリーが機能不全状態となり、アンダーソンファミリーはボスが昏睡状態となればツインフィールズのマフィア全体に影響が出る。シマの住民は不安に怯える裏で、反マフィア勢力が日に日に力を増している。そこでダンはリカルドへ連絡。アンダーソンファミリーの立て直しについて相談を持ちかけていた。ウォルターが戻るまで、代理ボスを立てる。その話し合いに呼ばれたのはウォルターの息子であり、父親に反発して家を出た息子のマット・マートンであった。
同時刻、ハナ・コムラサキは教会近くで刑事のタカツと遭遇していた。二人はマットに依頼されて現状手にした情報を関係者へ開示して欲しいというものであった。
備考:
アンダーソンファミリーの存続について代理ボスをどうするか話し合います。
現状、代理ボスの候補は下記三名です。
参加される方は組織の立て直しについて提案できます。
・リカルド・マエストリ
・ダン・カークランド
・マット・マートン
リカルドは咎人である事、マエストリファミリー再興を考えている為に乗り気ではありません。
ダンは一度アンダーソンファミリーを離反している事、付いてきた仲間に申し訳ないと考えています
マットは現状捜査官であり、こうしてマフィアと接触している事も問題となります。
本人が覚悟決めて代理ボスになる事、ファミリーに残る者が受け入れてくれる事がファミリー存続のポイントです。
なお、本来であれば『マフィアの掟』としてウォルターの血を引き継ぐマットに優先権があります。
ハナはランディ議員の調査、タカツは騎士団の調査について報告してくれます。
また彼らに質問も可能ですが、答えられる範囲となります。
マスターより
近藤豊です。
教会の一室で関係者を集めての話し合いになります。ファリフも呼び出せば現れますが、マフィア関連の話はさっぱり知りません。また、ハナもタカツもここで得た情報を現時点は利用しないという事を約束してくれています。
タカツの部下のチャーリー君は、普段使えない人材ですが、タカツ曰く『あれはあれで使い道がある』との事です。
それでは、ミートローフを肴にお待ちしております。
関連NPC
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- リカルド・マエストリ(mz0056)
- 人間種|男
参加キャラクター
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- マイナ・ミンター(ma0717)
- 人間種|女
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- 如月 朱烙(ma0627)
- 人間種|女
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- シャハエル(ma1209)
- 神魔種|男
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- リダ・クルツ(ma1076)
- 人間種|男
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- マルコム・レーナルト(ma0971)
- 獣人種|男
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- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
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- マリエル(ma0991)
- 機械種|女
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
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- 天魔(ma0247)
- 神魔種|男
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- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
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- 桜庭愛(ma1036)
- 人間種|女
- リプレイ公開中