オープニング
飛剣天仁は茶店の前に置かれた縁台に腰を下ろし、よく冷えた茶で喉を潤していた。
「ここはいい」
気が休まる、と天仁は呟いた。
凪いだ気持ちになりはするが、それとともに沸々と湧いてくる罪悪感にも襲われる。この正体を思い出せないことが幸せなのかどうかさえもわからない。
咎人とはそういうものだと聞かされたが、同時に大切なものでさえ憶えていないのだから幸せとはなんぞ、という気持ちにもなる。
「そうだ。せっかくだから」
脇に置いた紙袋からごそごそと取り出したのは花火の束。こよりの先に火薬を仕込み、点火するとぱちぱちと踊るように弾ける火の華。変化する火花を一頻り楽しみ、ぽとりと地面に落ちていく火の玉を見送る際はなんともいえない郷愁に囚われて……たまらない気持ちになる。
「そこがいいんだがな」
小さく笑いながら花火の準備を始めていると人の気配を感じた。
「珍しいな」
これといった特徴のない長屋や町家が並んでいるだけの浮島だ。はて、誰だろうと音のする方へ目をやると咎人の姿が見えた。
訪ね人は天仁が持つ線香花火を見て、仲間に入ってもいいかと訊いてきた。
「もちろんだ。派手な花火じゃないが、火の玉をじっとみつめているとなにか思い出せそうでつい夢中になるんだ」
なにか思い出せたのかと問われたが、天仁は苦笑うだけだった。
「茶でも飲みながら、花火を眺めるとしようか」
縁台を叩いた天仁に従い、訪ね人の咎人は横へ腰をおろす。
「話を聞くぐらいはできるぞ」
すでに天仁の線香花火には火が点いていて、ぱちぱちと綺麗な花を咲かせていた。
差し出された花火を受け取り、咎人も火を点けた。
今なら、くだらない話やバカな話をしても平気な気がすると咎人の口が開く。
線香花火をみつめながら始まった話題は、他人からすれば無価値かもしれないが、この浮島ではとても大切で価値のあるものへと変わるのだ。
成功条件
条件1 | 浮遊島で安息の時間を過ごす |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
1人語りがメインのシナリオです。
天仁がとても気に入り大切にしている浮島で、地味だけどほっこりする線香花火を眺めながら「他愛のない話」をする。
その話題は、自分がこれまでで一番活躍した戦闘でもいいですし、大切に思っている誰か(咎人の仲間でも、思い出せない過去の記憶の中の誰か)への思いを吐露しても構いません。
プレイングに記載してほしいこと。
1:1人語りの内容(PCの思いは詳細に記載されていると嬉しいです)
2:飛剣天仁への、聞き役に徹してほしい、多少の会話はしてほしい、がっつりやりとりしたい等NPCとしての彼の立ち位置。記載がなければMS裁量で判断いたしますが基本聞き役です。
注意1:プレイング内に相手の名前が記載されていても、リプレイには反映されないことをご了承ください。リプレイでの描写についてPCさんから「○○(←“彼”“彼女”“優しいひと”など名前以外のもの)」と呼称してほしいという指示があればそちらで描写します。指示が無ければMS裁量で呼称いたします。
注意2:咎人は記憶をなくしている存在ですので、この『過去の記憶の誰か』というのは具体的なものはなく、胸の中にある違和感だったりちょっとした出来事への郷愁・切なさや愛しさなんかを指します。もちろん人も指しますが、注意1に書いたように具体的な名前を描写することはできません。
注意3:1人語りしながら浮島(町の中)を散歩するのはOKです。ただし文字数の関係上、花火をしているシーンの描写が含まれない可能性はあります。
浮島の特徴:時代劇に出てくる町家が建ち並ぶ風景。狭くもなく広くもないちょうどいい広さで危険な生物に襲われる心配もありません。ほとんど人も訪れない天仁のお気に入りの場所。
マスターより
時代劇のオープンセットといえば太秦映画村世代です。さて、そんなニッチな場所での1人語り系シナリオとなります。天仁にただただ聞いてほしい、一緒に浸ってほしい、1人語りもいいけど花火も楽しみたいよねというPC様の方々、よろしくお願いいたします。
関連NPC
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- 飛剣 天仁(mz0020)
- 異能種|男
参加キャラクター
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- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
- リプレイ公開中