EXシナリオ: このシナリオはEXシナリオに設定されています。
参加料金が加算されていますが、リプレイの文字数が下限、上限共に2倍となります。

オープニング

●心うつろう、朝に流れゆく霞のように

　流刑街。
　そこは『咎人』と呼ばれる死者達の住まう地に与えられた名。
　住民の中には「流刑とはなんとも不名誉な名ではないか」と考える者もいるが、咎人は何らかの咎を背負っているがゆえにこの世界に縁ができてしまっているようだ。
　結局街の名は変わることなく、今日も咎持つ人々が賑やかな街を往来している――。

　そんなある日、あなたは夏の残り香のような熱気に少しばかり早く目を覚ました。
　街のネオンはちらちらと輝いている……神殿が開くまではまだ時間があるだろうと、あなたは寝間着のまま窓を開けた。
　――目の前にはミルク色の霞。
　それはあなたの記憶を彷彿とさせる、壁のような色。
「……」
　咎人の多くは生前の記憶が欠落している。
　中には複数の世界線にいる人物のひとりであり、過去の英雄とは別人であると自覚している者もいるぐらいだ。
　自分が何者か完全に確信できている者はおそらくほんの一握りしかいないだろう。
　だからあなたは窓から目を逸らし、姿見に視線を移した。
　――今の自分。これは果たして正しい姿なのだろうか。
　もっとも、正しくなかったとしても『正しい誰か』の記憶や肉体が都合よく手に入ることなどないのだけれど。
　部屋に音もなく――静かに霞が流れ込んでくる。
　いずれは太陽が昇れば消えていく運命の癖に、奔放なものだ。
　あなたは苦笑すると窓を閉め、再度布団に潜りこんだ。
　結局は――自分は、自分でしかない。

●空虚、刹那、哀愁

　夏はもう少しで終わる。
　あなたは依頼を終えた時、頬を撫でる風の涼やかさにそう実感した。
　もうしばらくすればあのミルク色の霞も姿を消すのだろう。
　そうすれば――心が痛むことは少なくなるかもしれない。
　と、その時。白い子犬の少女が街角の小さな公園で歌を披露していた。
　それは夏の終わりを告げるさよならとおやすみの歌。
　少女は時が流れることに寂しさを覚えても、心揺らす郷愁に歌声を鈍らせることはないらしい。
　拍手の中で白い子犬は一礼し、友人である黒い子犬が日日草の花束を聴衆に配り始める。
　たしか日日草の花言葉は――『楽しい思い出』だったか。
　そうだ、この世界に来てから確かに全てが悪いことばかりではなかったように思える。
　それなら――あなたは過去と向き合うか、それとも過去を振り切って前に進むか、それともどちらも叶えて我が道を見つけるか。
　そのどれかを掴むために、夕焼けの道を歩き出した。

成功条件

条件1	心の霞に触れる
条件2	-
条件3	-

大成功条件

条件1	心の霞に何らかの答えを見つける
条件2	-
条件3	-

解　説

毎月恒例！　フリーアタックイベントシナリオです。
諸事情により公開が遅くなりまして申し訳ありません！

今回はちょっとアンニュイなシナリオです。
舞台は天獄界。流刑街はもちろん、戦闘要素のない平穏な浮遊島でも物語を綴れます。
咎人が失った記憶は完全に追体験することは無理でも、想いを馳せることはできるはず。
過去と向き合って答えを導き出す努力はどなたでも試みることができるのではないでしょうか。
また、お友達やパートナーと絆を深めることで今の生きる意味を確かめ、今の自分をもっと好きになるという道も選べると思います。
ご自宅で、外出先で、依頼の現場で――あなたの今と過去、これから、色々なことを教えてください。
それが独り言や夢の断片、他愛のない言葉の連なりでも大きな意味を持つはずです。

また、同行者がいらっしゃる場合は迷子防止のため必ずお相手の名前をプレイングに記述願います。
一人ぼっちになってしまうと寂しいので……。
多人数でのご参加の場合はタグをご利用くだされば、一つの章でまとめて描写いたしますのでお気軽にどうぞ！

NPCについてはフィー・フローレとステラ・フローライトとフリーデリーケ・カレンベルクがいます。
いずれもお声をかけていただければ喜んでお付き合いしますので、よろしくお願いします。

それでは良き晩夏をお楽しみください。

マスターより

いつも大変お世話になっております、ことねです！
最近糖度高すぎたので、咎人さまの原点に立ち返るシナリオを提供したく執筆いたしました。
咎人と一言で括っても、様々な人生があったはず。
それが幸せなものでも、満たされないものでも、本人が願っていなかった道程であっても。
それでもこれから歩む道によって、新しい自分が見えてくるかもしれません。
お気軽にご参加くださいませ。
皆様のご参加、楽しみにお待ちしております！