北極星~第二楽章~
近藤豊
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シナリオ形態
ショート
難易度
Easy
判定方法
カジュアル
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100 SC
参加人数
1人~2人
優先抽選
50 SC
報酬
600 EXP
12,000 GOLD
12 FAVOR
相談期間
1日
抽選締切
2022/09/29 10:30
プレイング締切
2022/09/30 10:30
リプレイ完成予定
2022/10/12
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. -
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ

オープニング

 この世は、一人で生まれて一人で死んでいく。
 恋人が、愛する者ができても。
 死ぬ時は、独りぼっちだ。
 
 新聞記事が掻き立てても。
 映画や歌が、如何に愛を叫んでも。
 それは絵空事。現実じゃない。
 
 歌もそうだ。
 楽曲に指示された感情を込めて歌っても、それは自分の感情じゃない。
 指示された感情を込めて歌うだけ。
 私からすれば、口から音を生じさせているのと同義だ。

 空虚。
 すべては偽物。
 真実など、この世には何もない。


 違法酒場「スピークイージー」を訪れたあなた。
 マスターのシーツからいつもように仕事を斡旋されるが、今回の依頼はあまりにも「異色」だった。
 その証拠に、シーツの顔色はいつも以上に疲れ切っている。
「ふぅ。何だかなぁ。説明するのも難しいんだが……お前さん、芝居はできるか?」
 芝居。
 あなたも知識では知っている。何せ、この町は映画の町でもある。ツインフィールズ南部にある撮影所では、今でも映画が毎日のように撮影されている。
 しかし、この質問は今の状況ではあまりにも場違いだ。
 あなたは思わず怪訝そうな顔を浮かべる。
「ああ、何も揶揄っている訳じゃないんだ。
 先日、ポーラスターを護衛してくれただろう。そこで彼女が抱える物を知ったと思うが、その結果を聞いたうちの幹部が……その……言い難いんだが、彼女に映画の主題歌を歌わせたいって言い出したんだ」
 アンダーソンファミリーの幹部が突飛も無い事を言い出したらしい。
 だが、その気持ちは理解できる。
 歌姫のポーラスターは、歌に込められた感情を「楽曲を製作した者が抱いた感情を借りているだけ」と表現した。つまり、彼女自身は自分の物ではない借り物の感情で歌っているに過ぎない。
 借り物の感情である以上、自分で歌を歌ってはいない。そう考えたようだ。
 芝居などであれば脚本家や演出家が決めた役に合わせて演じれば良い。その感情が偽りだったとしても、作品を築き上げるには必要な事だ。
 だが、ポーラスターはそうではない。楽曲を歌うならば、自分の感情で歌いたい。
 自分の感情で歌えば良いだけなのだが、彼女によればそれは楽曲製作者の感情。自分の感情ではないという。記者の取材攻勢で心が壊れたポーラスターは、自分以外の物が偽りに見えている。他人の曲に自分の感情を乗せて歌えなくなっているのだ。
「ややこしい話だが……早い話、ポーラスター自身が楽曲を製作すれば済む話だ。そこで幹部は映画製作に乗り出したんだ。歌手一人の為に映画を作るなんて、景気のいい話だ」
 あまりに突飛な話に、あなたは内心呆れていた。
 だが、幹部は本気らしい。アンダーソンファミリーボス代理も『ニューツインフィールズ計画はそのうち映画の表現規制に乗り出す恐れもある。今のうちに注目を集める映画を興行するのは賛成』と言っている。
 ポーラスターは歌が嫌いになっていないからこそ、場末の酒場で歌っている。一度問題が解決すれば、他人の歌も自分で納得して歌えるはずだ。
 今回、プロモーションと称して映画の主題歌をポーラスターに任せた。最初は渋っていたポーラスターも幹部が『自分の感情で歌うチャンスだ』と説得して承諾させたようだ。彼女自身が主導する形で楽曲を作る事ができれば、歌手として再起が図れるかもしれない。
「かなり強引な説得だったんだが……問題は、ここからだ。
 あらすじは概ね決まっているんだが、彼女に楽曲を作らせるには彼女が今回の映画で感情移入できなけりゃならない。しかし、脚本家がポーラスターの心に刺さるようなセリフが生み出せないらしいんだ」
 シーツによれば脚本で大きな問題を抱えている。
 今回、ポーラスターは映画の撮影シーンを見学した上で、主題歌の製作に入る。つまり、『彼女の感情を込めて歌を製作するには、彼女自身の感情を強く引き出さなければならない』。映画に強い感情移入をさせた上、説得力のあるセリフを彼女に提示する必要がある。
 しかし、今回の脚本家にその荷はあまりにも勝ちすぎた。時間が刻一刻と迫る中、未だに会心のセリフが生み出せないらしい。
「脚本家を変える時間は無い。
 そこで、だ。ポーラスターが見学する中で、彼女の感情に訴えかけるセリフを考えて演出して欲しい。シーンや配役はある程度融通を利かせられる。彼女が到着する前に彼女と相談して決めてくれ。
 重要な事は、彼女の胸の内を如何に引き出せるか。そして、その感情にどういう感情をぶつけるかだ」
 ポーラスターは、偽りの感情で歌う事で一種の拒否反応を示している。
 それに対して効果的なシーンとセリフを考え、彼女に自分の感情を自覚させなければならない。
 荒唐無稽な依頼ではあるが、シーツの顔を見ればかなり大真面目なようだ。
「こんなのは、マフィアの仕事じゃねぇんだけどな。
 しかし、困ったもんだ。記者の連中が、儲ける為に好き勝手に記事を書いた。その結果、彼女は他人どころか自分も信じられなくなった。それだけじゃねぇ。映画も歌も、全部偽物だって言い切っちまってる」
 あなたは、気付く。
 ポーラスターはメディアに心を壊された。
 そして、誰も信じられなくなった。
 助けてくれる幹部には頼るが、何も変わらなければ彼女はその幹部も信じられなくなって姿を消すだろう。
 最初から、何もなかったかのように。
「彼女を立ち直らせてくれとは言わねぇ。だが、彼女が立ち上がる手伝いをしてやって欲しいんだ」
 

 ――撮影現場。
 あなたが現場で監督と打ち合わせる中、あなたの目にある女性が飛び込んだ。
 覇気がなく、明らかに感情を殺した女性。
 まるで何かを諦めている表情が印象的だ。
 これが、あの大きな舞台で人々を感動させた歌姫ポーラスターだと説明されなければ、信じられなかったかもしれない。
「…………」
「ポ、ポーラスターさん。こちらへどうぞ」
 助監督らしき男性が、ポーラスターに椅子を差し出した。
 ポーラスターは言われるがまま、椅子に腰掛ける。
 未だ、その目に色は灯る事は無い。
 
 だが、それも今だけだ。
 必ず準備したこのシーンで、ポーラスターを動かしてみせる。
 伝説の歌姫は、今日ここで復活する。

成功条件

条件1ポーラスターに楽曲を製作させる
条件2-
条件3-

解 説

映画『それでも私は、舞台に立つ』あらすじ:
カンザスの田舎から出て来た少女は、女優になるべくツインフィールズへやってきた。彼女は女優を夢見た訳じゃない。ただ、『演じる事が極端に上手いが、それ以外は破滅的に何もできない事』を理由に、女優業を選ぶ他無かったからだ。オーディションを受ける中、ある映画監督は彼女の素質に気付く。
彼女をスカウトした映画監督は、彼女を敢えて様々な現場へ放り込んだ。彼女は感覚的に他人の感情を表現する事に長けたが、役に込められた意図や人間性を十分に理解できていなかった。何より、女優としてのプライドはまだ育っていなかった。放り込まれた現場で、少女は学び成長していく。そして、彼女は女優という仕事を通じて人の中にある業や闇、夢や希望を目の当たりにする事になる。

備考:
・本シナリオはフリーアタック系シナリオですが、特殊なシナリオになります。
・基本ベースのあらすじの中で、肝となりそうなシーンを考えて下さい。その上で、咎人自身がそのシーンを演出すると共にポーラスターを感情移入させる台詞をお願いします。
・上記あらすじから多少外れても、脚本家が強引にねじ込んでくれます。
・ツインフィールズの映画業界は技術的に優れている為、CGも活用可能です。
・指定シーンで必要な役者や道具は監督やスタッフが準備します。
・出演も可能です。主人公とスカウトする映画監督は無名の俳優が演じる為、咎人は演じられません。
・ポーラスターは基本的に無気力で元気のない女性です。歌唱力は高いですが、自身の歌に納得できていません。
・撮影場所はツインフィールズ映画撮影所内のセットです。事故現場シーンなども可能です。

マスターより

近藤豊です。
オルメタ一人依頼『北極星』の続編です。ポーラスターはただ歌えないだけではなく、他人の楽曲に自身の感情を乗せて歌えなくなっています。ポーラスターは一種の天才であるのですが、記者のメディア攻勢で心が壊れて信じるべき物を見失っています。映画製作を通して如何に彼女を惹き付け、気持ちを理解するかが依頼のポイントになります。彼女に贈りたいシーンと台詞を考えて見て下さいませ。
それでは、納豆そばを肴にお待ちしております。

参加キャラクター

  • 如月 朱烙ma0627
    人間種|女
  • 白花 琥珀ma0119
    人間種|女
リプレイ公開中

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