オープニング
(あー、しくじった。クソッ)
突如、目の前に現れた6人の野盗を前にサンゴは後悔していた。
工房の兄弟子たちといっしょに鉱山へ採掘しに来たまではよかったが、つい欲をかいたのがまずかった。
「子供がこんな山ン中までひとりお散歩とは、アブネーなあ」
「おじさんたちがおうちまで連れて帰ってあげよーか」
「そうそう、最近は物騒だからなあ」
言いながらじりじりと距離を詰めてくる野盗たち。
「……」
大声を出せば兄弟子たちにこの危機を知らせることができるだろうか。
いや、無理だ。兄弟子たちとは違った『モノ』を探して、未開発の山へ向かったのだから。もちろん誰にも伝えていない。
「散歩じゃねーよ、おっさん。俺は巫の鍛冶師だ。まだ卵だけどよ」
「へえ、鍛冶師ときたか。デカい口を叩くだけのサンクロウ一派が幅を利かせてる鍛冶師な」
「ンだと! もっぺん言ってみろい」
「テメーが住んでる町だけ無事なら、ほかの村や集落が打ち壊されても構わねえクサレ野郎じゃねえか」
「!」
サンゴは言葉を飲み込み、野盗の男たちを見渡した。手に持っているのは鎌や手斧、刃こぼれしたボロボロの刀だった。
「おっさんたち、鉄騎に襲われた村のひと?」
「だったらどうする。おとなしく身ぐるみ全部置いていくかい。なにやら上等な着物に立派な脇差し差してやがるしな。高く売れるぜ」
「これはダメだ! これはオウテツ兄ちゃんの……どうしてもって言うんなら腕づくで来いよ、おっさん」
サンゴの腰にあるのは兄オウテツが最初に鍛錬した脇差しだった。これだけはぜったいに奪われるわけにはいかない。野盗6人を相手にまともにやり合えるはずがない。隙きを見て逃げ出せばなんとかなるかもしれない。
サンゴはどうやって逃げ出すかを考えた。視線を忙しなく森の中を走らせた。途中、若い女性2人の姿が目に留まった。2人はまっすぐこちらへ歩み寄り、サンゴと視線を合わせた後、野盗を一瞥した。
「……」
黒髪でおかっぱ頭の女性がおもむろに持っていた薙刀を振り抜いた。一陣の風が森の中を疾走り、驚いたサンゴが目を瞑ったあとに見た光景は不思議なものだった。
地面には黒い鉱物油のような染みが広がり、さっきまでそこに立っていた6人の野盗は跡形もなく消え去っていたのだ。
驚くサンゴに、
「嘘はいけませんよ。弱いくせに強がってはいつか痛い目をみます」
「いずれ強くなるんだから、嘘じゃねーし」
母親のように叱る女性に、サンゴが口を尖らせて反論した。
「その割にあんまり変わってない気がするぅ」
「お、おまえ」
「ひさしぶり~♪」
親しげに手を振ってくる少女は、マツと2人で山に入った折、鉄騎といっしょにいたちょっとおかしなツインテール少女だった。サンゴは慌てて後ろへ飛び退って距離を取った。
「嘘じゃないのなら結構。精々励むことです」
野盗をひと薙ぎで消し去った女性は薙刀を背負い、街道へと向かった。
「置いていかないで、咲ねえさまァ」
去っていく2人を警戒しながらサンゴは見送った。
「……なんか、母さんに小言をくらった感じに似てるぜ」
兄弟子の元へ戻る途中で、サンゴは珍しい鉱石をみつけた。それを見せると、
「こいつァ、デカい発見じゃねえのか、おい、サンゴ」
石を持ち帰ると、あれよあれよと鉱山の開発話が進んでいった。
(言いそびれた。でも、あのおばさ……おねえさん? はオレを助けてくれたわけだし、あのヘンテコなねえちゃんも前とはなんか感じが違っていたし。悪いひとには思えねえもん。でも、あのおっさんたちも悪いひとじゃねえんだよな)
デミウルゴスや鉄騎の襲撃によって破壊され尽くした村や集落の男衆が、野盗や盗賊といった類にまで身を持ち崩したのだとサンゴが聞かされたのは、鉱山開発に向かう前日だった。
突如、目の前に現れた6人の野盗を前にサンゴは後悔していた。
工房の兄弟子たちといっしょに鉱山へ採掘しに来たまではよかったが、つい欲をかいたのがまずかった。
「子供がこんな山ン中までひとりお散歩とは、アブネーなあ」
「おじさんたちがおうちまで連れて帰ってあげよーか」
「そうそう、最近は物騒だからなあ」
言いながらじりじりと距離を詰めてくる野盗たち。
「……」
大声を出せば兄弟子たちにこの危機を知らせることができるだろうか。
いや、無理だ。兄弟子たちとは違った『モノ』を探して、未開発の山へ向かったのだから。もちろん誰にも伝えていない。
「散歩じゃねーよ、おっさん。俺は巫の鍛冶師だ。まだ卵だけどよ」
「へえ、鍛冶師ときたか。デカい口を叩くだけのサンクロウ一派が幅を利かせてる鍛冶師な」
「ンだと! もっぺん言ってみろい」
「テメーが住んでる町だけ無事なら、ほかの村や集落が打ち壊されても構わねえクサレ野郎じゃねえか」
「!」
サンゴは言葉を飲み込み、野盗の男たちを見渡した。手に持っているのは鎌や手斧、刃こぼれしたボロボロの刀だった。
「おっさんたち、鉄騎に襲われた村のひと?」
「だったらどうする。おとなしく身ぐるみ全部置いていくかい。なにやら上等な着物に立派な脇差し差してやがるしな。高く売れるぜ」
「これはダメだ! これはオウテツ兄ちゃんの……どうしてもって言うんなら腕づくで来いよ、おっさん」
サンゴの腰にあるのは兄オウテツが最初に鍛錬した脇差しだった。これだけはぜったいに奪われるわけにはいかない。野盗6人を相手にまともにやり合えるはずがない。隙きを見て逃げ出せばなんとかなるかもしれない。
サンゴはどうやって逃げ出すかを考えた。視線を忙しなく森の中を走らせた。途中、若い女性2人の姿が目に留まった。2人はまっすぐこちらへ歩み寄り、サンゴと視線を合わせた後、野盗を一瞥した。
「……」
黒髪でおかっぱ頭の女性がおもむろに持っていた薙刀を振り抜いた。一陣の風が森の中を疾走り、驚いたサンゴが目を瞑ったあとに見た光景は不思議なものだった。
地面には黒い鉱物油のような染みが広がり、さっきまでそこに立っていた6人の野盗は跡形もなく消え去っていたのだ。
驚くサンゴに、
「嘘はいけませんよ。弱いくせに強がってはいつか痛い目をみます」
「いずれ強くなるんだから、嘘じゃねーし」
母親のように叱る女性に、サンゴが口を尖らせて反論した。
「その割にあんまり変わってない気がするぅ」
「お、おまえ」
「ひさしぶり~♪」
親しげに手を振ってくる少女は、マツと2人で山に入った折、鉄騎といっしょにいたちょっとおかしなツインテール少女だった。サンゴは慌てて後ろへ飛び退って距離を取った。
「嘘じゃないのなら結構。精々励むことです」
野盗をひと薙ぎで消し去った女性は薙刀を背負い、街道へと向かった。
「置いていかないで、咲ねえさまァ」
去っていく2人を警戒しながらサンゴは見送った。
「……なんか、母さんに小言をくらった感じに似てるぜ」
兄弟子の元へ戻る途中で、サンゴは珍しい鉱石をみつけた。それを見せると、
「こいつァ、デカい発見じゃねえのか、おい、サンゴ」
石を持ち帰ると、あれよあれよと鉱山の開発話が進んでいった。
(言いそびれた。でも、あのおばさ……おねえさん? はオレを助けてくれたわけだし、あのヘンテコなねえちゃんも前とはなんか感じが違っていたし。悪いひとには思えねえもん。でも、あのおっさんたちも悪いひとじゃねえんだよな)
デミウルゴスや鉄騎の襲撃によって破壊され尽くした村や集落の男衆が、野盗や盗賊といった類にまで身を持ち崩したのだとサンゴが聞かされたのは、鉱山開発に向かう前日だった。
成功条件
条件1 | 野盗を捕縛する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | 野盗を一人も死なせることなく捕縛する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
目的
鉱山を開発するにあたり、その道中及び現場での護衛を巫の人間とともに行う
野盗 10人程度 武器はOP同様「鎌」「手斧」といった近接攻撃しかできないもの。元は農民、猟師、行商人などで構成されているので統制も取れていなければたいして強くもありません。どちらかというと自暴自棄になっています。
開発現場(鉱山) 切り立った崖を背にした足元の地表に、珍しい鉱石が出現している。周囲には森が広がるが、間伐されているので明るく見通しはよい。整備された道はないが不便ではない。
・巫氏族の『邏卒隊』(いわゆる警察のようなもので5人編成)といっしょに護衛。
・この付近の多くの野盗はデミウルゴスや鉄騎の被害者でもあるので、殺傷することなく捕縛してください(説得を試みたり、戦意を喪失させる程度に痛めつけるなど)。捕縛すれば邏卒隊によってサンクロウの元に連行されます。
・鉱山の開発現場では護衛に徹するのもよし、サンゴや鍛冶師、炭鉱夫らのお手伝いをしても構いません。
※1 この鉱山開発に関しては発破をかけて爆破!とかではなく、地表に出てきている鉱石を拾い集めるタイプになります。
・鉱石がたくさん集まるとみんなが喜びます!
※2 OPに登場した女性キャラにはこのシナリオ中で関わることはありません。
マスターより
年が明けてしまいましたが、サンゴの物語を始めます。見覚えのある女性が登場してきましたが、彼女らには別のシナリオで相まみえることになりますので、もう少々お待ち下さいませ。
まずは、鉱山の開発に勤しむサンゴや巫氏族の鍛冶師たちの護衛をお願いいたします。
関連NPC
-
- 飛剣 天仁(mz0020)
- 異能種|男
参加キャラクター
- リプレイ執筆中