オープニング
天獄の片隅へ引っかかったその島には、当然ながら知的生命体の存在はない。
だが、引っかかるには相応の理由があり、そしてその理由とは……
「さっぱりわかんないけどネベルチョイだよねぇ~?」
島の中央にそそり立った柱の根元、礼元堂深澪(mz0024)は傍らのティア・ペリペ(mz0001)へ小首を傾げてみせた。
「ぜんぜんわかんねーけどネベルチョイだなぁ」
こちらも逆側に小首を傾げ返す。
「で、ネベルチョイってなに?」
「あたいに訊かれてもなー。なんだと思う?」
「ボクに訊かれてもねぇ~」
ニケケスとキゾブもわからない。調査隊として同行し、今は各所に散っている咎人たちと収集データを付き合わせた結果、かろうじて知れたものはネベルチョイがニケケスにキゾブだということのみ。まあ、知れたところでなにがなにやらってやつである。
と、ふたりがまたも小首を傾げ合った、そのとき。
『ネベルチョイ、オデン』
アナウンスと思しき音が荘厳に告げ、磨き上げた大理石さながらな地面が傾いだのだ。果たして島は柱を中心に内から外への下り坂を形作り、ふたりは転がり落ちて……
「牛すじと大根と玉子ぉ~!!」
「黒はんぺん! コロもーっ!!」
そのおでんじゃないのはわかっていたが、ともあれ島の縁付近でなんとか止まったふたりに、音はまた告げたのだ。
『言語解析終了。あたいとボクにも理解できるよう翻訳しよう。これよりネベルテョイをオデンする。なぜか? 決まっている。ニケケスにキゾブのみオデンされるネベルチョイだからだ』
「おいー! なんもわかんねーぞ!?」
「単語解説を要求するよぉ~!!」
『ニケケスにキゾブのみオデンされるネベルチョイを理解不能だと? 理解不能』
ふたりからの当然の抗議へ心から――天獄界のルールからして心があるはずはないのだが――の疑問を返した後、さらにアナウンスは続く。
『あたい、ボク、俺、私とその他はヘンドケコイをシャセし、そそり立つテベにチョケるがよい。言うまでもないが、チョケられるのはただひとりである』
「テベってあいつだよな?」
「そそり立ってるの、あれしかないもんねぇ~」
地面のほかに存在する唯一のものである柱を指し、ふたりはうなずきあった。
しかしあそこまで登るとなると大仕事だ。なにせ傾斜がかなり深刻にきついだけでなく、グリップが効きにくい。滑ったら今度こそ縁で留まれず、空へと投げ出されかねない。
『滋養及び水分補給は自由にキゾブせよ。ハンガーノックなど起こすとヘンドケコイにガポイされるのでな』
ちなみにハンガーノックは長時間の運動で引き起こされる急激な低血糖症状だ。重症に至れば意識障害へ陥り、最悪死ぬ。死ぬのだが。
「ハンガーノック知ってんならほかの単語も翻訳できるっしょぉ~!!」
『聞き取り不能。ヘンドケコイ、オデン』
と。ふたりの後方になにかが生えだした。幾本もの木の根、それが互いに縒り合い、節くれ立った木肌を持つ猛牛さながらな姿を形作るではないか。
今に至って知れないことだらけだが、推察するに、こうだ。
1.あの牛がヘンドケコイでこちらをガポイしようとしている。
2.牛がオデンした理由は、ニケケスにオゾブなネベルチョイだから。
3.咎人はヘンドケコイをシャセして島の中心に立つこの柱(テベ)にチョケる。
4.チョケらなければならない理由は、ニケケスにオゾブなネベルチョイだから。
「うん、ぜんぜんわかんねーな!」
「それよかマジでやばそげなんだけどぉ~!?」
前肢を掻き掻き『セノカチラアアアアアアア!!』とか吼える牛、その殺気を肌で感じたふたりは猛ダッシュを開始。
こうなればさすがに察せられる。チョケるとはすなわち登ることだ。柱を使って牛の追撃から逃れるとすればそれしかない。そしてアナウンスは、チョケられるのはただひとりと明言していた。
「――おっと足が滑ったぁぁぁぁぁ!!」
唐突に足払いを繰り出すティア。
「はぁっ!」
それを跳び越えた深澪はバットをフルスイング。されど腰の入っていない大振りには速度が乗り切らず、
「ちょあっ!?」
ダッキングでかわされた。
「バットが滑ったよぉ~。ほら、下がつるつるだからぁ~」
「わかるー。滑るよなーあっと!」
全速力で逃げながらいじましい生存競争を繰り広げるふたりであった。
●これは多分牛追い祭
一方、他の咎人たちは一丸となり、牛の猛追から逃げている。
とりあえずはティア・深澪と同じ情報は得ていた。加えてガポイが轢く、オデンが開始、ニケケスが一定期間でオゾブが一度を意味するのだろうとも推察している。
が、そんなことはどうでもいいことだ。
あの柱に登らなければ死ぬ。必死が必至なんである。
生き残るためにあがくか、死んで楽になるか。選択肢はただふたつ。ただしその選択が選択死のレパートリーに過ぎない可能性もままあって。
『セノカチラアアアアアアア!!』
牛ならせめてモーと鳴け。そんなことを思いつつ、誰もツッコみはしない。なにせネベルチョイはオデンしたばかりなのだ。こんな序盤で体力と気力を消耗してたまるか。
これは所謂牛追い祭。
慈悲も意味もない生き残りゲームなのである。
成功条件
条件1 | 参加者の誰かがテベにチョケる |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
●依頼
島中央部に建つ柱へ登ることを全力で目指し、あがいてください。
●前提
・PC的には「柱に登れなければ死ぬ」と思い込んでください。
・みなさんは一丸となって逃げています。
・協力してもよいですが、ネタ的な都合もありますのでできれば蹴落とし合いましょう。
・柱に登る唯一の咎人さんは「登る」ことを明記した方から選抜されます。
●島の地形
・中央部に建つ柱を頂とした円錐型。道行きは結構激しい山登りです。
・地面はつるつるしていますが、滑るも滑らないも自由とします。
・最初に辿り着いた方のみ柱に登れます。ただ、登ると柱は倒れ、妙な歌に送られての御柱死を遂げます。
・島の中腹に栄養補給用の補給所が設置されます(後述参照)。
●牛
・みなさんを追い立てる植物モンスターです。
・倒すことは不可能。スキルの効果も一切受けません。ただ、闘うこと自体は自由です。
・牛にはゼスチャー等でこちらの意思を伝えることができます。命乞いを聞き入れてくれるかも。
・ちなみに何回轢かれても、そうと宣言していなければ道中で死ぬことはありません。ただ、柱周域へ至れば普通に死にます。
●補給所
・Tさんという咎人がおり、熱々のおでんとお茶を用意してくれています(熱々は食中毒防止のためですが、どうぞ活用してください)。
・おでんもお茶も口にすると死にます。Tさんの手が加わった食事はすべてが異次元級にまずくなり(まずさをどう感じるかは自由)、死の毒と化しますが、理由はTさんだから以外にないので気にしないでください。
・死にかたは自由。ただしコメディであることだけは忘れずに。
・補給所はスルーするも自由です。
●備考
・【要注意】まじめなプレイングは基本、マスタリングでねじ曲げられます。
・結局はみなさん全員死にますので、どこで、どのように、なにをもって死ぬかを考え、その一点に集中したプレイングをお願いします。
・どんな末路を辿っても忘却は付与されません。
マスターより
みなさまお疲れ様です。電気石八生と申します。
オープニングでも解説でもいろいろ書き連ねていますが、内容を要約すれば「絶対死んじゃう牛追い祭」。スタイリッシュに楽しく絶命していただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
関連NPC
参加キャラクター
-
- 宵待 伽羅彦(ma0748)
- 人間種|男
-
- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
-
- ブルームーン(ma1254)
- 神魔種|女
-
- ジェラルディン(ma1135)
- 異能種|女
-
- フィオナ・アルマイヤー(ma1253)
- 剛力種|女
-
- ユーグヴェル・ミラ(ma0623)
- 異能種|男
- プレイング締切間近
- 2023/01/31 10:30