オープニング
裏世界の三カ国の代表が表世界にやってきた次の日のこと。
鏡神学園全体で歓迎会が開かれることになった。
目的は、2つの世界の神使の交流を図るため。
しかし、それはミラリスを倒すために必要なことだった。
要は反対側の世界の神使が信用に値するかどうか――見極めるためでもあるのだ。
「ふふん……? どこかで見た顔かと思えば、メイジーじゃないか。なるほど、ドライマナの代表者としてこっちにやってきたのかな?」
オクタヴィア (mz0102)はドライマナの契手の隊長であるメイジーを見つけた。
すぐさま彼女の元に近寄り、馴れ馴れしく声をかけたのだった。
「はあ……相変わらず先輩に対しても遠慮しませんね。一応、私はあなたの年上なんですけど」
「ふふん、そうだったね。でも馴れ馴れしいのが僕の良い所だからね。おかげさまで僕はよく年上には可愛がられるんだよ。ほらヴェロニカだって僕のことが大好きだろう?」
「大好きなのかは兎も角……あなただけですよ、先輩に対して馴れ馴れしい態度とってるのは……」
「ふふんふふん!」
なんで得意げになっているのかはわからないが、オクタヴィアは裏世界の知人に会えて嬉しいようだ。
「今日は歓迎会だったね。では、僕が表と裏の架け橋となろう。鏡神学園の生徒を紹介するよ。ついてきてくれ」
そう言ってオクタヴィアは自分の妹であるメロディア (mz0094)を紹介するのだった。
ずいっと肩を持ち、まるで大事なお人形を扱うようにして、メロディアをメイジーの前に披露する。
「僕の可愛い妹である白メロたんだ! 見てくれ! この白い髪の毛に、青い瞳を! 黒と赤がイメージカラーの黒メロたんも可愛いが、白メロたんもかわゆいと言わざるを得ないだろう? それにこの制服だってとってもキュートで、是非デザインした人に一度お話を伺いたいものだ。きっと僕といいお話が――」
「――ちょ、ちょっと!? ツッコミを途中で入れさせてもらえる!? オクタヴィアしゃべり過ぎだから! 久々の登場で嬉しくなっちゃっているんでしょ!?」
「ふふふん! 流石はメロたん。僕の気持ちをよく理解しているね」
相変わらずの様子にメイジーは苦笑いを浮かべた。
確かにこの姉妹は裏世界でもこんな感じだった気がする。実際、オクタヴィアに限っては裏世界出身なわけだし。
しかし、妹のメロディアはこんなに元気な子だっただろうか?
少し記憶が曖昧だが、元気なことは良いことなので、メイジーは追求しないのだった。
「む? もう仲良くなっているのか……?」
向こうからやって来たのはオーウェン (mz0093)と、城塞都市マグルートの代表であるランドルフだった。
二人は手に皿を持ちながら、提供された料理を楽しんでいるようだ。
ちなみにこの料理も生徒みんなで作ったものだったりする。
まあ……若干咎人の手が加わっているので、身に覚えのない料理が沢山あるのだが。
たとえばカレーとか……。誰が作っているんだろうね、ほんと。
「ああ、オーウェン。ちょうど今、メロディアを紹介していたところだよ。ふふん、今日の僕は世界の架け橋といったところかな」
「むう……それは私がヴェロニカ先生にお願いされたことなのだが……。仕方がない、私はランドルフさんを紹介しよう」
料理をテーブルに置いて、オーウェンはメロディアたちに紹介する。
「ランドルフさんはマグルートの代表を務めている方だ。鏡神学園では降神学科の寮長を務めていたらしい」
「あー、まあ、寮長は昔の話だけどな」
と、ランドルフは謙遜をする。
「しかし……俺が知っている鏡神学園とはずいぶん違うな……。言葉にするのは難しいが、こちらの鏡神学園はこんなにも気が抜けているのか?」
気が抜けている――その言葉の意味がピンとこない。
「確かにそうだね。裏世界の出身である僕もそれについては同感だ。僕の知る鏡神学園ももっと殺伐とした雰囲気だからね。ましてやこんな歓迎会が開かれることなんてなかったかな。遠足はあったけれども」
「ああ、懐かしいですね、遠足! よく先輩とお弁当をこしらえたことを思い出します」
どうやら裏世界にも遠足はあった様子……。
察するに裏の鏡神学園にとっては遠足が唯一の息抜きだったのだろう。
「裏の鏡神学園のことが聞きたければ、最近まで生徒だった裏世界の私に聞くのが一番いいかと思うのだが……」
表のオーウェンはそう提案するのだが、裏世界からきた彼の姿が見当たらない。
どこに行ったのだろうか?
「というか僕はたった今も現役の裏鏡神学園の生徒なんだけどね、僕には聞かないんだね――ふふん? おや、あれは噂の裏のオーウェンじゃないかな?」
オクタヴィアが気づくと、そこにはこそこそと隠れ周る裏オーウェンの姿があった。
明らかに不審者である。
あなたはオーウェンに声をかけるのだった。
すると――
「ぎくっ……。見つかってしまったか……」
露骨に嫌そうな感じを出すオーウェン。
何があったというのだろう。
「いや……実はさっきから声をかけられまくっていてな……。色違いのオーウェンが彼らには珍しいらしい。一通り握手に対応して今逃げて来たところだ……」
「握手って……ヒーローじゃないんだから。まあ、確かに驚くほど似ているけど……」
メロディアもその瓜二つの姿に驚愕している。
しかし、それは裏オーウェンにとっても同じこと。
「なっ!? まさかメロディアくんか……!?」
「え……? 私の事を知っているの?」
「あ、ああ……知っている……。もちろん裏世界のキミだが。そうか、確かにそっくりだな。私が囲まれてしまうのも頷ける……」
彼らはそんな感じで顔合わせを行っていく。
お互いの世界の違いを理解し関係を築く。
歓迎会はうってつけのイベントだろう。
「そういえばガルワーズ乗りのお馬鹿の姿も見当たりませんね?」
ガルワーズ乗りのお馬鹿……ガルワーズの代表であるフェリックスのことをそんな風に呼ぶメイジー。
ランドルフはその疑問に答える。
「あいつなら活きのいい若手を捕まえてパジャモレースを挑んでいったぞ? どうやら見込みのある天空騎士を見つけたらしくってな。珍しく息巻いていた。今頃競技場にでもいるんじゃないか?」
「活きのいい若手……」
「見込みのある天空騎士……」
メロディアとオーウェンは同時に想像する。
だがすぐに該当する神使が頭の中に浮かんだ。
「あー……シャルルだ……」
「ん? 呼んだかメロディア?」
――隣にいた。
「うわあっ!? おどかさないでくれる!? レースをしていたんじゃなかったの?」
「今終えて戻って来たところだ。フェリックスさんに歓迎会に参加しろと促されたのでな」
「――さん!? 今フェリックス『さん』っていった? あのシャルルが?」
「む……? そんなにオカシイか?」
いまいちピンと来ていないシャルル (mz0092)。
恐らく腕を認めた相手にはシャルルは礼儀正しいのだろう。
良いレースが出来たようだ。
それだけフェリックスの実力が高かったとも言える。
思えば、出身地的にも先輩にあたる。不自然ではないだろう。
「ふん……実際にはそいつの方が実力は上だ」
話を聞いていたのか、レースを終えたフェリックスが近づいてくる。
「戦の無い鏡神界と聞いていたが、まさか騎乗術で負けることになるとはな……。個々で言えば裏の鏡神界より実力は高いだろう。俺が保証する」
「ああ……一応、『信頼に値するかどうか』計っていたんですね?」
「当たり前だ。ここで甘味を頬張っている契手と一緒にしてくれるな」
「むか……! それは私のことですか!? だけど違いますぅー! これはスイーツではありませんー! 糖類ゼロのお菓子なんですぅー!」
「子供かお前ら……」
二人を見てランドルフは呆れていた。
ともあれ、会場に裏世界の神使は無事に集まった。
ここはもっと信頼を深めていくために、お互いのことを話した方が良いだろう。
オクタヴィアは質問する。
「しかし、よく裏世界の神使が集まったね。裏世界をよく知る僕としてはびっくりなことだよ」
「その事か。ふん――それは我等の面子を保つためである」
「ふふん……? 面子の為……?」
「そうだ。このような類似世界を生んでしまったのは、我等の愚行が原因だと聞いている。だというのに、鏡神討伐に我等が立ち上がらないのは不義理であろう?」
「なるほどね……いかにもガルワーズの旗手らしい考え方だ」
「単純に責任を感じているんですよ、このガルワーズ乗りは」
と、メイジーが捕捉を加えたのだった。
しかし、責任を感じているのは裏世界だけのことではない。
表世界だって同じだ。
「うむ……我々も責任を感じていないわけではない。表世界の我々は過去の過ちを清算せずにこれまでやって来たのだ」
「オーウェンの言う通り……。私たちはすべて忘れて記憶を封印していただけ。けど、今ならなんとなく思い出せる……」
「ああ、俺たちは確かにあの場に居た。世界が分かたれたあの瞬間に」
三人の寮長は言う。
だから、あなた達の責任だけではないのだと――。
別の世界で生きる神使たちは、話ながら世界を重ねていく。
一つの世界にまとめ上げるために。
成功条件
条件1 | 歓迎会を開催し、裏世界の神使と仲良くなる |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | お互いに信頼を得て、ミラリス討伐の目標を確立する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
このシナリオで戦闘は発生しません。
また、鏡神界のオフィシャルシナリオにおいて最後の日常パートとなり、これより先は最終決戦に向けて戦闘シナリオが続いていきます。
このシナリオは裏世界の神使と仲良くなるだけで成功します。
例えば、会話をしたり、料理を振舞ったりしても良いでしょう。
こちらの難易度は簡単なので、悪態をつくなど意図的に不愉快な態度を取らなければ成功します。
よって、裏世界の神使だけでなく、他のキャラクターと交流を深めても良いでしょう。
最後の日常パートなので、ゆっくりと話せる良い機会となっています。
一方で大成功条件は『信頼を得る』ことになっています。
これは表世界と裏世界で、お互いに信頼を得ることが必要です。
裏世界の神使が表世界の神使を知らないように、表世界の神使も同様に裏世界の神使のことを知りません。
今回は中立の存在である咎人が2つの世界を取り持ちましょう。
最終的に両方の世界の神使が『ミラリスを倒して世界を一つにしたい』と意志を固めればクリアとなります。
●現在のお互いの印象
裏世界→表世界
裏世界の神使は表世界の神使に対して責任を感じています。
それはシミュラクラという複製された世界を創りだした原因だからです。
出来ることなら自分たちだけで解決したいと考えていますが、それが不可能であり、表世界を巻き込んでしまっていることに思い悩んでいます。
また同時に、自分たちの殺伐とした青春時代と比較して、表世界の学園を羨むような気持ちもあります。
基本的には学園の生徒と比較するとやや年上であるため、学園の生徒には「先輩」としての立場で接します。
しかしだからこそ、裏世界の弱音や問題について素直に相談し辛い雰囲気です。
表世界→裏世界
表世界の神使も裏世界に対して同じく責任を感じています。
同一な存在であるにもかかわらず、記憶を失ったことによって過去の過ちを清算していないからです。
すべての生徒がそうではありませんが、裏世界からダグラスなどの襲撃を受けてきた為、まだ裏世界を警戒している生徒もいます。
先に捕虜になったオクタヴィアと接することで、裏世界の神使が悪人だけではないということは頭では理解できていますが、心からは信じられていません。
また、自分たちが「世界の幸福な面」を独占してきた、という罪悪感もあります。
裏世界の神使は「あまり親しくない厳しい先輩」のような印象なので、ややとっつきづらく感じています。
●みんなが何をしているかメモ
大牙
積極的に表裏両方の神使に話しかけている。
表裏両方から信頼を得ている数少ない人物だが、あんまりコミュニケーションの橋渡しとしては役に立っていない。
鎖神
そろそろ最終決戦になっていきそうだなぁ……と感じている。
そうなったらベリトとも戦うことになりそうだ、と不安に思っている。
オーウェン(表)
ヴェロニカと戦うことになる、ということを受け入れられずにいる。
一応、強がって前向きにふるまっているが、いざとなったら逃げだしてしまうのではないかと恐れている。
オーウェン(裏)
裏世界の神使いとしては珍しく、表の学園に馴染んでいる。
表のオーウェンが学園で多くの人に慕われていることを知って内心嬉しく思っている。
しかし、やはりヴェロニカの事で悩んでいる。
メロディア
裏世界では既に死亡している&性格が違うが、裏世界の人々はあまりメロディアを知らないので違和感がない。
メロディアの方も裏世界の面々とは初対面の扱いとなる。
咎人に対してもそうであったように、初対面の相手には緊張気味。
シャルル
さっそくレースをしてフェリックスと親しくなっている。
シャルルは元々裏世界の龍神の谷出身なので、同郷の先輩という扱い。
最近少しずつ裏世界の事を思い出しつつあり、話を聞きたがっている。
オクタヴィア
メイジーとは知人であり、同じくドライマナ出身。
知り合いじゃなくても馴れ馴れしく話しかけることが出来るが、別に仲良くなれているわけではなく、そんなに役には立たない。
メロディアのことを永遠に紹介している。
ヴェロニカ
自分がミラリス・プライムの神体になる、という話をした後なので気まずい。
一応、表世界の生徒たちにもちゃんと説明したが、納得してもらえたとは言い難い。
自分のせいで場の空気がおかしくならないようにちょっと離れている。
フェリックス
表世界の実力をシャルルとのレースで確かめたが、信頼できるとはまだ確信していない。
シャルル同様、強い力を持っているという証明や義理堅さで説得しやすい。
レースはもうやっちゃったので、何か他の方法で「力」を示したい。
ランドルフ
裏世界三人組の中では比較的常識人なので話しやすいが、理詰めで考えるタイプなのでノリでは信頼を得られない。
表世界の知識やこれまでの活動実績をきちんと説明できると好印象を得られる。
メイジーとフェリックスがモメ始めると話をちゃんと聞いてくれなくなるので、そっちもケアしたい。
メイジー
フェリックスが視界に入ると話どころではなくなるという重大な問題がある。
なんとかフェリックスと同じ場所にとどまらないように誘導したいが、興味津々で学園内を歩き回るので危険。
誰かが付き添って案内してあげないと自分からフェリックスに寄っていき、喧嘩を始める。
面倒見がいい性格なので、普通に話をしている分には何も困らない。
マスターより
ハイブリッドヘブンをお楽しみいただきありがとうございます。運営チームです。
こちらのシナリオはエピック「境界の神獣」と連動する内容となります。
エピックをクリアしなくとも参加は可能ですが、併せてお楽しみいただけますと幸いです。
本シナリオの参加者全員には交換用アイテム「修了証明書」をプレゼントいたします。
関連NPC
参加キャラクター
-
- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- 天魔(ma0247)
- 神魔種|男
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- 白花 琥珀(ma0119)
- 人間種|女
-
- 宵待 伽羅彦(ma0748)
- 人間種|男
-
- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
-
- シアン(ma0076)
- 人間種|男
-
- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
-
- 更級 暁斗(ma0383)
- 人間種|男
-
- リダ・クルツ(ma1076)
- 人間種|男
-
- マイナ・ミンター(ma0717)
- 人間種|女
-
- サヴィーノ・パルヴィス(ma0665)
- 人間種|男
-
- マリエル(ma0991)
- 機械種|女
-
- 葛城 武蔵介(ma0505)
- 神魔種|男
-
- モルディウス(ma0098)
- 神魔種|男
-
- 灰音(ma0155)
- 獣人種|不明
-
- アルティナ(ma0144)
- 神魔種|女
-
- 瑠璃香(ma0653)
- 獣人種|女
-
- ユーグヴェル・ミラ(ma0623)
- 異能種|男
- リプレイ公開中