オープニング
昔は魔法文明が栄えていたが、『大憲章』という神秘を否定する魔術が実行されて以来機械文明が発達して来た『封魔界 アルビオン』――。
アース帝国はその『大憲章』をすり抜け魔導具を使い、周辺の国々を征服している。
イストリア公国とグリズリー鉱山の間に位置する、山に囲まれた国ディナッハ公国も、アース帝国の侵攻に悩まされている国の一つだ。
今JJ(じぇいじぇい)――本名はジャスティ・ジャッジという――と数人の咎人達は、アース帝国が攻めてくる方向、戦場になっている東側の国境にある基地へとやって来ていた。
咎人に要請があれば戦うことになるため、戦闘が行われるであろう場所を把握しておきたいと思ったのだ。
JJはそこそこ咎人歴の長い、赤みがかった茶髪と陽が当たると金色に見える緑の瞳の持ち主で、正義感が強そうな名前とは裏腹に他人にそこまで干渉しない、基本陽気でお気楽な青年である。
普段は資源採取やエネミー退治など、頼まれれば大抵のことは引き受ける『何でも屋』みたいなことをしているのだが、この国には知っている簒奪者が来ていることもあり、ちょいちょい顔を出すようになった。
イデアゲートを基地の敷地内へ設置してもらっていたので、JJ達咎人は直で来ることができる。
彼らがゲートから出て来た時には国境警備隊隊長のベイリンと、アシストアーマー開発製造の国内最大手企業ディケト重工CEOの御曹司、キュリア・ディケト(mz0137)が出迎えに待機していた。
ディケト重工のCEOであるキュリアの父親にはゲート設置から色々と世話になっていて、今回もこの国境見学に手を回してくれたのだ。
「あれ、キュリアも来てたんだ」
開口一番JJがそう言うと、キュリアは若干口を尖らせた様子で、
「しょーがないでしょ。一応女神の騎士サマと面識があるし、ついでにアシストアーマーの説明もして来いって親父に言われてさ。何か最近、親父があれこれと会社のこと手伝わせようとするんだよね~」
キュリアの左頬には目立つ上級の神秘刻印があり、彼はそれを活かせる帝国へ行きたいと考えていた。その気持ちを変えるため、父親は息子に自分の会社に興味を持たせようとしているのだろう。
「へー、でも俺らも見知った顔がいると安心だよ。よろしく頼むな!」
「まあ、僕もここに来るのは初めてだけど、言われたことはちゃんとやるよ。あ、こっちの人はこの国境警備隊の隊長ベイリンさん」
と、キュリアは背丈が190センチはある、ガタイのいい獣人タイプの中年男性を紹介する。見た目は熊っぽい。
彼の神秘刻印は下級だが、兵士として優秀なため隊長を任されている男だった。
「ベイリンです、よろしく。へえ、あなた方が女神の騎士ですか。この公国へ来ていただき感謝します」
気さくに大きな手を差し出し、咎人一人一人と握手を交わす。
「よろしくです。俺はJJ。気軽に呼んでください」
顔合わせが済むと、ベイリンとキュリアは早速保管されているアシストアーマーを見せた。
3メートル程の機械の鎧がずらりとベイリン隊の人数分、色は地味な灰色迷彩、形も同じに統一されたものが並んでいた。
「アシストアーマーはその名の通り、人の動きをアシストする鎧みたいなものだね。ここにあるのは戦闘用だから、武器や盾を着けてる」
とキュリアが説明した。
「戦車くらいなら相手になりますが、アシストアーマーだけでは巨神機には太刀打ちできず、大勢で囲んで魔獣を倒すのがやっと、という感じですね。地形のおかげでどうにか攻め込まれるのだけは防げていますが」
「ベイリン隊は何度も帝国を撃退してる強い部隊だって聞いてるよ」
キュリアの褒め言葉に少し気を良くしながらも、ベイリンの顔は暗い。
「今はまだ、ね。正直、今以上の規模で攻められたらどうなるか」
「でも、ウチもアーマーのコスト面とか性能を上げるために常に研究してるって親父が言ってたし……」
「そうですね。それに、女神の騎士も協力してくれるなら何とかなるでしょう。頼りにしてますよ。さ、主な戦場に案内します。こちらです」
気を取り直したベイリンは、咎人達を外に連れて行った。
●山の中の戦場
「ガッツリ山だな」
JJは岩だらけの山肌を見下ろした。
木や植物はまばら程度でほとんど生えておらず、ごつごつした岩が点在する急斜面が広がっている。所々穴が開いていたり地面が削られていたり、これまでの戦闘の跡が見られた。
キュリアもめったに見られない場所を興味深そうに見ている。
「隠れる場所がないから、攻めて来られたらすぐ見つけて対処できるわけか」
と咎人達は納得する。
敵を早く発見するために、随所に立っている見張りは欠かせない。
「守りは上からの方がしやすいですからね。原始的ですが、落とし穴などの罠も割と効果あるんですよ」
この世界に空を飛ぶ技術がない故に、それでもやって来れたのだろう。
不意にベイリンが、インカムのイヤホンをしている片耳に手を触れ動きを止める。
「なに!?」
その様子に咎人達にも緊張が走った。
「複数の魔獣がこちらに向かっているようです」
「えッ、ヤベーじゃん! 良ければ俺らも手を貸しますよ」
JJが協力を申し出ると、ベイリンはすぐにうなずいた。
「ええ、下位の魔獣ですが数は10体。普段より格段に多い。どうか女神の騎士の力をお貸しください」
「りょーかいです、皆、俺らの力の見せ所だ! っと、俺はキュリアを安全な場所に避難させてから来るから!」
とJJはキュリアを基地本部の方へと連れて行く。
ベイリンと警備隊員達はすぐにアシストアーマーを装備して、咎人達と一緒に魔獣出現場所へと向かった。
見学していた所から300メートルほど下った、傾斜が緩くなっている所にソレらはいた。
4メートル程ある、ヘドロ色したぶよぶよの体にいくつもの蜘蛛の足のようなものが生えた不気味な生物が10体。
こちらに気付くと、数体の魔獣の足の間に裂け目のような口が開いて、岩をガリガリ噛み砕き始める。と次の瞬間、それを勢いよく吐き出した。まるで大きな砲丸を撃ち出すピッチングマシーンだ。
「!!」
ここまで届かなかったものの、岩飛礫は中った木をへし折り土にめり込んだり、岩同士砕けたりしていた。
ベイリン達アシストアーマー隊の数十人は素早く隊形を組み、降下する。
女神の騎士達も気を引き締め、薄気味悪いヘドロ魔獣を倒すために身構えた。
成功条件
条件1 | 魔獣を倒す |
---|---|
条件2 | ベイリン達と共闘する |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | ここより上に行かせない |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
●このシナリオは封魔界ロールを装備条件とする以外の「アクティブスキル」「効果アイテム」が使用できません。
※下位のヘドロ魔獣を全て倒しましょう。
〈ヘドロ魔獣×10 サイズ2 知性1〉
・体長4m程度。ぶよぶよの体に蜘蛛の足みたいなものが何本も生えている。ヘドロ色。
・シールドあり、防御型。防御値高め。
・主な攻撃
足で踏みつけたり圧し掛かったりなどの近接攻撃の他、
撃ち出し:何でも口に入れて噛み砕きすごい勢いで吐き出す。前方扇状の範囲内にいる全員にダメージを与える。直線8横幅3
異臭:自分の周囲(3)内にいる敵全てに、BS『異臭』を付与する。強度4。付与されると強烈な臭さのあまり近接、射撃、魔法の命中と威力が半減する。
無脳:特定のキャラに寄って行くとか特定のキャラを攻撃するなどのBSが効かない。パッシブスキル
・とにかく動くキャラを襲いがち。
〈その他状況など〉
・周囲は岩がちですが、大きく視線を遮るものなどはありません。
・緩い傾斜があり、皆さんは魔獣の上を取っている所から戦闘開始な感じです。
・ベイリン隊と共闘という形になります。ベイリン達は大口径の重火器やパイルバンカー的な武器を所持し、半数程度の魔獣を引き付け囲んで戦うつもりです。もし「こういう作戦に協力して欲しい」などあれば従いますので、どなたかがプレイングに記載してください。
・JJは遅れて合流します。基本皆さんのサポート(追撃やBS回復など)をしますが、させたいことを書いていただければ従います。
マスターより
こんにちは、久遠由純です。
ディナッハ公国での戦闘シナリオとなります。
今回は魔獣のサイズが2となっております。サイズ差による有利、不利がありますので気を付けていただければ。
ガチガチにベイリン隊との共闘を意識する必要はありませんが、上手く協力して戦えればベストです。
今回キュリアはあまり出番ないですけど……、戦闘後に多少会話するくらいは可能です。
今後もディナッハ公国に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
関連NPC
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- キュリア・ディケト(mz0137)
- 人間種|男
参加キャラクター
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- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
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- アルフィリウム・S・ロシェ(ma1141)
- 異能種|女
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- ウガツ ヒョウヤ(ma1134)
- 精霊種|男
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- シアン(ma0076)
- 人間種|男
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
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- モルディウス(ma0098)
- 神魔種|男
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- 鈴鳴 響(ma0317)
- 神魔種|女
-
- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
- リプレイ公開中