オープニング
「あぁ、もう無理だ! わしゃあ撮る側であって作る側じゃねえッ!」
撮影所の一室で白髪交じりの男が大声を出す。
ここはオルメタにある撮影所の隅の隅。何故そんな場所なのかと言えば、彼らが撮っている作品はコアな層にしか支持されず、従って大衆受けしないと言うだけでいい場所を使う事が出来ず、こんな片隅で縮こまっての制作が続いている。
「監督、そんな事言わずにどうかどうか。今まで沢山撮ってきているじゃないですか。だったら、一つや二つアイデア位あるでしょうに」
なだめているのはどうやらアシスタントディレクター(以下、AD)だろうか。
彼自身もこんな事になるとは予想できず、ほとほと困り果てている。
「無理だね。知ってるだろ、わしの絵心のなさを。以前なんかの取材で無理矢理絵を描かされて、それを見た記者がなんつったと思う? これは新種の宇宙人ですかだとよっ、わしが書いたのはペットのいぬっころだったって言うのにだぞ!」
その時の事はおぼろげに覚えている。記者から好きなものを描いて下さいと言われて、渋々ペンを取ったこの監督の絵は本当に壊滅的だった。犬だと言うが二足歩行しているし、何なら耳のようなものが四つ。どうやら二つは前脚だったらしいが、配置のバランスが最悪で記者の理解には及ばなかったらしい。
「あー……あれは酷かったですねぇ。けど、それでも何とかしないと。もう制作自体は決まっているんです。デザイナーがいないからと言ってやめにする訳にもいきませんよ」
「そうだなぁ、けどわしには描けねぇ。他にいいデザイナーはいねぇのかッ」
監督が語気を強めて問う。しかし、今からすぐ見つけるのは難しい。
何せ彼らがとっているのはマイナージャンルの怪獣映画だからだ。
何でもかんでも機械に頼る撮影が主流になりつつあるが、彼らの求めるもの。それは人間味のある昔ながらの手法・特撮だった。ミニチュアセットを使って着ぐるみを着用し、時に遠近法やワイヤーワークを駆使して迫力ある映像に仕上げる。撮影時に見える景色と仕上がったフィルムとのギャップは凄まじく、それを知らない人が見れば魔法でも使ったのかと思う程だ。
「とにかく本は仕上がってんだ。後は怪獣を配置すりゃ何とかなる。今回の一本でこのシリーズの命運が決まる……スケジュールもカツカツだし、どんな怪獣でもいい。連れてこい!」
監督がそう言い、そのままその場を後にする。
残されたADはそれを呆然と見送るも、数秒後ハッと我に返る。
(くそぉ……何でもかんでも僕に押し付けるんだから。プロデューサーもこの件がばれないようにするのに必死だし……格なる上は)
ADの青年は本を握り締め、とある場所に向かった。
●頼みの綱
「ん、それで咎人の力を借りたいと? 何というかよく判らんな」
定期的にカレーのケータリングを行っているイーサンを訪ね、青年が深々と頭を下げる。
「確か咎人さん達ってのは色々な化け物と戦っていると聞きました。だとすると、異形の何たらとか色々遭遇してますよね。なので、怪獣のデザインも出来ちゃうかなぁって。後、人手も足らないんで出来れば作った怪獣にはその人本人が入って欲しいです!」
腰を九十度綺麗な直角に曲げて、青年がお手本のようなお辞儀を見せる。
「まぁ聞いてみるだけは出来ん事もないが、果たして集まるかどうか」
「イーサンさんのカレーがあれば大丈夫ですよ。絶品ですもんねっ、僕何度か食べさせて頂きましたが、なんていうか本格的な配合でスパイスみがあって、おかわりするほどのファンになってしまいました。だから今回の撮影の合間にも食べたいなって思ってて」
実際の所を言えばそこまで好きでも嫌いでもないが、ここは煽てるが勝ちだという事をこれまでの経験で知っている青年である。
「ん~そこまで言われると何とかしてやりたいなぁ」
にへらと表情を崩して、ここまでくれば後一押しだ。
「そうそう、少し前に希少なクミンを頂いたんですが、イーサンさん使いませんか? 僕が持ってても宝の持ち腐れですし」
「おおっ、いいのか! クミンはカレーに大事なスパイスの一つで……」
この後、二時間近くに渡ってイーサンのカレー話を聞かされる事になったが、それでも怪獣と役者が手に入るなら安いものだ。
「それじゃあお願いしますよ。できれば四人、少なくても二人は必ず欲しいので」
青年はそう言い、その場を後にする。その足で腕利きの美術スタッフに声掛けに回る。
「無茶言って済まないけど、この際どんな怪獣でもいいんだ。咎人って人らが来たら、その人達の提案したデザインの怪獣スーツを至急作って欲しい。素人が入るから、リハも念入りにしないとだし……出来れば五日で」
「おいおい、地獄かよ」
「けど、やるしか道はねぇか……」
彼らも怪獣映画に魅せられて、この世界に入った一員だ。であるから、この映画がコケれば怪獣スーツを作る事が出来なくなるかもしれない。そうなれば仕事がなくなるという事もあり、無茶な注文も聞き入れざる負えない。
「さぁ、じゃあ後は待つだけだなっ」
青年が何とか都合がついた事によりホッとする。
但し、どんな怪獣が集まるかは判らないのであるが――。
ここに今回の企画書を記しておく。
なお、咎人らが担当するのは四聖怪獣の方である。
【大怪獣ゴズモ降臨 四聖怪獣大集結(仮)】
怪獣シリーズの最新作 今回心機一転し怪獣が変わった
ゴズモは宇宙怪獣であり、メイン怪獣である
ゴズモは二足歩行型の怪獣であり、背中に宇宙エナジーを秘めた石が複数刺さっている
ボディは宇宙のような深い青、表皮が夜空のようにキラキラしている
ゴズモは宇宙の秩序を守る為、星々を飛び回り、時にその惑星の怪獣と戦う
そして惑星に害をなすと見た怪獣に対しては容赦なく攻撃を加える
必殺技は口からのコズミックレーザー波であるが、肉弾戦もするし尻尾も使う
今作はゴズモが訪れた惑星の四聖怪獣と対決
惑星を守る立場の怪獣であったが、悪の宇宙人により洗脳され母星を攻撃
それを知り、やって来たのがゴズモという設定
四聖獣はゴズモより小さく設定されている為、四対一の構図になる
最終的には洗脳がとけ、四獣はまた母星を守る為姿を消し
悪の宇宙人がどうなったかは、この興行収入にかかってりおり
映画自体では逃走シーンまでに留めるらしい
成功条件
条件1 | 四聖怪獣一体分のデザイン案を提出し、その怪獣を演じ切る |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | いい演技をして、続編制作に貢献する |
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条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
怪獣映画を撮っている最中に起こったのは怪獣デザイナーのまさかの引き抜き
それにより予定していた怪獣のデザインがされないままいなくなってしまいました
既に撮影のスケジュールは組まれ、公開も決まっています
それなのに、肝心の怪獣がいないとは何事だという事で
急遽イーサン経由で咎人に怪獣のデザイン込みでの出演依頼が舞い込みました
四聖怪獣のデザインをすると共に、完璧に演じ切って下さいませ
なお、参加人数が四人以下だった場合はイーサンとAD君が空きの怪獣を担当します
●プレイングについて
今回出演の映画についての概要は、OP末尾に記載しています
それを参考に「こんな怪獣をどう演じるか」をメインに書いて下さい
外見や必殺技、こだわりなんかも書いて頂いてOKです
四聖怪獣としていますが、特に四聖獣にこだわる必要はありません
自分の好きな見た目の怪獣で演技できるチャンスですので
存分に好きを詰め込みましょう
●演技の判定について
基本能力値を使用しますので、
数値上乗せしたい場合は一般スキルの設定をお忘れなく
基本フィジカルであれば筋力と体力を足した値で
100オーバーする場合はファンブル以外は難なく成功という事になります
マスターより
オルメタがキャンペーン中という事で突発でオルメタシナリオ
ギリ間に合いますよね? どうも、左右対称ネームマスターの奈華里です
つい最近スーツアクターが主人公の小説を読んだので
その影響もありこんなシナリオを作ってみました
怪獣映画はそれなりに見ておりますが、余り古いのはちょっと判んないなぁ
最近のじょわっちの方も全くですが、調べて判る系であれば調べますので
プレイングはその辺うまい事字数をやりくりしつつ、
デザインと演技を宜しくお願いいたします
あ、OPイラストに深い意味はないです
それでは皆様のご参加お待ちしています(^^♪
関連NPC
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- イーサン・クーパー(mz0015)
- 機械種|男
参加キャラクター
- リプレイ公開中