オープニング
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流れすらも刑する街――流刑街。
上から下へ。
右へ左へ。
迷々に路々を往くと、“それ”は在る。
最下層の大通りを曲がると、其処は洋服店や雑貨店、カフェやパティスリーなどが建ち並ぶ、勿忘通り。
あなたは、“私を忘れないで”と花言葉を伴う通りの洋服店――『Pomme』の扉を開けた。
林檎の形をしたアンティークのドアベルが透明感を奏でる。その音色に首を起こしたのは、この店のオーナー兼デザイナーのジルバだ。デザイン画だろうか、見比べていた用紙をカウンターに置き、あなたを正面に見据え白い歯を零す。
「よう、顔合わせんのは初めてだよな。ワールドボードに目ぇ通してくれたんだって? オレはデザイナーのジルバだ」
紫水晶の瞳に、髪紐で高く結い上げた亜麻色の長髪。
年は三十路を過ぎた半ばぐらいだろうか、軽薄そうな見目とは裏腹に、妙にどっしりとした構えが印象的の神魔種であった。彼は何とはなしに背中の翼で空気を一振りするような仕草をすると、カウンターから総身を現し、こちらへ来るようにちょいちょいと指先であなたを招いた。頬を傾けた斜めの視線のまま、あなたの爪先から天辺までをさっと眄す。
「よし。じゃあ早速、脱いでもらおうか」
――あなたは得物を取り出した!!!
「Σちょおッ待て待て待てッ早まるなソレ仕舞えッ!! 悪かった悪かった、一から説明すっからよ」
長い前髪を掻き上げながら、段取りはこうだとジルバは息をつく。
「先日、お前が送ってくれた服のデザインあったろ? ――ああ、そうだ。お前が生前に暮らしていた世界……つまりは、この世界に転生する前の衣服だな。ソレをウチのパタンナーが形にして作らせてもらった。素材によっては多少差異がある部分もあるかもしれねぇが……お前には今日、そいつに袖を通してもらう」
様々な世界の、様々な衣服。
色、素材、歴史――ジルバは今回、それらを語るデザインを求めていたようだ。
しかし、服のデザインを求めていただけなのなら、何故自分が来る必要があったのか、あなたは問うた。
「お前の世界の、お前の服だぜ? 他のモデルが着ても意味がねぇんだ。オレは思い入れのある服を――つって頼んだろ? ソレを着て、お前がいた世界のことを教えてくれ。空でも、花でも、文化でも、その服を好んで着ることになったルーツでも、何でもいい。話せること、憶えていることでいいからよ。オレに聞かせてくれ」
あなたの語りが、新たな色や形を綴り合わせるきっかけになるのかもしれない。
「フィッティングルームはそこな。何かわかんねぇことや着づれぇ点があったら、そいつ――ファルがすぐ傍で待機してっからよ。声かけてくれ」
ジルバが親指でくいと指し示したフィッティングルームの前には、プラチナアッシュの髪に瑠璃の瞳を持つ一人の人物が佇んでいた。黒のスーツに、斜めに被った黒のハット。黒のグローブに黒のブーツという、黒ずくめのファッションで固めた彼――いや、彼女なのだろうか。その姿は畏怖を覚えてしまいそうなほどの貫禄を帯びている。
「やあ、私はファルセット。この店ではパタンナー兼モデルをしているんだ。今回は美しく色を咲かせる君達を堪能させてもらうとするよ」
性を語らない耳通りのいいハスキーな低音が店に響いた。
「うっし」
一通りの挨拶と説明を終えたジルバが、小気味よく掌を鳴らすと――
「じゃあ早速、お前には一肌脱いでもらうぜ?」
片目を瞑り、ニッと口角を上げた。
流れすらも刑する街――流刑街。
上から下へ。
右へ左へ。
迷々に路々を往くと、“それ”は在る。
最下層の大通りを曲がると、其処は洋服店や雑貨店、カフェやパティスリーなどが建ち並ぶ、勿忘通り。
あなたは、“私を忘れないで”と花言葉を伴う通りの洋服店――『Pomme』の扉を開けた。
林檎の形をしたアンティークのドアベルが透明感を奏でる。その音色に首を起こしたのは、この店のオーナー兼デザイナーのジルバだ。デザイン画だろうか、見比べていた用紙をカウンターに置き、あなたを正面に見据え白い歯を零す。
「よう、顔合わせんのは初めてだよな。ワールドボードに目ぇ通してくれたんだって? オレはデザイナーのジルバだ」
紫水晶の瞳に、髪紐で高く結い上げた亜麻色の長髪。
年は三十路を過ぎた半ばぐらいだろうか、軽薄そうな見目とは裏腹に、妙にどっしりとした構えが印象的の神魔種であった。彼は何とはなしに背中の翼で空気を一振りするような仕草をすると、カウンターから総身を現し、こちらへ来るようにちょいちょいと指先であなたを招いた。頬を傾けた斜めの視線のまま、あなたの爪先から天辺までをさっと眄す。
「よし。じゃあ早速、脱いでもらおうか」
――あなたは得物を取り出した!!!
「Σちょおッ待て待て待てッ早まるなソレ仕舞えッ!! 悪かった悪かった、一から説明すっからよ」
長い前髪を掻き上げながら、段取りはこうだとジルバは息をつく。
「先日、お前が送ってくれた服のデザインあったろ? ――ああ、そうだ。お前が生前に暮らしていた世界……つまりは、この世界に転生する前の衣服だな。ソレをウチのパタンナーが形にして作らせてもらった。素材によっては多少差異がある部分もあるかもしれねぇが……お前には今日、そいつに袖を通してもらう」
様々な世界の、様々な衣服。
色、素材、歴史――ジルバは今回、それらを語るデザインを求めていたようだ。
しかし、服のデザインを求めていただけなのなら、何故自分が来る必要があったのか、あなたは問うた。
「お前の世界の、お前の服だぜ? 他のモデルが着ても意味がねぇんだ。オレは思い入れのある服を――つって頼んだろ? ソレを着て、お前がいた世界のことを教えてくれ。空でも、花でも、文化でも、その服を好んで着ることになったルーツでも、何でもいい。話せること、憶えていることでいいからよ。オレに聞かせてくれ」
あなたの語りが、新たな色や形を綴り合わせるきっかけになるのかもしれない。
「フィッティングルームはそこな。何かわかんねぇことや着づれぇ点があったら、そいつ――ファルがすぐ傍で待機してっからよ。声かけてくれ」
ジルバが親指でくいと指し示したフィッティングルームの前には、プラチナアッシュの髪に瑠璃の瞳を持つ一人の人物が佇んでいた。黒のスーツに、斜めに被った黒のハット。黒のグローブに黒のブーツという、黒ずくめのファッションで固めた彼――いや、彼女なのだろうか。その姿は畏怖を覚えてしまいそうなほどの貫禄を帯びている。
「やあ、私はファルセット。この店ではパタンナー兼モデルをしているんだ。今回は美しく色を咲かせる君達を堪能させてもらうとするよ」
性を語らない耳通りのいいハスキーな低音が店に響いた。
「うっし」
一通りの挨拶と説明を終えたジルバが、小気味よく掌を鳴らすと――
「じゃあ早速、お前には一肌脱いでもらうぜ?」
片目を瞑り、ニッと口角を上げた。
成功条件
| 条件1 | 全員が思い入れのある服に袖を通す |
|---|---|
| 条件2 | 生前の世界や、何故その服を好んでいたかなどのルーツを語る |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | デザインの閃きになるような色や形、素材、モチーフなどを伝える |
|---|---|
| 条件2 | - |
| 条件3 | - |
解 説
舞台は流刑街の最下層にある洋服店『Pomme』
フィッティングルームは少なくとも6室以上の個室がある為、一人一人が焦らずのんびり着替えられます。
OPの通り、PCが予め送っておいた服のデザインを店の方で形にしました。
その服を着て、転生する前の世界のことや何故この服をもう一度着たいと思ったかなど、各々の思い入れを語って下さい。
話を語るのは一人ずつですが、ご友人と一緒に語るのも可です。
服のデザインによっては多少差異を含むかもしれません(例:生地にダイヤモンドを散りばめている→ラインストーンなどで代用)
依頼終了時、服はPCにプレゼントされます。
Q.デザインというか絵を描くのが苦手なので上手く伝えられているか不安なんですけど…。
A.ご安心下さい。空気を読んでちゃんと調整しております。
>NPC
ジルバ:
洋服店『Pomme』のオーナー兼デザイナー。神魔種。
今回の依頼人。PCの話を聞くのは主に彼。軽薄そうに見えて、懐が深い人物。
ファルセット:
洋服店『Pomme』のパタンナー兼モデル。人間種。
美は正義と謳う男装の麗人。
※プレゼントはフレーバー的な意味合いの為、実際にアイテム配布があるわけではありません。
マスターより
ハイブリッドヘブンの世界へようこそ。
MSの愁水です。
一人一人に大切な世界があり、形作ってきた物語があるかと思います。その想いを少しでもいいので、ジルバや私に教えて下さい。
バッハの「プレリュード」を流しながら皆様のご参加、心よりお待ちしております。
参加キャラクター
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- リムナンテス(ma0406)
- 神魔種|女
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- 魅朱(ma0599)
- 剛力種|女
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- ルナール・レルム(ma0312)
- 機械種|男
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- 月読 結(ma0552)
- 人間種|女
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- アリエス(ma0727)
- 人間種|女
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- ロザーリア・アレッサンドリ(ma0458)
- 人間種|女
- リプレイ公開中




