オープニング
天獄界エンブリオ。ここには既に滅んだとされる異世界の破片が、神々達にサルベージされ、浮かんでいることがある。
咎人達はそれを浮遊大陸と呼んだ。
今回は、そんな大陸の一つのお話。
●忘れられない思い出を
その島はとても小規模であった。島なんて言う物ではない。いっそ山と言ったって良い。そんな小降りな島の頂上を調査隊は目指した。どうやら敵対する存在もしない、本当に平和な場所のようだ。咎人達が束の間の森林浴を楽しんでいれば、頂上近く、開けた場所に出た。
そこには小さな遊具の置かれた庭。その隣には、テンペストにあるような二階建てのコンクリートの直方体の建物があった。
建物内部に入れると思わしきアルミサッシの引き戸を開ければ、目の前には教室のような空間が広がっていた。
ロッカーに、これまた黄色の小ぶり肩掛けカバンがずらり。その近くには頭からすっぽり被る服、俗に言うスモッグがハンガーにずらりと掛けられている。
テーブルに、椅子どれもこれが大人の膝小僧くらいまでの高さだ。
「子供用なのか?」
調査隊の咎人の一人、サキチがポツリと呟く。だが、小学生にしては小さすぎる。となれば、保育園、または幼稚園の類いなのかも知れない。屋内を彼は改めて見渡す。まだ新しい。蛍光灯は寿命を示す点滅すら迎えず、カバンやスモッグが風化した後すら見当たらない。
見るものがみれば、ただ児童達がお昼休みで外の庭に遊びに行ったのだろうと思ってもおかしくない。
そのお昼休みはもう、永遠に終わることはないのだが……
ニー………ャ……ィ
「佐吉向こうから何か聴こえないか?」
彼と付き合いの長い咎人。ミヨシがいち早く音に気付いて他の咎人、サキチにそれを伝える。
凄く微かだが高めの獣の声、だろうか。もしや、ここの人間を襲った生物かも知れない。
声のする場所、恐らく遊具室と思わしき場所に到着し、調査隊達は扉を開けた。
部屋には本来あるであろう遊具は端に片付けられ、変わりに真四角の浅く大きな水槽が置かれていた。
ニィー………ミャー
……
声はそこから聴こえるようだ。サキチとミヨシが恐る恐る水槽を覗く。水槽の中は真っ白で、まるでキャンパスにだって見える。広い広いその場所にあったのはただ二つ。
木製の一軒家と甘い香りのする手のひら程の大きさの猫だった。
「甘味が動いてる!?」
その猫はいわゆるクッキーで出来ている。とぼとぼと足取り重く、家の回りをクルクル回っている。
「なんか……さびしそうだな、オマエ」
先程ビックリしたのも忘れ、ミヨシはクッキーネコを観察していた。猫はクッキーらしく平面だが、どこかデフォルメされて愛くるしい見た目だった。誰にでも好まれそうなデザイン、と言うやつだ。
ふと、サキチは気付く。遊具の上に沢山の書類がおかれていることに。一枚を取れば、中身を眺めた。紙には字よりも、手書きの絵がふんだんに使われていた。字も漢字は一切なく、全てひらがなとカタカナで構成されている。恐らく、児童達に配られる予定のプリント、と言うやつだろう。
タイトルは『ネコちゃんのおともだちをつくってあげよう』となっていた。ひとりぼっちのネコちゃんに、おともだちをつくろう、と書かれていて。
友達とは、特殊な小麦ねんどで作るらしい。確かに、とサキチが傍らを見れば、様々な色のねんどがレンガの如く積まれていた。
更に詳しく説明を見ると、どうやら出来上がったねんどを焼いて、この水槽内部に入れると……動くらしい。
食べても美味しい、とも書かれている。
「……式神みたいだな」
擬似的に命を吹き込むその技術を、サキチは知らないワケではなかった。
そしてプリントの最後は、こんな風に書いて終わっていた。
『みんなのおともだちが、おきおわったら、おうちのドアをくぐろう! わすれられないおもいでになるよ!』
その言葉と共にドアが描かれていた。プリントから視線を外し、同じ家が、この遊戯室に存在している事に彼は今更気付いた。
その建物には、大人が屈まないと入れないほどのプラスチックのドアが取り付けられていた。
(待てよ、このドアはさっき……)
ふと、サキチは思い出す。彼は再び水槽に目を向ける、そこにはミヨシがクッキーネコに話しかけようとして、怖がって家の後ろに隠れた姿が見えた。
「やっぱり、あの家だ」
何かを確信したかのように、サキチは目の前のドアノブを回し、押し開ける。
そして、視線は水槽の中の家へ。予想通り、いつの間にか水槽の中の家のドアが開いていた。
(なるほどな……忘れられない思い出、か)
少し悲しそうにサキチは肩を落として、ドアを閉める。
「なー、佐吉」
ミヨシがサキチに駆け寄る。言いたいことは、聞かずともわかっていたし、いっそ自分から提案するつもりもあった。
「わかっている。なぁオレ達で作れねぇかな?」
サキチが他の咎人達に向き直る。調査した限り、ここには敵も障害もない。この浮島の調査はほぼ終わったと言っても良い。
だから、粘土を捏ねる必要なんてほぼないのだ。
けど、それでも。サキチはきっと楽しみにしていただろうに、何も出来なかった児童達の想いを叶えたい。ミヨシは、誰もいない独りぼっちのクッキーネコに友達を用意したい。
そんな願いを、彼らは皆さん咎人達に伝えるのだった……
二人に応えるように、またクッキーネコがふたたび小さく鳴いたのだ。
咎人達はそれを浮遊大陸と呼んだ。
今回は、そんな大陸の一つのお話。
●忘れられない思い出を
その島はとても小規模であった。島なんて言う物ではない。いっそ山と言ったって良い。そんな小降りな島の頂上を調査隊は目指した。どうやら敵対する存在もしない、本当に平和な場所のようだ。咎人達が束の間の森林浴を楽しんでいれば、頂上近く、開けた場所に出た。
そこには小さな遊具の置かれた庭。その隣には、テンペストにあるような二階建てのコンクリートの直方体の建物があった。
建物内部に入れると思わしきアルミサッシの引き戸を開ければ、目の前には教室のような空間が広がっていた。
ロッカーに、これまた黄色の小ぶり肩掛けカバンがずらり。その近くには頭からすっぽり被る服、俗に言うスモッグがハンガーにずらりと掛けられている。
テーブルに、椅子どれもこれが大人の膝小僧くらいまでの高さだ。
「子供用なのか?」
調査隊の咎人の一人、サキチがポツリと呟く。だが、小学生にしては小さすぎる。となれば、保育園、または幼稚園の類いなのかも知れない。屋内を彼は改めて見渡す。まだ新しい。蛍光灯は寿命を示す点滅すら迎えず、カバンやスモッグが風化した後すら見当たらない。
見るものがみれば、ただ児童達がお昼休みで外の庭に遊びに行ったのだろうと思ってもおかしくない。
そのお昼休みはもう、永遠に終わることはないのだが……
ニー………ャ……ィ
「佐吉向こうから何か聴こえないか?」
彼と付き合いの長い咎人。ミヨシがいち早く音に気付いて他の咎人、サキチにそれを伝える。
凄く微かだが高めの獣の声、だろうか。もしや、ここの人間を襲った生物かも知れない。
声のする場所、恐らく遊具室と思わしき場所に到着し、調査隊達は扉を開けた。
部屋には本来あるであろう遊具は端に片付けられ、変わりに真四角の浅く大きな水槽が置かれていた。
ニィー………ミャー
……
声はそこから聴こえるようだ。サキチとミヨシが恐る恐る水槽を覗く。水槽の中は真っ白で、まるでキャンパスにだって見える。広い広いその場所にあったのはただ二つ。
木製の一軒家と甘い香りのする手のひら程の大きさの猫だった。
「甘味が動いてる!?」
その猫はいわゆるクッキーで出来ている。とぼとぼと足取り重く、家の回りをクルクル回っている。
「なんか……さびしそうだな、オマエ」
先程ビックリしたのも忘れ、ミヨシはクッキーネコを観察していた。猫はクッキーらしく平面だが、どこかデフォルメされて愛くるしい見た目だった。誰にでも好まれそうなデザイン、と言うやつだ。
ふと、サキチは気付く。遊具の上に沢山の書類がおかれていることに。一枚を取れば、中身を眺めた。紙には字よりも、手書きの絵がふんだんに使われていた。字も漢字は一切なく、全てひらがなとカタカナで構成されている。恐らく、児童達に配られる予定のプリント、と言うやつだろう。
タイトルは『ネコちゃんのおともだちをつくってあげよう』となっていた。ひとりぼっちのネコちゃんに、おともだちをつくろう、と書かれていて。
友達とは、特殊な小麦ねんどで作るらしい。確かに、とサキチが傍らを見れば、様々な色のねんどがレンガの如く積まれていた。
更に詳しく説明を見ると、どうやら出来上がったねんどを焼いて、この水槽内部に入れると……動くらしい。
食べても美味しい、とも書かれている。
「……式神みたいだな」
擬似的に命を吹き込むその技術を、サキチは知らないワケではなかった。
そしてプリントの最後は、こんな風に書いて終わっていた。
『みんなのおともだちが、おきおわったら、おうちのドアをくぐろう! わすれられないおもいでになるよ!』
その言葉と共にドアが描かれていた。プリントから視線を外し、同じ家が、この遊戯室に存在している事に彼は今更気付いた。
その建物には、大人が屈まないと入れないほどのプラスチックのドアが取り付けられていた。
(待てよ、このドアはさっき……)
ふと、サキチは思い出す。彼は再び水槽に目を向ける、そこにはミヨシがクッキーネコに話しかけようとして、怖がって家の後ろに隠れた姿が見えた。
「やっぱり、あの家だ」
何かを確信したかのように、サキチは目の前のドアノブを回し、押し開ける。
そして、視線は水槽の中の家へ。予想通り、いつの間にか水槽の中の家のドアが開いていた。
(なるほどな……忘れられない思い出、か)
少し悲しそうにサキチは肩を落として、ドアを閉める。
「なー、佐吉」
ミヨシがサキチに駆け寄る。言いたいことは、聞かずともわかっていたし、いっそ自分から提案するつもりもあった。
「わかっている。なぁオレ達で作れねぇかな?」
サキチが他の咎人達に向き直る。調査した限り、ここには敵も障害もない。この浮島の調査はほぼ終わったと言っても良い。
だから、粘土を捏ねる必要なんてほぼないのだ。
けど、それでも。サキチはきっと楽しみにしていただろうに、何も出来なかった児童達の想いを叶えたい。ミヨシは、誰もいない独りぼっちのクッキーネコに友達を用意したい。
そんな願いを、彼らは皆さん咎人達に伝えるのだった……
二人に応えるように、またクッキーネコがふたたび小さく鳴いたのだ。
成功条件
| 条件1 | 水槽の中に、粘土で友達を造る。 |
|---|---|
| 条件2 | - |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | クッキーネコちゃんを喜ばせる。 |
|---|---|
| 条件2 | みんなでこのイベントを楽しむ。 |
| 条件3 | - |
解 説
水槽
遊具室に置かれた深さ10cmほどの浅い大きな水槽。まっさらな地面と家とクッキーネコがいるだけ。この中で、不思議な小麦粉を材料とした物は、生きているかのように動く。
クッキーネコちゃん
クッキーで出来たデフォルメされた精巧な猫。ひとりぼっちでさびしそう。
不思議な小麦ねんど
様々な色が存在する。好きな形に捏ねることが出来て、オーブンで焼いてから水槽にいれると動き出す。
児童用ねんどのためか、口に入れても安全なもの。『食べると美味しい』
他、食用クレヨン
水槽の床にお絵かきが出来る、クレヨン。もちろん、食べれる。
忘れられない思い出。
水槽内部が完成した後、遊戯室にある家に入ることで、『忘れられない思い出』になるらしい。
家に入るかは、PCにお任せ。尚、サキチは家に入るとどうなるか勘づいた模様。危険はない。
応用編
この建物には、調理室と思わしき場所がある。不思議な小麦粉が置いてあり、自由にお菓子を造ることも可能。砂糖等の材料も一通り揃っている。
NPC
サキチとミヨシ
二人の咎人の男性で、今回のお願いの依頼者。生前が同じ世界観だったのか、良く一緒にいる。特にサキチは子供が昔から好きらしい。
マスターより
こんにちは、月宵です。叶わなかった子供達の夢。もし、この世界が滅びていなければ、きっとクッキーネコにも友達がいたことでしょう。
子供の頃に戻って、ねんど遊びしませんか?
あなたに忘れられない思い出を……
参加キャラクター
-

- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
-

- マイナ・ミンター(ma0717)
- 人間種|女
-

- 如月 朱烙(ma0627)
- 人間種|女
-

- シア・ショコロール(ma0522)
- 人間種|男
-

- 六道煉龍(ma0646)
- 人間種|男
-

- 白花・C・琥珀(ma0119)
- 人間種|女
- リプレイ公開中




