オープニング
元々は魔法文明が栄えていたが、『大憲章』という神秘を否定する術が実行されて以来、科学文明を発達させてきた世界、アルビオン――。
アース帝国の領土であるグリズリー鉱山とイストリア公国の間に位置する、周囲を険しい山に囲まれた国ディナッハ公国も、度々アース帝国に国境を脅かされていた。
ディナッハ公国ではアシストアーマーの開発・製造に力を入れており、険しい山という地形のおかげもあって、どうにか帝国を食い止めているという状態だった。
そのアシストアーマー製造国内最大の企業がディケト重工である。
ディケト重工のCEOには一人息子がいて、彼――キュリア・ディケト(mz0137)――が先日国境の前線基地を訪れた際、帝国の巨神機の前に自ら出て行き、左腕の肘から先を無くすという大怪我を負ってしまったのだった。
キュリアは上級の神秘刻印が顔にあることで、彼なりの悩みを抱えて来た結果の出来事だった。
幸いディナッハ公国はサイボーグ技術も進んでおり、戦争や事故、病気などで手足や身体の一部を失ってしまった人達のために、機械の義手や義足を繋ぐということができる。
普通の人間以上の身体能力が出せるわけではないが、見た目は生身と何ら変わらないように製作できるし、リハビリすれば以前の動きを取り戻せるのだ。
そしてキュリアはサイバー手術を経て、左腕の肘から先が機械の義手になったのだった。
それから一週間後――。
咎人達はディナッハ公国の中心部にある、高層ビルの最上階の高級レストランに招待された。
●父の頼み
「今日は招待を受けてくれて感謝します、女神の騎士の皆さん」
ディケト重工CEO、すなわちキュリアの父親のミハウ・ディケトが咎人達の前で挨拶した。
キュリアもその隣に神妙な顔で並んで立っている。
咎人達は今レストラン内の大きなテーブルに座らされており、まずは話を聞いて欲しいというディケト親子の言う通りにしているのだった。
レストランは貸し切りなのか、他に客はいない。
高級レストランなだけあって、素人目にも内装が凝ってるのが分かるし、テーブルも椅子も照明もオシャレだ。
一方の壁は全てガラス張りで外が見え、高層階からの街の眺めもすごい。
――というのを見る前に、おほん、とキュリアの父親が咳払いして皆の注意を引いた。
「先日キュリアが大怪我をしたと報された時はとても驚いたが、皆さんのおかげで命拾いしたと聞きました。息子を助けていただき、本当にありがとう」
しっかりと頭を下げる。
「ありがとうございました!」
父と一緒に、キュリアも頭を下げた。
「キュリアに、あなた方にちゃんと謝れていなかったから謝りたいと相談されてね。私からの感謝の意も込めて、あなた方をここに招待させてもらった。どうか息子の謝罪を聞いてやって欲しい」
父の目配せを受け、キュリアは小さくうなずいて話を引き継ぐ。
「あ、あの……この間は迷惑かけてしまって、ごめんなさい!」
がばと再度頭を下げ、そのまま言葉を続ける。
「僕がバカだったって、分かったよ。もう二度とあんなことしません。僕のことは許せないかもしれないけど……、僕があなた達に出来ることはこれくらいしか思いつかなくて……だからせめて、今日はここの料理を楽しんで行ってください!」
今度は顔を上げて、
「ここは二つ星の有名店で、ビュッフェだけどメニューが豊富なんだよ。スイーツも色々あるし、どの料理も美味しいんだ! あ、足りないものとかあったら、僕に言ってくれれば何でもやるから! あと、ここは景色もすごくてね、上は展望台になってるし、あっちには外に出られる所もある。興味があったら言ってね!」
明るく笑って言った。
数々の料理が並ぶテーブルを示すように広げたキュリアの左手は義手なのだが、普通の人の手と変わらず全く違和感がない。ただ、リハビリを始めたばかりなのでまだ動きは鈍かった。
「キュリア、厨房へ行ってさっき遅れていたスイーツの様子を見て来てくれ」
「分かった」
父に言われ、キュリアが一般の客が立ち入れない店の奥へ行ってしまう。
それを見計らい、父ミハウは女神の騎士に向き直った。
その顔はどこか深刻そうで、咎人達は疑問に思う。
「……あなた方にこんなことを言うのは筋違いかもしれないが……、どうか聞いて欲しい」
「……?」
ミハウが何を言いたいのか分からないながらも、耳を傾ける咎人達。
キュリアを向こうにやってから言うということは、彼に関することなのだろう。
「キュリアは本当に反省しているし、あなた方にちゃんと謝りたいという気持ちは本心だ。だが……、何だか無理している気がするのだよ」
父だからこそ分かる息子の内面の不自然さ。
「今回のことがあってから、あの子は急にうちの会社のことやサイバー技術に興味を持ち始めてね。そういう方面であなた方への償いのために何かできないかと考えているらしい。それ自体は良いことだし私としても嬉しいのだが……、罪の意識からやり始めたのだと思うと、少し不安なのだ。罪悪感を持ち続けたままでは、やがて心が潰れてしまうのではないか……?」
これまでCEOらしく堂々とした態度のミハウは、わずかに辛そうな表情を浮かべた。
「できれば、キュリアには純粋な『誰かのために』という思いで取り組んで欲しいのだ。あの子は顔に上級の刻印があるせいで、結局刻印の持つイメージから逃れられない。だから、息子を導けるのは刻印のイメージが現実となった、『女神の騎士』たるあなた方だけだと私は思っている」
ミハウの眼は真摯に子を心配する親の眼だ。
「キュリアが前向きにあなた方と関われるように……どうか導いて欲しい。息子の命を助けてもらった上にこんなことまで頼んでしまって、図々しいと思われるかもしれないが……どうかお願いします」
改めてミハウに頭を下げられて、咎人達はお互い顔を見合わせる。
「父さん、オッケーだって!」
「おお、そうか! それでは女神の騎士達、ご自由に食事をお楽しみください!」
キュリアが戻って来て、高級レストランでの食事会が始まった。
成功条件
条件1 | キュリアの謝罪を受け入れる |
---|---|
条件2 | 食事会を楽しむ |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | キュリアの気持ちを幾分楽にする |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
※キュリアの謝罪を受け入れ、食事会を楽しみましょう。
〈レストラン〉
・ビュッフェで、和、洋、中、伊、スイーツ等、ありそうな料理はあることにしていただいて構いません。お好きな物を取って来て食べましょう。どれも美味しい。
・店の片側の壁は全てガラス張りになっていて、窓際の席は高層階からの眺めを見ながら食事ができます。
・食事が終わった後は、上階の展望台でさらに景色を楽しむことができます。360度、ディナッハを取り囲んでいる山々が良く見えるでしょう。
・店の一角には外に出られる張り出しがあり、命綱を付けてその突端まで行き高所を堪能する体験ができます。
〈キュリアについて〉
・心の中ではものすごく自己嫌悪に陥っていて、結局自分は上級の神秘刻印があったって何もできないダメ人間なんだと、今まで以上にコンプレックスを拗らせている。
・最近父の会社ディケト重工についてやサイバー技術の勉強を始め、咎人達に償いをしたいと思っているが、何をすればいいのか分からない。
・咎人にもう迷惑をかけたくないため必要以上に明るく振る舞い、「飲み物持ってこようか?」とか「ひざ掛けいる?」など、あれこれ世話を焼こうとする。
・左腕はまだうまく動かない。見た目は生身の腕と見分けがつかないくらい良くできた義手。
・父ミハウは仕事のことでちょいちょい席を外す。
※大成功条件を達成するには、キュリアを突き放さないことが肝心です。
・キュリアの本当の気持ち(上記のようなこと)を聞いてあげて、彼がやろうとしていることにPCなりにアドバイスする。
・PCはキュリアを迷惑でダメな人間だと思っているのか、感じていることを言う。
・その他キュリアの罪悪感を軽くできるようなことを言う。
などしてみると良いでしょう。
※前回のシナリオに参加していなくても、報告書などで経緯を知っているということで参加していただいて構いません。
マスターより
こんにちは、久遠由純です。
今回はちょっと息抜き、みたいなシナリオです。
ここでキュリアを元気付けてあげると、今後力強い味方に成長するかも?
――かどうかは、皆さんの行動次第です。まあ充分痛い目見たし、反省してますので……。
二つ星レストランのお食事もぜひお楽しみください。食事とその後(キュリアとの対話や展望台に行ってみる等)は半々くらいで書いていただけたらと思います。
よろしくお願いします。
関連NPC
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- キュリア・ディケト(mz0137)
- 人間種|男
参加キャラクター
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
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- シアン(ma0076)
- 人間種|男
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
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- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
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- 歩夢(ma0694)
- 人間種|男
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- 鈴鳴 響(ma0317)
- 神魔種|女
-
- 天野 イサナ(ma0022)
- 人間種|女
- プレイング受付中
- 2023/05/31 10:30