オープニング
銃弾が、剣先が、魔力が、一人の簒奪者に突き立った。
いずれも致命だ。命を裂かれた簒奪者が血を吐き、地に膝を突く。それでも咎人は皆残身を示し、得物を下ろさない。
もう一人簒奪者がいた。今倒れ伏した簒奪者と同じ姿。まるで鏡に映したようなそれは、身じろぎ一つせず自らの片割れが血に沈むのを眺めていた。
双子の簒奪者だ。だらりと垂れた前髪は嘴のように顔を覆い、その隙間から赤黒い瞳がわずかに覗いていた。
『……我の比翼を、よくぞ倒した』
背格好から、若い簒奪者と想像していた。それゆえに、咎人達の意識の切っ先がわずかに震えた。聞こえてきたのはしゃがれた老人の声。意識の外から飛び込んできたそれが、意識の根底から不快感を湧き上がらせ、歴戦の咎人達に怖気を走らせたのだ。
言葉と同時に簒奪者の背が弓なりに曲がり、両腕が振り払われるように広がった。遠目に見ればそれは……或いは、鴉のように見えるかもしれない。
『だが、だからこそ貴様らも比翼を失いたまえ。そして二度と飛べないよう……』
何をするかは分からない。が、それならばただ早く始末するだけだ。一歩で地を抉り、二歩で宙を奔り、一人の咎人が振るった白刃が簒奪者のシールドに突き立った。
おそらく、簒奪者が何かをする暇はなかった……そう思う。前衛の一撃を確認した瞬間、後衛達の神威が叩き込まれたからだ。
「…………っ」
が。とどめを確認するよりも早く、前衛が突如体を傾かせ地面に倒れ伏す。倒れた本人も困惑したようにもがき、立ち上がろうとするが体が上がらない。離れた箇所からそれを見た咎人もまた、声も無く地面に倒れる。
「……!?」
毒か。それにしてもあまりに即効性が高い。ただ構える事しかできなかった貴方の元にも簒奪者が放った呪いが押し寄せる。それが指先に触れ、体の芯に触れたところで貴方は理解する。
自らを構成するイデアが二つに裂かれていく。だが、それは必ずしも致命を意味しない。貴方と言う存在を構成する概念が奪われているのだ。
先に倒れた咎人は、半身の感覚を奪われた。もし自らの力を誇示するものならば身体能力の半分を奪われるのだろう。人との繋がりを大事にするものならば、友人の記憶を失うのだろう。
簒奪者は完全に神威を発揮する前に攻撃を受けた。この呪いも、おそらく長く効果を発揮するものではない。だが、たとえ短い間でもあなたは大切な何かを奪われることになる。
『咎人よ、我が比翼を殺めたのだ。然らば、貴様らも死にたまえ……!!』
簒奪者が、身を起こす。決して無傷ではない、多くの傷から血を流し、それでも両手の鉤爪を構える。その姿にある者は息を呑み、ある者はただ地面を睨み……ある者は武器を手に取る。
突如半身を失った痛みに襲われていようとも、貴方は咎人だ。然らば、戦う義務がある。たとえどのような姿でも。どのような心境でも。
いずれも致命だ。命を裂かれた簒奪者が血を吐き、地に膝を突く。それでも咎人は皆残身を示し、得物を下ろさない。
もう一人簒奪者がいた。今倒れ伏した簒奪者と同じ姿。まるで鏡に映したようなそれは、身じろぎ一つせず自らの片割れが血に沈むのを眺めていた。
双子の簒奪者だ。だらりと垂れた前髪は嘴のように顔を覆い、その隙間から赤黒い瞳がわずかに覗いていた。
『……我の比翼を、よくぞ倒した』
背格好から、若い簒奪者と想像していた。それゆえに、咎人達の意識の切っ先がわずかに震えた。聞こえてきたのはしゃがれた老人の声。意識の外から飛び込んできたそれが、意識の根底から不快感を湧き上がらせ、歴戦の咎人達に怖気を走らせたのだ。
言葉と同時に簒奪者の背が弓なりに曲がり、両腕が振り払われるように広がった。遠目に見ればそれは……或いは、鴉のように見えるかもしれない。
『だが、だからこそ貴様らも比翼を失いたまえ。そして二度と飛べないよう……』
何をするかは分からない。が、それならばただ早く始末するだけだ。一歩で地を抉り、二歩で宙を奔り、一人の咎人が振るった白刃が簒奪者のシールドに突き立った。
おそらく、簒奪者が何かをする暇はなかった……そう思う。前衛の一撃を確認した瞬間、後衛達の神威が叩き込まれたからだ。
「…………っ」
が。とどめを確認するよりも早く、前衛が突如体を傾かせ地面に倒れ伏す。倒れた本人も困惑したようにもがき、立ち上がろうとするが体が上がらない。離れた箇所からそれを見た咎人もまた、声も無く地面に倒れる。
「……!?」
毒か。それにしてもあまりに即効性が高い。ただ構える事しかできなかった貴方の元にも簒奪者が放った呪いが押し寄せる。それが指先に触れ、体の芯に触れたところで貴方は理解する。
自らを構成するイデアが二つに裂かれていく。だが、それは必ずしも致命を意味しない。貴方と言う存在を構成する概念が奪われているのだ。
先に倒れた咎人は、半身の感覚を奪われた。もし自らの力を誇示するものならば身体能力の半分を奪われるのだろう。人との繋がりを大事にするものならば、友人の記憶を失うのだろう。
簒奪者は完全に神威を発揮する前に攻撃を受けた。この呪いも、おそらく長く効果を発揮するものではない。だが、たとえ短い間でもあなたは大切な何かを奪われることになる。
『咎人よ、我が比翼を殺めたのだ。然らば、貴様らも死にたまえ……!!』
簒奪者が、身を起こす。決して無傷ではない、多くの傷から血を流し、それでも両手の鉤爪を構える。その姿にある者は息を呑み、ある者はただ地面を睨み……ある者は武器を手に取る。
突如半身を失った痛みに襲われていようとも、貴方は咎人だ。然らば、戦う義務がある。たとえどのような姿でも。どのような心境でも。
成功条件
条件1 | 呪いが解けるまで生存する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | 呪いが解けるまで生存する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
【簒奪者:比翼連理】
二人で一つ、双子の簒奪者。かなり記憶を消耗していたため、今回が最初で最後の登場だろう。
特殊な手順を踏んだ後二人が死ぬことで発動する強力な呪いを持っているのだが、今回は手順を全て踏めておらず不完全な形で発動している。ある程度時間が経過することで呪いは解ける。
呪いが本体であり、比翼連理自身の戦闘力は驚くほど低い。半身を失った咎人でも、工夫次第で十分に渡り合えるだろう。
【呪い:比翼の鴉】
この呪いが掛かったPCは、貴方にとって大切な片割れを失うことになる。それはステータスか、己の体か、大切な人の記憶か……
もっとも、失うというのは『認識できなくなる』だけであり、物理的に消失しているわけではない。
この呪いが掛かった状態では、シナリオを通して一度しかスキルを発動できない。よく考えて発動する必要がある。
マスターより
皆様、お久しぶりです! 私生活が落ち着きましたので、再度MS活動を再開させて頂こうかと思います。少しずつエンジンをかけていくのでよろしくお願いします!
今回もまた、天川シナリオによくある『エキスパートだけど実質カジュアルシナリオ』です。ステータスとか気にしないで下さい。半身を失ってなおもがき戦うPC達のプレイングをお待ちしております。
参加キャラクター
- リプレイ公開中