- 危険
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このシナリオは難易度が高く設定されています。
戦闘により大きなダメージを受けてしまった場合、キャラクターの基本設定が忘却状態になることがあります。
基本設定が4つ全て忘却状態になると、キャラクター自身が死亡状態となり、ログイン及びコンテンツへのアクセスが制限されます。
オープニング
「何? 今更ここで裏切るとか思ってる? まあそうか。でも本当、僕は別にもういいよ。これ以上生きてたって、今以上に充実することなんてないだろうしさ」
そうしてそこに居た相手は、事も無げにそう答える。
「……今滅んだ方が、多くの奴にとってもある意味幸せなんじゃないかな。結局、真実は真実なんだからいつか誰かが暴いちゃうんだよ。でもそれに耐えられる奴なんて一握りだ。皆真実を受け止めて乗り越えて強くなったんだ、なんて、そんなの生存バイアスだろ」
ふむ、とハルクは頷く。相手に共感はしない。ハルクはどちらかと言えば相手の言う「強い存在」側の人間だ。オルファの言に従えば、本来の生を全うするまでに成し得なかった自分に、己の本懐を遂げる可能性など残っていないのかもしれないが。それでも成したいことの為に突き進むという生き方を変えるつもりはない。
だが相手は本当にそれで納得しているのだろう。そう理解も出来る。羨まれるような傑出したものもなく、憐れまれるほど惨めでもない。それ故に誰からも意識されない、その立場を、それでいいのかと問わずにいられない状況にあった者。己の平凡さをはっきりと自覚し続けたが故に、平凡な者とはどうあるのかをよく知っている者。
(『可能性』の限られた宇宙、か)
だというなら。この結果が、今目の前のこの者こそが「平凡から脱する」事を成し遂げたということなら。あれは。初めから。
そこまで考えて、ハルクはかぶりを振る。詮無い事だ。これが正義だと言い張るつもりなどない。全ては、己の生き様の為に力を求めて、そのために。
「ここまでの同盟に感謝する。ザレイド=ボイジャーよ」
「うん。僕もあんたとの国盗り、楽しかったよ」
ハルクはそうして、改めて剣を振り上げた先に向き直る。
ゴールデンレコード──この世界の特異点。
懐地界メトレトロという世界が、未来へ繋がる運命を定めた時。
別の世界が一つ、こうして破滅を迎えていた。
●
茜と紺の入り混じる、薄暗い夕暮れ景色。
そこにある全てが影となり、輪郭を曖昧にする。
昼と夜が。
現世と幽世が。
懐かしさと寂しさが。
すべてが曖昧となり、故にこそあらゆるものが滲み出る。
その中で、何かの境界を示すかのようにそびえたつ一本の木の元。
形代が一つ、そこに浮かび上がっている。
神楽が奏でられていた。
その音によって器に引き寄せられるものを、審神者なるものが見定める。
「──かの御方が、いらっしゃいましたよ」
やがて一句一句に霊力を込め、その言葉が紡がれると。
『なんじゃ。そなたらではないか。あれなる結びを紡ぎわらわと別ったと思えば瞬きもせぬうちに呼び出すとは。些か形無しというものではないかえ?』
ヨモツノカミが、そこに浮かび上がるのだった。
世界を破滅させずに創り出す、新たなる世界武装。
一つの世界をその力の源とするには、咎人が「特異点を安定化させる際に立ち会ってる世界」である必要がある。
懐地界メトレトロも、その条件を満たす世界の一つだ。
かくしてクルハ(mz0014)と共に、ジィト(mz0039)ら何名かの咎人が、再び懐地界を訪れることになった。
これまでの経緯から、あやこちゃん(mz0157)が世界法則接続者である事は特定されている。彼女を介して、世界そのものの力を扱うが如き存在と接続するとなると、ヨモツノカミが最も適切だろう、という結論に時間はかからなかった。
とはいえヨモツノカミは仏御霊となった時点で、他の強大な神々と同様、世界を運用していくための概念的な存在となっている。
そんな彼女とどうやって交渉するかというと、藤守神社の神様の協力なども経て、古来からの和ノ国における「巫」と「審神者」による神託の儀がここに執り行われたのだ。
ということで、実際にはヨモツノカミがこの場に顕現しているわけではない。その一部があやこちゃんに宿り託宣を紡ぎ、本来は婉曲的で難解なそれを伊佐美 秀介(mz0156)が解釈して伝えている、という状況になる。
だが、あやこちゃんという器の能力により一部でも圧倒的に感じられるヨモツノカミの存在感に、それが秀介の語りによって投影されることで、全員がある種のトランス状態となって、ヨモツノカミと直接会話しているのとほぼほぼ変わらない感覚になっていた。
なお、あやこちゃんも秀介も滅茶苦茶消耗するので、今後もこの方法で気軽にヨモツノカミに会わせてくれと言われると困る点は述べておく。
「……っていうことで、この世界の力を一部俺たちに預けてくれねえかってことなんだが」
そんな感じで、ジィトがヨモツノカミに説明してお願いする。
『……そなたらは、この世界の在り様を司るこの地が、何故にこのようになっておるかは理解しておるかえ?』
やがてヨモツノカミは、ゆっくりとそう告げた。
『表の世界に生きるものを、裏の住人たちが支える。それがこの世界の軸である』
変化し成長していく人間たちの都合に自然に合わさるように、妖怪たちは人の想像力や信仰というものによって在り方が定められるようになっている。
人間は超常のものへの想いを完全に架空のものと思ってはならないし、かといってそれらに想いを寄せ過ぎれば妖怪の力が氾濫する。
懐地界における世界意志とは表と裏の存在の距離感が適切なものであること。故に誰もが一度はその存在を感じ、信じる時期があり、しかしある程度経てば一部の素養のある者たち以外はそうしたものから離れていくようになる。そうした無意識を象徴する風景であるのがこの特異点、天獄界がきさらぎ駅と名付けたここなのだ。
ちなみに、もっと裏側の存在が人類の存続に必要で公的なものだった──例えば陰陽寮とかがちゃんと公職として存在した──時代なんかは、また違う景色だったらしい。
『いずれ別れが訪れる事、旧きものはやがて消え去ることを、この世界は必定のものとして組み込んでおる』
人が成長するにつれゆっくりと表の世界と裏の世界の距離は離れていくことも、この世界は必要な流れとして設計している。
『わらわも生と死を司る神として。寿命が尽きたものを無理に永らえるというのであれば安易には頷けぬ』
要するに。話を一聞した限りでは、この宇宙を壊すべき、というハーベスターやオルファの言い分に対して、この世界の在りようからしたら文句を言う筋でもないのでは、ということになるのだと。
『死や終焉の運命を覆そうとした結果、禁忌に触れてより悲劇を齎したという話は幾らでもあろう。あの宿六を筆頭に。あの宿六を筆頭に』
二回言った。
実感と説得力があり過ぎた。
「……。言いてえ、ことは、分かるんだけどよ。それでもやっぱ俺は、『終わりです、綺麗さっぱりなくなります』って急に言われて、はいそうですか、って大人しく納得は、出来ねえんだ。今いる場所に、大事な奴がいて……俺はそれを、簡単に諦めたくねえ!」
『そうじゃの。じゃからわらわが言うのは「無理に永らえるならば」の事じゃ』
ヨモツノカミはそうしてここで、穏やかな声音に変えた。
『思うにわらわが一度顕現せしめたのは、この国より人と妖怪の均衡が崩れることが確たるものと感じた世界意志の後押しもあったのじゃろう。じゃがその認識が誤りであったことはそなたらや、今わらわを投影せし巫覡によって改められた』
あやこちゃんと秀介などを見れば。まだこの世界は、このまま、住民たちに託してみても問題ないだろうと。そしてそう物語を導いたのは咎人たちだった。
だから。「必定の別れ、終わり」なら止め立てするのもはばかれるが。そもそも滅びるしかない、というのが誤りであるのならば。
咎人たちが再び奇跡を起こし、歪みのない方法で宇宙を、この世界の我が子らを救ってくれるというのならば。ヨモツノカミとしてはそれは、やぶさかではない。
……なんだかんだ、咎人の見せたそのひたむきさと純粋さを、ヨモツノカミは愛おしく思ったのだから。
『故に、安易に破滅を先延ばしにすることには頷けぬ。そなたらの為そうとしていること、それにどのくらいの可能性があるのかを示してもらうとするかの』
「そりゃ分かったけど……どうやって?」
『そうじゃの……ふむ? 成程、今まさに、丁度よいのが、来やる』
「……あ?」
言われてジィトは、何となく振り返った。
そして絶句する。
簒奪者ハルクが、ゆっくりとこちらに近づいてくるのを認めて。
●
「てめえ、暫く見ねえと思ったら、ここで邪魔しに来るのかよ……!」
「そう言えばこうしてまみえるのもそれなりに久しくなるか。そして……フ、そうか、ここが貴様が護った世界、か」
「あ? 別に俺が護ったってわけじゃ……」
噛みつくように言ったジィトに対しハルクはどこか感慨深そうに応じて、ジィトは一瞬気勢をそがれそうになる。
「やはりどこか因縁を感じずにはいられんと思ってな。俺が世界を一つ滅ぼす間、貴様が世界を一つ救っていたというのは」
「ん……なっ……!」
そうしてその言葉に、ジィトは再び激情に声を震わせていた。暫く見なかった、というのがどういう意味か、それを理解して、焦燥が胸を掻き毟る。
「なんだ。知りもしない、手出し不可能な領域のことまで貴様は背負う気か?」
淡々とハルクは告げる。実際、どうしようもない事ではあった。その世界が危機に陥ってることを知らされもしなかったし、そうしたところで懐地界と同時に守れたのかと言われれば無理筋だろう。
「そう、だよな。簒奪者は、世界を滅ぼしてくんのがその役割なんだ。分かってたのに、分かってなかった……」
だからやりきれないのはその想いのせいなのだろう。未だに自分がどこか能天気だったことを自覚しての己への憤り。
「ああそうだな! 因縁ってんなら受けて立ってやるよ! てめえがもう、どんな世界も滅ぼせねえように、今こそ俺は徹底的に力を尽くす! そんだけだ!」
ショックに俯くよりも、今は怒りに顔を上げた。それでも、望む未来のためにやらなければいけないことがあるから。
ハルクは一度、ちらりとヨモツノカミの、その器たるあやこちゃんの方を見た。途端にヨモツノカミの気配が膨れ上がる。
『この国のものに手出しするなれば、わらわも黙ってはおらぬぞえ』
世界武装の作成を阻止する、というならば、接続者たるあやこちゃんを行動不能にすればそれで事はなる。が。ヨモツノカミはそれに一度警告を告げ、そして、
『そなたらの目的自体はわらわは一概に否定はせぬ。死と破滅による救済もあろう、その手を汚す矜持のある者こそ成し得るものがあることも。じゃが生けとしものが生きようと願うこと、それもまた摂理』
ヨモツノカミは簒奪者を否定しない。実際、沢渡 龍造(mz0159)もまた己の語り手としてそれなりに気に入っていたというのはある。そして。
『まさに丁度良いではないか。片や救おうとし、片や滅ぼそうとし、事実それを為せることを証せし者。互いに意識しやるということは、その立ち位置も同程度に思うておるのであろう? どの陣営が大願を成就しうる可能性があるか、その縮図と見るに申し分なし!』
ヨモツノカミが告げると、ハルクはジィトへと視線を戻した。
ここでヨモツノカミも相手にするより、咎人たちに集中すればそれで目的達成となるならその方が得策というのはある。
そしてそれ以上に……。
「そうだな。俺とお前が属する世界、その決着の時が近いというならば。俺とお前の決着もその前に果たさねばなるまい」
あやこちゃんや秀介はヨモツノカミをこの場に投影するのに精一杯。クルハは万が一に備えてその護衛に専任することになる。
かくして、この世界がクルハとオルファの主張のどちらに傾くかは、ジィトとハルクの真っ向勝負に託されることとなったのだった。
成功条件
条件1 | ハルクに勝利する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | ジィトが陽炎剣を二回以上使わない |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
懐地界の世界武装を得るためにヨモツノカミを納得させてください。
方法は「ハルクに勝て」それだけです。他に説得とかは不要です。
あやこちゃん、秀介、ヨモツノカミ、クルハがハルクに狙われる心配は考慮不要、逆に彼らからの救援もありません。
純粋にジィト+PC vs ハルクの軍勢 という勝負になります。
●敵戦力
▼幻影翼狼
共通して以下の能力を持つ
・群狼の忠誠
ハルクがBSの抵抗に失敗した場合、リアクションで使用する。
そのBSの効果を使用した翼狼騎士に移す。
咎人と同名のスキルの回数は全て咎人の能力と同様
▼盾兵 8名
防御陣形Ⅱor貴き者の旗、フォローガード、パリィⅡ、ラインキーパーⅡ、吶喊指示
▼騎兵 4名
静寂の法花Ⅱ、正義の天秤Ⅱ、突進、不退なりし一輪
▼精鋭騎兵 1名
上記騎兵の能力に加え、鮮花閃光、及び下記のスキルを使用
・魁の一撃
F。10sqまで移動し対象一体に攻撃。この移動は第三者の妨害を受けない。またこの攻撃に対し回避/防御を1/2にして判定する。使用回数5
▼魔法兵 4名
緊急障壁、フォースクリア、スポットワープⅡ、月明りの小夜曲、マジックドレイン
▼精鋭魔法兵 1名
ホーリーストリング、神別れの歌、支配者の楔、魔払う聖火、マジックドレイン
▼ハルク
メインアクション権三回
・軍師の眼
パッシブ。開始時、イニシアチブ判定に+1。以降3の倍数ラウンドごとに+1ずつ増加していく
・見切り
パッシブ。クリティカル攻撃に対し防御可。また、同ラウンド中、同一の相手から攻撃を受ける度にその相手からの攻撃に対し防御が上昇する。上昇はそのラウンド中のみ。
・嵐剣
M。広範囲の風属性攻撃。使用回数6
・裂風
M。単体に対し、風属性の三回攻撃。この攻撃に対しC、Rのスキルの使用不可。使用回数3
・鋭撃
M。単体に対し、極めて命中の高い斬攻撃二回。使用回数8
・逆風
F。このラウンド中、周囲の対象に対する、効果範囲が「周囲」「直線」となる攻撃に対して、任意で威力を、ハルクの魔法威力分減少させる。空間に対する効果だが、ZOCとして扱わない。使用回数6
この他、貴き者の旗、静寂の法花Ⅱ、正義の天秤Ⅱ、鮮花閃光を使用する
マスターより
鉱響界オーケスタイト。
鉱石に命が宿る星に、地球からボイジャー一号が辿り着き、無機質に暮らすだけの世界に文化が齎された。鉱人たちは「地球の人間」を情緒豊かで慈愛に満ちた存在だと敬っており、真実はボイジャー王家だけの秘密だった。しかし長距離宇宙船が完成、地球に行こうとする民と王家の間で色々あったりした。
というのを「機械種が一番適合して人間種が一番目立つ世界って出来ないかな」と思って考えたりしてました。そんなハルクの世界破滅RTAについてはまあPL情報なんですが。
そんなことより世界武装の話にかこつけて終了までにやんなきゃいけないハルクとの決戦回です。よろしくお願いいたします。
凪池でした。
関連NPC
参加キャラクター
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- ケイウス(ma0700)
- 神魔種|男
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- シアン(ma0076)
- 人間種|男
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- 白花・C・琥珀(ma0119)
- 人間種|女
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- 魅朱(ma0599)
- 剛力種|女
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- 唯塚 あまぎ(ma0059)
- 人間種|男
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- マイナ・ミンター(ma0717)
- 人間種|女
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- マリエル(ma0991)
- 機械種|女
-
- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
- リプレイ公開中