オープニング

　天獄界のイデアエネルギーが邪神と『紅キ月』の襲撃で不足している。
　そのため咎人たちは異世界からイデア資源になるものを集めていた――

　というわけで、コクリ・コロン(mz0061)は聖樹界イルダーナフへと赴いていた。
「おお、コクリの嬢ちゃんじゃないですか」
「ボス、お久しぶりです！」
　コクリの訪れた先でそんな声が上がる。
「わ、ちゃんと憶えてくれてたんだね」
　集まった荒くれ傭兵たちに囲まれたコクリは嬉しそう。
「もちろん。ロンデニオン要塞でコクリの嬢ちゃんたちに鍛えもらってからこっち、人生充実してますからね！」
「あっちで戦って感謝され、こっちを手伝って村娘にきゃーきゃーもてはやされ、ってな」
　わはは、と盛り上がる荒くれども。
　なお、この場には商人たちもいる。
「まあワシらがコクリちゃんたちをイメージした香水を売ったりしておるのも、このむさくるしい男どもが警戒されない理由じゃがの」
　コクリ付きの商人たちである。余談であるが傭兵部隊の名は「香騎士」で、用心棒と香水販売の両輪で荒稼ぎしていたりする。もっとも、この辺りの事情は「以前にそういうことがあった」という認識で問題ない。
　閑話休題。
「で、久しぶりにこっちに来たのは……なんか困ったことでもあったか？」
　商人がコクリに聞く。
「うん。ボクの世界が敵に襲われちゃってね。物資が不足してるから……」
「ほう、ワシらの助けが必要か？」
　商人、前のめり。
「ちょ、ちょっと待って。資源回収……っていうか、何かを持ち帰るのはボクらの作業だから。ほかの人に融通してもらいたいわけじゃないんだよ」
　慌てて一歩引くコクリ。ここで借りを作ってしまうとこちらへの永住を求められて困ってしまいそうな予感がしたのだ。
「ふむ？　それなら何かの持ち帰りに向く話を橋渡ししてやらねばな」
「おお、アレなんかちょうどいいんじゃないか？」
「ああ。ちょうどそんな話が来ておるな」
　商人たちがピンときた話とは……

　ここ数年、酷い不漁に悩まされる漁村から貿易港として生き延びていきたいという相談を受けていた。その話の途上、夜間の砂浜に不審者の目撃情報があるので泊まり込みで見張ってほしい。なんなら季節を迎えた潮干狩りを楽しんでもらってもいい。

　というもの。
「一応、不審者についてはなんらかの化け物じゃないかと言われており、それが不漁につながっているという見方もある」
「正体不明の化け物なら安易に傭兵部隊を夜間警戒に当てるのもはばかられての」
「連戦連勝を売りの一つにしておるので不審人物の正体がハッキリしない内は傭兵部隊は動かしたくなくての……コクリちゃんたちには悪いが、なんとか頼む」
　コクリをボスに祀り上げている傭兵部隊もそこまでの実力はない。商人のプロデュースで評価を上げているだけなのでこのあたりは仕方のないところである。
「うん。任せといてよ」
　コクリは嫌な顔もせずに頷くだけ。商人たちにいいように利用……げふん、いまだ頼られている理由である。

　というわけで、日中の砂浜で潮干狩りを楽しんで夜間に砂浜を見張る人、求ム。