オープニング
滅びて浮かぶ世界の破片を、彼ら神が気紛れで掬い、空に浮かべる。その場所は浮き島と呼ばれ、廃墟、無人島等が咎人達に様々な様相を見せてきた。
今回は、そんな島のお話の一つ。
ぽこり、ぽこり、大きなあぶくが音を立てて弾ける。彼女、自称天才錬金術師のピーツ(mz0033)には、あまりにも日常的な光景であった。
しかし今、エルフの少女がかき混ぜているのは慣れた大釜ではない。どこにでもあるアルミ製の片手鍋である。
「本当にこれで出来るものなのか?」
「今、大事なとこなんやから声かけんとき!!」
「わかったわかった」
訝しげに鍋を覗く成年、サキチをピーツは視線すら振らずに手を軽く振っていなした。
鍋の中、白い無数の泡粒が増えて行くのを見守りながら彼は事の発端を思い出していた。
●ヒトのサダメかもしれへん
『あんまくわへんなぁ』とピーツが遊戯室にある水槽を見下ろしながらぼやく。そこには特殊な小麦粉から作られた幼児達が、どこか眉を八の字にして彼らの精一杯の不満を表現する。
この水槽と言う箱庭でしか生きられない彼ら。少し前までは寿命の問題もあったが、それはピーツと他の咎人達の活躍により一旦は事なきを得たのだが……
「他のネコ達なんかは平気なんに、やっぱり人形やからやろか」
彼らにはエネルギーの補助が必要で調査した結果が砂糖。それもピーツや咎人達がテンサイから育て上げた特殊な砂糖だ。元がクッキーだったのだから、それが道理に叶っていると言える。
行事以外の時は角砂糖にして渡しているだが、どうも幼児達はあまり食べてくれない。ピーツの作ったクッキーマンは既に完食していると言うのにだ。別に菓子作ってを彼らに与えても全く構わないのだが、それだとエネルギーの吸収と言う面では劣る。
(やっぱ砂糖のが接種しやすいんよなぁ)
「同じ材料でも形に魂が依存してる、みたいなものなのか?」
「ちゅーか記録やな。人型っちゅー形の記憶をあの箱庭が振る舞わせてるってのが近い……まぁ、それだけじゃ説明出来へんこともあるけど」
今すぐ、ではないがこのままだとまた生命の危機だ。
元々この場所は無人の幼稚園だった。そこにただ一匹、クッキーのネコが存在していた。咎人達は後にエルデと名付けられたその猫に沢山の友達を作ってあげたのだった。
これはまた他の咎人に依頼を、とピーツが思案したその時。
「佐吉ー! ここあけてくれ!!」
ガッサガッサと葉が重なり合う音と、枝が遊戯室のガラス窓を叩く音と共にサキチの腐れ縁ミヨシがやって来た。
ガラッ
「……何をやっているんだオマエは」
「この笹わかるだろ? 七夕だよ、たなばた。もう~八月だろ♪」
長い笹の葉の暖簾から顔をだし、満面の笑みの浮かべる男に、『お前変わらねぇな』とサキチは呆れた顔を見せる。
「七夕……願い事、星、せや! その手があったわ!!」
ピーツは指をスナップし、勢い良く立ち上がる。
「先ずは天の川や、早速調理場借りるで!」
桜色のスカーフを揺らしながら、ピーツはその場を去っていった。
●
そして、件の天の川と言うのが正に今、鍋のなかで沸き立つ水と砂糖と言う現実。
天の川と言えば、あの夜空に浮かぶ光の帯のことだろうとサキチは薄曇りに頭に思い浮かべるが、やはり想像に到れない。
シュゴッ
が、そんな一般人を他所に、ガスコンロの火が音を立てて消された。
(この匂いは純つゆ、か?)
「しゃっ、完成や! ミヨシ呼んで、中入ってあいつら誘導させてな、はよして冷める! 時間あらへん!」
「わ、わかった」
鍋のフチをフォークで急かすように叩きながら、ピーツはサキチを部屋へと急がせた。
●金の天の川
「ほらほらー、ちょっと向こうに言っててね~」
ナウ?
箱庭へ続くの特殊な入り口から入ったミヨシは幼児達や、他の動物と同じサイズになる。そして彼らに身ぶり手振りでスペースを作るように箱庭の中で指示をする。
箱庭の中で、ちょこまかと動く彼らをピーツは外から見下ろしながら彼からの合図を待った。
「いいぞ~!!」
「いくでー!!」
鍋の中の金色の液体をフォークの先端につけてから上空から庭へと振りかける。
するとどうだろう。フォークの先から流れた金色の軌跡は形を残し、軽いためかふわりと空へと上がり、その様を小さな菓子達が興味津々と目で追う。
波のように動き漂うそれはまるで、なだらかな川のようで、今はまだ部屋の中が明るいためかそうでもないがライティング次第では天の川と言われても良いかも知れない。
なるほど、とサキチもピーツの言いたいことがふに落ちた。
「後は、そうやなーコンペイトウでも浮かべたい所やな」
七夕の夜を演出するならは、金色の帯の回りには色とりどりの星達が相応しいだろう、とピーツは考えた。浮かべた星達を取ってみれば、幼児達も食べてくれるかも知れない。
「なーなー、ピーツちゃん。砂糖ならなんでもいんだろ?」
「せやで、それもなるべく多く使われてる方がええな」
ちいさくなったミヨシが声をはりあげてピーツへと話し掛ける。
「ならよ! 綿菓子とかもありだと思うんだ♪」
『あれも砂糖だろ殆んどさ』と言う彼になるほど、とピーツも思う。ふかふかと浮かぶ綿菓子の雲、なくはない。
「だが、金平糖も綿菓子も機材がないと難しいぞ」
サキチが少し悩ましげに腕を組む。小さな星の金平糖も、甘い雲と異名高き綿菓子も、条件や段階をある程度踏まなければならない。
彼らの夜空へ昇らせる試練と言ったところか。
「まぁ、そこは他の咎人と応相談、やな。難しいなら、アメ細工って手もあるんやし」
その場合気を付けなアカンのはヤケドくらいなもんや、と早速手作り天の川を一房手に取りながら口に運ぶピーツ。勿論、素材の味は保証済み。
この世界も一旦の幕を降ろした。
なら七夕にこれからの願いをこの甘い甘い夜空に願うのも悪くはなのではなかろうか?
成功条件
| 条件1 | 七夕を楽しむ! |
|---|---|
| 条件2 | 金平糖、又は綿飴の作成。 |
| 条件3 | - |
解 説
※このシナリオは相談した方が楽しそうなので、エキスパートシナリオにしておりますがルール判定はカジュアルルールを適応させていただきます。
■水槽
遊戯室に置かれた深さ10cmほどの浅い大きな水槽。エルデや、他のネコ、動物や子供達で賑わっている。最初からある家や、サキチが新たに改築したエントツのついた家もある。
この中で、不思議な小麦粉もしくは砂糖を材料とした物は、生きているかのように動く。
■七夕の準備
基本は何をしても自由。菓子や、料理を作る。七夕飾りの準備。遊戯室に用意された笹に短冊で願い事を書く等。
■綿飴・金平糖の作成。
可能であれば作ってほしい菓子。しかし、作るには機械を使用したり、時間が必要であったりと若干難易度が高い。(ミヨシ、サキチも手伝う)
機能:忘れられない思い出。
水槽内部が完成した後、遊戯室にある家に入ることで、水槽内部の家とつながっていて、PCが小さくなり内部で遊べる。
※水槽内部の皆と無理に関わる必要はありません。お好きに七夕を楽しんで下さい。
■NPC
サキチとミヨシ
二人の咎人の男性で、今回のお願いの依頼者。生前が同じ世界観だったのか、良く一緒にいる。特にサキチは子供が昔から好きらしい。
ピーツ
自称錬金術師の異能種。
エルデ
クッキーで出来たデフォルメされた精巧な猫。今はもう、寂しくない。
マスターより
こんにちは、初めましての方は初めまして。お久しぶりの方は、お久しぶりです。月宵です。
今更、七夕!? とお思いの方もいらっしゃいますでしょうが、八月も七夕はあるです。ですから遅くはないのです(言い訳)。
……今までよりちょっとだけ大成功の難易度が上がっておりますが。
復活と言うにはあまりにも遅すぎるかも知れません。それでも、後数ヶ月ですが、また参加させていただきます。
それでは、ご参加お待ちしております。
関連NPC
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- ピーツ(mz0033)
- 異能種|女
参加キャラクター
- リプレイ公開中








