ミニノベル
(また貴女なの?)
彼女の姿を見て、バジルナ・メデュー(mz0070)は何度思ったか判らない。
行く先々で出会って、死力を尽くした。
初めて会ったのは聖樹界。まだ自分が圧倒的に有利だったと思う。
咎人達の裏をかく事が出来たし、自分のやるべき事も出来ていた筈だ。
その次は黄金界。ただのバカンスの筈だったのに、気付けばまたその顔がある。そんな彼女の名は川澄 静(ma0164)と言った。
(そう言えば、あの時も私の事警戒していたのよね)
聖樹界の事が強烈に残っていたからだろう。中立な場所だと言えど、静はこちらの様子を窺っていた。そして、こちらもその時から何となく意識はし出していたのだと思う。
敵意でしかない筈なのに、何処かで何かを感じていた。
いや、もしかするとあの真っ直ぐな瞳に射抜かれただけかもしれない。
自分がかつて天使だった頃の事。同じような目をしていたとまでは言わない。ただ彼女の信念を貫く姿勢が余りにも潔く好感を持ってしまったのだ。
そして、舞台は闇掟界に移る。
別に表舞台に出る事に抵抗はなかったし、咎人にバレていたとしても現地人を騙し切る自信はあった。現にあの世界では交渉と言う形で自分の存在は消せている。事実だけ見れば、咎人に手も足も出させなかった。だが、結局のところ大きな目で見れば、どの世界であっても簒奪者は咎人に負けている。
この結果は変わらいない。
けれど、勝つ事が全てじゃないと自分は思っていたから、それでもよかった。
問題はそこではなくて、あくまで自分の目的の為に動いていただけだと言い聞かせて、事実を冷静に俯瞰で見ていた。
だけど、二度目の黄金界ではそうも言っていられなくなる。
(了承なんてするもんじゃ無かった)
またも接触してきた静に心中で始めははうんざりしていた。
けれど、気付いた時には二人で魚を捕獲し卓を囲むに至る。簒奪者になってからというもの、誰かと協力する事を極端に避けてきた。何故なら、自分の能力があればそれは必要ない。相手を操る事が出来たから、自分のいいように動かしてしまえばそれで事が済んだからだ。
けれど、実際やってみるとやはり一人より二人だ。
しかも実力が近ければ近い程、阿吽に相手の思考を察して動けてしまう。
うまく連携できれば一騎当千。そんな咎人と時間を共にしたせいで、気持ちに揺らぎが生じ始める。但し、それでも簒奪者同士の協力は論外だった。
何かが欠けている或いは過剰に反応する、いい意味でも悪い意味でも個性が強過ぎる同胞達だ。寝首を掛かれる事もゼロではないと思うと油断できない。唯一の少女は傷つくのを傍で見たくはなかったから、我侭に世話だけ焼いて彼女の力を信じる他なかった。
が、その結果がコレである。
そして自分は何もかも無くし、混沌の海の化物になった。
思い返せば、自分の人生は全て裏目裏目の連続だったと思う。ただ普通に仕事をしていただけ。地上で生きたかっただけ。そして元の世界に復讐する為に蘇り、邪神に仕えただけ。自分で選んだといえるのかと自問自答を繰り返して、しかし結局言い訳の果てにあるのは暗闇だけ。
だからもう諦めた。
この諦めこそが本当の自分の意思によるものだと信じて……。
そんな所にまでも静は追ってくる。
そうして、いつもと変わらぬ決意の瞳がこう自分に呼びかける。
『そろそろ決着をつけましょうっ』と――。
(フフッ、決着……そうね、これが最後よね……だったら私は、貴方の敵らしく戦ってあげる。あんな気持ちを植え付けてくれたお返しに、精々見苦しくもカッコよく死んでみせるわ)
飛べなかった筈の翼を大きく広げて、バジルナは対峙する。
静と共にやってきた咎人に狙いを定め、愛用の銃をぶっ放す。
そして、仲間と戦い舞う白拍子を内心は羨ましくさえ思う。
だけど、そんなのはおくびにも出さない。いや、出してやるもんかと変わってしまった姿のまま、戦い続ける。一矢位報いさせてくれてもなんていう弱い考えが脳裏を過ぎる度に、それをかき消すように表面上では不敵に笑ってやる。
(あぁ、もっと早く今の世界の事実に辿り着いていたら咎人とも共に、いえ……貴女と共にまたあんな海を楽しめていたのかしら……?)
またそんなタラレバが頭を過ぎる。
その頃にはもう自分はボロボロで、消滅まで待ったなしだ。
「貴方とオリーヴィアさまとは咎人として会いたかったです」
消えゆく自分に静がそう声をかけてくれる。
その言葉だけでもう自分は十分だ。だから、こう言ってやる。
「じごく? そんなのごめんよ……もう何処にもとらわれたくないもの……」
(だけど、もしまた会えたなら……今度は私が貴方に付き合ってあげる)
そこまでは言葉にはならなかった。ならなかったが、きっとそれでいい。
(執筆:奈華里)
彼女の姿を見て、バジルナ・メデュー(mz0070)は何度思ったか判らない。
行く先々で出会って、死力を尽くした。
初めて会ったのは聖樹界。まだ自分が圧倒的に有利だったと思う。
咎人達の裏をかく事が出来たし、自分のやるべき事も出来ていた筈だ。
その次は黄金界。ただのバカンスの筈だったのに、気付けばまたその顔がある。そんな彼女の名は川澄 静(ma0164)と言った。
(そう言えば、あの時も私の事警戒していたのよね)
聖樹界の事が強烈に残っていたからだろう。中立な場所だと言えど、静はこちらの様子を窺っていた。そして、こちらもその時から何となく意識はし出していたのだと思う。
敵意でしかない筈なのに、何処かで何かを感じていた。
いや、もしかするとあの真っ直ぐな瞳に射抜かれただけかもしれない。
自分がかつて天使だった頃の事。同じような目をしていたとまでは言わない。ただ彼女の信念を貫く姿勢が余りにも潔く好感を持ってしまったのだ。
そして、舞台は闇掟界に移る。
別に表舞台に出る事に抵抗はなかったし、咎人にバレていたとしても現地人を騙し切る自信はあった。現にあの世界では交渉と言う形で自分の存在は消せている。事実だけ見れば、咎人に手も足も出させなかった。だが、結局のところ大きな目で見れば、どの世界であっても簒奪者は咎人に負けている。
この結果は変わらいない。
けれど、勝つ事が全てじゃないと自分は思っていたから、それでもよかった。
問題はそこではなくて、あくまで自分の目的の為に動いていただけだと言い聞かせて、事実を冷静に俯瞰で見ていた。
だけど、二度目の黄金界ではそうも言っていられなくなる。
(了承なんてするもんじゃ無かった)
またも接触してきた静に心中で始めははうんざりしていた。
けれど、気付いた時には二人で魚を捕獲し卓を囲むに至る。簒奪者になってからというもの、誰かと協力する事を極端に避けてきた。何故なら、自分の能力があればそれは必要ない。相手を操る事が出来たから、自分のいいように動かしてしまえばそれで事が済んだからだ。
けれど、実際やってみるとやはり一人より二人だ。
しかも実力が近ければ近い程、阿吽に相手の思考を察して動けてしまう。
うまく連携できれば一騎当千。そんな咎人と時間を共にしたせいで、気持ちに揺らぎが生じ始める。但し、それでも簒奪者同士の協力は論外だった。
何かが欠けている或いは過剰に反応する、いい意味でも悪い意味でも個性が強過ぎる同胞達だ。寝首を掛かれる事もゼロではないと思うと油断できない。唯一の少女は傷つくのを傍で見たくはなかったから、我侭に世話だけ焼いて彼女の力を信じる他なかった。
が、その結果がコレである。
そして自分は何もかも無くし、混沌の海の化物になった。
思い返せば、自分の人生は全て裏目裏目の連続だったと思う。ただ普通に仕事をしていただけ。地上で生きたかっただけ。そして元の世界に復讐する為に蘇り、邪神に仕えただけ。自分で選んだといえるのかと自問自答を繰り返して、しかし結局言い訳の果てにあるのは暗闇だけ。
だからもう諦めた。
この諦めこそが本当の自分の意思によるものだと信じて……。
そんな所にまでも静は追ってくる。
そうして、いつもと変わらぬ決意の瞳がこう自分に呼びかける。
『そろそろ決着をつけましょうっ』と――。
(フフッ、決着……そうね、これが最後よね……だったら私は、貴方の敵らしく戦ってあげる。あんな気持ちを植え付けてくれたお返しに、精々見苦しくもカッコよく死んでみせるわ)
飛べなかった筈の翼を大きく広げて、バジルナは対峙する。
静と共にやってきた咎人に狙いを定め、愛用の銃をぶっ放す。
そして、仲間と戦い舞う白拍子を内心は羨ましくさえ思う。
だけど、そんなのはおくびにも出さない。いや、出してやるもんかと変わってしまった姿のまま、戦い続ける。一矢位報いさせてくれてもなんていう弱い考えが脳裏を過ぎる度に、それをかき消すように表面上では不敵に笑ってやる。
(あぁ、もっと早く今の世界の事実に辿り着いていたら咎人とも共に、いえ……貴女と共にまたあんな海を楽しめていたのかしら……?)
またそんなタラレバが頭を過ぎる。
その頃にはもう自分はボロボロで、消滅まで待ったなしだ。
「貴方とオリーヴィアさまとは咎人として会いたかったです」
消えゆく自分に静がそう声をかけてくれる。
その言葉だけでもう自分は十分だ。だから、こう言ってやる。
「じごく? そんなのごめんよ……もう何処にもとらわれたくないもの……」
(だけど、もしまた会えたなら……今度は私が貴方に付き合ってあげる)
そこまでは言葉にはならなかった。ならなかったが、きっとそれでいい。
(執筆:奈華里)
関連NPC
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- バジルナ・メデュー(mz0070)
- ?|女
参加キャラクター
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女




