ミニノベル
ゴーン……ゴーン……ゴーン―――
荘厳な鐘の音が響くのは流刑街の端っこに建つチャペルである。
ここ最近咎人同士の結婚が増えているとかで、この場所が利用される回数も急増した。
そして今日もまた、一組の男女が結ばれ祝福されている。
新郎は鞍馬雪斗(ma1433)。そして新婦は星空 雪花(ma1479)。
黒いタキシードと純白のウェディングドレスが対照的で、美男美女がより映える。
とはいえ、だ。二人の知名度からすれば参列者は驚くほど少ない。
両者とも著名で実力も充分、しかも星空は今をときめくアイドルだ。もっとたくさんの人が押し寄せていても不思議ではないのだが。
「みんなありがとー! えへへ、やっぱり身内だけでやることにしてよかったね♪」
「そうだね。大勢に祝ってもらうのも嬉しいけど、全員にお礼を言って回れなくなるから……」
頬を染め微笑み合う星空と鞍馬。
鞍馬はウェディングドレスを着ていても似合うんじゃないかと思うような見目麗しさだが、タキシードをビシッと着こなせば充分頼りになる旦那様感は出ている。
「雪花ちゃん綺麗だよぉー! 結婚したのか、アタシ以外のヤツとー♪」
星空の周辺はいつも賑やかだ。冗談めかして叫ぶカグヤ・パロマージュ(mz0057)を始めとして、苦楽を共にした仲間がたくさんいる。
煽る者。微笑む者。感動で泣く者。反応はそれぞれだが、鞍馬と星空を祝福する気持ちに偽りはない。
「カグヤちゃんだって好きな人たちがいるんでしょー!? その人達と幸せになればいいじゃーん!」
「それはそれ、これはこれなのー!」
チャペルの入口に立っている二人と、参列者たちとは少し距離がある。
声を張っておどける星空とカグヤに、他の参列者からどっと笑いが起きる。
「……」
「……雪斗くん? どうしたの?」
「いや、その……なんでもないよ」
「なんでもないことなーいー。思ったことがあるなら言って? 秘密を作らないでなんて言わないけど、できる限り共有して欲しいな♪」
「う……ん……。雪花さんはやっぱり凄いなって。たくさんの友達に好かれてて、大勢のファンが居て……そんな人を自分が独占しちゃっていいのかなって……」
星空を誰よりも愛しているという自負はある。彼女を守るだけの力も、守っていくだけの覚悟もある。それでも真面目で心配性な鞍馬は不安になってしまうのだ。
無論、杞憂でしかないのだが……そんな優しい鞍馬だからこそ星空は伴侶として選んだ。
「いいんだよ雪斗くん。アイドルはみんなに夢や希望を届けるお仕事だけど……大好きなたった一人の人も幸せにできないようじゃ、沢山の人を幸せになんてできないもん」
「雪花さん……」
「あ、それとも結婚したらアイドル辞めて欲しい? 雪斗くんが望むなら、雪斗くんだけのあたしになるのも吝かじゃないかなーって♪」
「まさか。そんなことしたらどれだけ恨まれるかわかったものじゃないし……何より、雪花さんの輝きを燻ぶらせるのは本意じゃないよ」
もう何度も目にした、ステージ上で輝く星空の姿。笑い、踊り、歌う彼女の姿はまるで星のようだといつも思う。
星は夜空に輝くからこそ意味がある。ジュエリーは身に付けてこそ価値がある。仕舞い込むだけが大切にするということではないと、鞍馬は知っているのだろう。
「うん。だから雪斗くんのこと好き。あたしの隣で、あたしの輝きを見ていてね。ずっと……ずっとだよ」
「……うん。ごめん……じゃないか。……ありがとう、雪花さん」
星空の方が背が高いため、上からこつんとおでこ同士を合わせられる鞍馬。
不安になることは当然、不安になるからこそ大切に想っている……というのは誰の言葉だったか。
二人は微笑み合うと、結婚式の締めに移ることにする。
鞍馬は自慢の嫁とでも言いたげに、少し誇らしげな表情に変わっていた。
「ブーケトス、いっくよー! あ、スキルとか使って無理に取ろうとしちゃダメだからねー♪」
参列者には女性が多い。笑顔で星空が投げたブーケを欲しがる者は多かっただろう。
天高く舞った花束は放物線を描き、参列者の後方に居たカグヤの手にすっぽり収まった。
「わ……!? あ、アタシが貰っちゃっていいのかなぁ!?」
「いいんだよ! そしたら今度はカグヤちゃんが結婚式でブーケトスして、誰かに分けてあげて! 巡り繋がる幸せをね♪」
「うん……うんっ、ありがとう雪花ちゃん! 鞍馬さんも雪花ちゃんとお幸せにね! また三人で遊びに行こうねー!」
満面の笑みでブーケをぶんぶん振るカグヤ。その姿は随分と微笑ましい。
かつて鞍馬は言った。『これが最期なら、彼女と共に……それ以上望めないから』と。
けれど星空と一緒なら……たくさんの始まりと、たくさんの幸せを感じていけるはずだ。
巡り繋がり、人の歴史は紡がれる。チャペルの階段を降りながら、そう実感する鞍馬であった―――
(執筆:西川 一純)
荘厳な鐘の音が響くのは流刑街の端っこに建つチャペルである。
ここ最近咎人同士の結婚が増えているとかで、この場所が利用される回数も急増した。
そして今日もまた、一組の男女が結ばれ祝福されている。
新郎は鞍馬雪斗(ma1433)。そして新婦は星空 雪花(ma1479)。
黒いタキシードと純白のウェディングドレスが対照的で、美男美女がより映える。
とはいえ、だ。二人の知名度からすれば参列者は驚くほど少ない。
両者とも著名で実力も充分、しかも星空は今をときめくアイドルだ。もっとたくさんの人が押し寄せていても不思議ではないのだが。
「みんなありがとー! えへへ、やっぱり身内だけでやることにしてよかったね♪」
「そうだね。大勢に祝ってもらうのも嬉しいけど、全員にお礼を言って回れなくなるから……」
頬を染め微笑み合う星空と鞍馬。
鞍馬はウェディングドレスを着ていても似合うんじゃないかと思うような見目麗しさだが、タキシードをビシッと着こなせば充分頼りになる旦那様感は出ている。
「雪花ちゃん綺麗だよぉー! 結婚したのか、アタシ以外のヤツとー♪」
星空の周辺はいつも賑やかだ。冗談めかして叫ぶカグヤ・パロマージュ(mz0057)を始めとして、苦楽を共にした仲間がたくさんいる。
煽る者。微笑む者。感動で泣く者。反応はそれぞれだが、鞍馬と星空を祝福する気持ちに偽りはない。
「カグヤちゃんだって好きな人たちがいるんでしょー!? その人達と幸せになればいいじゃーん!」
「それはそれ、これはこれなのー!」
チャペルの入口に立っている二人と、参列者たちとは少し距離がある。
声を張っておどける星空とカグヤに、他の参列者からどっと笑いが起きる。
「……」
「……雪斗くん? どうしたの?」
「いや、その……なんでもないよ」
「なんでもないことなーいー。思ったことがあるなら言って? 秘密を作らないでなんて言わないけど、できる限り共有して欲しいな♪」
「う……ん……。雪花さんはやっぱり凄いなって。たくさんの友達に好かれてて、大勢のファンが居て……そんな人を自分が独占しちゃっていいのかなって……」
星空を誰よりも愛しているという自負はある。彼女を守るだけの力も、守っていくだけの覚悟もある。それでも真面目で心配性な鞍馬は不安になってしまうのだ。
無論、杞憂でしかないのだが……そんな優しい鞍馬だからこそ星空は伴侶として選んだ。
「いいんだよ雪斗くん。アイドルはみんなに夢や希望を届けるお仕事だけど……大好きなたった一人の人も幸せにできないようじゃ、沢山の人を幸せになんてできないもん」
「雪花さん……」
「あ、それとも結婚したらアイドル辞めて欲しい? 雪斗くんが望むなら、雪斗くんだけのあたしになるのも吝かじゃないかなーって♪」
「まさか。そんなことしたらどれだけ恨まれるかわかったものじゃないし……何より、雪花さんの輝きを燻ぶらせるのは本意じゃないよ」
もう何度も目にした、ステージ上で輝く星空の姿。笑い、踊り、歌う彼女の姿はまるで星のようだといつも思う。
星は夜空に輝くからこそ意味がある。ジュエリーは身に付けてこそ価値がある。仕舞い込むだけが大切にするということではないと、鞍馬は知っているのだろう。
「うん。だから雪斗くんのこと好き。あたしの隣で、あたしの輝きを見ていてね。ずっと……ずっとだよ」
「……うん。ごめん……じゃないか。……ありがとう、雪花さん」
星空の方が背が高いため、上からこつんとおでこ同士を合わせられる鞍馬。
不安になることは当然、不安になるからこそ大切に想っている……というのは誰の言葉だったか。
二人は微笑み合うと、結婚式の締めに移ることにする。
鞍馬は自慢の嫁とでも言いたげに、少し誇らしげな表情に変わっていた。
「ブーケトス、いっくよー! あ、スキルとか使って無理に取ろうとしちゃダメだからねー♪」
参列者には女性が多い。笑顔で星空が投げたブーケを欲しがる者は多かっただろう。
天高く舞った花束は放物線を描き、参列者の後方に居たカグヤの手にすっぽり収まった。
「わ……!? あ、アタシが貰っちゃっていいのかなぁ!?」
「いいんだよ! そしたら今度はカグヤちゃんが結婚式でブーケトスして、誰かに分けてあげて! 巡り繋がる幸せをね♪」
「うん……うんっ、ありがとう雪花ちゃん! 鞍馬さんも雪花ちゃんとお幸せにね! また三人で遊びに行こうねー!」
満面の笑みでブーケをぶんぶん振るカグヤ。その姿は随分と微笑ましい。
かつて鞍馬は言った。『これが最期なら、彼女と共に……それ以上望めないから』と。
けれど星空と一緒なら……たくさんの始まりと、たくさんの幸せを感じていけるはずだ。
巡り繋がり、人の歴史は紡がれる。チャペルの階段を降りながら、そう実感する鞍馬であった―――
(執筆:西川 一純)
関連NPC
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- カグヤ・パロマージュ(mz0057)
- 人間種|女





