オープニング

　ゲドゥルとカルメンは肩寄せ合いながら流刑街を散策していた。
　人々の動きが忙しい。師走だけでなく世の中が変わって、活気づいているのが伝わってくる。また季節に合わせた煌びやかなイルミネーションも、気持ちを高揚させてくれていた。
「もうすぐクリスマスだねぇ」
「ですね。どの店も眩しいほどに飾られていますね」
　ゲドゥルとカルメンは、ついでにこれまでに関わったことがある者たちの様子を見て回る。商いをしている者たちは、どこも繁盛しているようで喜ばしい。また幸せそうにしていた。
　立ち止まったカルメンがふり向いた先を、ゲドゥルも見やる。
「あの食堂の隣に別の店……、何だか拡張されているようだねぇ」
「シーナさんのところですよ。どうやら甘味を提供する併設店みたいですね」
　ゲドゥルとカルメンはシーナのこともよく知っている。もしかすると同じ、または近似の世界からここに来たかも知れない人物だからだ。貼り紙でクリスマスケーキの予約中だとあったので、ちょうどよい機会だと立ち寄ってみる。
　カウンターで一番大きなホールケーキを二つ予約注文したところ、奥からパティシエール姿のシーナを現す。
「ご注文ありがとうなのです☆」
　シーナと少しだけ労いの言葉を交わす。
「またお魚持ってきますので」
「それじゃあ元気でねぇ」
　繁盛していたので、ゲドゥルとカルメンはすぐにお暇する。
「パーティの料理はどうしようかねぇ」
「ケーキの他には、魚介の鍋でも用意しましょうか。後はそうですね……、みなさんにも何か作ってもらうのはどうでしょうか。肉料理でもいいですね」
　ゲドゥルとカルメンは咎人たちを招いて、パーティを開く予定を立てていた。名目上はパーティ準備の手伝いだ。今年一年の労いと来年への鋭気を養うために。
　場所は根城にしている浮遊島のバンガローである。夜霧が立ちこめると海に変化する不思議な島で、二人は漁で生計を立てていた。
「部屋の飾り付けとかも頑張らないとねぇ」
「そういうのも、今日の内に買っていきましょう」
　買い物中のゲドゥルとカルメンは笑顔に包まれていた。