オープニング
簒奪者のエディ・ジャクソンは、一人でそう呟いていた。
こちらはオブライトで新たなるストーリーを『提案』している最中だ。正直、自分の作業に没頭したいのだが、それを許してくれる気配はない。
仕方ない。さっさと終わらせて、さっさと作業へ戻るとしよう。
ロンデニオン防衛、か。今の魔法騎士団に魔王軍を撃退する力があるとは思えない。
助かるとすれば主人公達の奮戦だが、果たしてそれだけで成し遂げるのだろうか。
できれば、ここら辺りで『燃える』展開の一つでも期待したい。
「ここで潰れるようなら、彼らは主人公では無かったって事だね」
●
エリス王国からロス・テラスへ呼び戻されていた咎人部隊『ベゾッフェン』。
魔王軍が侵攻を再開。ロンデニオン要塞に向かって大規模な侵攻を開始しているという。それもご丁寧に周辺の町や村はすべて無視。真っ直ぐにロンデニオン要塞へ突き進んでいるらしい。
「真っ直ぐに進軍。つまり、魔王軍は可能な限りの戦力をロンデニオン要塞へぶつけるつもりなのでしょう」
ベゾッフェン隊長のヴェルナー・ブロスフェルト(mz0019)は、冷静にそう分析する。
周辺の村を巻き込めば、戦力の分散が発生する恐れもある。そうなれば魔法騎士団側に付け入る隙を与える事になる。
魔王騎士団をロンデニオン要塞に集めて陥落させる事ができれば、ロス・テラス側の士気を大幅に下げる事が可能だ。
つまり、魔王軍は圧倒的な勝利をもってケリを付けに来ていると考えているべきだ。
「補給部隊の方は大丈夫ですか? おそらく敵は補給部隊も狙ってくるでしょう」
「現時点では報告はありません」
「報告なし、ですか」
ヴェルナーが呟いた。
知らせがないのは元気な証拠などというが、戦場では既に全滅している可能性もある。
報告がないからでは済ませられない。
この戦いが激戦になる事は容易に想定できる。長期戦ともなれば補給部隊の活躍が大きくなる。特に魔法騎士団は大きな影響を受ける。それは魔王軍に協力する咎人も理解している。狙ってくる可能性は高い。
「念の為、確認をお願いします。彼なら心配はないと思いますが……」
「承知しました」
隊員は敬礼の後、足早に立ち去る。
おそらく彼もこの戦いが激闘になる事を知っているのだろう。咎人だからこそ死亡してもエンブリオへ戻るだけだが、ここでの敗北はロス・テラスに大きなダメージを残す。そうなれば、更なる魔王軍の侵攻に抗う術が残っているのか――。
「隊長! 敵襲です!」
別の隊員が駆け込んでくる。
一瞬で周囲の者達に緊張が走る。
「敵は?」
「狙いはロンデニオン要塞外殻、つまり敵の狙いは我が部隊です」
「!?」
その言葉にヴェルナーは一瞬だけ驚嘆する。
何故、ロンデニオン要塞そのものではなく、外側へ布陣するベゾッフェンを狙うのか。
――個人的目的。考えられるとすれば、それだ。
恨みや憎しみ、もしくは一方的な好意。感情がこの行動を敵の指揮官が抱いた事になる。
つまり、この襲撃の裏には『ある簒奪者』が絡んでいる事になる。
「エディ・ジャクソン。ここで現れますか」
「敵は三方から現れています。三つの丘から降りて部隊を狙ってきます」
報告によれば、敵はベゾッフェンの東側から攻撃を仕掛けている。
敵は東にある小高い丘の上から現れ、その三箇所から同時に降りて襲ってきている。
(エディはゲートを使っていますね。その三箇所の何処かにエディがいるのでしょう。それならば……)
ヴェルナーは策を巡らせる。
この地を失えば、ロンデニオン要塞の防衛網に小さな穴が空く。小さな穴と侮るなかれ。ここからロンデニオン要塞への道が拓けば、魔王軍はここを足掛かりに物量で押してくる。決して、この地を失う訳にはいかない。
「ここの隊員で敵を押し返します。一部の隊員は敵が現れる小高い丘を調査して下さい。おそらくそこにエディがいるはずです」
成功条件
条件1 | 陣を防衛してエディを撃退する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | エディを迅速に撃退する |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
概要:
魔王軍がロンデニオン要塞へ本格的な侵攻を開始する。周りの町や村には目も暮れず、まっすぐ侵攻してくる。事実上、魔王軍が物量でロンデニオン要塞陥落を画策してきた。言い換えれば、この機に乗じて簒奪者も暗躍してくるはず。
ロンデニオン要塞防衛を進めるベゾッフェンであったが、ここで突如魔王軍がベゾッフェンへ襲い掛かってきた。戦略的に効果の薄い魔王軍の襲撃。不可思議な行動であったが、この攻撃の裏にヴェルナーと少なからず因縁のある簒奪者エディ・ジャクソンがいると推測。ヴェルナーは敵が現れる三つの丘のいずれかにエディがいると考え、一部隊員を突入させてエディ撃退を命じるのであった。
敵:
・エディ・ジャクソン
魔王軍に協力する簒奪者。フードを被り、魔術書らしき物を保有している。強めの天然パーマと丸眼鏡が特徴的。咎人に興味を抱いているらしく、咎人の過去と未来から話を聞くなどの行動を起こしている。能力により魔王軍を短距離移動させる事が可能であり、エリス王国を含む周辺国侵攻で電撃作戦を成功させていたのはエディと思われる。
<PL情報>
エディは一定時間経過すれば遭遇しなくても撤退します。
・オーク × 6
・ゴブリン × 6
・コボルト × 6
三つの小高い丘より降りて襲撃を仕掛けてきます。
三つの丘はベゾッフェンの東側にあり、北の丘からはオークが、中央の丘からはゴブリンが、南の丘からはコボルトが攻め寄せてきます。それぞれ粗末な鎧を装備し、刃こぼれした剣や棍棒を手にしています。一体だけでは強くありませんが、集団で攻撃されると厄介な相手です。
備考:
・ヴェルナーを含むベゾッフェン隊員はアサルトライフルで陣を防衛しています。
・三つの丘は少し離れている為、一人ですべての丘を回ろうとすると時間がかかります。
・敵の出現数は現時点の情報です。増援が襲来する恐れがあります。
マスターより
近藤豊です。
魔王軍による大規模な侵攻が開始されました。既に各地で転戦を繰り返してきた魔法騎士団と咎人だけで守り切れるかは懐疑的です。それでも彼らが盾とならなければロス・テラスには絶望の未来しかありません。敵が如何に強大でも、希望は咎人の皆様にあります。是非とも参加ご検討下さい。
それでは、ナッツ盛り合わせを肴にお待ちしています。
関連NPC
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- ヴェルナー・ブロスフェルト(mz0019)
- 人間種|男
参加キャラクター
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- 水無瀬 遮那(ma0103)
- 精霊種|男
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- 川澄 静(ma0164)
- 精霊種|女
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- 天魔(ma0247)
- 神魔種|男
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- アルマ(ma0638)
- 精霊種|男
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- 吉良川 奏(ma0912)
- 人間種|女
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- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
- リプレイ公開中