オープニング
『……別動隊と共にロンデニオン要塞を攻める?』
『そうだ。要塞の構造に関する記憶、多少は残っているんじゃないか?』
ロンデニオン要塞より30km地点。狩ったばかりの兎にナイフを入れながら、聖騎士――ユリウス・アウグニクス――は視線を上げる。
視線の先に居るのは氷堂アラタ。一種の上司であり、やれと言われれば従わざるを得ない相手だ。
『……やれと言われれば、やらざるを得ないが。私は咎人と戦う方が大事だ。要塞攻略中でも、咎人が出てくればそちらを優先する』
『それでいい。あくまでも陽動程度の気持ちで十分だ』
兎の皮を剥ぎ、臓腑を除きながら聖騎士はため息を吐く。ロンデニオン要塞を攻めたところで、ユニアの情報は手に入らないだろう。下手をすれば咎人と会うことすらないかもしれない。とんだ無駄足だ。
『否……といったところで無駄だろう。仕方がない』
兎を焚火に翳しながら既に入れていたカトラントン――イルダーナフ原産の野菜――を火から上げる。
『食べるか?』
『……なんだ、それは』
アラタが顔を引きつらせて首を横に振る。異世界人はこういうことがあるから困る、カトラントンも知らないとは。もう一度ため息を吐き、聖騎士はカトラントンを齧る。
『どうみても、たわしにしか見えないんだが』
『たわし? ……よくわからないが、カトラントンは美味いぞ』
一個投げて寄越すが……アラタは、嫌そうな顔をして森の中へ放り投げた。傍の藪が揺れ、カトラントンを貪る音が周囲に響く。
『ゴブリンか。醜悪な連中を連れているな』
『そういうな。一緒に要塞を攻める仲間だぞ』
今度は聖騎士が嫌そうな顔をする番だ。今まで散々斬ってきた相手。それと共闘しようなど。
『あと、今回はこいつを連れていくと良い。騎士ならばお手のものだろう?』
続けて藪から出てきた魔族に、聖騎士は一瞬喜び……そのあと、微妙な顔をした。
騎馬だ。しかし、首がない。聖騎士の故郷では『首無し馬』というのは不吉の象徴とされている。
『……まぁ、こちらの方が戦いやすくはある、が……』
渋い顔をしながら、聖騎士が兎を齧る。
骨が砕ける鈍い音が、森の中に響き渡った。
●コンスト・ティーノブル砦の騎士
辺境の砦や街を全て無視して前進する魔王軍。それに対し、辺境砦であるコンスト・ティーノブルの騎士たちは急ぎロンデニオン要塞へと進軍していた。
「間に合えばいいのだが……もっと飛ばせないのか?」
「団長、それを聞くのは8回目です。ロンデニオンまで残りわずかですし、これ以上急いで馬を潰すわけにもいかないでしょう」
焦る百花騎士の団長を副長が諫めつつ、騎士たちは行軍する。百花騎士1名に魔法騎士10名。
「……カシウス、早く帰ってやらなくては子供たちが泣くぞ!」
「お気遣いありがとうございます、騎士団長殿。どうも皆甘えん坊ばかりで」
コンスト・ティーノブル砦の騎士には『孤児院の騎士』とあだ名される騎士がいる。戦火に巻き込まれた子供たちを世話する変わり者。そんな彼の名はカシウスという。
砦で帰りを待つ子供たちの顔を思い浮かべたのか、固かった表情がわずかに緩んだ。
「ロンデニオン要塞に到着するまで戦闘にならなければいいが……」
「団長、それを聞くのは12回目……っ!? 全隊停止!!」
騎士団長の言葉に呆れていた副長が、突如手綱を引く。見えたのは、街道を横切る幾匹ものゴブリン。それも、破城槌や梯子を持ち、攻城戦用装備を整えたゴブリンだ。
「敵だ! 攻城戦装備、数10以上! 陣形アロー!!」
団長が矢継ぎ早に指示を飛ばし、騎士たちが陣形を作り直す。此処にいたり、ようやく騎士団の接近に気付いたゴブリンが騒ぎ出す。
「遅い! 一気に蹴散らし、ロンデニオンに危機を知らせ……」
『悪いが、そうもいかない』
接敵する、まさにその瞬間。先頭を走る魔法騎士が街道脇の森から躍り出た何かに弾き飛ばされる。騎士を突いたのは、先端を潰した円錐状のランス。
「貴様……ユリウス・アウグニクス!!」
『そろそろイルダーナフ中に広まっているのかな。あまりうれしい話ではないが……』
ランスを構え、聖騎士が首無し馬の胴を撫でる。
『さて、私は殺しをするつもりはないが……魔族は私の指示にはあまり従ってくれないんだ』
藪の中からあふれ出すゴブリンの波。さらには森を揺らし接近する何かの気配に、騎士団はじりじりと後退する。
「……オーガがいるようだな。聖騎士め、魔族と行動を共にするまで堕ちたか」
騎士が毒づく。果たして森から抜け出してきたのは、身の丈3mはあろうかという巨体を誇る醜悪な亜人。後方から饐えた臭いを発しつつ現れたそれに、騎士たちは顔を顰める。
「あれがユリウス……あの子たちに悪夢を見せた騎士……」
目の前に現れた聖騎士の姿に。孤児院の騎士が、剣を握りしめた。
成功条件
条件1 | コンスト・ティーノブル砦の騎士団を全員救出 |
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条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | 聖騎士を撃破し、魔族軍の指揮系統を瓦解させる |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
●解説
戦場:街道
ロンデニオン要塞へ至る街道。10スクエアほどの幅を持ち、立ち回りには困らないだろう。
両脇は例のごとく森。しかし此度は魔族が進軍できる程度にまばらな森であり、移動ステータスにマイナス補正は掛からない。
●状況
・咎人達はロンデニオン防衛に駆け付ける途中でたまたまOP状況に遭遇。そのまま戦闘に入ることとなる。
味方
コンスト・ティーノブル砦の騎士×10+気絶1
百花騎士の団長、魔法騎士10名で構成された騎士団。1名気絶中。
それぞれゴブリンと1vs2程度なら苦戦しないだけの戦闘力を持つが、それ以上の数やオーガ、聖騎士を相手どるのは少々厳しいかもしれない。
総合力は騎士団長900、他750程度。
騎士団長の指示に基づいて行動するため、PCの意見に従うとは限らない。基本的にはゴブリン→オーガ→聖騎士の順で攻撃目標とする。
退路さえ開ければ戦闘を中断・離脱する。退路はロンデニオン方向である必要はない。聖騎士、或いはオーガが進路にいる限り離脱できない。
敵
聖騎士『ユリウス・アウグニクス』
・1Rに3回行動
・今回は『首無し馬』に騎乗。移動力は7。
●射程5のチェーンロック
●ホーリーパイル
●『獣心の牙』:M・Sアクションを消費。噛みつく事で発動し、シールドを貫通してライフを奪う技。シールドを消費せず発動。射程1。
●授かりし希望
極めて高い抵抗値を持ち、BSに耐性を持つ。
・攻城戦型ゴブリン×15
ロンデニオン要塞攻略の為装備を持ったゴブリン。
・攻城戦型オーガ×1
サイズ2。破城槌を振り回しており、直撃すればBS『ノックバック』付与。また『拘引』、『ノックバック』の効果を受けない。
マスターより
ロンデニオンに1R3回全力移動で聖騎士が駆けつけてくれました。実質遅刻したも同然ですが、間に合ったのでセーフ!!
因縁のある方、そうでない方、どちらもよろしかったらご参加くださいませ。
参加キャラクター
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- 桜庭愛(ma1036)
- 人間種|女
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- ルー・イグチョク(ma0085)
- 人間種|男
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- 六道煉龍(ma0646)
- 人間種|男
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- マイナ・ミンター(ma0717)
- 人間種|女
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- 卜部 紫亞(ma0107)
- 人間種|女
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- シア・ショコロール(ma0522)
- 人間種|男
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- アナルデール・ウンディーニ(ma0116)
- 人間種|女
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- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
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- 氷雨 絃也(ma0452)
- 人間種|男
- リプレイ公開中