オープニング
特別に暑い夕方だった。黄昏た夕暮れが地平線へと沈む中、それは向かってきた。
「抜かせるな、この先は子供と女ばかりだぞ!」
「わかってる、でも……なんだあいつ、前とは全然違うぞ!?」
煉獄の護衛する避難所が襲撃を受けたのは、わずか10分の間だった。その時間で、メガロリスト一名を含む煉獄戦闘員五名が死傷した。
「止めろ、その子を連れて行くな……!!」
「離して、もう嫌だ! もうあんなの嫌だ!!」
「クソが、離せ……ガァァア!?」
護衛戦力を失った避難所から誘拐されたのは、八名の子供と二名の女性。追撃を掛ける余裕もないほど痛めつけられた煉獄戦闘員たちを嘲笑うかのように、襲撃者たちは離脱した。
孤児院を襲撃したのは、数体の義殻。以前の大型化した物とは違う、流線形で全身を覆うように施された装甲。腕や胸部に設置された固定武装。脚部に配置されたブースターユニット。いずれも極めて強力な装備で、コンパクト化されていた。
『ガキは貰うぞォ、煉獄ゥ! こィつらがァらたな義殻となりィ、貴様らと咎人共に怒りの鉄槌を下すのだァ!!』
「助けて、離して……咎人さん、助けて!!」
狂った科学者の笑い声と共に連れていかれた人々。そのうちの一人は、名前を薫と言う。
以前義殻に組み込まれ、咎人に救い出された少女は。
「ふざけるなよ……一度、助けられたんだぞ……それなのに、クソ……畜生!!」
逃げきれなかった。鎖のように絡みついた狂気が彼女を再度捕らえた。自らの無力に、不甲斐なさに、煉獄の戦闘員たちが地面を殴りつける。
あまりにも惨い結末だった。
●狂機と咎人
『咎人共ォ、元気にしてィたかァ? そうでなくっちゃァ困るなァ!!』
誘拐から一週間。煉獄と共同で避難所の護衛を行っていた咎人達の前に、義殻が現れた。
現れたのは五体。装備する人間を守ることを学んだのか、事前情報通り全身に装甲が施されていた。
『ァの日、貴様らはィったなァ? 義殻は欠陥兵器だとォ。非効率的兵器だとォ』
一体の義殻が、胸部の装甲プレートに手を掛ける。開かれた中に見えるのは、緑の養液に満たされた水槽。
『私とて人の子ォ、少しは躊躇ィがァったんだがァ。ォ前たちのォかげで、一線を越えることが出来たァ。礼を言ォゥ』
水槽の中に浮かぶものは。ピンク色をした、その臓器は。
「…………!!」
『分かって来たんだがァ。人間の極致とは脳だけの状態なんだなァ。あれだけで十分に生存が可能だァ』
感慨深げに、男が呟く。言葉を発することも出来ない咎人達の前で、ゆっくりと装甲プレートが閉じていく。それを誰も止めることが出ない。誰も動くことが出来ない。
『脳は実に便利だァ。養液に浸し適切な管理下に置けば低コストに狭いスペースで管理が出来るゥ』
半ば独り言のように、男が続ける。それを聞く咎人が、思わず首を振る。人間がそこまで堕ちるはずがないと。たとえ閃いても、実行できるはずがないと。
『なァ、咎人ォ。一つ聞きたィ。これは人間ではなくもはやパーツだと思うんだがァ……これでもォ、ォ前たちは救うのかァ?』
ふ、と。笑い声が噴き出した。一度噴き出せば止まらない。すぐにゲタゲタ、ゲラゲラと心底愉快そうな声に変わっていく。
『なァ、これって人間かァ!? 違ゥよなァ!! ならば私の研究は成功だァ、ミニオンよりも強力な装備と賢いAIを持ったァ、強力な戦闘兵器を作り出したぞォ!!』
いまだ動けない咎人の耳に、小さな、しかしはっきりとした声が届く。
「咎人……さん……おねが、い……こわい……」
子供の声だ。心底怯えた、震えるような子供の声が聞こえる。義殻の口に配置された発声器から、小さく小さく漏れ出している。
「たすけて……おねがい、もういちど……」
聞き覚えのある声だった。以前救った少女と同じ声をしていた。
『ァァ、気にするなァ。少しは戸惑わせられると思って生前の声を再現してみたんだがァ……脳みそだけの人間を殺すぐらいためらィなィよなァ?』
さァ、ィけ、義殻004。全員殺せェ。男の言葉と同時に、義殻が動き出す。
止めなければいけない。止めなければ被害は拡大するばかりだ。後ろの避難所には、多くの人々がいる。
この義殻を破壊しなくてはならない。
成功条件
| 条件1 | 義殻004を全て殺す |
|---|---|
| 条件2 | - |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | 義殻との戦闘で『白衣の男』につながる手がかりを見つけ出す |
|---|---|
| 条件2 | - |
| 条件3 | - |
解 説
●解説
戦場:避難所前
後方100スクエアほどに煉獄の避難所あり。女性や子供、老人など逃げることが難しい人々が30人ほど収容されている。煉獄が避難を急いでいるが、到底間に合わない。
咎人達が義殻を迎撃している場所は噴水広場。戦闘に十分な広さがある。
状況
●敵
・義殻004×5
義殻シリーズの最新型。子供の脳をOSとして動いている。
以前とは違い『子供の脳』を完全に格納。その分戦闘能力は飛躍的に向上した。
弱点は胸部の装甲プレート。プレートを破壊後内部の『子供の脳』を破壊することで完全に機能停止する。
攻防、基本出力が大きく向上しており、仮に抑え込む場合『筋力40』以上でなければ抑え込むことはできない。
腕に射程10のガトリング攻撃(メイン)、射程2の近接戦用固定ブレード(メイン)、射程3の近接射撃用クラスターカノン(チェーン)を装備。
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●
クラスターカノンは●を基点とし、図のように特殊な範囲攻撃を行う。命中+30、威力+15のスキル扱い。味方識別不可。
・特殊スキル:発狂
15R経過時点で使用されるスキル。脳格納ユニットに特殊な養液を注水。義殻の戦闘能力を向上させる。
代償として義殻は会話不可能な『戦闘機械』と化す。発狂した義殻はもはや人間ではない。
発狂時、クラスターカノンは『サブアクション』で使用可能になる。
【白衣の男】
天獄機関所属。義殻を作り出す男。
AIを用いた無人機を作る才能は無いが、非常に高い人体改造技術を持っている。
今回も現場にはおらず、義殻に搭載したスピーカー・集音機でこちらの様子を探っている。
【義殻の少女:薫】
前回咎人達により救い出された少女。まだ意識はある。まだ生きている。貴方達と、会話もできる。
だがもう救い出せない。
マスターより
お待たせいたしました。義殻が此度もやってきました。
どこまでが救うべき人間でしょうか。どこからが救うことのできない人間でしょうか。
人間はどこまで行けば機械になってしまうのでしょうか……
参加キャラクター
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- 六道煉龍(ma0646)
- 人間種|男
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- ザウラク=L・M・A(ma0640)
- 機械種|男
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- ラファル・A・Y(ma0513)
- 機械種|女
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- レジオール・V=ミシュリエル(ma0715)
- 剛力種|女
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- 青柳 翼(ma0224)
- 人間種|男
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- 火存 歌女(ma0388)
- 機械種|女
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- 夕凪 沙良(ma0598)
- 獣人種|女
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- 伊吹 瑠那(ma0278)
- 剛力種|女
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- 桜庭愛(ma1036)
- 人間種|女
- リプレイ公開中




