オープニング
「今ここに、『地霊祭』の復活を宣言する！！」
ヴェイグル・ベルゲの大声に対し、拍手はまばらであった。
それもそのはず。ドヴェルゲンヘーレの広場には、まだまだ人影が少ない。
「地霊祭か……何年ぶりかのう～」
「てゆーかアレ、本当に地霊王様なのか？」
ヴェイグル・ベルゲ。
元地霊王にして、現在はエンブリオの咎人である剛力種の男。
彼の死は聖樹界の歴史においても大問題であり、その死をきっかけにロス・テラス聖王国とドヴェルゲンヘーレは仲違いしてしまっている。
それを解決せんと奮起したヴェイグルに咎人らは付き合っていた。
無意味かと言えばそうではない。ドヴェルグらを咎人がうまく仲介できれば、ロス・テラス聖王国に『貸し』を作れる。
バロル帝国――魔族の国と戦う仲間が増えれば、咎人も楽になる。
……のだが……。
「ううむ……やはり身の証を立てぬことにはまとまらんか」
ヴェイグルは顎髭を揉みながらボヤく。
彼はこの世界ではとっくに死亡している。
なんならこの『地霊の穴倉』にて埋葬までされているのだ。
彼の死はとうに乗り越えられた『過去』――。痛みの記憶を思い起こさせるだけの不謹慎な偽物。そう捉えるドヴェルグも少なくなかった。
「偽物であっても祭は祭じゃ。酒が飲めるならワシは歓迎じゃけどな」
「……まあ、そうじゃな。地霊祭なんて久しぶりじゃ。ヨソモンを招いて酒や料理を買ったり、歌や踊りを教わったり……懐かしいのう。あの頃は楽しかった」
「トガビトとかゆーたか。なんか、そもそもイルダーナの口利く種族ですらないらしいが……まー、穴倉の外からくるモンはみんな同じヨソモンじゃしの」
一部のドヴェルグは咎人を歓迎してくれている。
そのことにヴェイグルはほっと胸をなでおろした。
「今はシンとしちまったが、昔はこの穴倉もうるさかったのよ。ずうっと誰かが宴をしておったし、ハンマーが鉄をぶっ叩く音が昼も夜も響いておった」
その景色を取り戻すことは、元王様の責務……なのかもしれない。
「地霊祭じゃが、お前さんたちには二手に分かれて対応してもらいたい」
協力者となる咎人を集め、ヴェイグルは説明する。
「ひとつは、地霊祭を成功させるチィムじゃ。この広場で食いモンや飲みモンを振舞ってほしい。宴が盛り上がれば祭は成功したようなモンじゃからな！」
今はまだ客が少ないが、盛り上がってくればそこらの穴からドヴェルグが押し寄せる算段だ。
ジャンジャン飲食物を提供しないといけないらしい。もう、それこそジャンジャン。
「特に酒は重要じゃ！ それと、できれば若い女子に接待してもらいたい……が！ これマジで注意してほしいんじゃが、ナヨナヨしてる女子はダメじゃからな！！」
ドヴェルグは身体つきがガッチリしている方が『美』らしい。
「なんなら男が女装してるんでもいいぞ。お前ら男のくせになんか全体的に身ぎれいだし」
ゾっとする提案だが……うん。皆さんお顔が整っているので大丈夫そうですね。
「飲み食いするだけでも構わんぞ。だが、その分楽しそうに頼む。サクラっちゅうたか？ 誰かが騒いでいると混ざりたくなるのが宴というものだからのう。宴会芸とかもいいな。歌と踊りも大歓迎だ。この穴倉では喜ばれる」
とにかく騒げばそれだけでもいいらしい。
「もうひとつのチィムは、儂と共に地下へ向かい『角折』をしてもらう。角折っちゅうのは、ドヴェルゲンヘーレに伝わる儀式でな。地霊王が身の証を立てるために必要なのよ」
ドヴェルゲンヘーレは聖山カイラーサという霊峰の中にある街だ。
その地下はカイラーサの『地龍』のねぐらへ通じているのだという。
「地龍と戦い、その角を折って持ち帰る。若い頃、儂が王になるときにもやった儀式だ。角を持ち帰りゃあ、儂が地霊王ヴェイグルその人と誰もが信じるだろうよ。そしてお前さんたち咎人の力を示すことにもつながるじゃろう」
地龍は『口利く種族』に敵対的な存在ではない。
古代からイルダーナの大地を生きる神性の一つで、角は折れてもまた生えてくるのだとか。
向こうも角折の儀式を理解しているのか、呼びかければ応じてくれるらしい。
「地下はマグマでグッツグツのアッツアツじゃから、火には気をつけろよ」
ヴェイグルの説明を聞き、咎人はそれぞれチィム……いや、チーム編成を始める。
強敵である地龍に挑むのもいいし、宴を盛り上げるのも重要だ。
自分はどちらで参加しようか……そう考えていると。
「こんなに早くドヴェルゲンヘーレに来ることになるなんて、予想外でした」
いつの間にか近くにシスターが立っていた。
エンブリオの武装教会でイデアウェポンの開発を担当する、グラジオラスという咎人の女性だ。
地霊祭の準備には武装教会の協力も受けているらしい。
「ライト能力者は運命を変える力があると申しますが……あなたはひときわその力が強い様子ですね。ウフフ……今回もどんな修正が行われるのか、とっても楽しみですわ」
自分は参加しないような物言いである。
そのことについて指摘すると……。
「ええ、わたくしは今回は不参加です。裏方に徹しますのでどうぞお構いなく♪」
別れ際、グラジオラスはあなたに顔を寄せる。
じいっと瞳を覗き込み、いつも通りの笑顔を作った。
「ヴェイグルが迷惑をかけるかもしれませんが、それとなく支えてあげてくださいね。彼はきっとこの物語を良き形で終えるために必要な役者……でしょうから。ウフフ……それでは。イルミン・イルダーナ！」
グラジオラスは去って行った。
言われずともヴェイグルをここで死なせるわけにはいかない。
ドヴェルゲンヘーレと友好を結ぶために、ひいてはこのイルダーナフの大地を平定するために、彼はきっと必要になるだろう。
さて……。
祭に参加するか、儀式に参加するか……それが問題である。
あなたが参加を決めたのは――。
ヴェイグル・ベルゲの大声に対し、拍手はまばらであった。
それもそのはず。ドヴェルゲンヘーレの広場には、まだまだ人影が少ない。
「地霊祭か……何年ぶりかのう～」
「てゆーかアレ、本当に地霊王様なのか？」
ヴェイグル・ベルゲ。
元地霊王にして、現在はエンブリオの咎人である剛力種の男。
彼の死は聖樹界の歴史においても大問題であり、その死をきっかけにロス・テラス聖王国とドヴェルゲンヘーレは仲違いしてしまっている。
それを解決せんと奮起したヴェイグルに咎人らは付き合っていた。
無意味かと言えばそうではない。ドヴェルグらを咎人がうまく仲介できれば、ロス・テラス聖王国に『貸し』を作れる。
バロル帝国――魔族の国と戦う仲間が増えれば、咎人も楽になる。
……のだが……。
「ううむ……やはり身の証を立てぬことにはまとまらんか」
ヴェイグルは顎髭を揉みながらボヤく。
彼はこの世界ではとっくに死亡している。
なんならこの『地霊の穴倉』にて埋葬までされているのだ。
彼の死はとうに乗り越えられた『過去』――。痛みの記憶を思い起こさせるだけの不謹慎な偽物。そう捉えるドヴェルグも少なくなかった。
「偽物であっても祭は祭じゃ。酒が飲めるならワシは歓迎じゃけどな」
「……まあ、そうじゃな。地霊祭なんて久しぶりじゃ。ヨソモンを招いて酒や料理を買ったり、歌や踊りを教わったり……懐かしいのう。あの頃は楽しかった」
「トガビトとかゆーたか。なんか、そもそもイルダーナの口利く種族ですらないらしいが……まー、穴倉の外からくるモンはみんな同じヨソモンじゃしの」
一部のドヴェルグは咎人を歓迎してくれている。
そのことにヴェイグルはほっと胸をなでおろした。
「今はシンとしちまったが、昔はこの穴倉もうるさかったのよ。ずうっと誰かが宴をしておったし、ハンマーが鉄をぶっ叩く音が昼も夜も響いておった」
その景色を取り戻すことは、元王様の責務……なのかもしれない。
「地霊祭じゃが、お前さんたちには二手に分かれて対応してもらいたい」
協力者となる咎人を集め、ヴェイグルは説明する。
「ひとつは、地霊祭を成功させるチィムじゃ。この広場で食いモンや飲みモンを振舞ってほしい。宴が盛り上がれば祭は成功したようなモンじゃからな！」
今はまだ客が少ないが、盛り上がってくればそこらの穴からドヴェルグが押し寄せる算段だ。
ジャンジャン飲食物を提供しないといけないらしい。もう、それこそジャンジャン。
「特に酒は重要じゃ！ それと、できれば若い女子に接待してもらいたい……が！ これマジで注意してほしいんじゃが、ナヨナヨしてる女子はダメじゃからな！！」
ドヴェルグは身体つきがガッチリしている方が『美』らしい。
「なんなら男が女装してるんでもいいぞ。お前ら男のくせになんか全体的に身ぎれいだし」
ゾっとする提案だが……うん。皆さんお顔が整っているので大丈夫そうですね。
「飲み食いするだけでも構わんぞ。だが、その分楽しそうに頼む。サクラっちゅうたか？ 誰かが騒いでいると混ざりたくなるのが宴というものだからのう。宴会芸とかもいいな。歌と踊りも大歓迎だ。この穴倉では喜ばれる」
とにかく騒げばそれだけでもいいらしい。
「もうひとつのチィムは、儂と共に地下へ向かい『角折』をしてもらう。角折っちゅうのは、ドヴェルゲンヘーレに伝わる儀式でな。地霊王が身の証を立てるために必要なのよ」
ドヴェルゲンヘーレは聖山カイラーサという霊峰の中にある街だ。
その地下はカイラーサの『地龍』のねぐらへ通じているのだという。
「地龍と戦い、その角を折って持ち帰る。若い頃、儂が王になるときにもやった儀式だ。角を持ち帰りゃあ、儂が地霊王ヴェイグルその人と誰もが信じるだろうよ。そしてお前さんたち咎人の力を示すことにもつながるじゃろう」
地龍は『口利く種族』に敵対的な存在ではない。
古代からイルダーナの大地を生きる神性の一つで、角は折れてもまた生えてくるのだとか。
向こうも角折の儀式を理解しているのか、呼びかければ応じてくれるらしい。
「地下はマグマでグッツグツのアッツアツじゃから、火には気をつけろよ」
ヴェイグルの説明を聞き、咎人はそれぞれチィム……いや、チーム編成を始める。
強敵である地龍に挑むのもいいし、宴を盛り上げるのも重要だ。
自分はどちらで参加しようか……そう考えていると。
「こんなに早くドヴェルゲンヘーレに来ることになるなんて、予想外でした」
いつの間にか近くにシスターが立っていた。
エンブリオの武装教会でイデアウェポンの開発を担当する、グラジオラスという咎人の女性だ。
地霊祭の準備には武装教会の協力も受けているらしい。
「ライト能力者は運命を変える力があると申しますが……あなたはひときわその力が強い様子ですね。ウフフ……今回もどんな修正が行われるのか、とっても楽しみですわ」
自分は参加しないような物言いである。
そのことについて指摘すると……。
「ええ、わたくしは今回は不参加です。裏方に徹しますのでどうぞお構いなく♪」
別れ際、グラジオラスはあなたに顔を寄せる。
じいっと瞳を覗き込み、いつも通りの笑顔を作った。
「ヴェイグルが迷惑をかけるかもしれませんが、それとなく支えてあげてくださいね。彼はきっとこの物語を良き形で終えるために必要な役者……でしょうから。ウフフ……それでは。イルミン・イルダーナ！」
グラジオラスは去って行った。
言われずともヴェイグルをここで死なせるわけにはいかない。
ドヴェルゲンヘーレと友好を結ぶために、ひいてはこのイルダーナフの大地を平定するために、彼はきっと必要になるだろう。
さて……。
祭に参加するか、儀式に参加するか……それが問題である。
あなたが参加を決めたのは――。
成功条件
| 条件1 | ドヴェルゲンヘーレとの友好確立 |
|---|---|
| 条件2 | - |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | 『角折の儀式』の成功 |
|---|---|
| 条件2 | ドヴェルグ全員の腹を満たす |
| 条件3 | - |
選択肢
| 選択肢1 | 地霊祭参加 | 現在の人数 | 29 |
|---|---|---|---|
| 選択肢2 | 角折の儀式 | 現在の人数 | 20 |
解 説
この作戦は二つの選択肢に分けて実行されます。
選択肢1.地霊祭参加
ドヴェルゲンヘーレのホールで行われる地霊祭に参加します。
厳密にはこの選択肢の目的は「より多くのドヴェルグを動員する」ことにあります。
その目的を満たすための行動であれば、多彩なアプローチが許容されます。
飲み物や食べ物を提供したり、ステージで歌や踊りや芸を披露したり、あるいは自分ももてなされる側になって大騒ぎしましょう。
楽しんでいる人がいれば、少しずつドヴェルグが集まってくるはずです。
咎人について理解を深め、友好を結ぶ手助けになればなおよい結果と言えます。
こちらの選択肢は戦闘能力が要求されません。
選択肢2.角折の儀式
聖山カイラーサの地下に住まう地龍と対決します。
地霊祭の目玉であり、地龍の頭部にある角を折って持ち帰る儀式です。
戦場はマグマに満ちた危険な場所ですが、十分な広さの足場があり、自ら身投げしない限り落下の危険はありません。
地龍は呼びかけに応じて姿を見せますが、本来は凄まじい強さを持つ神性であるため殺すことはできません。
角を折って持ち帰れば成功。できなければ失敗となります。
NPCとしてヴェイグル・ベルゲが同行します。
敵情報
『カイラーサの地龍』
マグマの中を普通に泳いでおり、「火」に耐性を持つ。
サイズがとても大きく、通常攻撃が範囲を持つ。
大地を隆起させる地属性攻撃や、火属性のドラゴンブレスで攻撃する。
本来はヒトが倒せる存在ではないが、儀式に付き合ってくれる。
角は折れてもすぐ生えてくる。
マスターより
ハイブリットヘブンをお楽しみいただきありがとうございます。運営チームです。
こちらのグランドシナリオはエピック「ラストメッセージ」と連動する内容となります。
エピックをクリアしなくとも参加は可能ですが、併せてお楽しみいただけますと幸いです。
参加キャラクター
-
- 氷鏡 六花（ma0360）
-
- 椎名 亜蘭（ma0518）
-
- クラリス・ド・ラプラード（ma0056）
-
- ハティ・パラセレネ（ma0220）
-
- ラファル・A・Y（ma0513）
-
- 蓮 蒼馬（ma0362）
-
- 山神 水音（ma0290）
-
- プラム・ショール（ma0919）
-
- シェパーズ（ma0308）
-
- 持田 祐希（ma0584）
-
- 白花・C・琥珀（ma0119）
-
- 小山内・小鳥（ma0062）
-
- ケイウス（ma0700）
-
- 佐藤 桜歌（ma0034）
-
- シア・ショコロール（ma0522）
-
- 火存 歌女（ma0388）
-
- マリュース（ma0231）
-
- ルー・イグチョク（ma0085）
-
- 青柳 翼（ma0224）
-
- 鈴鳴 響（ma0317）
-
- 歌川 四季（ma0656）
-
- マイナ・ミンター（ma0717）
-
- リムナンテス（ma0406）
-
- 羽鳴 雪花（ma0345）
-
- 夕姫（ma0199）
-
- シトロン（ma0285）
-
- ナナシ（ma0157）
-
- モルディウス（ma0098）
-
- 八神 勘九郎（ma0860）
-
- チェスター・ハルフォード（ma0535）
-
- アルティメット・パッカー（ma0337）
-
- アリス＝ウロボロス（ma0502）
-
- 相澤 椛（ma0277）
-
- 川澄 静（ma0164）
-
- 水無瀬 遮那（ma0103）
-
- ルクス（ma0773）
-
- 高柳 京四郎（ma0078）
-
- 七掛 双儀（ma0038）
-
- フリッツ・レーバ（ma0316）
-
- 魅朱（ma0599）
-
- ユーグヴェル・ミラ（ma0623）
-
- シアン（ma0076）
-
- 極楽 鳥花（ma0455）
-
- ザウラク＝L・M・A（ma0640）
-
- フローライト（ma0292）
-
- 甕星 リリ（ma0260）
-
- ララ カムナガル（ma0288）
-
- 烏枢沙摩 ルル（ma0296）
-
- 雪野 氷冥（ma0190）
-
- 狭霧 雷（ma0146）
- リプレイ公開中
