風火双騎
凪池シリル
Twitter
シナリオ形態
ミニノベル
  1. ミニノベル
  2. -
  3. -
  4. -
  5. -

ミニノベル

 咎人たちが日々、力を得んと修練を積みに来る訓練場で、今、シアン(ma0076)とジィト(mz0039)が向かい合っていた。
 偶々居合わせた同士、折角だから手合わせしよう、という流れだ。互いに構えた武器の切っ先を向け合い、そしてその間の空気に「何か」が満ちた瞬間、先に仕掛けたのはシアンだった。真正面から延びてくる斬撃、ジィトはそれに己の持つ刃を真っ向から合わせて受ける。踏みしめて押し返すことで衝撃を相殺し、減じさせた威力をイデアによる護りの力で弾いていく。
 お返しとばかりにジィトが振り抜いた刃を、シアンは受け止めるのでは無く流す形で捌き、僅かな動きで避けた。確かに正中を狙った筈の剣は、何の手応えも得ずにシアンの横をすりぬけていく。
 互いにまず様子見と言った攻撃を交わし合って二人は知らず笑みを浮かべた。
 それじゃあ本番という風に、シアンの剣が風を、ジィトの剣が火を、それぞれ華を描くようにして纏う。
「……行くよ!」
 少し距離を取ったシアンが、楽しそうな声を上げて踏み込んできた。加速する身体が、ジィトの目の前で掻き消える。機動力を生かしての死角への移動、そう読んだジィトは周囲へ意識を巡らせるが、シアンの気配を捉えられない。距離を見誤った? が、『見えない範囲』に居ることは間違いない。ジィトは剣を胸元に引いて守りを固めつつ振り返る……右からくるか左からくるか、それによりどう回転すべきかは、賭け!
 そうして、背後からの強襲は今度は正面からきちんと受けるとはいかなかった。崩れた角度で何とか多少は弾いたという体で、初撃よりもはるかに強い衝撃がシールドを削っていくのを感じる。シアンは「これでも駄目か……」という顔をしていたが、初手で防御結界を展開していなければ無理だったろう。ジィトは重く息を吐く。
 ……咎人同士、一対一の手合わせは、「相手を倒す」を目標にすると難しい。一人で相手のシールドを破るのは難しいし、それだけの攻撃が出来るならそのまま一瞬で決着がつくので訓練にならない。それなら、折角互いの本気を受け止め合える相手だ、倒すことに拘るより実戦での動きを色々試せる方が良い。
 とは言え、何らかの決着は欲しい。シアンは「一度くらい、攻撃を止めさせずにに直接当ててみたい」と考えていたし、ジィトは「それだけはさせない」と思っていた。
「……の、やろ!」
 呻くようにジィトは言って、神威で紡いだ光の鎖を伸ばしてシアンの動きを拘束する。防御力を活かせるよう、距離を詰めて正面からの殴り合いに持ち込もうという考えだ。
 ……互いに、今セットしているロールは百花騎士だ。だが、それが逆に、これまで重ねてきた事の差がくっきり浮かぶ形となっている。
(動きが多彩だな……くそ、やっぱ好機を生んだり活かしたりって発想が俺の動きには足りねえ……)
(状況をすぐに安定させてくるなあ……あの程度の奇襲じゃ動揺も誘えないか)
 そうして、互いの動きに互いの足りないものを見出し合って……そのことに、何処か誇らしさを感じ合う。
 いつしか。目標など忘れて、ただ夢中になって打ち合っていた。だって互いにまだ倒れていない──この時間が楽しすぎて、終わらせたくない!
 そうするうちに。
「く、そ……あれ?」
 ジィトが、シアンの攻撃の衝撃で膝をつき。その瞬間、蓄積した疲労を自覚して床に伸びる。
「あれ? 大丈夫……、あ、いや、なるほど」
 そうしてシアンも、その瞬間に疲れがどっと出てきてへなへなと座り込んで、この訓練はお開きになったのだった。

関連NPC

  • ジィトmz0039
    人間種|男

参加キャラクター

  • シアンma0076
    人間種|男

ページ先頭へ

ページ先頭へ