オープニング
●恋愛脳
「もー、姉様ったらしっかりしてよ! すっかり咎人にお熱なんだからぁ!」
「あら……ごめんなさいね。わたくしも、彼らがあそこまでとは思わなかったから……」
字の氏族の居城、連城。
自室で書類整理をしていたアヤメは、ふと手を止めてぼうっと空を見上げていた。
筆から墨汁が垂れていることにすら気づかなかったので、妹のショウブが慌てて注意する。
ショウブの紹介で咎人たちと会談して以降、アヤメは心ここにあらずといった様子を見せることが多くなった。
恋してしまいそうなどと言っていたが、すでに重症化しているような気がするが……。
「おかきの妖精さん……。愛らしい猫耳料理人……。凛々しい少年剣士……。元気印の魔法使い……。涼やかな白き翼……。慈愛の包容天使……。理知的な銀髪少女……。流麗なる藍色の君……。一人だけを切り取っても物語の主役のような綺羅星たち……。あんなの、ときめいてしまうに決まっているわ……」
お互い本気ではなかったとは言え、字の氏族の最高峰とも言えるアヤメに勝利した実力。
見目麗しい異邦人たちに、普段同格の人間に恵まれないアヤメはご執心のようだった。
咎人たちの自由行動と技術協力を承諾したのは、氏族にとって利があると判断したのもあるがアヤメの個人的な感情部分も大きかっただろう。
「まぁ、けんもほろろに追い返されるよりはいいけどさぁ」
「うふふ……大丈夫よ、色恋沙汰で破滅するほど愚かではないつもり。少なくとも氏族にとって不利益になるような決定はしません」
「ほんとかなー?」
プライベートであっても姉が呆けているところを見たことがなかったショウブは、正直不安感が拭えない。
自分の友達と仲良くしてくれるのは嬉しいが、大事なところで躓いたりしないで欲しいものだと思う。
「それより、そろそろブライムが出てくる時期ではなかったかしら? 咎人の皆様にも一度、彼を体験してもらいましょう」
「えっ!? いきなりアレと戦ってもらうの!?」
「彼らの実力なら死にはしないでしょう。これくらいの近所注意報は乗り切ってくれるはず……。あぁ……わたくしも彼らの戦う様を直に拝見したいわ……」
シャキッとしたりうっとりしたり忙しいアヤメに、ショウブは増々不安になっていく。
話題に出された『ブライム』という単語。それは即ち―――
●ブライムの不夜城
『我らが主、ブライム=デミウルゴス様のお言葉である。一同、平伏せよ!』
夜でも光を放つ、妖鉄界には似つかわしくない鉄の城。
コンピュターや電子機器に埋め尽くされた機械じかけの城は、字の氏族の領内である『筆山(ふでやま)』に突如として出現した。
妖鉄界の各地で悪逆を尽くすデミウルゴス……その一体であるブライム=デミウルゴスの居城である。
人型アンドロイドの少女、マイズの号令に数多の鉄騎が片膝立ちになり、剣を捧げて奉る。
その一糸乱れぬ動きは、全てが機械である鉄騎の威力と威容を感じざるを得ない。
『……』
そして玉座に鎮座する巨大な機体。
全身を黒い装甲で覆った重厚なる王。
生物であれば誰もが圧倒されるであろう鋼鉄の巨人が、そこに在った。
表情のないモノアイ式の目からはブライム=デミウルゴスが何を考えているかはわからない。
しかしその圧倒的な武は、心持たぬはずの鉄騎たちにさえ本能的な恐れと平伏を強要させる。
『……』
『……』
『……』
『……喋ってくださいよ! 用があるからみんなを集めたんでしょーが!?』
いくら待ってもブライムが言葉を発しないので、しびれを切らしたマイズがブライムの足を蹴飛ばす。
ブライムの別名は『沈黙の豪将』。デミウルゴスの中でも特に無口で、ろくに喋らない。
喋る時と言えば人間との戦いで名乗りを上げる時のみ……その後は戦闘中も不夜城でもだんまりだ。
そんなブライムを補佐するために作られたのが秘書ロボのマイズであり、不夜城随一の苦労人(?)で通っている。
『またデータだけ送ってきて! 喋れるんだから自分で喋ればいいのにもう!』
ぶつくさ文句を言いながらマイズはブライムからの指令を高らかに叫ぶ。
『明日、我は定期出撃する。供は要らぬ。お前たちは変わらず字の氏族と交戦せよ!』
ブライム=デミウルゴスは定期的に自ら出陣し字の氏族の戦士と戦っている。
主にアヤメやショウブなどの有力者と戦うのだが、結果はいつも引き分け。
いや、正確にはブライムの圧勝なのだがいつもトドメを刺さず帰還する。まるで戦うことそのものを楽しんでいるだけかのように。
字の氏族が他の氏族に比べて被害が少ないのは、こういうブライムのおかしな方針も手伝っているわけだ。
しかし字の氏族が咎人という異世界人と接触したことはブライムも聞き及んでいる。今回は彼らと戦うことにもなるだろう。
沈黙の豪将は何も語らず、緩やかにモノアイを発光させるだけであった―――
「もー、姉様ったらしっかりしてよ! すっかり咎人にお熱なんだからぁ!」
「あら……ごめんなさいね。わたくしも、彼らがあそこまでとは思わなかったから……」
字の氏族の居城、連城。
自室で書類整理をしていたアヤメは、ふと手を止めてぼうっと空を見上げていた。
筆から墨汁が垂れていることにすら気づかなかったので、妹のショウブが慌てて注意する。
ショウブの紹介で咎人たちと会談して以降、アヤメは心ここにあらずといった様子を見せることが多くなった。
恋してしまいそうなどと言っていたが、すでに重症化しているような気がするが……。
「おかきの妖精さん……。愛らしい猫耳料理人……。凛々しい少年剣士……。元気印の魔法使い……。涼やかな白き翼……。慈愛の包容天使……。理知的な銀髪少女……。流麗なる藍色の君……。一人だけを切り取っても物語の主役のような綺羅星たち……。あんなの、ときめいてしまうに決まっているわ……」
お互い本気ではなかったとは言え、字の氏族の最高峰とも言えるアヤメに勝利した実力。
見目麗しい異邦人たちに、普段同格の人間に恵まれないアヤメはご執心のようだった。
咎人たちの自由行動と技術協力を承諾したのは、氏族にとって利があると判断したのもあるがアヤメの個人的な感情部分も大きかっただろう。
「まぁ、けんもほろろに追い返されるよりはいいけどさぁ」
「うふふ……大丈夫よ、色恋沙汰で破滅するほど愚かではないつもり。少なくとも氏族にとって不利益になるような決定はしません」
「ほんとかなー?」
プライベートであっても姉が呆けているところを見たことがなかったショウブは、正直不安感が拭えない。
自分の友達と仲良くしてくれるのは嬉しいが、大事なところで躓いたりしないで欲しいものだと思う。
「それより、そろそろブライムが出てくる時期ではなかったかしら? 咎人の皆様にも一度、彼を体験してもらいましょう」
「えっ!? いきなりアレと戦ってもらうの!?」
「彼らの実力なら死にはしないでしょう。これくらいの近所注意報は乗り切ってくれるはず……。あぁ……わたくしも彼らの戦う様を直に拝見したいわ……」
シャキッとしたりうっとりしたり忙しいアヤメに、ショウブは増々不安になっていく。
話題に出された『ブライム』という単語。それは即ち―――
●ブライムの不夜城
『我らが主、ブライム=デミウルゴス様のお言葉である。一同、平伏せよ!』
夜でも光を放つ、妖鉄界には似つかわしくない鉄の城。
コンピュターや電子機器に埋め尽くされた機械じかけの城は、字の氏族の領内である『筆山(ふでやま)』に突如として出現した。
妖鉄界の各地で悪逆を尽くすデミウルゴス……その一体であるブライム=デミウルゴスの居城である。
人型アンドロイドの少女、マイズの号令に数多の鉄騎が片膝立ちになり、剣を捧げて奉る。
その一糸乱れぬ動きは、全てが機械である鉄騎の威力と威容を感じざるを得ない。
『……』
そして玉座に鎮座する巨大な機体。
全身を黒い装甲で覆った重厚なる王。
生物であれば誰もが圧倒されるであろう鋼鉄の巨人が、そこに在った。
表情のないモノアイ式の目からはブライム=デミウルゴスが何を考えているかはわからない。
しかしその圧倒的な武は、心持たぬはずの鉄騎たちにさえ本能的な恐れと平伏を強要させる。
『……』
『……』
『……』
『……喋ってくださいよ! 用があるからみんなを集めたんでしょーが!?』
いくら待ってもブライムが言葉を発しないので、しびれを切らしたマイズがブライムの足を蹴飛ばす。
ブライムの別名は『沈黙の豪将』。デミウルゴスの中でも特に無口で、ろくに喋らない。
喋る時と言えば人間との戦いで名乗りを上げる時のみ……その後は戦闘中も不夜城でもだんまりだ。
そんなブライムを補佐するために作られたのが秘書ロボのマイズであり、不夜城随一の苦労人(?)で通っている。
『またデータだけ送ってきて! 喋れるんだから自分で喋ればいいのにもう!』
ぶつくさ文句を言いながらマイズはブライムからの指令を高らかに叫ぶ。
『明日、我は定期出撃する。供は要らぬ。お前たちは変わらず字の氏族と交戦せよ!』
ブライム=デミウルゴスは定期的に自ら出陣し字の氏族の戦士と戦っている。
主にアヤメやショウブなどの有力者と戦うのだが、結果はいつも引き分け。
いや、正確にはブライムの圧勝なのだがいつもトドメを刺さず帰還する。まるで戦うことそのものを楽しんでいるだけかのように。
字の氏族が他の氏族に比べて被害が少ないのは、こういうブライムのおかしな方針も手伝っているわけだ。
しかし字の氏族が咎人という異世界人と接触したことはブライムも聞き及んでいる。今回は彼らと戦うことにもなるだろう。
沈黙の豪将は何も語らず、緩やかにモノアイを発光させるだけであった―――
成功条件
条件1 | ブライム=デミウルゴスと戦闘しデータを取る |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | ブライム=デミウルゴスから半数以上生き残る |
---|---|
条件2 | - |
条件3 | - |
解 説
・妖鉄界ヤルダバオト、字の氏族の領内が舞台です。
・敵の大将であるブライム=デミウルゴスが出陣してくるので、実力を測りつつ戦闘するのが目的です。
・敵はブライム=デミウルゴス一機のみです。
・ブライムは全長5メートルほどの人型巨大ロボで、射撃兵装を一切持たない格闘戦仕様です。
・時により手持ち武装が変わりますが、今回は巨大な金棒を使用します。
・太い手足を備え、全身が非常に頑丈な金属でできていますが、現段階ではシールドはありません。
・ブライムの設計思想は『重くて強くて硬けりゃ最強』という非常に脳筋なものですが、スピードを殺さないように全身のあらゆる場所にブースターやスラスターを備えているので、驚くほどの運動性や機動性があります。
・飛行も可能で、大質量の鉄塊が飛んでくるのでぶつかるだけでも危険です。敵の動きには厳重注意です。
・敵のボス格であるデミウルゴスでありイベント戦風味ではありますが、数字上撃破不可能な設定にはしていません。PCの能力やスキル、作戦次第では撃破も一応可能です。
マスターより
皆さんこんにちは。ロボは古い! と思っている西川一純です。(何)
氏族が脳筋なら敵も脳筋。それが妖鉄界ヤルダバオトです。(偏見)
他のデミウルゴスはもっと慎重だと思いますが、ブライムさんはそんな事お構いなし。
上手くすれば敵ボスを倒せるかも知れませんが……正直、かなりきつい戦いになりますよ―――?
参加キャラクター
-
- シトロン(ma0285)
- 異能種|女
-
- シアン(ma0076)
- 人間種|男
-
- アルティナ(ma0144)
- 神魔種|女
-
- 夕凪 沙良(ma0598)
- 獣人種|女
-
- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
-
- 氷雨 累(ma0467)
- 人間種|男
-
- フィリア・フラテルニテ(ma0193)
- 神魔種|女
-
- フリッツ・レーバ(ma0316)
- 剛力種|女
- リプレイ公開中