オープニング
「嘘~~ん!」
仄暗い穴の中で、男は思わず間抜けな声を上げた。
男の名はジャスティ・ジャッジ。JJ(ジェイジェイ)と呼ばれることが多いが――、赤みがかった茶色の髪と光に当たると金に見える薄緑の目の持ち主だ。年は二十代前半、性格は陽気な人間種の咎人である。
いかにも正義感の強そうな名前だが、本人は別に自分の中の正義以外に興味はなく、他人にそれを押し付ける気もない。
頼まれれば資材入手から迷子探しにエネミー討伐まで、何でも引き受ける『何でも屋』みたいなことをしていた。
今JJがいるのは、イルダーナフだった。
もっと正確に言えば、ドヴェルゲンヘーレの東の方にある鉱山の、もう使われなくなった廃坑だ。
そこは以前はドヴェルグ達によって採掘されていたのだが、魔族の活動が活発になり襲われた者が出てくると、ドヴェルグが一人減り、二人減りとなってとうとう棄てられた穴だった。
まあ、そこを仕切っていたドヴェルグにとっては、大体目ぼしいものは採り尽くしてしまったので放棄しても惜しくなかったのだろう。その穴に固執して魔族に襲われるよりも、新しい鉱脈を探す方が手っ取り早い。
そういうわけで、この穴から誰もいなくなって、何年も経った。
JJはここに、残っているレアメタルでもないかと探しに来たのだ。誰かの依頼を受けたわけではないが、時間がある時はこうやって異世界に赴き、何かいい資材がないかと探し回ったりしている。
もちろん、持ち帰った鉱石の欠片が天獄界で高値で売れれば御の字、という打算の下で。
そしていくつかの放置されていた鉱石を手に入れさあ帰ろうとした時、運悪くエネミーを見かけてしまったという訳だ。
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「嘘~~ん!」
思わず驚きの声を上げたJJは、持って来ていた懐中電灯の光がうっかりエネミーを照らさないように、奥の壁の方へ向けた。
ここの岩壁や天井はうっすら青い光を放っており、穴の中でも真っ暗闇という訳ではない。
もう一度そうっと曲がり角から顔を出して先を見やると、10メートル程先の外へと続く通路をふさぐように、芋虫型のエネミーが4体、寄り集まっている。
一体の長さは3メートル程だろうか。太さは大人の腰くらいまである。薄ぼんやりした光源なのであまりよく見えないが、もぞもぞと頭が動いていて奴らは地面に横たわっている何かを食べているようだった。
そのおかげか、幸いこちらには全く気付いていない。
(何食ってんのか、知らない方が良いな……)
何かドヴェルグ的な足が見えたような気がする。『ああ見えて実は人なんて襲わない大人しい生物なんです~♪』ということはなさそうだ。
JJは頭を引っ込めて、どうするべきか考えた。
アレがイルダーナフに大昔からいる古代生物なのか簒奪者が持ち込んだ魔物的なエネミーなのかは知らないが、このままでは出られない。
「そういえば、この廃坑を教えてくれたドヴェルグが言ってたっけ……」
『行くのを止めはしないし取り残している鉱石も多少なら持って行って構わない。だが、あそこには数年前から得体の知れないモンが棲み付いてるらしいぞ。それに襲われたとしてもわしらは知らんからな』
その時JJは獲物のいない所にエネミーも棲み付かないだろうと話半分で聞き流していたのだが、本当だった訳だ。
エネミー4体に自分一人で戦うのは無理だ。最悪死ねば天獄界に戻れるとしても、それは最後中の最後の手段だろう。
「うーーん、食事を終えたらどっか行かねーかな……」
しばらく待ってから、また様子を見てみた。
確かに食事は終わっていた。だが、今度は眠っているようだ。
「どかんのかい!」
一人で小さくツッコミを入れ、また考える。
(ん? 寝てんなら、今のうちにそーっと脇を通り過ぎて行けねーか?)
ギリギリ、奴らと岩壁の間には人が通れる程度の隙間がある。ゆっくり足音を立てずに歩けば、気付かれず行けるのではないか。
「……よし、行ってみよう」
覚悟を決めてJJが身を隠していた曲がり道の角から一歩踏み出そうとした瞬間、4体のうちの一匹がむくっと頭をもたげた。
「!!?」
めちゃめちゃびっくりして再びさっと身を隠す。
少しだけ頭を出して確かめると、一体は周りを警戒するかのように時折首を巡らしているのだった。
鈍そうに見えて意外と警戒心が強いらしい。
「くっそー……、これじゃいつまで経っても出らんねーじゃん。……仕方ない、誰かに助けに来てもらうか……」
●JJの依頼
JJはイデアゲートのオペレーターに連絡するため、手を耳元に持って行って通話モードをONにする。
「聞こえるか? 今廃坑の中にいるんだけど、エネミーが道をふさいでて外に出らんねーんだよ。何人かエネミーを倒してくれる奴らを送ってくれないかな?」
『しょーがないですねぇ。エネミーの詳細は分かります?』
「ちょっと待ってくれ……見えるか?」
JJはまた少しだけ角から顔を出して、芋虫のようなエネミーを見た。その視界を通して、オペレーターにもエネミーの外見が見える。
『なるほど、アレですか……』
JJはその辺に落ちていた手頃な石を拾って、投げつけてみた。
芋虫の近くの壁に中った音に反応して、起きていたエネミーがぐわっと口を開く。
「げっ」
その口はラッパ状に開いて伸びて、石が中った部分の岩壁をがりっとかじり取ってしまった。
ぼりぼりと噛み砕き、エネミーは他に何も自分達を脅かすものがないと分かると、また元の体勢に戻った。
「うわ~、キモ~、こわ~……」
『中々の攻撃力のようですね……。分かりました、今JJさん救助隊を募集しますので、もう少しお待ちください』
「うん、マジでよろしく頼むわ……」
芋虫の中々にエグイ姿を見たJJはテンションだだ下がりで、咎人達が来るのを待つのだった。
成功条件
| 条件1 | 芋虫エネミーを4体倒す |
|---|---|
| 条件2 | JJを無事に外に出す |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | 坑道内を崩れさせたりしない |
|---|---|
| 条件2 | JJが無傷 |
| 条件3 | - |
解 説
※芋虫型エネミーを4体倒して、ジャスティ・ジャッジ(JJ)を外に出してあげてください。
〈芋虫エネミー×4 サイズ2 知性1〉
・体長3m、太さ75cmくらい。
・短い足がたくさん付いた芋虫のような外見です。頭頂部に二個、頭の右と左の側面に一つずつ目があります。口の中には鋭い牙がたくさん並んでいます。
・シールドありです。
・主な攻撃
噛み砕き:口がラッパ状に開いて伸び、目の前の敵に噛み砕きます。射程2 斬属性
岩飛礫:噛み砕いて体内に溜めていた岩を勢いよく吐き出し攻撃します。命中するとダメージと共に2スクエアノックバック(強度3)します。前方扇状に射程7横幅3 地属性
・暗闇でも見えています。
・現在は外へ繋がる道の途中で寝ています。
〈その他状況など〉
・外は昼間なので明るいです。
・洞窟の中は真っ暗ではありませんが薄ぼんやりした明るさなので、離れた所はよく見えません。対策がない場合、命中と回避が30%低下します。(アイテムとして持っていなくても、プレイングに○○を持ち込むなどと書いてあればOK(あまり現実的でない物、シナリオ上無理がある物は却下する場合があります))
・坑道は幅3スクエア高さ3スクエアです。
・JJまでの道筋は一本道ではないですがそう遠くなく、ゲートオペレーターが道案内してくれるので迷わないで行けます。
・JJは自分がエネミー討伐を依頼したのだから戦う必要はないと思っており、戦闘は完全に皆さん任せです。
・JJのことは名前でもJJでも、お好きなように呼んでくださって構いません。基本必要最低限の描写ですが、何か絡みのプレイングがありましたらありがたく書かせていただきます。
マスターより
こんにちは、久遠由純です。
ロス・テラスでは色々深刻な事が起こったりしていますが、「一方その頃、○○では……」みたいな、重要な場所から遠く離れた所で起こっている小さな話とでも思ってもらえればいいかなと。
私もまだエキスパート判定に慣れる途上ですので、敵も複雑なことはしません。
NPCのJJは今後使用して行こうかと思っているキャラなので、気が向いたら仲良くしてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。
参加キャラクター
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- ルチルクォーツ(ma0805)
- 機械種|男
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- マリュース(ma0231)
- 異能種|女
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- 小山内・小鳥(ma0062)
- 獣人種|女
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- 卜部 紫亞(ma0107)
- 人間種|女
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- 葛城 武蔵介(ma0505)
- 神魔種|男
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- 高柳 京四郎(ma0078)
- 人間種|男
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- 茨木 魅琴(ma0812)
- 神魔種|女
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- リナリア・レンギン(ma0974)
- 人間種|女
- リプレイ公開中




