オープニング

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　あなたたちは、最近目覚めたか、経験が浅いか、はたまた【初心】ハンターの咎人だ。今日は新しく介入が始まった世界、闇掟界オルメタへ、引率の五藤とともにやって来た所だ。なおビギナーとしてメダルドという守銭奴も来ている。祈祷師を取ったのだそうだ。
「メダルドさんは狼の皮は被らないんですか？」
「お前言い方……被らねぇよ。キャスター装備使えるしな」
「あたしも符術師にはディフェンダー装備を横流ししてます！」
　声がでかい。
　とりあえず、五藤は渡世人との駆け引きはさっぱりなので、クリーチャー退治の引率をすることにしたそうだ。
「せっかくあたしが引率するのでメダルドさんも来て下さい！」
「せっかくって何だよ。まあ良いか。この前付いていってやったんだから、ちゃんとメンターしろよ」
「はい！」
「声がでかい」
　ツインフィールズは夜。バーやレストランの灯りも点いている。あの中で酒は出ていないようだ。……恐らく、どこかに闇酒場などがあるのだろう。オルメタの治安については現地の人間に解決してもらうとして。
「クリーチャー、どこに出てくるんでしょう。町中にはいないんでしょうか？」
「いやー、町中にも出ると思うけどな」
　と、二人がクリーチャーを探していると、
「おい、何してるんだお前ら。見ない顔だが、カークランドの手の者か？」
　ガラの悪い男に声を掛けられた。ガラは悪いが、こちらは昔気質のアンダーソン側らしい。まあ、カークランドのドン、ダン・カークランドも元はアンダーソンの所属だったそうなのでなんとも言えないが。
「こんばんは！」
　五藤は元気よく挨拶をしている。
「あたしたち、クリーチャーを探してるんです！」
　声がでかい。男はやや気圧された様だった。
「クリーチャーなんか探してどうするんだ……？」
「やっつけます！　クリーチャーやっつける練習をしているんです！」
　声がでかい。
「ツインフィールズ教会の奴かぁ……？」
「違います！」
「お、おう」
「いや、すまんな。こいつ、元気だけが取り柄だから」
「お前の娘か？」
「似てねぇだろ。大体、親子にしちゃ歳が近いだろうが」
　メダルドも大概ガラが悪い。物怖じせずに渡世人と渡り合う青年に、相手も警戒の色を見せた。
「カークランドじゃねぇって言うなら、何なんだお前ら」
「咎人って言うんですけど……」
　その時だった。夜闇を切り裂くような、濁った雄叫びが轟く。
「！？」
　その場の全員が空を見た。見れば、背中に翼を生やした小鬼の様なものが飛んでいる。西洋建築のガーゴイルに使われるような造型、と言うのが良いだろうか。周辺から、一般人の悲鳴も上がった。
「いた！　クリーチャーですね！　お兄さん、あたしたちがやっつけます！　道がわからないので、避難誘導はお願いします！」
「え？　え？　ええ？」
「キャー！」
　一人の年輩の女性が襲われた。五藤は駆け寄ってガーゴイルをぶった切り、追い払う。
「大丈夫ですか！」
「ええ、なんとか……まあ、あんたみたいな若いお嬢ちゃんでも強いのねぇ」
「無事で良かったです！　お兄さん、この人を安全な所に！　メダルドさん、やりましょう！」
「よっしゃ。お兄さんは避難誘導頼んだぜ。こっちは土地勘がねぇからな」
　ビギナーが集中するのに、渡世人が協力してくれるとは思えなかったので好都合だ。体よく渡世人を追い払うと、メダルドも杖を抜いた。
「ほら！　あんたこの年寄りをちゃんと連れて行っておくれよ！　こっちはあんたに歯が生えてない頃から知ってるんだからね！」
「うるせえよババア！　ちゃんと付いてこい！」
「んまー、でかい口叩くようになったねぇ！　子供の頃は鼻垂らして泣いてたってのに」
「うるせえっつってんだよ！　オラ、これでもかぶって静かにしてろ！」
　血の気の多い渡世人は、そう言いながらも自分のジャケットを女性の頭にかぶせて保護し、現場から遠ざけようとしていた。