オープニング
だが、そんなツインフィールズでも、一際輝きを放つ光、事業があった。
そう、それこそが今時の最先端娯楽『映画』だ。
●見通したたず
ここはツインフィールズ撮影所のとある一角。植物一つない荒廃した地面に見えるセット。
ズザァ
そこに一人の俳優が呻き、地面に伏す。
「カット!……これでテイク20ですね」
肩ほどに伸びた緩やかな内巻きの髪を押さえて、顔をしかめて頭を抱えていた。四十後半を迎えるこの彼こそが、このエイシー社映画監督である。
演技に納得がいかない。その一言に尽きる。
俳優の男性はある程度経験はある人物だ。だからこそ、監督である彼が彼を主人公に抜擢したのだ。
が、その演技が完成しない理由、監督ばかりかスタッフ達もわかっていた。
『あるもの』が無いのだから。一度、休憩を入れようそう監督はスタッフ達に指示を出して、再びため息を落とした。
「ヘーイ監督? ちょっといい?」
監督と呼ばれた男は、そちらへ首を向ける。
ブロンドのポニーテールの女性。既に私服のシャツを羽織り、荷を背負っていた。
「どうしましたかエドガーさん? 本日のリハーサルは先程終わりましたよ」
何か問題が、と問い掛ける監督にエドガーこと、ランポップ・エドガーは今までの彼の悩みを見ていたのか、こう提案してくる。
「困り事ならトーマス監督が頼んだって言う咎人達に頼んだらどう?」
「ああ、彼がエキストラを頼んだという」
咎人、彼らの話は噂では聞いていた。最近この街に来た、新たな来訪者達だ。普段から、コスプレをする者達も多々いるらしい。
「そう、ですね。このままでは埒があかないでしょうし頼んで見ましょうか」
こうして、エイシー社の監督は頼みの綱として咎人達に依頼をすることにしたのだった。
●演技指導
「今日は依頼を受けて下さり、本当にありがとう御座います。小生はニコラス・テレーズと言います」
ニコラス。そう名乗った男性は恭しく初対面の貴方達咎人に会釈をする。
「本日は、咎人の皆様に俳優の演技指導をしていただきたいのです」
「よ、よよよよよ、よろしく。お願っ、します」
主人公役と思わしき男性は、あまりに辿々しい言葉遣いで、咎人達の中には台詞読みすらままならないのでは、と思うものもいた。
「どうしたの? もしかして、この人の演技大丈夫とか思ってたり?」
傍らにいたランポップが、こちらの顔色でも読んだのか、そう語りかけてくれた。
「それなら問題ないの。この映画は『サイレント映画』なのよ」
サイレント映画。
嘗て、映像と音を同時に録るのが難しく、映像に遇わせて音楽を流したり、弁舌師が上映に台詞を合わせたりしていたのだ。
技術力が向上し、音と映像を一緒に提供可能になった『トーキー映画』が主流になった今となっては、サイレント映画は少なくなって来てはいる。
「つまり、この映画に台詞はいらないのよ。けど、リュー先輩の演技は言葉を必要としない程の鋭い逸品よ」
「そそそそ、それ、誉めてっる?」
ランポップがそう言うと、リューと言われた男性は訝しむ。
彼女が言うには、リューの普段の演技なら何ら問題はないらしい。
それならばなぜ?
「実は、主人公と戦う敵性宇宙生物が存在しないのです」
?
不可解な言葉に、首を捻る咎人にニコラスは詳しく説明する。
今回の映画は『Return from Mars』と言うSF作品。
火星にて行方不明となった一次調査隊を、主人公が所属する二次調査隊が救助する、と言う話らしい。
そう聞けば、この不毛な岩だらけの地面のセットが火星の地を表していることが理解できる。
「闘うのは彼らなんです」
怪鳥らしき生物や、カギ爪鋭いゴリラの様なけむくじゃら。それが、パソコンのモニターに写っていた。
「撮影方法は、主人公の彼が戦う演技をし、そこにCGの彼らを合成と言うものです」
問題は、そこだった。
「人間相手は慣れてたけど……ややや、やっぱり目の前になにもないのに戦えとか、むっりですっ」
例え怪物のハリボテを用意しようとも、本物の戦いのようには動かせない。
「そこで皆様には『戦い』を再現して欲しいのです。聞いたところでは、皆様は戦い慣れをしていると聞きました」
「主人公と敵対生物、一対一で戦う形になります。戦い方は自由ですが、いくつか此方からリクエストがあります」
先ずはリュー演じる、主人公に関して。
「使う武器は『銃』又は『剣』でお願いします。映画でも、それに近いものを使いますから」
続いて、敵側の宇宙生物の話。
「少し難しいのですが、『浮遊、飛行の技術』をもつ方、他に『爪』や『拳』を使う方だとやり易いです」
そんな条件は難しいだろうな、と苦笑いを浮かべるニコラス監督。
更に彼は言う。武器は『それっぽいもの』は此方でも用意出来る、が、出来れば私物を使って演技をしてほしいようだ。
手に馴染んだ物の方が、戦闘もやりやすい筈だ。
「攻撃は勿論ですが、回避や、受け身、それからダメージを受けた際のぶっ飛び等を見せてあげて下さい」
「以上です。後、勿論ですが。この映画が完成した際には演技指導者の行へ、皆様の名前をエンドロールに残します」
エンドロール。映画の最後に流れ、役者、スタッフ等、関わった人間の名前が連なる。
確かに映画に貢献したと言う証明だ。
「そして、これが最後です。皆様、大きなお怪我がないようにお気をつけ下さい」
「みみみみ、みなさん、本日はよろっしくおねがいします」
リューが深く深くお辞儀をすれば、 ニコラスは咎人達の前に改めて、両手を軽くパン、と胸前で叩く。
「始めましょう。イマジナリティは、クリエイティブ(創造)でこそ輝く……ですよ」
成功条件
| 条件1 | リューに演技指導をする。 |
|---|---|
| 条件2 | リューに戦闘の見本を見せる。 |
| 条件3 | - |
大成功条件
| 条件1 | リューの戦闘演技を向上させる。 |
|---|---|
| 条件2 | ニコラス監督のリクエストを全てこなす。 |
| 条件3 | 俳優を含め、重傷者を出さない。 |
解 説
※このシナリオは相談をした方が良いと判断したためエキスパートにしてますが、戦闘判定はカジュアルルールを採用します。
■演技指導
主人公と宇宙生物を模した、一対一の戦闘の様子を、俳優リューに見せる。如何なる戦闘を見せるかは自由。
その際に、ニコラス監督よりいくつか『リクエスト』があるようだ。
※本気の戦闘をする必要はありません。あくまで、演技指導用の見本です。しかし、対戦相手との『前以ての相談』は必要となるでしょう。
■ニコラスからのリクエスト
・主人公側
武器に『銃』、『剣』に似たものを用いること。戦闘の型が見たいので種類(刀、ビームソード等)は自由。
・敵側(宇宙生物)
生物は二種類。
一種目が『飛行』又は、『浮遊』の技術をもっていること(武器は自由)。
もう一種が武器に『爪』、『拳』を用いること(飛行能力は必要ない)。
※リクエストの武器が準備出来無くても『それっぽいもの』を貸し出して貰えますが、使い慣れない道具の為、演技の難易度が若干上がります。
※ニコラス自身も飛行、浮遊は難しいと思っているため、戦闘に必ずしも必要なワケではありません。
※飛行可能な乗り物へ騎乗した際も、『飛行、浮遊』に該当したものとなります。
■主要NPC
ニコラス・テレーズ
40後半の長髪の男性。エイシー社の映画監督を勤めている。ベテラン。
作品に於てのイマジナリティを大切にし、物腰も柔らかな為か、誰にでも慕われている。サイレント映画を主として活動している。
ランポップ・エドガー
20才後半くらいの女性役者見習い。元気で溌剌として、変装を得意とする。
リュー
30才くらいの男性俳優。あがり症なのか、口調が普段から辿々しい。しかし、動きに関する演技はピカイチらしい(byランポップ)
マスターより
こんにちは、月宵です。今回は、デイシー社に次ぐ、もう一つの映画会社エイシー社のお話になります。
デイシー社の依頼ほど、派手さはありません。言わば、裏方の仕事になります。
ですが、役者へ指導も立派な仕事に他なりません。皆様の教えが、作品の完成へと繋がってゆくのです。
……後、映画のセットは壊さないように。
それでは、皆様の御参加をお待ちしております。
参加キャラクター
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