オープニング
突如出現した塔は、龍の氏族に間借りしている港町で伝え聞いた“デミウルゴスの拠点”というものだった。
そこから現れる鉄騎が平原の集落や旅団などを襲撃し、拠点へと連れ去っていくのだ。そこでヤルダ人に対してなにが行われているのか、想像するのもおぞましい。
先日襲撃を受けた集落に関しては、生存者が皆無という悲惨な結果だった。ぐうぜん、巫の国を訪れていた数名が生き残りとなり、鉄騎を殲滅した咎人が回収してくれた遺品を渡すことができたのがせめてもの救いか。
「俺らはあいつらにただ殺られるだけのモンじゃねえからな」
「そうだそうだ」
息まく男の言葉に乗っかって、別の男が大きく頷く。
「サンクロウ、あんたはそう思わないのかよ」
「俺たちは鍛冶師だ。戦うのは本業じゃあねえ」
腕を組んだサンクロウが厳しい顔で答える。
「俺はこの自慢の一振りを試してみてえ」
「俺もだ。実戦に使えねえような刀じゃ売りモンにもならねえからな」
「俺は鍛冶師としての名を売りたい」
好きなことを言う鍛冶師のひとりひとりを見て、「刀の良しあしを決めンのは俺たちじゃねえよ」とサンクロウが言うが、男たちは納得しない。
「お前らの言うこともわからんでもないが」
「腕っぷしにだって自信があらぁな」
「弱えとは言ってねえだろ」
これでは埒があかない。サンクロウが大きくため息を吐いたとき、声がかかった。
「自信の一振りの活躍は見てみたいかもしれないな」
「天仁さん」
飛剣天仁が庭先からひょこっと顔を出し、
「俺のほかにも仲間が数人滞在しているようだし、彼らにも声をかけて警らも兼ねてお供しよう」
鉄騎襲撃が激増している巫の国周辺。その警戒、援護、救出のために常駐とまではいかないまでも、常に複数人の咎人がこの国を訪れていた。
「飛剣さんが言うなら頼むとしようか」
わあわあと逃げ惑うヤルダ人たちを仲間と共に巫の国へ避難誘導している最中、見覚えのある少女が現れた。
ゴスロリファッションにツインテール。若干の印象の変化はあるが、確かに見覚えがある少女だ。しかし天仁の記憶はその程度で、
「ここは危険だから早く避難した方がいい」
ほらほら、と逃げていくヤルダ人の後を追えと指さして教える。すでに距離はあったが走ればまだ間に合うはず。しかし少女は首を振り、
「ヤダよ、だってこれから気持ちいいことするんだよね。じゃああたしも参加する~♪」
「……なんか、前にもそんなことがあったような」
少しずつ記憶が蘇ってきた天仁の表情が、ハッとする。
「斬られて喜んでた謎の子か!」
名前までは憶えていないようだ。
「心悦(ココエ)だよ、んもう。じゃ、イタ気持ちいいこと、初めよっか♡」
満面の笑みを浮かべる簒奪者、心悦。その向こうの1騎しかいない鉄騎は、威嚇射撃はするものの本格的に襲ってはこないしヤルダ人を追おうともしない。
慌てて刀を構えた天仁の視界に砂煙がやおら入り込む。遠くに聳える拠点から増援がこちらへ向かっているようだ。
「なんだよ、鉄騎いっぴきと女の子ひとりかよ。楽勝だな」
鍛冶師のひとりが自慢の一振りをぶんぶん振り回して言う。一匹と表現するにはそれなりの大きさなのだが、頭に血が上っているせいか鍛冶師は冷静さを欠いていた。
その時、鉄騎の中から飛行タイプの小型鉄騎が10騎飛び出してくるなり猛スピードで鍛冶師へとまとわりついた。
「うわわ」
慌てふためく鍛冶師たちは自前の刀で応戦したが、それでどうにかなるものではなかった。
「あんたらはここからすぐに離脱するんだ、俺たちが護衛するから」
数人の咎人が、まさに首根っこを掴んで鍛冶師たちをここから避難させ始めた。
別の咎人は自らを鼓舞するように大声をあげて簒奪者へ斬り込む。それをひらりと躱す心悦、よろけたところへ1騎が恐ろしいスピードで急接近しブレード状に伸びた両腕をクロスさせた。
X状に刻まれた咎人は両目を剥いたままその姿を消した。
鉄騎は勢いそのままで残る咎人を斬りつけていく。
「前に僕の鉄騎を壊してくれたよね。改良してみたから、ちょっと遊んでみてよ。死んだらごめんね、恨みっこなしってことで。あ、でも邪魔者の数を減らしたらゼハイル様が喜んでくれるかも!」
いつのまに現れたのか。天仁のすぐ傍に細身の男が立っていた。とっさに後ろへ飛び退き、心悦から切っ先の向きを男へ変える。
「あの拠点は僕のなんだ。あ、名前、一応教えておこうか。ウェルシュ、よろしく。じゃあ、僕の鉄騎たち。彼らをプチッて潰しちゃって」
ウェルシュと名乗った男は人間と同じ姿をしていた。
あらゆることに疑問を残しながら、男は地面を滑るように現れたときと同じようにすうっと天仁の前から離れて行った。
鉄騎の増援も到着する。
簒奪者も加わり、天仁のこめかみを嫌な汗が流れ落ちた。
成功条件
条件1 | すべての鉄騎の撃破 |
---|---|
条件2 | 心悦の撃退 |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | すべての鉄騎の撃破 |
---|---|
条件2 | 心悦の撃破 |
条件3 | - |
解 説
目的
全鉄騎の撃破と心悦の撃破もしくは撃退
●襲撃されていたヤルダ人と巫の鍛冶師は避難済みであり、現場には飛剣天仁のほか5名の咎人しか生存していない中、サンクロウから助力を依頼されたPC様たちが駆けつけたという状況から始まります。
鉄騎情報
●鉄騎・改 2騎。味方の支援を主目的の遠距離型。上下2本の主砲による貫通攻撃で地表のキャラだけでなく空中にいるキャラも攻撃。移動は前後左右のみで斜め移動不可。高さ3m・全長10m・移動3
●鉄騎飛行型 20騎。全長1m。ホバリング可能。粘性の塊を投下して動きを制限(BS/2ラウンド中すべての行動選択不可)移動6。行動範囲は鉄騎・改を中心とした30スクエア内に限られる。
●鉄騎攻撃型 4騎。高さ2m・移動5。左右のアームは先端がブレードになっている。斬撃・突きを繰り出す。
防御 鉄騎・改>攻撃型>飛行型
回避 飛行型>攻撃型>鉄騎・改
攻撃力 攻撃型>鉄騎・改>飛行型
●簒奪者「心悦」 広範囲の味方シールドを大幅UPとシールド残数が少ない味方に対し防御力とシールドを大幅UPする回復スキル、挑発スキル(直線3スクエア内にいるキャラ全てに対し発動。5ラウンド間心悦だけを攻撃する)を所持。通常攻撃(深紅のムチによる打撃。長さは1.5m~3mまで自在に変更可能)
●拠点の主「ウェルシュ」 能力等不明
●飛剣天仁 駆けつけたPCさんと情報共有し、方針・指示があれば従います。前衛での攻撃・壁役が主です。
●5名の咎人 近接攻撃主体3名、射撃攻撃主体2名。指示があれば従いますが基本的にPCさん達の動きに合わせて行動します。
※ウェルシュは自己紹介するだけしてさっさと立ち去ったので、ここで彼と戦闘になることはありません。
マスターより
【巫】2話目になります。今回は拠点の主がチラっと出てきますが、メインは彼が対咎人用に改造した鉄騎との戦闘になります。数も多く基本装甲硬めの鉄騎相手で厳しくなりそうですが、巫の国周辺の平穏のためによろしくお願いいたします!
関連NPC
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- 飛剣 天仁(mz0020)
- 異能種|男
参加キャラクター
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- 灰音(ma0155)
- 獣人種|不明
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- 鳳・美夕(ma0726)
- 人間種|女
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- シアン(ma0076)
- 人間種|男
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- 麻生 遊夜(ma0279)
- 機械種|男
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- アナルデール・ウンディーニ(ma0116)
- 人間種|女
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- 氷雨 絃也(ma0452)
- 人間種|男
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- 三糸 一久(ma0052)
- 人間種|男
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- 伊吹 瑠那(ma0278)
- 剛力種|女
- リプレイ公開中