オープニング
吹雪に閉ざされた場所。
全てを拒絶した小さな世界。
ただ一頭の龍が眠る氷の檻。
静寂が周囲を満たし、隔絶された揺籠。
頑是無い夢に溢れた泪は頬を走り凍って氷柱となった。
そこは白い闇の中。
凍えた時計を溶かすのは誰?
ストールス発見に成功したラークを顧問とする鏡神学園冒険企画実践部は、学長であるヴェロニカ(mz0095)にそれはそれは大いに絶賛され、その褒めっぷりはオーウェン(mz0093)がハンカチを噛み締めて悔しがったというまことしやかな噂が流れるほどだった。
一方で賛辞を贈られたラークは「オーウェンさんのアドバイスのお陰です」と謙虚に応じ、これまた好感度を上げたとかなんとか。
そんなラーク率いる冒険企画実践部に次なる命が下った。
次に向かうのは氷山のそびえ立つ雪と氷に閉ざされた極寒島。
そこへまず向かった先遣隊は咎人を含む部隊であったが、驚きの寒さにとんぼ返りして来ていた。
「どういう事!? シールドを貫く寒さとか聞いてないんだけど!?」
「咎人って環境由来のダメージってある程度強いんじゃなかったっけ!?」
ざわつく凍えた咎人達の中で、1番咎人歴の長い咎人が重い口を開いた。
「つまり、そこにいる神獣の影響って事なんだろうな……」
必死になって焚いたたき火を囲んで顔を寄せ合う咎人達とは別に、物凄い防寒具を着込んで完璧な冬山登山の装いで挑んでいたラークはほぼノーダメージで下山を果たしており、輪には入らず1人物思いにふけっている様子だ。
「ただ、普通にちゃんと準備を整えて挑めば攻略は出来ない訳では無い……のかな?」
「つまり、イデア装備に頼らない準備が必要と言うことか……」
「みなさん、今日は有り難うございました。とりあえず、今日は解散とします。またあの極寒島に挑むときには改めて声を掛けさせて貰うので、都合があったならよろしくお願いします」
そんなラークの一言で、先遣隊は解散となった。
極寒島踏破部隊の募集がかかったのはそれから一週間後だった。
「ごめんね、色々調べ物をしていたらすっかり遅くなってしまって……」
教室に入ってきたラークは開口一番集まった面々へ謝罪する。
「ひとまず極寒島については色々な資料を当たった結果、多分、神獣『サピロス』のいる場所……なんじゃないかなっていう予測が立ちました」
神獣サピロス。青い鱗と翼を持つ正真正銘の龍種。
その多くは容姿に関して褒め称える詩が多い一方、性格やその能力としてはほとんど記録に残っていない。しかし、古い……文字通り死語ともなってしまっていた言葉があるという。
「『サピロスは三日で飽きる』」
あなた達の冷たい視線を受けてラークは必死に弁明する。
「いえ、僕が言った訳では無くっ! サピロスを辿っていった結果、見つけた言葉だったんですけどっ!」
コホン、と小さく咳なんかしてみてからラークは話題を変える。
「それから……これは少しオカルティックな話しになってしまうんですが……夢を見たんです」
極寒島から帰ってきたその夜。ラークは不思議な夢を見た。
凍てついた世界、氷の檻の中で光る青い宝石――
「とても綺麗なのに、とても寂しくて……それでふと思ったんです。あの極寒島はサピロスを閉じ込めているのではなくて、もしかしたら、サピロス自身が自分を守る為にあえて閉ざした世界なんじゃ無いかなって」
怖い事、辛い事、もう何とも関わらないという意思があの環境を作り上げたのだとしたら……
「僕たちは迎えに行ってあげなきゃいけないのかもしれない。世界は確かに優しいだけじゃないけど、僕たちはキミと友達になりたいんだって」
なお、オーウェンにこの夢を相談したところ、「サピロスは孤高の龍と言われていたが、その実はさみしがり屋という文献を見たことがある……ような気がする」との何とも曖昧な言葉と共に両肩を叩かれた。
「まぁ、行ってみれば判るだろう! 孤高ということは気難しいとか、繊細などとも取れるが、単に私のように不器用なだけかも知れないからな!」
ハッハッハッハ! と豪快に笑うオーウェンに対しイマイチ笑えなかったラークは「あー、はい、行ってきます」と言うに止めたという。
「そう言ったわけで、今回は前回の失敗も踏まえ、皆さんにはマグリートの商店でばっちり冬登山装備を調えて頂いて、かつ、サピロスに逢えたなら、我々に興味を抱いて貰えるようなアプローチを行って頂きたいと思います」
ちなみに、ラークが準備したのは『冒険野郎マイセン 樹海の奥に広がる桃源郷を目指せ!』というタイトルの児童書。
「僕が1番大好きな本です。読み聞かせをして外への興味を持ってもらえたらと!」
……読み聞かせは良いとしてもそのチョイスはいかがな物かと思わなくも無くも無いあなた達だったが、否定の言葉を呑み込んで「なるほど」と応えるに止めた。
「一人一人で何かを準備しても良いし、みんなで協力して大々的にやるのもいいかもしれない。……とは言ってもあまり大がかりなことは出来ないだろうけど、僕もできるだけ協力しますね」
にっこりと微笑んだラークを前に、あなた達はどのように挑むか相談を始めたのだった。
■■■欄外解説■■■
●NPC
名前:ラーク 性別:男性 種族:神魔種 ロール:天空騎士 年齢:25歳 身長:176cm 体重:65kg
白皙の肌に青い瞳。生まれつきの白髪であり、別に苦労性では無い。
性格は真面目で穏やかで人懐こいが、時々人の話に被せて話し出す悪癖がある。
『冒険企画実践部』の顧問。こう見えて教員。
なお、時々敬語が抜けたりするのはそっちが素だからというのは秘密である。
成功条件
条件1 | 極寒島を踏破し、サピロスと逢う |
---|---|
条件2 | 起こりうるトラブルに対し、各々対応する |
条件3 | - |
大成功条件
条件1 | サピロスが檻から出てくる |
---|---|
条件2 | サピロスが無傷である |
条件3 | - |
解 説
★重要★
このシナリオは【特殊ルール】があるため【難易度:Hard】です。
プレイング送信時の事故にご注意下さい。
判定次第では“死に戻り”となって早期脱落する可能性があります。
●概要
咎人の環境耐性を貫通する極寒島。そこへ神獣『サピロス』に逢うためにあなた達は冬登山に挑む。さみしがり屋(かもしれない)サピロスの凍えた心をどうやったら溶かせるのか。冒険企画実践部一同はいざ、氷山へと出発したのだった。
●目的
サピロスをゲットする
●冬登山
道中はガチ冬登山。氷の檻まで大体3日間。帰りは考慮しなくて良い。
【特殊ルール】装備コストから冬登山装備に100ほどコストを使用すると考え、コスト調整を行うこと。
コスト調整は装備だけではなく、スキルと合わせて調整可。
合計装備コストの最大値から-100になっていればOK。
コスト調整がされていないとライフにダメージが入って、最悪辿り着けない。
また登山装備は鏡神界で買い揃えたものとし、詳細は各々考えてプレイングに記入しても良い。
全くプレイングに無くてもコストさえ-100されていれば死なない。
また、道中に起こるトラブルに対し、しっかり相談と対策が成され、プレイングに記載がある事が望ましい。
▼想定されるトラブル
・白い闇:吹雪で視界が閉ざされるためはぐれやすくなる
・氷山:滑落しやすい
・雪玉の落雪:大小様々な雪玉が落ちてくる
・他:相談の結果『こんなことにも気を付けた方が良いのでは!?』という物があれば
●サピロス
氷の檻に辿り着いたら、サピロスの前で“自分達に興味を持って貰う”ための行動が必要。
歌、踊り、朗読……様々なアプローチ方法を模索すること。
なお檻の周囲は無風で若干寒さは和らいでいる。
※PL情報※
つまるところの『天の岩戸大作戦』。
ひきこもりのサピロスの前で楽しい事や呼びかけをして、サピロスが自ら檻から出てくれば大成功。
マスターより
初めまして、もしくは、またお目にかかれて光栄です。葉槻(はづき)です。
はい、葉槻らしく今回は龍種の神獣回です。……ただし、性格は今まで葉槻が担当した龍種の中でも群を抜いて“らしくない”タイプですが。
なお、繰り返しますが、今回は【特殊ルール】がありますので、どうぞプレイング送信時にはお気を付け下さい。
あと、アドリブ多めになると思います。
ちなみにエキスパートですが、戦闘は一切起きません。ただただ寒い冬登山をこなしていただくだけですのでご安心下さい(?)。
それでは、ROUAGEのマイベストをエンドレスループしながら、リアルに逆らう極寒の地で活躍する皆様のプレイングをお待ちしております。
参加キャラクター
- リプレイ公開中