●露払い
「……クリア。……うーん、どうにも二番煎じみたいでイマイチなのだ……」
リコリコ(ma0309)は葦沢と同じように、索敵気分を楽しんでいた。
「そもそもリコリコは、索敵なんて集中力が必要だから苦手なのだ! だけど何も確かめずにクリアって言ったりはしないのだ偉いのだ!」
胸を張った。
「慎重な行動の苦手なリコリコが『クリア』の代わりに言うべき言葉……それは『○時の方向に敵○!』なのだ!」
と、言うことで先頭に立って敵の集団に突っ込んで行った。どうせ鉄騎は減らさないと行けないし、ハイドアンドシークで自衛もできる。敵をおびき出してから伝えれば良い。敵が多すぎれば、ファイアーフラワーを撃てば緊急事態には気付いてもらえるだろう。
「はっ、敵なのだ! でもどっちが12時かわかんないのだ……!? こうなったらカッコいいのでいくのだ……10時の方向に敵なのだ!」
この遭遇は10時ではなかったが、実際に10時の方向から敵が来ており、結果として彼女の報せが味方の対策に生きたのだった。
「さて、デミウルゴスですねぇ。まぁ、お給金分は働きましょう」
七掛 二夜(ma0071)は背中の翼を羽ばたかせて、高い位置を取った。その手には、いつものように先制ノ書を持っている。黒パジャモの力を降ろし、強化を得る。
(宙の果てはともかく……地上の文明はそこそこなんですよね)
彼女は不夜城の内装を見て、そんなことを思った。
「……っと、まずは目の前に集中しておかないといけませんね」
後ろがつっかえることを狙ってスタンシュート。
「とはいえ、私は添え物程度に。氏族方々にお任せしましょうか」
二夜のその一射を嚆矢に、氏族たちも向かって行った。
「乱戦になる前におおきく敵を削いでゆきましょうか」
トランスフォームの力が切れそうな時、低空飛行に切り替え、直線上の敵をトランスバーストで薙ぎ払った。
(しかし、ほんとに簒奪者が関わらない状況なんですよねぇ)
何てことを考えながら、風を切った。
「リラと言います。応援にきました。支援させてください」
アウグスタに言ってこちらに移ってきたリラ(ma0970)が合流して挨拶すると、歓迎された。
「咲いて、花達! 頑張る人の力となって」
氏族の中に混ざって、咲き乱れる蒼月を放つ。味方の行動に合わせて、軽やかに舞うように、花鳥蒼月の身軽さを生かして方々に駆けつけて戦った。
「私より強い人がいっぱい応援にきて戦ってます。だから大丈夫! 生き抜いて、下さい。私、出来る限りがんばりますから!!」
リラの援護により、氏族でもカウントがいるようなスキルを使う者は、素早く攻撃行動に移ることができていた。人の心を潤す花の様に、リラは氏族たちを励ました。
「まだデミウルゴスの過激派が残っていましたか。上等です」
茨木 魅琴(ma0812)はいつもの意味深な微笑みを湛えてストームアサルトSGを構えた。天墜のイデアを集中させながら、小走りに位置を調整。
「和解か、さもなくば戦死か。奴らに残された選択肢はそれだけです」
イデアが溜まりきると、彼女はそれを一点に撃ち込んだ。氏族が光の雨によって生じたブレイクに次々斬り掛かる。
「そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
北谷王子 朝騎(ma0937)は生前からの友人であるカナタ・ハテナ(ma0325)とツーマンセルを組んで移動していた。近い距離で行動を共にしている二人に対しては、鉄騎もエンゲージを仕掛けられない。
熱核式高速チャージを用いたカナタは、そのチャージで集めたイデアを、アストラルフレアにも転用した。ストームアサルトSGから、広範囲を爆破する射撃攻撃が放たれる。高威力のそれは鉄騎をブレイクさせたため、二人でブレイクポイントの追撃を行なう。更に、カナタは超巨大凍結ミサイル「ギガンテックフリーザー」も撃ち出した。このフリーザーによる移動不能の効果は大きい。ばらけることができなくなった敵は、範囲攻撃の格好の的だ。
反撃の射撃は、二人とも突耐性で軽減。やりすごして次の行動に移った。
●天獄侍衆 雷鳴の突破口
「今日はサムライのおねーさん方と一緒で嬉し……いや、頑張るぜ!」
吉兆(ma0987)はバレッタで留めた長髪をなびかせて笑顔を見せた。
「サムライさんが雷なら、俺たちニンジャは大竜巻だ! いくぜ! ナイトブラッドだけど妖鉄界だから敢えてニンジャと名乗りたい!」
「ふっふっふ、マミのドラゴンゴロス(自称)が火をふくぜ」
彼と共に鉄騎に対応するのは、「ナイトブラッドでカッコよくキメようぜ!」と誘われたマミ(ma0722)だ。彼女は敵の数を見て、
「キッチョム、なんか鉄騎多いよ、これ多い、きいてない」
同行者を見るが、向こうは気にしてない。
「吹けよ嵐! 叫べよ嵐! 轟け嵐! ぶっ飛べ! Tトルネード!」
Tホールで神出鬼没に移動し、Tトルネードをガンガン使って台風の目になっていた。それを見たマミも、
「こうなったらマミの秘めた力をカイホウするしかあるまい。もうこうなったらやけくそだぁー」
Dステップで突っ込み、同じようにTトルネードで攻撃を浴びせる。吉兆と同じ範囲を狙うことによってダメージを重ねた。氏族もそれに応じ、弱った鉄騎を次々仕留める。
その間に、藍紗(ma0229)たちメガロリスト侍衆は白光雷轟のイデアを各々の刀に集めていた。
「思えば、浦と来れば和歌は付きもの、妙縁じゃの。ふふ。浦の氏族が仕寄せる様は、片男波といった処じゃの、ふふ」
歌を詠む藍紗は楽しげだ。
「天獄界のサムライも、なかなかのものでしょ?」
紅緒(ma0215)も侍たちに笑いかける。
「みんなが浦の氏族なら、あたし達は獄の氏族ね。なんてね」
「さー! 浦の氏族の皆さん! がんばりましょーっス! がんがん敵をぶっ潰して、大将の首まで獲ってやりましょーっス!」
イサラ(ma0832)の景気の良い声と言葉は、氏族たちの士気を上げた。
「今回は浦の氏族と共闘をさせて頂きます。宜しくお願い致します」
白綾(ma0775)も白光に髪を光らせながら、変わらず丁寧に挨拶。もう一働き、気を緩めずに挑む。
「おう、今度は鉄のカタマリだけじゃなしに親分のオマケつきかあ? ウラかオモテか忘れちまったけど、氏族の連中もよろしくなあ」
銀火(ma0736)も元気良く声を掛けた。
「嗚呼、またやって来たわ。やりに来たのよ。刀の、揮い場に。いいわよね、この匂い。この空気。雰囲気。昂るわよね。本当に」
玄那(ma1251)は黒い瞳に闘志を滾らせている。
「サムライに男女も子供も関係ナシよね。得物で語るがサムライよ。とはいえ女子供を前に負けられはしねーわよね。ガンバリましょ? なんてエラそーに言える身でもないんだけど、言ったからにはね」
紫明(ma1226)は片目をつむり、歯を見せた。随分と賑やかだが、祭の喧騒のようで良い。案山子を倒す祭だ。どこかにありそう、と笑う。
「遅れ馳せながら参じました。フィオナ・レイノルズと申します。妖鉄界の敵さんは、厳めしい方が多いですね。圧倒されます」
「ロザリアと申します。世界に、皆様に仕える女給でございます。今日は大勢、多勢に無勢、これはメイドの揮い処でございますね」
侍衆唯一の百花騎士、フィオナ・レイノルズ(ma0194)とメイドのロザリア(ma0408)も丁寧に挨拶した。やはり、どの世界でも「侍」たるもの、礼儀を重んじるものなのだろう。氏族たちも天獄侍衆に丁寧に応じている。
やがて、白光雷轟のイデアが高まった。
「白き道(白光雷轟)を導に続け! 妖鉄と天獄、両侍の共演じゃ!」
「道を拓きます。白い光を道しるべに。それでは、参りましょう」
藍紗と白綾が合図した。メガロリストたちはそれを聞くと、道中の鉄騎をそれぞれ叩きながら移動する。
「百花騎士ではありますが、私も侍衆の一員として恥じない戦いを」
フィオナは鮮花閃光で追随し、既にメガロリストたちが攻撃した鉄騎へ追撃していた。初の妖鉄界で緊張していたようだが、その振る舞いに無駄はない。彼女もまた、「光」として駆け抜ける!
「いっけーーーーーっス!」
「女は男の三歩後、なんて言うけど、今回は逆ね。楽しい世界よね」
イサラが気合いの声を上げ、紫明も楽しげに笑う。
白い軌跡を描き、ロジャーに届いた侍たちは、三度目の攻撃、爆発力が集積した高威力の攻撃を立て続けに浴びせた。氏族が後から開いた道を進み、斬り掛かる。
「何だこいつらはよぉ!」
「でっけえカカシだなあ? えれえ細っけえけど、あれが大将かあ?」
「案山子が大将、とは何かの皮肉のようでございますね。いやはや」
銀火とロザリアが所感を述べた。
「大将は案山子? そこに挑む黒いアタシは、さながら烏ね。愉快ね」
玄那が笑う。でも騙されない。啄んであげる。
その時、また別の鳥の声がした。
●城主討伐
声の正体は、サヴィーノ・パルヴィス(ma0665)の黒パジャモである。こちらは鉄騎の頭上を越えて来た。
「デカい図体でちょろちょろ動き回るもんですね。シアンさん、ちょっと振り回しますよ」
「好きなように飛んでくれて大丈夫!」
後ろに乗っているシアン(ma0076)が笑顔で応じた。
「頼りにしてるよ、私の翼達」
その言葉に、まずパジャモが応じた。
「任されましょう。何処へなりとも」
「その動き、封じさせて貰うよ」
シアンは既に、ブレイクに対して零弦叢雲Ⅱを使っていた。更に雷鳴律令とスタンシュート。これでロジャーはすぐには動けまい。
「お見事。やり易くなりますね。行きます!」
今度はサヴィーノが突っ込んだ。玄那と黒パジャモ、二羽の黒鳥が案山子を翻弄する。
「その面倒な回避力……削がせてもらうぞ!」
駆けつけた高柳 京四郎(ma0078)が、一望の白花を、フェイントを織り交ぜて叩き込む。
そこへ、骨格の翼を出して飛行し、槍での攻撃を二度繰り出してくる神魔種が。
京四郎には、彼、葛城 武蔵介(ma0505)がトランスハートで掛けた天星解放の効果が施されている。先頭が始まり、まだ鉄騎対応をしている間に使ったものだ。その時に武蔵介は言った。
「支援するから離れるなよ」
「また強力なスキルを憶えたんだな、武蔵。心強いな」
「二人で行くならこのくらいやれないとね」
なので、彼は続いて放った咲き乱れる蒼月に対して、すぐに天真の極光を放つことができた。
「武蔵のおかげでもう一手行けるな……天真の極光!」
身動きの取れないロジャーは他の咎人からの攻撃を続々浴びて、あっという間にボロボロになっていった。尤も、逃げられたとしても、咎人たちは皆移動対策を持っている。彼が距離を置いてやりすごすことは不可能だ。
「冷静さを欠いていると足元をすくわれるぞ。戦場の死はともかく、無駄死になど誰もが遠慮するものだ」
苦戦するロジャーに、凛とした声が掛かる。フリッツ・レーバ(ma0316)だ。千本桜魁陣を敷いた彼女の服の下の背にも、また桜が咲いていることだろう。
「そういうわけだ。躊躇なく打倒させてもらう! ───あああぁぁぁっっ!!」
炎重棍を振るい、ウィンドブーツで風を起こしながら接敵。ブーツを解除し、共鳴鋼で強化した霊剣解放Ⅱによって攻撃を二度叩き込む!
「案山子さんですか……。首と足、どちらを狙えばいいかな……」
魅朱(ma0599)はかくり、と首を傾げた。唯塚 あまぎ(ma0059)の琥珀石の守護により、そのシールドは飴色を帯びている。その彼女を隠す様に、あまぎは大型の鬼鎧で前に出ていた。出陣直前に、
「はわ……。あまぎ……大きくなったねー……」
「魅朱が小さくなったの間違いじゃないか?」
と言い合ったとか合ってないとか。
「神降しの突耐性に諸々の自衛……どこまで保つかな、この鬼鎧」
とは言え、鉄騎対応の咎人や氏族の活躍で、あまぎを攻撃する鉄騎も少なく、ロジャーも侍衆から袋叩きになってブレイクしており、スキルが使えない。道中の攻撃を防ぐのに保護機構を使ったくらいか。
ロジャーに、最初に使った強化が掛かっていたのを魅朱は見逃さない。
双刀「アオイアラシ」から、森羅斬劾の一撃を繰り出した。
「ぎゃあああああああ!?」
更に、魅朱からは破邪顕正、あまぎからは焔月無塵。シアンやフリッツから始まって、立て続けにデミウルゴスに有効な攻撃を浴びるロジャー。
「それにしてもの鉄騎の数。どびっくりでございますね」
「あたしたち、周りの鉄騎を減らすわ! さあ! 今日も金棒をぶん回すわよ! 覚悟しなさい!」
天獄侍衆の何人かが、周囲の鉄騎対応に移った。統率の取れた動きで、不安はない。
ロジャーは悪あがきの様に攻撃をばらまくが、ロザリアのアクティブシールドで横っ面を張られた。この後、範囲攻撃を使ってシアンの星天の雲に妨害されることになる。
「あまぎ……無理、しないでね……? 危なくなったら、下がって……?」
「…………善処する」
余計に心配を掛けそうな間を置いて返事をするあまぎだった。
最終的に、浦の氏族の氏族長がロジャーの頭に大太刀を叩き付けると、それがとどめになってロジャー=デミウルゴスは討ち死にした。そこまで持ったのは、鉄騎が減っていたから、もあるが、ロザリアの反響する賛歌の貢献もある。
それを見たヤルダ人の盛り上がりときたら……。一緒に戦っていた玄那は興奮冷めやらぬ様子。
「不夜城の一つ、これで攻略完了という訳か」
「大きな“首花”……。せめて、畑で咲いたらよかったのに……ね……」
フリッツと魅朱の言葉は、その歓喜の怒号の中に溶け込んだ。
「あ、最後に記念写真一枚イイっスか? 最近凝ってるんスよね」
イサラがカメラを片手に、周りに声を掛けている。
「浦に案山子(そほづ)、山田に網代木、場違い故の敗北じゃな。強き波に案山子の細足を差せば流されるは当然じゃ。のう?」
藍紗はその様子を見て微笑んだ。そして、一首。
「――若ノ浦 仕寄せ雄々しき 片男波 咲くは白花 散るは黒鉄」
「アネさん、今日はお疲れサマでしたッ! 氏族の人らも、またな!」
吉兆が元気に挨拶している。マミは疲れた、ひもじいとうずくまっていた。
「ああ、うめえもん喰いてえなあ。饅頭もお預けくってるしよう」
「今日は浦の氏族のとこで、旨い酒を飲みてーわね。どう?」
銀火と紫明の言葉を聞いた氏族が、贈答用の饅頭を贈り、希望する咎人を酒宴に招いたのはまた別の話。
「……クリア。……うーん、どうにも二番煎じみたいでイマイチなのだ……」
リコリコ(ma0309)は葦沢と同じように、索敵気分を楽しんでいた。
「そもそもリコリコは、索敵なんて集中力が必要だから苦手なのだ! だけど何も確かめずにクリアって言ったりはしないのだ偉いのだ!」
胸を張った。
「慎重な行動の苦手なリコリコが『クリア』の代わりに言うべき言葉……それは『○時の方向に敵○!』なのだ!」
と、言うことで先頭に立って敵の集団に突っ込んで行った。どうせ鉄騎は減らさないと行けないし、ハイドアンドシークで自衛もできる。敵をおびき出してから伝えれば良い。敵が多すぎれば、ファイアーフラワーを撃てば緊急事態には気付いてもらえるだろう。
「はっ、敵なのだ! でもどっちが12時かわかんないのだ……!? こうなったらカッコいいのでいくのだ……10時の方向に敵なのだ!」
この遭遇は10時ではなかったが、実際に10時の方向から敵が来ており、結果として彼女の報せが味方の対策に生きたのだった。
「さて、デミウルゴスですねぇ。まぁ、お給金分は働きましょう」
七掛 二夜(ma0071)は背中の翼を羽ばたかせて、高い位置を取った。その手には、いつものように先制ノ書を持っている。黒パジャモの力を降ろし、強化を得る。
(宙の果てはともかく……地上の文明はそこそこなんですよね)
彼女は不夜城の内装を見て、そんなことを思った。
「……っと、まずは目の前に集中しておかないといけませんね」
後ろがつっかえることを狙ってスタンシュート。
「とはいえ、私は添え物程度に。氏族方々にお任せしましょうか」
二夜のその一射を嚆矢に、氏族たちも向かって行った。
「乱戦になる前におおきく敵を削いでゆきましょうか」
トランスフォームの力が切れそうな時、低空飛行に切り替え、直線上の敵をトランスバーストで薙ぎ払った。
(しかし、ほんとに簒奪者が関わらない状況なんですよねぇ)
何てことを考えながら、風を切った。
「リラと言います。応援にきました。支援させてください」
アウグスタに言ってこちらに移ってきたリラ(ma0970)が合流して挨拶すると、歓迎された。
「咲いて、花達! 頑張る人の力となって」
氏族の中に混ざって、咲き乱れる蒼月を放つ。味方の行動に合わせて、軽やかに舞うように、花鳥蒼月の身軽さを生かして方々に駆けつけて戦った。
「私より強い人がいっぱい応援にきて戦ってます。だから大丈夫! 生き抜いて、下さい。私、出来る限りがんばりますから!!」
リラの援護により、氏族でもカウントがいるようなスキルを使う者は、素早く攻撃行動に移ることができていた。人の心を潤す花の様に、リラは氏族たちを励ました。
「まだデミウルゴスの過激派が残っていましたか。上等です」
茨木 魅琴(ma0812)はいつもの意味深な微笑みを湛えてストームアサルトSGを構えた。天墜のイデアを集中させながら、小走りに位置を調整。
「和解か、さもなくば戦死か。奴らに残された選択肢はそれだけです」
イデアが溜まりきると、彼女はそれを一点に撃ち込んだ。氏族が光の雨によって生じたブレイクに次々斬り掛かる。
「そんなパンツで大丈夫でちゅか?」
北谷王子 朝騎(ma0937)は生前からの友人であるカナタ・ハテナ(ma0325)とツーマンセルを組んで移動していた。近い距離で行動を共にしている二人に対しては、鉄騎もエンゲージを仕掛けられない。
熱核式高速チャージを用いたカナタは、そのチャージで集めたイデアを、アストラルフレアにも転用した。ストームアサルトSGから、広範囲を爆破する射撃攻撃が放たれる。高威力のそれは鉄騎をブレイクさせたため、二人でブレイクポイントの追撃を行なう。更に、カナタは超巨大凍結ミサイル「ギガンテックフリーザー」も撃ち出した。このフリーザーによる移動不能の効果は大きい。ばらけることができなくなった敵は、範囲攻撃の格好の的だ。
反撃の射撃は、二人とも突耐性で軽減。やりすごして次の行動に移った。
●天獄侍衆 雷鳴の突破口
「今日はサムライのおねーさん方と一緒で嬉し……いや、頑張るぜ!」
吉兆(ma0987)はバレッタで留めた長髪をなびかせて笑顔を見せた。
「サムライさんが雷なら、俺たちニンジャは大竜巻だ! いくぜ! ナイトブラッドだけど妖鉄界だから敢えてニンジャと名乗りたい!」
「ふっふっふ、マミのドラゴンゴロス(自称)が火をふくぜ」
彼と共に鉄騎に対応するのは、「ナイトブラッドでカッコよくキメようぜ!」と誘われたマミ(ma0722)だ。彼女は敵の数を見て、
「キッチョム、なんか鉄騎多いよ、これ多い、きいてない」
同行者を見るが、向こうは気にしてない。
「吹けよ嵐! 叫べよ嵐! 轟け嵐! ぶっ飛べ! Tトルネード!」
Tホールで神出鬼没に移動し、Tトルネードをガンガン使って台風の目になっていた。それを見たマミも、
「こうなったらマミの秘めた力をカイホウするしかあるまい。もうこうなったらやけくそだぁー」
Dステップで突っ込み、同じようにTトルネードで攻撃を浴びせる。吉兆と同じ範囲を狙うことによってダメージを重ねた。氏族もそれに応じ、弱った鉄騎を次々仕留める。
その間に、藍紗(ma0229)たちメガロリスト侍衆は白光雷轟のイデアを各々の刀に集めていた。
「思えば、浦と来れば和歌は付きもの、妙縁じゃの。ふふ。浦の氏族が仕寄せる様は、片男波といった処じゃの、ふふ」
歌を詠む藍紗は楽しげだ。
「天獄界のサムライも、なかなかのものでしょ?」
紅緒(ma0215)も侍たちに笑いかける。
「みんなが浦の氏族なら、あたし達は獄の氏族ね。なんてね」
「さー! 浦の氏族の皆さん! がんばりましょーっス! がんがん敵をぶっ潰して、大将の首まで獲ってやりましょーっス!」
イサラ(ma0832)の景気の良い声と言葉は、氏族たちの士気を上げた。
「今回は浦の氏族と共闘をさせて頂きます。宜しくお願い致します」
白綾(ma0775)も白光に髪を光らせながら、変わらず丁寧に挨拶。もう一働き、気を緩めずに挑む。
「おう、今度は鉄のカタマリだけじゃなしに親分のオマケつきかあ? ウラかオモテか忘れちまったけど、氏族の連中もよろしくなあ」
銀火(ma0736)も元気良く声を掛けた。
「嗚呼、またやって来たわ。やりに来たのよ。刀の、揮い場に。いいわよね、この匂い。この空気。雰囲気。昂るわよね。本当に」
玄那(ma1251)は黒い瞳に闘志を滾らせている。
「サムライに男女も子供も関係ナシよね。得物で語るがサムライよ。とはいえ女子供を前に負けられはしねーわよね。ガンバリましょ? なんてエラそーに言える身でもないんだけど、言ったからにはね」
紫明(ma1226)は片目をつむり、歯を見せた。随分と賑やかだが、祭の喧騒のようで良い。案山子を倒す祭だ。どこかにありそう、と笑う。
「遅れ馳せながら参じました。フィオナ・レイノルズと申します。妖鉄界の敵さんは、厳めしい方が多いですね。圧倒されます」
「ロザリアと申します。世界に、皆様に仕える女給でございます。今日は大勢、多勢に無勢、これはメイドの揮い処でございますね」
侍衆唯一の百花騎士、フィオナ・レイノルズ(ma0194)とメイドのロザリア(ma0408)も丁寧に挨拶した。やはり、どの世界でも「侍」たるもの、礼儀を重んじるものなのだろう。氏族たちも天獄侍衆に丁寧に応じている。
やがて、白光雷轟のイデアが高まった。
「白き道(白光雷轟)を導に続け! 妖鉄と天獄、両侍の共演じゃ!」
「道を拓きます。白い光を道しるべに。それでは、参りましょう」
藍紗と白綾が合図した。メガロリストたちはそれを聞くと、道中の鉄騎をそれぞれ叩きながら移動する。
「百花騎士ではありますが、私も侍衆の一員として恥じない戦いを」
フィオナは鮮花閃光で追随し、既にメガロリストたちが攻撃した鉄騎へ追撃していた。初の妖鉄界で緊張していたようだが、その振る舞いに無駄はない。彼女もまた、「光」として駆け抜ける!
「いっけーーーーーっス!」
「女は男の三歩後、なんて言うけど、今回は逆ね。楽しい世界よね」
イサラが気合いの声を上げ、紫明も楽しげに笑う。
白い軌跡を描き、ロジャーに届いた侍たちは、三度目の攻撃、爆発力が集積した高威力の攻撃を立て続けに浴びせた。氏族が後から開いた道を進み、斬り掛かる。
「何だこいつらはよぉ!」
「でっけえカカシだなあ? えれえ細っけえけど、あれが大将かあ?」
「案山子が大将、とは何かの皮肉のようでございますね。いやはや」
銀火とロザリアが所感を述べた。
「大将は案山子? そこに挑む黒いアタシは、さながら烏ね。愉快ね」
玄那が笑う。でも騙されない。啄んであげる。
その時、また別の鳥の声がした。
●城主討伐
声の正体は、サヴィーノ・パルヴィス(ma0665)の黒パジャモである。こちらは鉄騎の頭上を越えて来た。
「デカい図体でちょろちょろ動き回るもんですね。シアンさん、ちょっと振り回しますよ」
「好きなように飛んでくれて大丈夫!」
後ろに乗っているシアン(ma0076)が笑顔で応じた。
「頼りにしてるよ、私の翼達」
その言葉に、まずパジャモが応じた。
「任されましょう。何処へなりとも」
「その動き、封じさせて貰うよ」
シアンは既に、ブレイクに対して零弦叢雲Ⅱを使っていた。更に雷鳴律令とスタンシュート。これでロジャーはすぐには動けまい。
「お見事。やり易くなりますね。行きます!」
今度はサヴィーノが突っ込んだ。玄那と黒パジャモ、二羽の黒鳥が案山子を翻弄する。
「その面倒な回避力……削がせてもらうぞ!」
駆けつけた高柳 京四郎(ma0078)が、一望の白花を、フェイントを織り交ぜて叩き込む。
そこへ、骨格の翼を出して飛行し、槍での攻撃を二度繰り出してくる神魔種が。
京四郎には、彼、葛城 武蔵介(ma0505)がトランスハートで掛けた天星解放の効果が施されている。先頭が始まり、まだ鉄騎対応をしている間に使ったものだ。その時に武蔵介は言った。
「支援するから離れるなよ」
「また強力なスキルを憶えたんだな、武蔵。心強いな」
「二人で行くならこのくらいやれないとね」
なので、彼は続いて放った咲き乱れる蒼月に対して、すぐに天真の極光を放つことができた。
「武蔵のおかげでもう一手行けるな……天真の極光!」
身動きの取れないロジャーは他の咎人からの攻撃を続々浴びて、あっという間にボロボロになっていった。尤も、逃げられたとしても、咎人たちは皆移動対策を持っている。彼が距離を置いてやりすごすことは不可能だ。
「冷静さを欠いていると足元をすくわれるぞ。戦場の死はともかく、無駄死になど誰もが遠慮するものだ」
苦戦するロジャーに、凛とした声が掛かる。フリッツ・レーバ(ma0316)だ。千本桜魁陣を敷いた彼女の服の下の背にも、また桜が咲いていることだろう。
「そういうわけだ。躊躇なく打倒させてもらう! ───あああぁぁぁっっ!!」
炎重棍を振るい、ウィンドブーツで風を起こしながら接敵。ブーツを解除し、共鳴鋼で強化した霊剣解放Ⅱによって攻撃を二度叩き込む!
「案山子さんですか……。首と足、どちらを狙えばいいかな……」
魅朱(ma0599)はかくり、と首を傾げた。唯塚 あまぎ(ma0059)の琥珀石の守護により、そのシールドは飴色を帯びている。その彼女を隠す様に、あまぎは大型の鬼鎧で前に出ていた。出陣直前に、
「はわ……。あまぎ……大きくなったねー……」
「魅朱が小さくなったの間違いじゃないか?」
と言い合ったとか合ってないとか。
「神降しの突耐性に諸々の自衛……どこまで保つかな、この鬼鎧」
とは言え、鉄騎対応の咎人や氏族の活躍で、あまぎを攻撃する鉄騎も少なく、ロジャーも侍衆から袋叩きになってブレイクしており、スキルが使えない。道中の攻撃を防ぐのに保護機構を使ったくらいか。
ロジャーに、最初に使った強化が掛かっていたのを魅朱は見逃さない。
双刀「アオイアラシ」から、森羅斬劾の一撃を繰り出した。
「ぎゃあああああああ!?」
更に、魅朱からは破邪顕正、あまぎからは焔月無塵。シアンやフリッツから始まって、立て続けにデミウルゴスに有効な攻撃を浴びるロジャー。
「それにしてもの鉄騎の数。どびっくりでございますね」
「あたしたち、周りの鉄騎を減らすわ! さあ! 今日も金棒をぶん回すわよ! 覚悟しなさい!」
天獄侍衆の何人かが、周囲の鉄騎対応に移った。統率の取れた動きで、不安はない。
ロジャーは悪あがきの様に攻撃をばらまくが、ロザリアのアクティブシールドで横っ面を張られた。この後、範囲攻撃を使ってシアンの星天の雲に妨害されることになる。
「あまぎ……無理、しないでね……? 危なくなったら、下がって……?」
「…………善処する」
余計に心配を掛けそうな間を置いて返事をするあまぎだった。
最終的に、浦の氏族の氏族長がロジャーの頭に大太刀を叩き付けると、それがとどめになってロジャー=デミウルゴスは討ち死にした。そこまで持ったのは、鉄騎が減っていたから、もあるが、ロザリアの反響する賛歌の貢献もある。
それを見たヤルダ人の盛り上がりときたら……。一緒に戦っていた玄那は興奮冷めやらぬ様子。
「不夜城の一つ、これで攻略完了という訳か」
「大きな“首花”……。せめて、畑で咲いたらよかったのに……ね……」
フリッツと魅朱の言葉は、その歓喜の怒号の中に溶け込んだ。
「あ、最後に記念写真一枚イイっスか? 最近凝ってるんスよね」
イサラがカメラを片手に、周りに声を掛けている。
「浦に案山子(そほづ)、山田に網代木、場違い故の敗北じゃな。強き波に案山子の細足を差せば流されるは当然じゃ。のう?」
藍紗はその様子を見て微笑んだ。そして、一首。
「――若ノ浦 仕寄せ雄々しき 片男波 咲くは白花 散るは黒鉄」
「アネさん、今日はお疲れサマでしたッ! 氏族の人らも、またな!」
吉兆が元気に挨拶している。マミは疲れた、ひもじいとうずくまっていた。
「ああ、うめえもん喰いてえなあ。饅頭もお預けくってるしよう」
「今日は浦の氏族のとこで、旨い酒を飲みてーわね。どう?」
銀火と紫明の言葉を聞いた氏族が、贈答用の饅頭を贈り、希望する咎人を酒宴に招いたのはまた別の話。





