【三神祭・外部】エゲリア様の仰せのままに
月宵
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シナリオ形態
ショート
難易度
Hard
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100 SC
参加人数
4人~8人
優先抽選
50 SC
報酬
200 EXP
5,000 GOLD
10 FAVOR
相談期間
4日
抽選締切
2021/05/15 10:30
プレイング締切
2021/05/19 10:30
リプレイ完成予定
2021/06/01
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
 早朝だと言うのに、テンペストの東京は薄暗い。覆われた常夜の天幕が此方の視界を遮らなかったのは幸いだろう。高柳 京四郎(ma0078)は一人離岸にて、普段から肩掛けしている白衣を近くの岩場に引っ掛けてから、皆の元に向かった。
 彼を迎えるのはマイナ・ミンター(ma0717)と葛城 武蔵介(ma0505)だ。
「祭に無粋な輩。京四郎さん、武蔵介さん、懲らしめてやりましょう」
 二人にそう応えるマイナ。恐らく前回お茶を献上したことが神様に気に入られたための依頼なのだろうか。
「俺こそ、マイナ達が一緒なんてまさに鬼に金棒だね」
「あぁ……マイナさんに武蔵も居てくれるなら、個人的には安心だな」
 ただ、安心出来そうもない持ち物を京四郎は武蔵介の傍らに視認したのだが。


「……んー、皆で作るのも……面白そう、だったんだけど……ね?」
 スタッフ達に話を聞いてから、ポツリと鈴鳴 響(ma0317)が呟く。隣には彼女とは比べ物にならない巨体の機械種の男がいた。響の教師役を担う麻生 遊夜(ma0279)だ。
「水上戦では飛行する敵が厄介だな、早めに潰すか……響、頼んだぞ」
「う……うん、ユーヤ。ボク頑張るよ」
 小さく彼女は頷く。手にはしっかりとスナイパーライフルを手にして。

 皆が団結せんと互いを鼓舞する中、場違いな彼女が岸辺に一人。水着姿のクラリス・ド・ラプラード(ma0056)、だ。勿論彼女には彼女なりのしっかりと理由があるために、この出で立ちなのだ。普段の鎧姿では水中では動きにくい為、水着の方が反応速度は上がる。更に彼女はボートを借りず泳ぐ気だ。盾役であると自負する彼女にとって『アシ』は逆に不便になる。
 『決して他に他意はない。決してない』

●水上の弾幕
 こうして、挨拶もそこそこに戦闘が迫る。ボートに乗ったのは、マイナ、京四郎、遊夜、そして異能種の少女シトロン(ma0285)だ。
 走るモーターボートに揺れは少ない。煉獄スタッフが手足の様に自由自在にボートを操る為に、本来の速度を犠牲にしている為だろう。
「ボートが壊れたら溺れちゃうかな。気を付けよう」
「だだだ、大丈夫です。」
 運転手のスタッフに、一抹の不安をシトロンは覚えざるを得ない。

「ボートの操縦は任せます。挙動は分かりますので、思い切りどうぞ」
「あいよ! なら、Uターンは任せろ!」
 方や、マイナはスタッフとの連携が見事に取れていた。所作や礼儀作法で鍛え上げた体幹は、こんな時でも役に立ちそうだ。
 遊夜の傍らには、愛馬ウルで空を駆ける響。京四郎の背後を、普段は出さない果てた翼で武蔵介は舞う。
「俺が援護する、想う存分敵の目を惹いてくると良いさ」
 そして真ん中を突っ切るは、巡行移動を行使し水中をクロールするクラリス。
 作戦は単純明解。汎用型を補助する飛行型を手早く倒し、その後汎用型を落とす。

 ミニオンに彼らが相対した瞬間。飛行型のミニオン達が一斉に掃射を始める。細く、プラズマを帯びたビームにも見えた弾の礫。
 それを遊夜、響、マイナ、シトロンの身体へと貫通する。
 痛みはない。
 マイナは四肢に痺れを感じる。通常の動きは問題はない。だが、咄嗟の判断には体がついていかないだろう。だからこそ、彼女はカタナで攻撃は受け止めるつもりだった。
 シトロンは麻痺を自力で振り切る。だが、次の瞬間。汎用型ミニオンが繰り出す衝撃波が彼女をとらえた。回避を試みるが、狭いボートで慣れずか足を取られてシールドは破壊された。
 だがそれは一瞬の事。薄い膜ながらシールドが復活。驚いたシトロンが見上げると上空には武蔵介が緊急障壁を施していた。
「ありがとう武蔵介さん!」
 感謝を述べてから、シトロンは改めて考える。もし、自分が衝撃波を回避していたら、あの一撃はどこに向かっていただろう、と。
 
 軽い会釈に笑みを添える武蔵介のそばを過るもの。
「あぶない!」
 シトロンを回復させようと近づいた武蔵介へ、新たな衝撃波がシールドに打ち付ける。
 バリン
「武蔵っ……くっ」
 シールドが吹き飛ばされ、逃げるように空を昇る武蔵介。それを心配する京四郎の眼前にも攻撃が迫る。
 籠手に衝撃が伝わるが、シールドが割れるほどではない。衝撃に揺れる船内、不安そうにスタッフがハンドルから京四郎に視線を移す。
「大丈夫だ、俺が護るから操縦へ専念してくれ」
 
 ハンドルを再び握り締めスタッフは頷いた。全てを防御する。操縦者にだって、モーターボートにだって傷一つ付けさせやしない。

「邪魔はさせないわっ。さぁ、かかっておいでなさいな……」
「さぁ撃って来てみろや、豆鉄砲どもが! 俺を撃ち抜いて見せろ!」
 
 水面に二人の怒号が重なる。水中よりクラリスが汎用型に、船上より遊夜が飛行型へ挑発を仕掛ける。
 クラリスへ攻撃せんと、ホバーを使い一気に汎用型が動く。マイナはその合間を縫って飛行型に近付く。
 その間に響は上昇する。ライフルを片手に、盤面を眺める。一体の飛行型、それを標的にするのは、マイナとシトロン。
「……空を飛んでる、子がいるね……ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?」
 鋭い発砲が飛行型を捉える。ピシリとバリアが張られていたのか、一部分亀裂が入る。
 体勢を崩した飛行型に、マイナが飛び掛かる。上段振りかぶるカタナ……は実際はフェイク。逆手の剣で切り払う。
「後、少しっ……」
「ボクにまかせて!」
 消費出来るシールドは無くとも、魔杖を振り上げる。ふらつく飛行型のバリアが彼女の魔法により吹っ飛ぶ。

 瞬時、響が嗤う。落ちぶれた飛行型に彼女のライフルが牙を向く。貫き、あっという間の鉄屑だ。
「うふふ……あっけないね」

 クラリスが再び堅守を構え、遊夜は目の前に向かってくる飛行型へと、目に組み込んだ機器で一体に狙いを定める。
「さぁ、こっちにおいで」
 体勢を取り直した武蔵介が小さな羽の申し子達に、自らの魅力をアピールするように水面ギリギリを後退りしつつ、緩慢な手つきで招くのだ。
 飛行型、彼らもまた武蔵介のように自由に青天井を飛び回ることが出来る。だからこそ、武蔵介は水面ギリギリを飛び、標的に錨を与える。
 それは何故か、彼らの為だ。
 京四郎と視線がかち合う。言葉はいらない。
 見せつけた傘を仕舞い、彼のロングソードはヒト薙ぎ。現れた斬撃は波となり、正気を保っていた飛行型への一撃となる。次いで再びマイナが至近距離でヒッティングを仕掛けると、再びバリアが破れる。
 後は響の一人芝居だ。また一体飛行型を落としたのを確認すれば、遊夜の方から天空を駆ける弓矢の軌道を眺める。
「ロック完了、良い位置に来てくれた……全弾喰らってみるがいいぜ!」
 ホーミングレイが飛行型に叩き込まれる。無防備な飛行型の頭上に弓矢が晒されるも、バリアは軽傷にとどまる。
 響より発砲音が一発。次いで素早く二発目をクイックショットでダメージを積んでいく。
「お祭りの邪魔はさせないよ!」
 続くシトロンが星喰いを放つ。杖先から放たれる魔法は、既にヒビが入っていたバリアを侵食し一気に剥がす。
 そして、二重詠唱にて星喰いが再び飛行型が襲う。丸裸の金属の素地に魔法は耐えられなかったのだ。
 
 三機の汎用型ミニオンがクラリスに一気に迫る。力強く振りかぶられた大剣を槍で一つ、二つと受け止める。そして最後の汎用型からの一太刀。

 ピキーン
 
 立ち泳ぎをしていたクラリスの足の裏が『運悪く』ツってしまう。
「痛っ……ごぼぼぼぼぼ……」
 当然受け止めなぞ出来ず、シールドごと身体を水に沈められる。だがシールドはどうにか破られることはなかった。
 ここで一句『テンペスト、水面に浮かぶ、パンダ柄』。
 
 だがそれでも、彼女は挑発を止めない。寧ろ、溺れている(ように見える)今こそ目を引くチャンスなのだ。
 だからこそクラリスは、一生懸命水中から声をかける。
 
「……だいじょうなのか? クラリスさん」
 
 その形相に、思わず遊夜が心配してしまうほどに……

 飛行型が放射する弾丸。遊夜の挑発が解けてしまったのか、バチバチ音を鳴らし、武蔵介のシールドを壊しにかかる。
(ここからじゃ遠いだろうか)
 京四郎は素早くソードを納め、傘を取り出す。本来彼はキャスターではない故に魔法は弱い。だがそんなこと気にせず、彼は石突を飛行型に向ける。
 スイッチアーツ、本来の能力を入れ換える力。イデア体であるからこそ、可能な技と言えよう。
 長距離からの弾道は予想外だったのか、隙をついた一撃は見事命中する。そこにシトロンの魔法が襲い、バリアが外れれば響が調理を手早く完了する。
 これにて、飛行型の掃除は完遂。残すは汎用型のみ。

 またもや、遊夜がロックオンとホーミングレイの合わせ技を今度は汎用型へと撃ち込む……しかし。
「くっ……簡単には行かないか」
 眼孔を狭めながら遊夜が睨み付ける先には、ほぼ無傷の汎用型の姿。
 
「今です、そちらにハンドルを!」
「おう!」
 飛行型の掃討と同時にマイナはボートにUターンを指示し、ジェットを噴射させ、一気に汎用型の背後にピッタリと船をつける。船頭に彼女が立てば、そのまま隙を許さぬ一閃が胴体を煌めく。
 だがそんな事も気にせず、汎用型は水中のクラリスを狙いにかかる。

 隙だらけの汎用型に京四郎の刃が入る。次いで直上の響とシトロンの弾丸が同時に襲いかかり、汎用型は漸く水中に墜ちたのだ。
「ん……弾切れ……」
「あー、ボクもだ」
 リロードは戦闘で隙があれば、二人とも続けていた。だが、補充が消費を上回ってしまったのだ。
 その様子にいち早く気付いたのは武蔵介。全員に通話モードで状況を伝える。

「葛城だ。シトロン、響、二名が弾切れだってさ。一旦攻撃待ってくれない?」
 
「そうするか、連携はした方が良い。マイナは?」
「私は大丈夫です、スキルの余力が後少しなのですが」
「ごめん! まだ挑発は効いていると思うけど技が……もう……」
 京四郎とマイナの会話に息も絶え絶えなクラリスが返答する。
「俺が相手をする。その為の盾役だ」
 遊夜が彼らに応える。心配そうな響の声に、言葉はなくとも彼は気付く。

「……10秒でいいか」
「ボクは大丈夫だよ!」
「ん……充分……気を、付けてユーヤ」
 そこで通話は切れる。最悪なことに同時に、クラリスの挑発が切れたのか彼女から汎用型の標的がそれる。

 汎用型の視線を遮るように、黒壁が立ちはだかる。片方の獲物を瞳はしっかりとロックオンする。
「悪いが俺の相手だけしててくれや、全力で相手してやるからよ!」
 金属音は遊夜に応えるように、それこそ全力で大剣を振りかぶり、また一体は彼方より衝撃波を与えてくる。
「ぐっっ……それしきじゃ効かないな」
 気圧される程の衝撃は、船内で体躯を後退りするほどのものではあったが、彼のシールドを割るほどではない。
 一体の汎用型の頭上に彼は悪魔を見た。ガチャリ、ガチャリ、空中だと言うのに、悪魔は馬上で手慣れた手付きでライフルに薬莢込める。彼の大切な、大切な、悪魔だ。
(後は任せたぞ……響)

 先に充填を終えたシトロンが先陣を切る。ボートを近付け、唱えた魔法は一発、遅れてもう一発。初手の攻撃を払われたが、二発目にてバリアを破壊する。
「……ん、貴方は耐える? ……耐えられるかしら? 楽しみ……楽しみ、だね」
 もう電磁バリアは使えない。頭上に狙いをすまし、響のショットが汎用型の装甲を貫く。更にもう一発、先程の装甲の風穴に彼女は狙いをすます。
 機械なのに、これほど虫の息が似合うこともあるのだろうか。
「コキュートスに沈みなさい。それが空の加護を失いし者の末路です」
 最後はマイナの一撃が、鉄人を粗大ゴミに変えた。
 
「いかせ、ないん、だから」
 汎用型にガッチリとクラリスは身体をピッチリ密着させて、ガツリガツリと割れないバリアに槍を当ててくる。目障りだ、と一瞬だけ頭部がクラリスに向く。
 それが合図だ。
 最後の一体を、響、シトロンの集中砲火でバリアを崩壊させ、京四郎が仕留めたのであった。
 こうして、無事果物の搬送経路は確保されたのだった。

 精神力も切れ切れの面々が、ボートを岸につけ次々と上がってくる。皆が息を切らして披露困憊の中、一人ハツラツとしているのは武蔵介。もしもの回復の為に後半は待機していたため比較的余裕がある。
 ボートのスタッフに丁寧に頭を下げて感謝の意を表すマイナへと翼をしまった武蔵介が近付く。
「良かったらどうぞ。新品だから安心して」
 彼が手にしていたのは、なんとセーラー服。確かにマイナは特にモーターボートの水飛沫を浴びてしまったせいか、服が透けるほどにびしょ濡れなのだが……
「ありがたいんだが…ここで着替えるとな、女性陣も居るし」
 と割って入った京四郎が、先程引っ掛けておいた白衣をそっとマイナに差し出す。
「だいぶ濡れたねぇ……っと……良かったらこれ使うかい?」
「ふふ、紳士でいらっしゃいますね。お気遣いありがとうございます」
 目を細めて緩やかに微笑むマイナ。無論受け取ったのは、京四郎の白衣。

「それは至極残念だ」
 肩を落とす武蔵介の背後から水音と声が聴こえた。
「その服貸してもらって良いかしら?」
 不便そうに片腕を振りながら、未だ一人水中から顔を出すクラリス。このままだと、陸に何故か上がれないようだ。
「勿論、喜んで!」

●品定め
 こうして、戦闘を終えた一同は無事開催されたお祭りに参加し、フルーツ飴を各自出店で探すことにした。

 シトロンは飴を造るところを眺めていた。リンゴから刺した串へとトロリと垂れる飴の液。
「これがフルーツ飴なんだー。きらきらしていて綺麗だね!」
「こっちは熱いからね。食べるなら、こっちだよ。はい」
 飴と言う、やすっぽい宝石がシトロンに手渡される。生前ではこんなこと決して楽しめなかった。
 カリッ、シャクッ。
「うわぁ、すっごい甘い!」


「……ん、キウイとアンズは……あった、これで良い? ……あとは、んー?」
「よし、定番は抑えたな。響のも美味そうだし変わり種も中々良いな」
 響と遊夜は、二人で一つ一つ様々なフルーツ飴を眺めていた。定番のミカンにイチゴ、変わり種にはナシ、マンゴーと言うところだ。
「……ん、丸くくり抜いた……メロンの飴、これ……喜んでくれるかな?」
 両手で飴を持ちながら、響は小声で遊夜に聞く。ああ、きっとな、と彼は頷いてくれた。

 祭会場から離れた場所。セーラー服姿のクラリスがスタッフに頼み込んで、輸送船の貨物の中を探索していた。
「これよ、これを飴にしてくれないかしら」
 次いで武蔵介が、スタッフに細かく何か指示を出している。どうやら、ただ飴を献上するだけじゃなさそうだ。
「リクエスト通りに頼むよ。大切なお方の御依頼なんだ」


●エゲリア様の仰せのままに
 お祭も程々に目的を果たした咎人達は、一旦エンブリオに帰ることにした。場所は指定された白い真四角の部屋。依頼前と何物も変わらない白。
 もし違いがあるとすれば、モニターで映されていたエゲリアが、目の前に降臨していることぐらいだろう。
 
「良いんじゃないかな、奴隷君達も良く集めたものだね」
 一人一人が思い思いのフルーツ飴を献上する。白い何も無い部屋だからだろうか、エゲリアの周りだけ飴と言う色彩が集中し、まるで神を囲む花畑のようだ。
 中心の華は、まだ此方に微笑みさえ向けてはくれないが……

「お口に合いますと幸いです」
 一人クーラーボックスを練獄から借りてきた武蔵介は何故か鯛焼きを取り出せば、慣れた仕種で頭を垂れて両手でエゲリアに差し出す。
 頬杖をついていたエゲリアが受けとると、鯛焼きを一口ガブリ。良く噛んでから、しっかりと飲み込んだ。
「なるほどね、生クリーム、間にフルーツ飴を挟んだのか、見目も良いじゃないか」
「はい。特別に屋台で作っていただいた逸品になります」
「けど、時間が経って生クリームに飴が溶けてしまっているね。もしコレを売り出すなら、食べる直前に飴を挟むことをオススメするよ」
 と、口元についた生クリームも人差し指ですくいとって舐めながら、エゲリアは啓示を与える。
「批評だけでなく、助言まで……なんと勿体なきお言葉」
 鯛焼きを食べ終えれば、直ぐ様隣のパイン飴へとエゲリアは手を伸ばす。また武蔵介がパイナップルの花言葉は、なんて説明を始めたが気にせず飴を食している。いっそ、パイナップル飴のが気に入っている、まである。
 次にクラリスが良くある串に刺して、飴がけしているごく一般的なフルーツ飴を差し出した。

「どうぞ、エゲリア様。此方、ドラゴンフルーツとなっておりますわ」
 ほう、と呟きつつ即座に口には入れずに、マジマジと果物を眺める。一瞬食べるのを躊躇する程に鮮やかなピンクの果肉。更に種と思わしき黒い粒かびっしり入っている。
「あんな場所で良く手に入ったね」
 そう言ってからエゲリアは、一口ドラゴンフルーツ飴に齧りつく。そして、飲み込んでからクラリスへと微かに笑みを浮かべる。
「なかなか面白かったよ、気に入った。キミも後で食べてみるといいよ」
「エゲリア様に喜んでいただけたなら嬉しいわ」
(あら、食べた感想は言わないのかしら?)
 ふと、そうは思いつつも、まだ自分も試食もしていなかったし、後で食べてみようか、とクラリスは考えた。

 次にエゲリアが手を付けたのは、京四郎の持ってきたマシュマロとリンゴが交互に刺さった串。
「こんな風にマシュマロを一緒に固めた飴ってのもあるんですよ」
「シンプルだけど、統一性があってボクは好きだね」
 感触が変わるのも、と言いつつも、やはり飴の原材料は砂糖。尖った甘味の連続に舌が麻痺してしまいそうだ。

「これだけあると、ボクでも食べきれないから。奴隷君達も食べなよ」
「それから、お茶が欲しいんだけど。良いよね?」
 とマイナへと視線を向けながら、エゲリアは言い放つ。
「気に入って下さったのですね。少々お待ちを……」
 
 こうして、フルーツ飴の試食会が厳かに開催されたのだった。
 飴の他にもマイナが持ってきた、飴細工や氷菓子がところ狭しと並んでいる。

「? 思ってたより甘くないのねぇ、ドラゴンフルーツって」
「……ん、ユーヤ。そのマンゴー飴、交換っこしよ」
「そうだな、ならそっちのアンズ飴を貰えるだろうか」
 わいのわいのと思い思いのフルーツ飴に手を伸ばす。戦闘で疲労したためだろうか、疲れた体に甘いものは染みる。

「エゲリア様、エゲリア様」
 と、緑色のブドウ飴を咥えていたエゲリアへシトロンが思い付いたように話し掛ける。
「何?」
「ちょっと、舌ベーってしてよ」
 その一言で、彼女が自分に何をさせたいかエゲリアは察する。
「ほら、お望み通り」
 飴を口から外してから、頬杖をついて薄い舌をペロリと出してみる。見える舌は、本来の色からかけ離れた、綺麗なエメラルドグリーン。
「すごい緑! これフルーツ飴とか、かき氷食べるとなるんだよ」
 知っている、とは敢えてエゲリアは言わない。シトロンにとっての大発見に水を差してやる必要もないだろう。新たな知恵を手に入れ、それを共有する喜びの格別さをエゲリアは知っている。
 あっちの方で、氷菓子でも食べたかのように真っ青な神官は敢えて無視しておく。

 

「では、私たちはまた祭に戻ります────」
「行っておいで、精々ボクの威光をテンペストに知らしめてよ」
 マイナの声を途中で遮るように、エゲリアはいつの間にか用意したリクライニングチェアにて、紅茶に舌鼓を打ちつつ言い放つ。

「感謝するよ。良い宴を経験させて貰った」

 浮かべる笑みはなくとも、軽快に手を振ってエゲリアは咎人達を見送るのであった。

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