コードネーム:シンカンセンスゴイアズキアイス
西川 一純
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シナリオ形態
ショート
難易度
Normal
判定方法
カジュアル
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100SC
参加人数
4人~8人
優先抽選
50SC
報酬
200 EXP
5000 GOLD
10 FAVOR
相談期間
3日
抽選締切
2021/05/15 10:30
プレイング締切
2021/05/18 10:30
リプレイ完成予定
2021/05/27
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. -
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
●氷の巨人
 コードネーム:シンカンセンスゴイアズキアイス(以下アイス)なる簒奪者の討伐依頼を受けた咎人達は、人幻界テンペストの常夜へ潜入した。
 相変わらず昼でも薄暗い闇の世界は、大勢の人々が暮らしていたとは思えないくらい不気味に静まり返っている。
 作戦ではディック・エスプがアイスを引っ張ってきてくれるとのことだが、予定時間まではもう少しある。
 ここはとある町の小学校跡。フェンスなども無茶苦茶にされ今は廃墟でしかないものの、広くて動きやすく人目につきづらい立地なのがウリだ。
「ディックさん……大丈夫でしょうかー……あんまり強くないって……聞いてますけどー……」
「そこは彼自身よく分かっているから大丈夫だよ。逃げ優先で無茶はしないと思う」
 小山内・小鳥(ma0062)たちはグラウンドでディックとアイスの到着を待っている。
 不安そうにきょろきょろと辺りを見回す小山内に、氷雨 累(ma0467)は嘘偽りのない見解を述べつつ頭を撫でる。
 斥候・物見を主任務とする人間があっさり捕まるようなことはあってはならない。逃げ足ならこの場の誰よりも優れているだろう。
 友人の心強い言葉に、小山内は耳をピンと立て尻尾を揺らすのだった。
「今日はチェーンソーじゃないんですね。今回の敵こそ使い所だったのでは」
「チェーンソーを振り回したりは私の本職ではないのです。サポートが本職なのです」
 よく使っている魔符を装備しているフィリア・フラテルニテ(ma0193)に、不破 雫(ma0276)は首を傾げながら聞いていた。
 別に悪意があるわけではなく、単純に効率が良かったのではと思っているからだ。
 しかしフィリアは軽く頭を振り、いつものすまし顔で自らの役割を主張する。
「それに、あれを使っていると氷雨様が怖がりますので」
「あー……」
 氷雨には聞こえないよう小声で言うフィリアに、思わず二の句が告げなくなる不破。
 友人だから、よく知る間柄だからこそ怖いということはある。それが憧れのお姉さん的な存在なら尚更だ。
 女性二人に視線を向けられた氷雨は、頭上に『?』を浮かべて首を傾げている。
「中途半端なんだよなー、なんだよエメラルドみたいな固さって」
「ち、違いますよー……サファイアです……」
「そうだったか? どっちでもいいけど、ルビーとサファイアって色が違うだけで同じ物体らしいぞ」
「どこから仕入れてきたんですかそのトリビア……」
 ラファル・A・Y(ma0513)のボヤキに小山内が訂正を入れる。
 それに何故か豆知識で返したラファルだったが、今度は不破からツッコミを貰うことに。
「サファイアより硬いなら……こっちはダイアモンドで攻撃ですー!」
「硬度10! ダイヤモンドパワーだな!」
 性格は全く正反対と思われる小山内とラファルだが、たまに意見が一致してハイタッチしている場面を見かける。
 おどおどした気弱な少女と火力至上主義の戦闘狂のどこに共通点があるのかは永遠の謎である。
「……来た。……敵だ」
 端的に、手短に呟いたのは染井 桜花(ma0475)。
 元来口数が少ないのでこれまでの会話には加わってこなかったが、その分しっかりと準備をしており一番気を張っていた人物でもある。
 染井の言葉にすぐさま気持ちを切り替えた咎人達は、染井の視線の先から駆けてくるディックの姿も確認した。
 その背後からゆっくりとした大股で歩を進めてくる氷の巨人……ヤツがコードネーム:アイスか。
 どうやらあまり速く走ることはできないらしく、ディックは時折スピードを緩めて挑発するように振り返っている様子が見て取れる。
「そういや聞きたかったんだが、その赤いボンベみたいなのは何だ? 爆弾か?」
 弓の準備をしながらラファルが問うが、染井はラファルの目をじっと見たまま何も言わない。
 染井の周囲にはどこから調達したのか赤い消火器が複数用意されており、それをアイス戦で使うつもりのようだが……?
「あ? なんだ、ガンつけ勝負なら負けないぜ」
「……集中しろ」
「無愛想なやつ……」
「人のことを言えた義理ですか。来ますよ!」
 業を煮やしたラファルが軽く突っかかるが、染井はクールに受け流して戦闘準備に戻る。
 そんなラファルも不破のツッコミを受けつつ準備万端整えた。
「すまない、俺にできるのはここまでだ! 後は頼む!」
「お疲れ様です。後は僕たちにお任せを!」
「ゆっくりお休みください、ディック様。必ず労に報いてみせますので」
 氷雨やフィリアたちの間を走り抜け、そのまま戦線離脱するディック。
 いても戦闘では足手まといにしかならないのだから致し方あるまい。
 アイスはと言うと、目の前に現れた咎人たち6人に疑問を抱くでもなく、すぐさま排除にかかるべく拳を振り上げた。
 邪神に精神操作されているからこうなのか、それとも元々アホの子なのかは分からない。
「私はスキルで、なるべくゴーレムの妨害を行いましょう」
「フィリアお姉さんの魅力に……めろめろになっちゃうと……いいのですよー……」
 フィリアがラブリーウィンクを使用し、戦いの火蓋は切って落とされた―――

●ところでこのゴーレムを見てくれ。こいつをどう思う?
「はぅ……凄く……硬くて大きい……ですー……」
 手にした刀でいの一番に斬り込んだ小山内だったが、ダイヤモンドアタックを使用したにも関わらずアイスの体には大きな傷を付けることができなかった。
 一応細かい傷はできているが、シールドを削るので精一杯。
 その硬さで痺れた手に涙目になりながら、なんだか誤解を受けそうな台詞を吐いていた。
「小鳥ちゃん、その台詞は僕たちの前以外では絶対言わないように。絶対だよ?」
「累くんの前でなら……いいのですかー……?」
「い、いや、そういうわけではなく……僕の前でもできれば止めてほしいと言うか……(ごにょごにょ)」
「ストロベリってる場合か!」
 一も二もなく小山内に口止めをし始めた氷雨だったが、うっかりアイスの存在を意識から飛ばしてしまった。
 ラファルが弓でアイスの目を狙い撃ちにしてくれたことで難を逃れることができたが、少々彼らしくないミスである。
 それだけ氷雨の中で小山内が大切だという証拠かも知れないが。
 ラファルが使っているブラストシューターという弓は着矢と同時に爆発する仕組みであり、炎属性を持つ特殊な弓。
 どうやら体が氷でできているアイスはこれを嫌うらしく、ばたばたと顔まわりを叩くような仕草をする。
「ふむ。炎熱系の武具なら効き目がありそうですね」
「つまりサンドバックってことだろ? いいぜー、新技の試し撃ちし終わるまで止まるんじゃねぇぞ!」
「細かいことを言うようですがサンドバッ『グ』です」
「コマけえこたぁどうでもいいんだよ!」
 次々と矢を放つラファルに合わせ、不破も大剣を手にアイスに肉薄する。
「人型である以上はどうしても関節部は防御力は下がりますからね」
 その小さな体でするりとアイスの足元をくぐり、背後を取って膝の裏からスマッシュを叩き込む。
 一撃で足を粉砕できるなんてことはなかったが、膝カックンの要領でバランスを崩し尻餅をつくアイス。
 そうでなくともアイスの戦い方は酷いもので、フィリアのラブリーウィンクで視線は奪われるわ魅了を受けてフラフラ誘導されるわ、オツムの出来に疑問符がつく行動ばかり。
 その分頑丈さは折り紙付きで、ラファルの炎属性攻撃も嫌がりはするがそれですぐさま溶けてなくなったりはしない。
『ただただ強いというのは、シンプルに厄介です』とはフィリアの談だが、本人はこれまでになく翻弄できてちょっと楽しくなってきている様子。
 岩砕く豪腕も、フィリアに引き寄せられて周囲に目が向かわないので宝の持ち腐れか。
「まったく、呆れるくらい堅いですね。フィリアお姉さんにおんぶに抱っこでは剣士の名折れなのですが」
「氷雨さん、どこかにヒビが入った様子はありましたか? 私は表面を軽く削るくらいしかできていないのですが」
「僕も同じです。金剛の太刀と意気込んでは見ましたが、なかなか」
 疾走牙で一撃離脱を繰り返しシールド削りに注力している氷雨に不破が声をかける。
 氷雨の刀でも不破の大剣でも目立った傷が付かないのは驚異的。
 フィリアが上手く誘導してくれているから被害はほぼ無いが、神威の使用回数制限を考えるとのんびりもしていられない。
「あ、私の攻撃は……結構効いてるみたいですー……」
「俺のもだ。やっぱり火力は正義だな!」
「火力じゃなくて火属性でしょう……。小山内さんは何かコツと言うか弱点に気がついたんですか?」
「ふぇ……そういえば鱗薙は、火属性だったのですねー……」
 不破の質問に、可愛らしくてへりと舌を出す小山内。結局ラファル同様火属性が鍵ということになるのだろうか?
 しかしそれも普通の斬撃に比べれば程度のことなので、明確な傷には至っていない。
 ラファルの『穴狙い』も顔の目部分に目らしき彫刻が彫られているだけなので内部破壊にまで踏み込めない。
 どうにも攻めあぐねていた時だ。
「……さて。……融雪剤。……試してみるか」
 ある程度刀で斬り込んでみて、正攻法での破壊は無理だという結論に達したのだろう。
 染井が例の消火器を持ち出してきて氷雨たちにパスしてくる。
「消火器……? これをどうすれば?」
「……斬れ。……奴に。……ぶちまける」
 不破の疑問に、極端的に答える染井。
 一瞬わけが分からなかったが、小山内が笑顔で翻訳してくれる。
「なるほどー……消火器を斬って……中身をアイスに……かければいいのですねー……?」
「ほほー。乳白色のネバネバした液体をぶちまけろと。スカした顔でなかなかのアバズレと見たぜ」
「ラファルさん、言い方ァ!」
「あん? アイスにぶちまけるならコンデンスミルクだろ。氷雨クンはナニを想像していたのかなァ? お前の脳内は桃色か?」
「え、もしかして僕弄り倒されてます……? この状況で……?」
「……やるぞ」
「す、すいません……って何で僕が謝ってるんだろう……」
 染井の手短なツッコミに思わず謝罪して構え直す氷雨。
 他の面々もそれに則り、消火器を放り投げては走り込んで消火器のみを斬り、撃ち抜き、その中身をアイスに引っ被せていく。
 消火器の中身は消火剤ではなく融雪剤に替えられており、雪国の分厚い積雪をも溶かし切る量が次々とアイスに襲いかかる。
 鈍重なアイスにそれを回避する術などなく、身を焼かれているかのような苦しみ方をして暴れまわった。
 いくら硬かろうが氷は氷。東京の薄氷だろうとシベリアの永久凍土だろうと結局は水が氷結したものだ。
 ならば融雪剤が効かないわけがない。角ばっていたアイスの体がみるみる氷解し、丸みを帯びていく。
「……ただ一点。……そこに重ねれば。……崩せる」
「流石にそれなら僕にも理解できます」
「知ってますか? ダイヤモンドって一点に力が加わると破壊されるんですよ」
 染井、氷雨、不破がアイスの腹部めがけて次々と斬撃を繰り出していく。
 ほぼ同じ場所に連続攻撃を受け、アイスは知らず識らずに後ずさりしている。
 融雪剤で脆くなっているアイスの体は、三人の攻撃を受けようやく亀裂が入る……!
「ラファルさん……やりましょうー……!」
「よっしゃ、風穴ブチ空けてやんよ!」
 シールドブレイクした所に小山内とラファルの火属性攻撃も決まり、さしものアイスも腹部にバスケットボール大の穴が空く。
 ここまでしてやっとそれかと思わなくもないが、それで充分。
「……私の奢り。……たらふく食べて。……吹き飛べ」
 染井は隠し持っていた手榴弾をアイスの空いた腹部の穴に詰め込んだ。
 外からの外圧には強くても中からなら? 例え即死しないまでも、普通の生物なら木っ端微塵になる攻撃手段……なかなかにエグい。
 アイスはやはり頭が回らないのか、突っ込まれた手榴弾の処理に走るわけでも、焦る様子があるでもなく……しめやかに炸裂の時が近づく。
「……危ない。……退いて」
 染井の退避勧告の後、ズゥゥ……ンと腹に響く衝撃と炸裂音。
 爆煙が晴れた後には、腹部が大きく抉られ左足が欠落し、地面に尻もちをついた状態のアイスの姿。
「……まともな人間なら死んでいます。この状態で死なないことを、私は幸運とは言えません」
 アイスが最早まともに動けないと判断したフィリアは、誘導役を止め静かに呟いた。
 痛覚が残っているか……残っていても感じるだけの精神があるかも分からないが、弱々しく拳を振り上げるその姿は元人間としてはあまりに憐れだ。
「ちぇっ、内部破壊は俺も考えてたのに二番煎じになっちまったかー。ま、いいか」
 そんなアイスに、ラファルは容赦なくフォースショットを撃ち込んでいく。
 狙いは勿論砕けた腹部中心。一切の容赦も手心もない。
 やりすぎでは、と思う者がいないわけではない。しかしそれを口に出してはいけないと誰もが分かっている。
 簒奪者は敵。滅ぼすべき敵。そうすることでしか、邪神に囚われた魂を救う術はないからだ。
 ここで明確に消滅させておかねば、簒奪者は咎人と同じ様に死に戻りし、またどこか別の世界で罪を重ねることになる。
「効かないと理解していても火達磨にされて平常心を保てますかね?」
 不破も事前準備していた最終兵器、火炎瓶を急造し放り投げる。
 粘度の高い燃料で作られたそれは、対象が本来火の点かない氷であっても容易に炎上させていく。
 アイスが暴れるのは熱いからか……それとも体が溶けるからか。
「長い時間はかけれない。どこか、部分的に斬りやすそうな部分は、無いか」
 炎上する氷の巨人という奇妙な光景を目にして、氷雨は敵を一秒でも速く葬れる場所を思案する。
 そして行き着いた答えは、やはり……。
「……変に首斬り役が定着しなければ良いんですが」
 疾走牙で駆け抜け、アイスの首を斬り飛ばす。
 染井の融雪剤と不破の火炎瓶によって細くなっていたからできたこととは言え、氷雨の剣の冴えは恐ろしくも頼もしい。
 頭まで失ってしまったアイスは、最後の力で手を天に掲げ……力尽きて崩れ去る。
 ただの氷と化したその体は炎に炙られすぐさま溶けてなくなり、まるで最初から誰もいなかったかのようにグラウンドに染み込んでいった―――

●エピローグ
「興味ありましたが砕けた破片でも流石に食べられなかったでしょうねぇ」
「融雪剤とか火炎瓶とか色々かかっちゃってましたし……あれは流石に食べれないと思いますヨ?」
「何か……シャーベットかアイスを食べたくなって来ましたー」
 アイスの消滅を確認した咎人達は、超能力者等に見つかることを警戒しすぐさまその場を後にしていた。
 無理にでも明るく振る舞わなければやっていられない。簒奪者を倒すたびにいちいち心を痛めていたら自分自身が保たないと知っているのだ。
 だから努めて明るく、フィリアも氷雨も小山内も、食べられるアイスの話などに興じる。
「……アイス食べたくなった。……饅頭アイス。……買うか」
「お、なんだ意外と話せるじゃんか。だったら一緒に喰いに行こうぜ」
「……何故? ……私と食べても。……楽しくない」
「それを決めるのは俺たちなんだよなぁ。この雫ちゃんだって最初は無愛想だったけど、付き合ってくとそこそこデレてくれるんだぜー?」
「私を巻き込まないでください。というかデレた覚えはありません」
 染井がポツリと呟いた言葉を聞き逃さなかったラファルが、非情に軽いノリで染井をアイスに誘う。
 意外そうな顔をする染井だったが、不破を引き合いに出され、他の面々の顔色を見てもニコニコ笑って行く気満々の様子であることに更に驚いていた。
「運動した後はアイス食べたいです。食べたくないですか?」
「どうせ食べるならご一緒に。折角共に依頼を完遂したわけですから」
「桜花お姉さんも一緒だと……嬉しいのですよー……?」
 フィリアたちにも怒涛の勧誘を受けた染井は、例のごとくじっとラファルの目を見つめる。
 その視線からは彼女が何を考えているのかは読み取れない。
「だーもう、そのじっと睨みつけんのやめろ! 無言は肯定とみなすからな! ほれ雫ちゃん、連行するぜ!」
「ラファルさんはこう言っていますが、本当に嫌なら拒否してくださいね。無理強いは私も嫌ですから」
「……勝手にしろ」
「はい、では勝手にします。皆さん、行きましょう」
「みんなで楽しく……アイスなのですよ―……♪」
 不破と小山内の声に、一行の目的が決定する。
 まずは常夜を脱出して、神奈川県辺りにまで足を伸ばしてみるか。
 折角テンペストまで来たのだから、現地のアイスクリームを楽しむのもまた一興―――

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