●とりあえず、状況確認
宵待 伽羅彦(ma0748)は降神飛行Ⅱで原っぱ全体の状況を確認した。
そこから巨大ウサギによって飛ばされた木の状態を見た。
家具に使えそうならば持って行くけれども、特になければ隅に寄せる。
原っぱからプエル・ニコラス(mz0028)がいるだろう家に向かうルートを見つける。森の中に目印となるロープが引っ張ってあるのだ。
以前はなかったので「進んではいるんだな」と感心する。
家が見えるところまで来ると、黒いもくもくとした煙が上がっている。
伽羅彦は慌てて「何があったんだ」と走り寄る。
プエルの声が「煙だ、消すよ!」と聞こえた後「どーん」という音がして煙は収まった。
伽羅彦がのぞくと、黒い何かと、やり切った顔のプエル。
「プエル、大丈夫か!」
「おはよう」
「ああ、おはよう」
伽羅彦は台所で何か事件は起こったけれども、解決はされたと理解した。
「今日は家具を作ろうかと思うんだけど……」
「あ、それなら、あっち側に材料と設計図と道具も一緒にあるよ」
プエルが指さす。
「材料も道具もそろえられたんだな。あとは任せろ。一つ作ったら呼ぶから」
「うん、まとめて買ったけど、組み立てられなくて」
「……組み立て……」
組み立てるがどこまで含まれるか、悩ましいことだった。
エイリアス(ma0037)はゲートから出て、まずは依頼人のところに向かおうと考えた。
原っぱのウサギがのんびりしているのを見る。
歩き出すが、地面が異様にぼこぼこしているため足を取られそうだった。
神魔飛行をもって、ある程度の高さから落ち着いて原っぱの状況を見た。
穴の状況はウサギが掘ったにしてはおかしい。
「これが巨大なウサギさんが暴れた結果ですか……ビックリです」
どれだけ大きかったのか興味がわく。
「なぜ、一匹だけ巨大ウサギさんがいたんでしょう。不思議ですね」
ウサギがどこから来たかも謎。
「謎だらけなのかもしれません」
たどり着くと、伽羅彦やプエルと会う。
「初めまして、エイリアスと申します。微力ではございますが頑張ります」
声をかけると「よろしく」と返ってきた。
その時、プエルに見覚えがあることに気付いた。
去年、ハロウィンの人幻界で、だ。
どっちにしろ、はじめてに近いので自己紹介するのが望ましかった。
「原っぱの整地を行おうと思います」
園芸の知識を生かしつつ。
それと並行して、ウサギの観察も。
シアン(ma0076)はプエルが作業する予定の家に向かった。
(何となく、歪虚だったような記憶があるけど……)
生前の記憶を引っ張り出し考えていた。
伽羅彦やエイリアスとしゃべっているプエルを見ると、ただの少年のように見える。
(今を楽しんでいるならそれでいい)
何等かで咎人をしているのだし、シアンの知っている実はプエルじゃないのかもしれない。
何にせよ、ここで、平穏に生活しているのだから、過去は気にせず、今を楽しめばいいのかもしれない。
挨拶や自己紹介をしてから、
「道の整備をするよ。あとは、ウサギの餌付けも」
と、告げる。
「ウサギカフェかあ、完成したらお客さんとして来てみたいな」
シアンの言葉にプエルは「がんばるよ」と言った。
ただ、その表情は硬く、後に引けないという決意に似た何かがあった。
ルル・ロシェ(ma0422)が以前見たときと、原っぱは変わらない様子。変わらなくても、ウサギがのんびりしていることはいいことだ。
道ができそうな気配のロープをたどり、家にやって来た。
「手伝うよ」
他の人の擦り合わせもあって「まず道の整備をするよ」という。
余裕があれば、原っぱの整地も行うつもりだ。
「プエルは何すんの?」
「僕は、メニューの開発と練習」
ニヤリとルルは笑う。
「……なるほど。差し入れ楽しみにしてるよ」
「……がんばるよ」
プエルに妙な緊張が漂った。
●道の整備
道を通す場所は分かっているため、ルルとシアンは木の状況や足元のデコボコ具合など見ていく。
シアンは神獣たちを連れ、タクトを片手に「よし、頑張ろう」という。
ルルが「ひとつ、やってみたいことがあるんだ」と静止した。
「何かな?」
「ここのあたりの木は俺が倒す」
「じゃあ、私たちは家が近い方ですればいい?」
「俺が一旦倒した後で構わないか? 間違ってつぶしたら悪い」
「つぶす?」
「つまり【ジャイアントモード!】を使いたい」
シアンが「分かった!」と、パジャモとストールスと共に、離れた。
「じゃ、行くぜ!」
力をため、巨大化するルル。
巨大化後、【消火】や【追火】を使い、木を倒す。
命中し、倒れると、気持ちが良かった。
「ははっ、こーゆーの一回やってみたかったんだよね!」
大きな音を立てつつ、木が倒れる。
根っこもついでに掘り出したかったが、時間や道具の状況から難しかった。
「まぁ、道具使いづらそうだし、すべきことはしたからな」
地道に掘り出すしかなさそうだ――ルルのやる気が続くかどうかは別だが。
「それより、この木を運びたいけど……神魔種に力仕事は向いてないな……」
倒した木をどうするかという問題。
シアンが戻ってきて「ここからは私たちの出番だよ」という。
ルルが笑顔で応じる。
「お、マジか、助かる! さんきゅー」
「お互い様だよ」
ルルは残っている根っこを一つでも取り除こうと、つるはしやスコップを使って作業を始めた。
シアンはストールスに木を曳いてもらい、伽羅彦がいるところに運んでもらう。
この木を何に加工するにしても、道具があるところがそこだ。
パジャモのウインドゲートで飛ばせるとしても、持てるサイズかどうかはまた別。
シアンは少し砕くか切って大きさを調整する。
また、ルート上に残っている一本を切り倒すことにした。
それらの作業は、シアンはタクトや杖の力を利用して、切るまたは部分的に粉砕することにした。
時間かかるけれども、訓練にもなる。
「パジャモ、これ、持てる」
パジャモは首を上下に振った。
「伽羅彦さんのところに運んでね」
魔法をもって、移動していった。
ストールスとパジャモの力を借り、ルート上の木はどけた。
「根っこもあるんだよね……その前に休憩だね」
パジャモとストールスを休ませ、シアンは鋤やクワをもって、ルート上の土を均す。
少しでも凸凹を減らしていく。
疲れれば休憩を取りつつ、焦らず、ゆっくりと。
●原っぱ
エイリアスは神魔飛行を用いて、原っぱの状況を見る。
地理的には分かりやすい形をしているが、巨大ウサギが掘ったらしい穴があったり、木が転がっていたりする。ゲートから家の方に向かうルートのはすでに隅に寄せられている。
端に寄せられている木をまとめてしまえば、よいだろう。
森の近くに多く寄せられているので、そちらにまとめることを考えた。
「これを吹き飛ばしたとなると、巨大ウサギさんは大きさに合わせたパワフルさということですね」
通常サイズのウサギたちはウサギらしくそこにいる。
「どのくらいの数がいるのか、確認していた方がいいですね」
ウサギ名簿を作っているらしいから、数がわかればどの程度で終わるかの目安になるだろう。
森の方からウサギを数えつつ、一番遠いところにある木の横に降り立つ。
【頑張り屋さんの子うさぎ達】に貨物運搬装備を組み立て装備する。
木を載せると、森の脇まで運んでいく。
移動中、通常のウサギたちの状況を定期的にカメラに収める。
また、どういう植物が生えているか確認する。
「色々な種類が生えているみたいですね……この草は避けているようです……毒はないと思いますが……好き嫌いがあるのでしょうか?」
それは集団によって違うか、個体によって違うかわからない。
この原っぱの植生が変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
「ウサギが突然現れて、生き延びているのであれば、食べるものには困っていないのでしょうか」
ところどころ巨大ウサギの穴があるため、回避しながら通る。
「……ひょっとして、トンネルみたいになっていないのですか?」
クレーターのような穴で、深く長くはないようだ。
「でも、埋めるときは気を付けないといけませんね」
通常ウサギたちは気にせず走り回っているから。
「穴の近くに飛び散っている土をうまく均して埋めていく……感じですね」
●家具作り職人
伽羅彦は椅子とテーブル、棚を作る。
これらが客席になるわけなのだから、丁寧に。
「この数が客が入れる……プエル一人で大丈夫なのか?」
設計図に書かれた家具の数を見て、違う心配が生じる。
プエルが何を考えてウサギカフェを運営しようとしているか、実は不明だ。
「まぁ、考えがあるんだろうし、作っていこう」
まずはテーブルと椅子、棚一つずつ形を作ることを考えた。
プエルがそれを見ることで、イメージ通りかどうか理解できるだろう。
寸法を測り、印をつける。そして、のこぎりで一気に切っていく。
鑢を掛け、穴をあけて、ネジを通す。
ぐらつかないことを確認して、ニス等塗る前にプエルに確認を取る。
「プエル、どうかな? 試しに作ってみたんだけど」
台所のプエルが口を一文字に結んで現れた。
プエルの顔の違和感から「プエル、生クリームついてる」と伽羅彦は指摘する。
プエルは静かにハンカチで拭き取った。
「伽羅彦すごいね! 椅子だよ! 座れるよ! テーブルだよ! 木の匂い! 棚だよ、何か入れられるよ!」
「良かった喜んでくれて」
「うん! 僕、組み立てられなくて」
「この上にテーブルクロスとかあったらおしゃれじゃない?」
「なるほど! ウサギカフェだからウサギ柄!」
「レースでもいいかな?」
「ウサギのレースかぁ……今度見てくる」
ウサギ柄のレースはどんなものかよくわからないが、見に行くことで定まることもあろう。
テーブルなどは木製でイメージしているのは統一感がある。
色々あるけれども「プエルらしくていいのか」と納得する。
「じゃあ、まず、テーブルと椅子を優先した方がいいかな? まんべんなく作る?」
「うん! 進めばよいと思うよ」
伽羅彦に丸投げしてプエルは台所に引っ込んだ。
なお、伽羅彦はシアンが運んできた木を見て、休憩に使えるような椅子とテーブル――丸太を使ったテーブルにベンチにした。
働き始めてそれなりの時間が経った頃、プエルが「ちょっと休憩する?」と全員に声をかけた。
●休憩
出来立てのテーブルにどこからか持ってきた新聞紙をプエルは敷き、出来た料理を置いた。
新聞紙はランチョンマットの代わりらしい。
「紅茶、入れるね」
並ぶ料理は見た目フワフワのパンケーキ、消し炭ベーコン。
ルルは「料理上達したじゃん」とパンケーキを見つつ言う。
「炭になる前に救えるとなおいいな」
「うん、ちょっと目を離したら、こうなった」
伽羅彦が「目を離したら危険だ。炭になるだけじゃないし」という。
火の恐ろしさをやんわりと教えた。
「気を付ける。あと、もう一品あるんだ!」
シアンはプエルが作ったものを見て、本気でカフェするんだと感心する。
「ウサギカフェが気になって来たよ」
エイリアスは「ウサギのごはんはどうするんですか?」と尋ねる。
「原っぱに住んでもらって通ってもらうのがいいかな?」
「え?」
エイリアスはプエルの顔を見ると、まじめに答えているため、やんわりと提案はした。
「こちらに住んでもらった方が早いかもしれませんよ?」
シアンが「休日は原っぱ、仕事中は寮とか?」と言ってみる。
「なるほど」
プエルは真面目にうなずいていた。
エイリアスは調査中のことについて告げる。
「それより、原っぱでウサギが好んでいる草について、後で報告しますね」
プエルはもう一品持ってきた。
ボウルにこんもり生クリームが入っている。
「パスタ!」
全員が「パスタ!?」と声を出した。
どう考えても生クリームの塊だった。
伽羅彦が手を合わせて、
「ま、食べてみよう、いただきます」
という。
一行は口に運んだ。
ベーコンは迷いなく眉が中央による味わいだった。
パンケーキについては美味しいが、甘みは全くない。
「……この生クリーム載せるといいんじゃないか?」
伽羅彦は生クリームこんもりのボウルを見た。
エイリアスは「カルボナーラではないですね」と言いながら、パスタにフォークを入れた。
生クリームの香り、底から平たいパスタ。
プエルが自信満々に「冷製パスタの生クリーム載せ!」と説明した。
パスタは甘じょっぱかった。
パスタにはバターがしっかり味がついている。
その上に、甘い生クリーム。
「……これ、メニューに入れようと思うんだ」
シアンがやんわりと切り出す。
「おいしいけど、パスタの茹で加減に工夫がいるかな」
どうゆでたか不明だが、半生とふやけたのが混じっているのだった。
そして、一行はパスタの茹で具合について助言するのだった。
●本日のラストスパート
伽羅彦は新たに家具を作るには時間が微妙になって来たので、原っぱの穴を埋める作業に向かう。
家具作成でできた木くずも穴を埋めるのに使えると考え持参する。
ルルも道の手入れから穴埋めに入っていた。
道の方は木の周りがぼこぼこしているくらいで、さほど問題はない。
スコップを担いでやってくる。
大きな方はエイリアスが少しずつ均しているようなので、目についた小さな穴を埋めていこうと考えた。
ルルがやってくるとウサギが静かに逃げる。
「何もしねぇって」
ただ単に人馴れしていないだけだとしても、避けられるのは寂しい。
スコップで土をどけて埋める。
時折、ウサギを眺めた。
エイリアスが埋め戻しつつ、ふと、
「草より土の方が目立ってますよね……」
と、思った。
しかし、以前来た時はススキがたくさん生えていたような記憶がある。
「つまり、ここ、色々生えたり、誰かが植えたりしているんでしょうか?」
ぴょこぴょこ歩いているウサギは応えない。
無の表情でエイリアスを見上げる。
「そうでした、穴埋めでお騒がせしました」
エイリアスはしゃがむとウサギが好みそうな餌を差し出した。
ウサギはフンフンと匂いを嗅ぎ、それを食べ始める。
他のウサギもじっと見ているので、そちらにも。
伽羅彦は大まかに平らかな風の原っぱを見た。
「おーい、どの辺が足りないかな?」
声をかけられたエイリアスは応える。
「まんべんなくやりましたので、まんべんなく、平らじゃないです」
「おがくず交えて入れて土を増しておくな」
伽羅彦がちょっと掘り戻し、おがくず入れて埋めていく。
エイリアスは「雨が降るといいんでしょうね」と園芸の土の作り方から考えた。
あとは、土を均すためのローラー系の道具があるといい気がする。
「でも、原っぱなんですよね」
考えながら、気にしすぎもよくないような気がしてきた。
遊べればそれで。
シアンは道らしいものができたというところで、ウサギの餌付けにやって来た。
次の作業をするなら、準備もいりそうだし。
パジャモがウサギに恐る恐る近づくのを見ていると、頭を下にして挨拶しているようだった。
ウサギは匂いを嗅いだ後、離れていく。
パジャモはしょんぼりしていた。
「うーん、慣れてないんだね」
シアンはそーと近づく。そして、餌をなるものを差し出す。
それをウサギはショリショリと食べ始める。
餌があるのに気づいたウサギが、やってきて「ちょうだい」とアピール。
シアンは餌をあげつつ、近くまで来ている個体に触れてみる。
「かわいい……」
フワフワしている温かさ。
パジャモがくちばしでそっと触った。
ウサギは逃げなかったので、ほっとした様子をみせるのだった。
本日の進捗を見聞きし、プエルはお礼を言う。
「今日はありがと! 椅子もテーブルもできたし、棚もあるし、道もできたから、見えて来たよ!」
開店日が今後定まるかどうかは、プエルの料理やウサギ次第……かもしれない。
宵待 伽羅彦(ma0748)は降神飛行Ⅱで原っぱ全体の状況を確認した。
そこから巨大ウサギによって飛ばされた木の状態を見た。
家具に使えそうならば持って行くけれども、特になければ隅に寄せる。
原っぱからプエル・ニコラス(mz0028)がいるだろう家に向かうルートを見つける。森の中に目印となるロープが引っ張ってあるのだ。
以前はなかったので「進んではいるんだな」と感心する。
家が見えるところまで来ると、黒いもくもくとした煙が上がっている。
伽羅彦は慌てて「何があったんだ」と走り寄る。
プエルの声が「煙だ、消すよ!」と聞こえた後「どーん」という音がして煙は収まった。
伽羅彦がのぞくと、黒い何かと、やり切った顔のプエル。
「プエル、大丈夫か!」
「おはよう」
「ああ、おはよう」
伽羅彦は台所で何か事件は起こったけれども、解決はされたと理解した。
「今日は家具を作ろうかと思うんだけど……」
「あ、それなら、あっち側に材料と設計図と道具も一緒にあるよ」
プエルが指さす。
「材料も道具もそろえられたんだな。あとは任せろ。一つ作ったら呼ぶから」
「うん、まとめて買ったけど、組み立てられなくて」
「……組み立て……」
組み立てるがどこまで含まれるか、悩ましいことだった。
エイリアス(ma0037)はゲートから出て、まずは依頼人のところに向かおうと考えた。
原っぱのウサギがのんびりしているのを見る。
歩き出すが、地面が異様にぼこぼこしているため足を取られそうだった。
神魔飛行をもって、ある程度の高さから落ち着いて原っぱの状況を見た。
穴の状況はウサギが掘ったにしてはおかしい。
「これが巨大なウサギさんが暴れた結果ですか……ビックリです」
どれだけ大きかったのか興味がわく。
「なぜ、一匹だけ巨大ウサギさんがいたんでしょう。不思議ですね」
ウサギがどこから来たかも謎。
「謎だらけなのかもしれません」
たどり着くと、伽羅彦やプエルと会う。
「初めまして、エイリアスと申します。微力ではございますが頑張ります」
声をかけると「よろしく」と返ってきた。
その時、プエルに見覚えがあることに気付いた。
去年、ハロウィンの人幻界で、だ。
どっちにしろ、はじめてに近いので自己紹介するのが望ましかった。
「原っぱの整地を行おうと思います」
園芸の知識を生かしつつ。
それと並行して、ウサギの観察も。
シアン(ma0076)はプエルが作業する予定の家に向かった。
(何となく、歪虚だったような記憶があるけど……)
生前の記憶を引っ張り出し考えていた。
伽羅彦やエイリアスとしゃべっているプエルを見ると、ただの少年のように見える。
(今を楽しんでいるならそれでいい)
何等かで咎人をしているのだし、シアンの知っている実はプエルじゃないのかもしれない。
何にせよ、ここで、平穏に生活しているのだから、過去は気にせず、今を楽しめばいいのかもしれない。
挨拶や自己紹介をしてから、
「道の整備をするよ。あとは、ウサギの餌付けも」
と、告げる。
「ウサギカフェかあ、完成したらお客さんとして来てみたいな」
シアンの言葉にプエルは「がんばるよ」と言った。
ただ、その表情は硬く、後に引けないという決意に似た何かがあった。
ルル・ロシェ(ma0422)が以前見たときと、原っぱは変わらない様子。変わらなくても、ウサギがのんびりしていることはいいことだ。
道ができそうな気配のロープをたどり、家にやって来た。
「手伝うよ」
他の人の擦り合わせもあって「まず道の整備をするよ」という。
余裕があれば、原っぱの整地も行うつもりだ。
「プエルは何すんの?」
「僕は、メニューの開発と練習」
ニヤリとルルは笑う。
「……なるほど。差し入れ楽しみにしてるよ」
「……がんばるよ」
プエルに妙な緊張が漂った。
●道の整備
道を通す場所は分かっているため、ルルとシアンは木の状況や足元のデコボコ具合など見ていく。
シアンは神獣たちを連れ、タクトを片手に「よし、頑張ろう」という。
ルルが「ひとつ、やってみたいことがあるんだ」と静止した。
「何かな?」
「ここのあたりの木は俺が倒す」
「じゃあ、私たちは家が近い方ですればいい?」
「俺が一旦倒した後で構わないか? 間違ってつぶしたら悪い」
「つぶす?」
「つまり【ジャイアントモード!】を使いたい」
シアンが「分かった!」と、パジャモとストールスと共に、離れた。
「じゃ、行くぜ!」
力をため、巨大化するルル。
巨大化後、【消火】や【追火】を使い、木を倒す。
命中し、倒れると、気持ちが良かった。
「ははっ、こーゆーの一回やってみたかったんだよね!」
大きな音を立てつつ、木が倒れる。
根っこもついでに掘り出したかったが、時間や道具の状況から難しかった。
「まぁ、道具使いづらそうだし、すべきことはしたからな」
地道に掘り出すしかなさそうだ――ルルのやる気が続くかどうかは別だが。
「それより、この木を運びたいけど……神魔種に力仕事は向いてないな……」
倒した木をどうするかという問題。
シアンが戻ってきて「ここからは私たちの出番だよ」という。
ルルが笑顔で応じる。
「お、マジか、助かる! さんきゅー」
「お互い様だよ」
ルルは残っている根っこを一つでも取り除こうと、つるはしやスコップを使って作業を始めた。
シアンはストールスに木を曳いてもらい、伽羅彦がいるところに運んでもらう。
この木を何に加工するにしても、道具があるところがそこだ。
パジャモのウインドゲートで飛ばせるとしても、持てるサイズかどうかはまた別。
シアンは少し砕くか切って大きさを調整する。
また、ルート上に残っている一本を切り倒すことにした。
それらの作業は、シアンはタクトや杖の力を利用して、切るまたは部分的に粉砕することにした。
時間かかるけれども、訓練にもなる。
「パジャモ、これ、持てる」
パジャモは首を上下に振った。
「伽羅彦さんのところに運んでね」
魔法をもって、移動していった。
ストールスとパジャモの力を借り、ルート上の木はどけた。
「根っこもあるんだよね……その前に休憩だね」
パジャモとストールスを休ませ、シアンは鋤やクワをもって、ルート上の土を均す。
少しでも凸凹を減らしていく。
疲れれば休憩を取りつつ、焦らず、ゆっくりと。
●原っぱ
エイリアスは神魔飛行を用いて、原っぱの状況を見る。
地理的には分かりやすい形をしているが、巨大ウサギが掘ったらしい穴があったり、木が転がっていたりする。ゲートから家の方に向かうルートのはすでに隅に寄せられている。
端に寄せられている木をまとめてしまえば、よいだろう。
森の近くに多く寄せられているので、そちらにまとめることを考えた。
「これを吹き飛ばしたとなると、巨大ウサギさんは大きさに合わせたパワフルさということですね」
通常サイズのウサギたちはウサギらしくそこにいる。
「どのくらいの数がいるのか、確認していた方がいいですね」
ウサギ名簿を作っているらしいから、数がわかればどの程度で終わるかの目安になるだろう。
森の方からウサギを数えつつ、一番遠いところにある木の横に降り立つ。
【頑張り屋さんの子うさぎ達】に貨物運搬装備を組み立て装備する。
木を載せると、森の脇まで運んでいく。
移動中、通常のウサギたちの状況を定期的にカメラに収める。
また、どういう植物が生えているか確認する。
「色々な種類が生えているみたいですね……この草は避けているようです……毒はないと思いますが……好き嫌いがあるのでしょうか?」
それは集団によって違うか、個体によって違うかわからない。
この原っぱの植生が変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。
「ウサギが突然現れて、生き延びているのであれば、食べるものには困っていないのでしょうか」
ところどころ巨大ウサギの穴があるため、回避しながら通る。
「……ひょっとして、トンネルみたいになっていないのですか?」
クレーターのような穴で、深く長くはないようだ。
「でも、埋めるときは気を付けないといけませんね」
通常ウサギたちは気にせず走り回っているから。
「穴の近くに飛び散っている土をうまく均して埋めていく……感じですね」
●家具作り職人
伽羅彦は椅子とテーブル、棚を作る。
これらが客席になるわけなのだから、丁寧に。
「この数が客が入れる……プエル一人で大丈夫なのか?」
設計図に書かれた家具の数を見て、違う心配が生じる。
プエルが何を考えてウサギカフェを運営しようとしているか、実は不明だ。
「まぁ、考えがあるんだろうし、作っていこう」
まずはテーブルと椅子、棚一つずつ形を作ることを考えた。
プエルがそれを見ることで、イメージ通りかどうか理解できるだろう。
寸法を測り、印をつける。そして、のこぎりで一気に切っていく。
鑢を掛け、穴をあけて、ネジを通す。
ぐらつかないことを確認して、ニス等塗る前にプエルに確認を取る。
「プエル、どうかな? 試しに作ってみたんだけど」
台所のプエルが口を一文字に結んで現れた。
プエルの顔の違和感から「プエル、生クリームついてる」と伽羅彦は指摘する。
プエルは静かにハンカチで拭き取った。
「伽羅彦すごいね! 椅子だよ! 座れるよ! テーブルだよ! 木の匂い! 棚だよ、何か入れられるよ!」
「良かった喜んでくれて」
「うん! 僕、組み立てられなくて」
「この上にテーブルクロスとかあったらおしゃれじゃない?」
「なるほど! ウサギカフェだからウサギ柄!」
「レースでもいいかな?」
「ウサギのレースかぁ……今度見てくる」
ウサギ柄のレースはどんなものかよくわからないが、見に行くことで定まることもあろう。
テーブルなどは木製でイメージしているのは統一感がある。
色々あるけれども「プエルらしくていいのか」と納得する。
「じゃあ、まず、テーブルと椅子を優先した方がいいかな? まんべんなく作る?」
「うん! 進めばよいと思うよ」
伽羅彦に丸投げしてプエルは台所に引っ込んだ。
なお、伽羅彦はシアンが運んできた木を見て、休憩に使えるような椅子とテーブル――丸太を使ったテーブルにベンチにした。
働き始めてそれなりの時間が経った頃、プエルが「ちょっと休憩する?」と全員に声をかけた。
●休憩
出来立てのテーブルにどこからか持ってきた新聞紙をプエルは敷き、出来た料理を置いた。
新聞紙はランチョンマットの代わりらしい。
「紅茶、入れるね」
並ぶ料理は見た目フワフワのパンケーキ、消し炭ベーコン。
ルルは「料理上達したじゃん」とパンケーキを見つつ言う。
「炭になる前に救えるとなおいいな」
「うん、ちょっと目を離したら、こうなった」
伽羅彦が「目を離したら危険だ。炭になるだけじゃないし」という。
火の恐ろしさをやんわりと教えた。
「気を付ける。あと、もう一品あるんだ!」
シアンはプエルが作ったものを見て、本気でカフェするんだと感心する。
「ウサギカフェが気になって来たよ」
エイリアスは「ウサギのごはんはどうするんですか?」と尋ねる。
「原っぱに住んでもらって通ってもらうのがいいかな?」
「え?」
エイリアスはプエルの顔を見ると、まじめに答えているため、やんわりと提案はした。
「こちらに住んでもらった方が早いかもしれませんよ?」
シアンが「休日は原っぱ、仕事中は寮とか?」と言ってみる。
「なるほど」
プエルは真面目にうなずいていた。
エイリアスは調査中のことについて告げる。
「それより、原っぱでウサギが好んでいる草について、後で報告しますね」
プエルはもう一品持ってきた。
ボウルにこんもり生クリームが入っている。
「パスタ!」
全員が「パスタ!?」と声を出した。
どう考えても生クリームの塊だった。
伽羅彦が手を合わせて、
「ま、食べてみよう、いただきます」
という。
一行は口に運んだ。
ベーコンは迷いなく眉が中央による味わいだった。
パンケーキについては美味しいが、甘みは全くない。
「……この生クリーム載せるといいんじゃないか?」
伽羅彦は生クリームこんもりのボウルを見た。
エイリアスは「カルボナーラではないですね」と言いながら、パスタにフォークを入れた。
生クリームの香り、底から平たいパスタ。
プエルが自信満々に「冷製パスタの生クリーム載せ!」と説明した。
パスタは甘じょっぱかった。
パスタにはバターがしっかり味がついている。
その上に、甘い生クリーム。
「……これ、メニューに入れようと思うんだ」
シアンがやんわりと切り出す。
「おいしいけど、パスタの茹で加減に工夫がいるかな」
どうゆでたか不明だが、半生とふやけたのが混じっているのだった。
そして、一行はパスタの茹で具合について助言するのだった。
●本日のラストスパート
伽羅彦は新たに家具を作るには時間が微妙になって来たので、原っぱの穴を埋める作業に向かう。
家具作成でできた木くずも穴を埋めるのに使えると考え持参する。
ルルも道の手入れから穴埋めに入っていた。
道の方は木の周りがぼこぼこしているくらいで、さほど問題はない。
スコップを担いでやってくる。
大きな方はエイリアスが少しずつ均しているようなので、目についた小さな穴を埋めていこうと考えた。
ルルがやってくるとウサギが静かに逃げる。
「何もしねぇって」
ただ単に人馴れしていないだけだとしても、避けられるのは寂しい。
スコップで土をどけて埋める。
時折、ウサギを眺めた。
エイリアスが埋め戻しつつ、ふと、
「草より土の方が目立ってますよね……」
と、思った。
しかし、以前来た時はススキがたくさん生えていたような記憶がある。
「つまり、ここ、色々生えたり、誰かが植えたりしているんでしょうか?」
ぴょこぴょこ歩いているウサギは応えない。
無の表情でエイリアスを見上げる。
「そうでした、穴埋めでお騒がせしました」
エイリアスはしゃがむとウサギが好みそうな餌を差し出した。
ウサギはフンフンと匂いを嗅ぎ、それを食べ始める。
他のウサギもじっと見ているので、そちらにも。
伽羅彦は大まかに平らかな風の原っぱを見た。
「おーい、どの辺が足りないかな?」
声をかけられたエイリアスは応える。
「まんべんなくやりましたので、まんべんなく、平らじゃないです」
「おがくず交えて入れて土を増しておくな」
伽羅彦がちょっと掘り戻し、おがくず入れて埋めていく。
エイリアスは「雨が降るといいんでしょうね」と園芸の土の作り方から考えた。
あとは、土を均すためのローラー系の道具があるといい気がする。
「でも、原っぱなんですよね」
考えながら、気にしすぎもよくないような気がしてきた。
遊べればそれで。
シアンは道らしいものができたというところで、ウサギの餌付けにやって来た。
次の作業をするなら、準備もいりそうだし。
パジャモがウサギに恐る恐る近づくのを見ていると、頭を下にして挨拶しているようだった。
ウサギは匂いを嗅いだ後、離れていく。
パジャモはしょんぼりしていた。
「うーん、慣れてないんだね」
シアンはそーと近づく。そして、餌をなるものを差し出す。
それをウサギはショリショリと食べ始める。
餌があるのに気づいたウサギが、やってきて「ちょうだい」とアピール。
シアンは餌をあげつつ、近くまで来ている個体に触れてみる。
「かわいい……」
フワフワしている温かさ。
パジャモがくちばしでそっと触った。
ウサギは逃げなかったので、ほっとした様子をみせるのだった。
本日の進捗を見聞きし、プエルはお礼を言う。
「今日はありがと! 椅子もテーブルもできたし、棚もあるし、道もできたから、見えて来たよ!」
開店日が今後定まるかどうかは、プエルの料理やウサギ次第……かもしれない。




