●撤去
ポルタ・A・クエント(mz0139)からの依頼に応じた咎人達は、破壊された村での活動を開始する。
その中で伊藤 毅(ma0538)は、自身が搭乗するBD-01PT『フィーニクス』を飛行させ、上空より村の被害状況を調べ上げていた。
地上に『フィーニクス』を降ろした毅は、支給された模造紙と筆記用具を駆使し、作成した現況図を仲間達に見せる。
「上空から見えた村の損害状況はこんな感じだ、確認してくれ」
毅が作成した図によると、被害は村の中央を貫く形で広がっていた。
『では、連絡は密に、無事故無労災でいきましょう。ご安全に!』
ふたたび『フィーニクス』の操縦席に身を滑り込ませた毅は、通信術式を介して仲間達にそう呼びかけると、自身は集積場所から一番離れた場所まで機体を飛ばし、瓦礫の撤去を開始する。
「破壊された村の片づけに参りました」
更級 暁斗(ma0383)はポルタや現地にいる人達へ挨拶して回る。
「今回は依頼に応じて下さりありがとうございます」
ポルタも暁斗やこの場に来てくれた咎人達へ頭を下げる。
「ポルタさんの協力要請とあらば、応じないわけにはいきませんね」
そう請け負った暁斗は『アルテュール・ロウダー』に乗り込むと、機体を動かし始める。
「まずは建物の残骸や瓦礫の片づけから行いましょう」
機体の中より暁斗は周囲を見渡すと機体を操作し、村の中央よりやや西側に存在する瓦礫から手を付ける。
「細かくします」
暁斗の操作に従い、『アルテュール・ロウダー』はアサルトバヨネットを振るって瓦礫を斬り裂くと、続いて巨神突撃槍で突き通し、砕いていく。
細かくなったところで、暁斗は『アルテュール・ロウダー』は瓦礫や廃材の片付けへと移行し、『アルテュール・ロウダー』が細かくした瓦礫の類を仮置き場へ運び出す。
「よーし、やるよー。マルデル!」
鳳・美夕(ma0726)は自身が搭乗する『ヴァナディース・マルデル』に声をかけると、暁斗の『アルテュール・ロウダー』が活動している場所よりやや北勢方面から、瓦礫の撤去を開始した。
「これも人助けだよ! 人助けはなんだってするよー」
美夕は『ヴァナディース・マルデル』の巨神剣「ソードスタッフ」を連続で振るい、瓦礫を細かくしていく。
(慎重に。かつ手早く行うよ)
ある程度細かくしたところで美夕は機体を操作し、瓦礫を抱え込む。
『通りマース。気を付けてねー』
機体の外部スピーカーを介し、美夕は周囲にいる人達へ注意を促しながら、『ヴァナディース・マルデル』の移動力を活かし、手早く瓦礫を仮置き場まで運ぶ。
(他に人がいれば被らないように。そこから近い所で)
美夕は自身が活動する場所をそのように定め、作業を進めていく。
「あいつら……良い意味でも悪い意味でも置き土産を残してったな」
高柳 京四郎(ma0078)は、宙を飛翔する『オルフェウス・レヴィゲータ』の中でため息をつく。
悪い意味の方は、先日撃破した『ゼラー隊』のことで、良い意味の方は簒奪者ズロイ(mz0063)が残したもののことだ。
「まぁ、ズロイは変な奴だがこういう所は律儀な奴だからな……うん」
京四郎はそれ以上の思考を打ち切ると、眼前の瓦礫へと意識を引き戻す。
『オルフェウス・レヴィゲータ』の中より、瓦礫のある一帯を見渡した京四郎はオーバーブーストを起動し、ブーストを極限まで稼働することで移動力を向上させた。
そのまま京四郎は周囲にある建築物に注意しながら機体を操作し、瓦礫を抱え込む。
「常時飛行出来てワープもあるからこういう作業には持って来いだな」
ショートワープを起動することで、空間跳躍を実現した京四郎は、仮置き場へと瓦礫を迅速に運んでいく。
「ま、たまにはこういう戦闘以外の任務もええもんやろ」
モルディウス(ma0098)は『トルピオン・ドンナ』の中で、今回の任務に意欲を見せていた。
当初モルディウスは、仲間達が瓦礫撤去作業を行う間にカレー作りを進めるつもりでいたが、厨房や周囲の準備ができていないと知り、準備が終わるまでの間は瓦礫撤去作業に勤しむ方針へと切り替えている。
モルディウスの操作に従い、『トルピオン・ドンナ』は主に村の中央東寄りに存在する瓦礫から撤去を進めていく。
作業の中、モルディウスも京四郎と似たようなことを考えていたらしい。
「なんちゅーか、こう、これまで見て感じたズロイ像とか思うに奴さん、実はすごい苦労人気質やないか?」
モルディウスからの視点では、ズロイは様々な苦労を背負い込んでいるようにも見える。
――敵ながら心配になるわ。
その部分はモルディウスも内心の呟きのみに留める。
その近くでは、白玉 纒(ma0300)の駆る『ウォードス・マソン』も瓦礫撤去作業を始めている。
「ふっふっふ、こんな事もあろうかと、というやつっす」
纒、機体の中でドヤ顔を見せる。
纒が搭乗する『ウォードス・マソン』は機体の色を暗緑黄色に変更し、肩の側面や脛の部分も可動部への装甲を追加したり、延長大型化を行ったりするなど、様々な改修が施されている。
「作業用装備もあったりするので、こういう仕事だってこなせるっす」
纒の言う通り、この機体が纏う平面の大型装甲は、もともと土木作業に使用することも想定した追加装備でもあるようだ。
「同じ巨神機でも、壊すだけじゃないってところを見せるっす」
――住民を助けたい。
――巨神機が壊すだけじゃないとアピールしたい。
纒はそう願いながら機体と装備を操作し、これから炊き出しを行う場所の周囲から順次瓦礫を押し出し、運んでいく。
その一方で、纒は村を破壊した『ゼラー隊』に対しては、『出会ったら、笑顔で殴りたい』と思うほどの怒りを抱いていた。
「よーし、がれき撤去なら任せてくれよ」
歩夢(ma0694)も作業を請け負うと、自身の『アルテュール・パラディン』に搭乗する。
「アルテュール・パラディン。歩夢、出る!」
歩夢は機体の中よりそう叫ぶと、『アルテュール・パラディン』を村の中央よりやや東側へと進ませる。
歩夢は仮置き場の周囲から瓦礫を撤去することで、仮置き場周囲が通りやすくなるよう努めていた。
『少しでも力になれる様に動くつもりだよ』
機体の外部スピーカーを介し、歩夢は周囲で作業を見守る村人達を安心させるため、声をかけることも忘れない。
『……集積所があっちだから、この辺りからお掃除だね』
『ヴァナディース・黒曜』を駆る鈴鳴 響(ma0317)は通信術式を介し、『グランドウォードス・黒剛』を駆る麻生 遊夜(ma0279)とのやり取りを交わす。
『それじゃ俺達はこの辺りを担当しよう。さぁ、お片付けの時間だ!』
遊夜も響の『ヴァナディース・黒曜』がいる場所から始めることを決め、共に瓦礫の撤去へと動く。
「……さぁ黒曜、出番だよー」
響は『ヴァナディース・黒曜』に声をかけると、遊夜の『グランドウォードス・黒剛』についていく形で瓦礫を撤去し始める。
響の操作に従い、『ヴァナディース・黒曜』は巨神剣「ソードスタッフ」を駆使して瓦礫の細分化や運び出しを行い、時には三又槍「アストラビ」を使って瓦礫を持ち上げ、仮置き場まで運んでいく。
――ユーヤを筆頭に皆と分担して効率良く処理と運搬をしたいね。
遊夜が操作する『』も、巨神剣「ソードスタッフ」を振るって瓦礫の大きさを整えたり、「ソードスタッフ」をスコップ代わりにして瓦礫の掘り出しを行ったりして、その場より瓦礫を撤去していく。
『動きは遅いが出力は最高峰だからな、この程度の瓦礫なら楽勝だ』
――出来れば整地もしときたいな。
内心遊夜がそのようなことを考えていると、響から通信術式を介して要請が届く。
『……ん。ユーヤ……こっちの瓦礫、運んでおく。……そっちは、お願いね』
遊夜と響は通信術式を介してやり取りを交わし、手分けして瓦礫の撤去を進める。
『白玉さんやモッさんも張り切ってんな、良い事だ』
作業の中、遊夜は纒の『ウォードス・マソン』やモルディウスの『トルピオン・ドンナ』が効率よく瓦礫を撤去している姿を見たのか、通信術式を介しそのような呟きが響のもとへ届く。
遊夜からの通信術式を聞いた響は、自身も纒やモルディウス達がいる方角へと視線を向けて現状を確認する。
『……ん、これだけ居れば……終わるのも早い、かな?』
通信術式を介して響は遊夜に賛意を示すと、そのまま響と遊夜は瓦礫の撤去作業を再開する。
「ズロイさまらしいですね。今回は好意に甘えさせていただきます」
そして『アルテュール・アマテラス』を駆る川澄 静(ma0164)は、今回ズロイが村に残した『置き土産』を素直に受け取ることにした。
「まずは巨神機で片付けましょうか。封神演武で飛行も使えますよ」
既に静は『アルテュール・アマテラス』の中で、封神演武へのカウントを続けていた。
カウントを終えたところで静は封神演武を起動し、機体を宙へ飛翔させる。
「まず大きくて重い物から片付けましょう」
静は村の炊き出しが行われる予定の場所に近いところから、手を付け始める。
静はその中でも大きめの瓦礫がある場所へ機体を降ろすと、神器「草薙剣」などを駆使して瓦礫を運ぶことのできるサイズへと切り揃える。
そして封神演武が効果を発揮している間に、静は『アルテュール・アマテラス』に瓦礫を抱えこませてから、仮置き場へと運んでいく。
「最後に普通の状態で、細かな部分も丁寧に片付けますね」
なお静は大きめの瓦礫を運び終えた後、機体を降りて巨大化などを駆使し、小型の瓦礫も撤去するつもりだった。
●調理中
毅は『フィーニクス』を操作し、ディメンションカッターを駆使して瓦礫を手ごろな大きさに切り分けると、『フィーニクス』に運ばせる形で仮置き場と瓦礫の散乱する場所を往復する。
その一方で毅は飛行している間、『フィーニクス』の中より周囲を見渡し、撤去作業の現状を確認していた。
「無駄のない形で作業を進行させよう」
機体の中より毅は手が足りないと思われる場所を探し、その場所へ『フィーニクス』を降下させると、撤去作業を支援する。
やや離れた場所では、機体を降りた静が巨大化スキルなどを駆使して細かい瓦礫の撤去を続けていた。
そして瓦礫の片付けが完了したところで、咎人達は機体から降りると炊き出しへと移行し、静も後に続く。
なお静は作業の中で、自然物会話スキルを駆使して周囲にある石などに、瓦礫を片づけ忘れた場所がないか聞いていたが、答えは得られなかったようだ。
「瓦礫の撤去は無事に完了。お疲れさまでした」
瓦礫の撤去完了を確認した毅は機体から降り、仲間達を労う。
現場にある食材をもとにして、咎人達が主に作る料理はカレーだった。
毅も仲間達と共に、できる範囲のことを行い始める。
「住民への気遣いはズロイさまらしいですね。ありがたく頂きます」
静はズロイがこの村へ残した食材を使うことに抵抗はない。
モルディウスも、目利きスキルなどを駆使して食材の中で悪いものがないかを調べていた。
「まあ、戦場で顔合わしたら殺しあう仲なんは変わらんけどなー」
そのあたりはモルディウスも割り切っている。
問題ないことを確認した上で、モルディウスは借りた調理器具や料理レシピ本、料理スキルを駆使して具材となるものを細かく刻んでいく。
「家事ならお任せくださいませ! けっこう得意なのですよ」
静は厨房にある調理器具と家事スキルを駆使して、カレーが出来上がるまでに必要な作業を引き受ける。
「下拵え程度のことしかできませんが、カレー作りを手伝います」
暁斗も野菜の皮をむき、切り分けた肉と一緒に大型の鍋へ投入する。
今回は大人数のため、下ごしらえの必要な食材は大量に存在していたが、静や暁斗は手際よく鍋に投入していく。
「味付け等は、調理が得意な方にお任せしたいのですが……」
丁寧にアクを取りながら、暁斗はより上手な人に後の調理を任せることにした。
「ポルタさまもよかったら一緒にお料理しませんか?」
ここで静は、近くを通りかかったポルタに声をかける。
「こちらの作業が終わり次第、参ります」
現在ポルタは村の各地で兵士達と共に様々な作業を行っていたので、その後でならと応じた。
やや離れたところでは、京四郎が料理スキルや家事スキルをフル活用し、丁寧な仕上げを心掛けながら大量の食材をさばいていた。
「戦闘用神威もこんな感じに日常でも役立つものさ」
なお京四郎はNトランサーを発動してナイトメアの力を開放すると、青白いオーラや残像を纏い、作業を進めている。
「……材料の数も多いしな」
作業の中、京四郎は本音ともつかない呟きを漏らす。
「カレー♪ カレー♪ 美味しいカレーぇ♪」
その間にも美夕は料理スキルを駆使して食材を調理し、カレーを作り上げていく。
――できれば味にも拘りたいところだね。
そのように考えた美夕は、食べる人の状態にも目を向ける。
「肉体労働の後だし少し濃い目につくっていこうかな」
そのように考えた美夕は、自身が作るカレーの分は、少し味付けを濃くする形に整える。
「食べて元気になる様に。頑張って作るからね!」
周囲で作業を見守る村人達に、美夕は笑顔で語りかける。
(気に入ってもらえたなら、レシピは書き残していこう)
美夕は自分達の作業が終わった後、自分が作った料理のレシピをこの村に残すつもりだった。
「がんばってたくさん作るから皆、食べてねー♪」
美夕は村人達に笑顔を振りまきながら調理を進める近くでは、纒が別の料理を作り始めていた。
「パンもいいけど、カレーにはこっち(ナン)も良いと思うっすよ」
いま纒が作っているのは『ナン』というパンの一種だ。
纒が持つ知識の中では、このナンもカレーに添えることのできる食べ物で、材料もこの場に揃っている。
「普通に作るのもいいっすけど。ここはゴマやチーズ入りのナンも一緒に用意するっす」
纒は普通に作る以外にも、チーズなど様々な食材を入れたナンも作成していく。
作り方自体は割とシンプルなため、纒は効率よくナンを作っていく。
やがて各所の作業を終わらせたポルタも厨房に到着し、静はポルタが作る分の料理を手伝う。
「ではお教えします」
静が家事スキルを駆使しながら、ポルタの調理をサポートする横で、遊夜や響は互いに協力し合う形で、カレー作りを進めていた。
「これでも料理は得意でな。特にカレーは作り慣れている。任せてくれ」
遊夜は響と一緒に丁寧なアク取りを続けながら、料理スキルと秘伝のカレーレシピも駆使することで、カレーを美味に仕上げていく。
「干し肉にフライシュケーゼ(茹でソーセージの一種)も追加したものを提供したいところだな」
旨味とボリュームを増やすことも兼ねて、遊夜は投入する具材を増やす。
「……ん、ボク達のカレーは……美味しいよ」
響も家事スキルや秘伝のカレーレシピを駆使して遊夜が作るカレーに手を加え、美味しいものができるよう心掛ける。
「……ん。隠し味も……厳選してるから」
――麻生家式カレーがボクの味なの!
隠し味として本命チョコの一部を使うことで、響はカレーのコクを深いものにしていく。
なお料理に変なアレンジを加えないよう、モルディウスは目を光らせていたが、そうした事態は発生しなかったため、モルディウスも自身が作るカレーを完成させた。
●実食
そして咎人達がカレーを完成させたところで、村の住民達が厨房前に並び始める。
「配膳を手伝います」
暁斗は前に並んだ村人達へカレーを配る。
受け取った村人達は食事処としてなる場所に向かい、席につくとカレーを食べ始める。
一瞬、その場が静まり返った。
村人達は口の中にカレーを入れたまま、静止していた。
時間にして、数秒経った頃だろうか。
村人達の表情が一様に緩み、『ふおお』や『ほおお』ともつかない声が漏れる。
正気にかえった村人達からカレーを食す動きが再開し、食事場所が喧騒に満ちていく。
咎人達の作ったカレーは、それほど美味だったようだ。
「よ、カレーもらえるか?」
カレー作りを手伝っていた歩夢は、他の人が作ったカレーを貰いにいく。
(一皿味わって味を説明できるようにしてから、配布を担うとしよう)
そんな算段をつけながら、歩夢は村人達が座る場所に近いところで席に着くと、実食へと移る。
「お、いいね、旨いじゃん」
歩夢が食したカレーは辛みがおさえられていて食べやすく、具材が持つそれぞれの旨さが複雑に絡み合い、美味を形成していた。
「ちょっともらうぜ。食いそびれているやついないか見てくるわ」
一通り食した歩夢は、鋭敏視覚スキルを駆使して周囲を見渡す。
そして未だ食していないと思われる村人達を発見すると、その場所を覚えた歩夢はカレーのある場所へと戻り、もらい受けた数人分のカレーを運ぶ。
「食わないと力でないよな。うまいカレーあるぜー」
歩夢は村人達のもとへ足を運んでは、そう言ってカレーを提供してまわり、全員にカレーが行き渡るよう配膳を続ける。
「今日を必死に生き抜き、明日へとつなげようとする人達の一助になれば幸いだ」
全員に配り終えたところで、歩夢は村人達に対しそのような言葉を送っていた。
そして遊夜と響も、自身の作ったカレーを味わい始めている。
今遊夜と響が食しているカレーは、コクが深い一方で辛さはマイルドになり、ほのかな甘みも加わることで、高級感もある仕上がりとなっている。
「うむ、美味い! 仕事の後、そして皆で作った料理……格別だ!」
「……ん。ふふっ……皆で頑張ったものね」
遊夜が微笑を浮かべてカレーを口に運べば、響も微笑で応じると、遊夜に甘える仕草を見せながら、一緒にカレーを食す。
その近くでは、纒が自身の作ったナンを無理強いしない範囲で村人達に提供し、自身もナンと共にカレーを食していた。
「モチモチして食べ応えあるっす」
今回作ったカレーとナンの相性は良く、纒が一口大にちぎったナンでカレーをすくい、一緒に食せばカレーの辛みとナンの甘味が合わさり、纒の舌に美味を教えてくる。
「ご一緒に食べてもよろしいでしょうか?」
暁斗は村人達の中へと入り込むと、村人達と一緒になってカレーを食べ始める。
「皆さんのお話を聞きたいです」
ある程度カレーを食したところで、暁斗は村人達との交流を始めた。
やがて暁斗と村人達の間で会話が弾み、互いに交流を深めていく。
そしてポルタも席につき、周囲にいる村人達と同じカレーを食べ始めた。
それまで京四郎もカレーを食べていたが、ポルタが近くに来たことに気付いたため、あることを聞いてみる。
京四郎は話術スキルも駆使しながら、気になったことをポルタに尋ねるつもりだった。
「……ところで、ポルタは普段は普通に料理したりするんだろうか?」
京四郎からの問いに対し、ポルタはこう応じる。
「必要に応じて、というところですね」
近くでカレーを食べながら、京四郎とポルタの会話を見ていたモルディウスは、静と共にカレーを作っていたポルタの様子を思い出す。
(ポルタ嬢の料理、なぁ……。なんかこう、ダメそうなイメージやな?)
モルディウスは本人が聞いたら怒りそうなことを内心考えていたが、その場では沈黙を保っていた。
●完了
村人達全員が食事を終え、食休みも十分取ったところで咎人達への依頼は完了扱いとなる。
「ポルタさん。今回もお役に立てたでしょうか?」
暁斗は帰還する前に、ポルタにそんな伺いを立てていた。
「もちろんです。今回は本当にありがとうございました」
ポルタも暁斗にそう答え、村人達も暁斗や他の咎人達1人1人に感謝を伝えてきた。
「気に入ってもらえたみたいだから、あたしのレシピを残していくよ」
美夕は支給された紙と筆記用具を使い、自身が作ったカレーのレシピを書き上げ。村人達へ進呈していた。
帰還する途中、遊夜と響はズロイ達について意見をかわしている。
「痛い出費だろうし苦労しているだろうに、相変わらず紳士だな」
遊夜が苦笑気味にそう言うと、響は含み笑いで応じる。
「……ん。その分原因になった……あの人達は、大変だろうね」
響の言う『あの人達』とは村を破壊した『ゼラー隊』を指すが、2人の話を耳にしたモルディウスもズロイのことを脳裏に浮かべる。
(敵対する必要がない時なら、軽く一杯酌み交わしたい気がするな)
モルディウス内心そんなことも考えながら、苦笑を浮かべて帰路についた。
ポルタ・A・クエント(mz0139)からの依頼に応じた咎人達は、破壊された村での活動を開始する。
その中で伊藤 毅(ma0538)は、自身が搭乗するBD-01PT『フィーニクス』を飛行させ、上空より村の被害状況を調べ上げていた。
地上に『フィーニクス』を降ろした毅は、支給された模造紙と筆記用具を駆使し、作成した現況図を仲間達に見せる。
「上空から見えた村の損害状況はこんな感じだ、確認してくれ」
毅が作成した図によると、被害は村の中央を貫く形で広がっていた。
『では、連絡は密に、無事故無労災でいきましょう。ご安全に!』
ふたたび『フィーニクス』の操縦席に身を滑り込ませた毅は、通信術式を介して仲間達にそう呼びかけると、自身は集積場所から一番離れた場所まで機体を飛ばし、瓦礫の撤去を開始する。
「破壊された村の片づけに参りました」
更級 暁斗(ma0383)はポルタや現地にいる人達へ挨拶して回る。
「今回は依頼に応じて下さりありがとうございます」
ポルタも暁斗やこの場に来てくれた咎人達へ頭を下げる。
「ポルタさんの協力要請とあらば、応じないわけにはいきませんね」
そう請け負った暁斗は『アルテュール・ロウダー』に乗り込むと、機体を動かし始める。
「まずは建物の残骸や瓦礫の片づけから行いましょう」
機体の中より暁斗は周囲を見渡すと機体を操作し、村の中央よりやや西側に存在する瓦礫から手を付ける。
「細かくします」
暁斗の操作に従い、『アルテュール・ロウダー』はアサルトバヨネットを振るって瓦礫を斬り裂くと、続いて巨神突撃槍で突き通し、砕いていく。
細かくなったところで、暁斗は『アルテュール・ロウダー』は瓦礫や廃材の片付けへと移行し、『アルテュール・ロウダー』が細かくした瓦礫の類を仮置き場へ運び出す。
「よーし、やるよー。マルデル!」
鳳・美夕(ma0726)は自身が搭乗する『ヴァナディース・マルデル』に声をかけると、暁斗の『アルテュール・ロウダー』が活動している場所よりやや北勢方面から、瓦礫の撤去を開始した。
「これも人助けだよ! 人助けはなんだってするよー」
美夕は『ヴァナディース・マルデル』の巨神剣「ソードスタッフ」を連続で振るい、瓦礫を細かくしていく。
(慎重に。かつ手早く行うよ)
ある程度細かくしたところで美夕は機体を操作し、瓦礫を抱え込む。
『通りマース。気を付けてねー』
機体の外部スピーカーを介し、美夕は周囲にいる人達へ注意を促しながら、『ヴァナディース・マルデル』の移動力を活かし、手早く瓦礫を仮置き場まで運ぶ。
(他に人がいれば被らないように。そこから近い所で)
美夕は自身が活動する場所をそのように定め、作業を進めていく。
「あいつら……良い意味でも悪い意味でも置き土産を残してったな」
高柳 京四郎(ma0078)は、宙を飛翔する『オルフェウス・レヴィゲータ』の中でため息をつく。
悪い意味の方は、先日撃破した『ゼラー隊』のことで、良い意味の方は簒奪者ズロイ(mz0063)が残したもののことだ。
「まぁ、ズロイは変な奴だがこういう所は律儀な奴だからな……うん」
京四郎はそれ以上の思考を打ち切ると、眼前の瓦礫へと意識を引き戻す。
『オルフェウス・レヴィゲータ』の中より、瓦礫のある一帯を見渡した京四郎はオーバーブーストを起動し、ブーストを極限まで稼働することで移動力を向上させた。
そのまま京四郎は周囲にある建築物に注意しながら機体を操作し、瓦礫を抱え込む。
「常時飛行出来てワープもあるからこういう作業には持って来いだな」
ショートワープを起動することで、空間跳躍を実現した京四郎は、仮置き場へと瓦礫を迅速に運んでいく。
「ま、たまにはこういう戦闘以外の任務もええもんやろ」
モルディウス(ma0098)は『トルピオン・ドンナ』の中で、今回の任務に意欲を見せていた。
当初モルディウスは、仲間達が瓦礫撤去作業を行う間にカレー作りを進めるつもりでいたが、厨房や周囲の準備ができていないと知り、準備が終わるまでの間は瓦礫撤去作業に勤しむ方針へと切り替えている。
モルディウスの操作に従い、『トルピオン・ドンナ』は主に村の中央東寄りに存在する瓦礫から撤去を進めていく。
作業の中、モルディウスも京四郎と似たようなことを考えていたらしい。
「なんちゅーか、こう、これまで見て感じたズロイ像とか思うに奴さん、実はすごい苦労人気質やないか?」
モルディウスからの視点では、ズロイは様々な苦労を背負い込んでいるようにも見える。
――敵ながら心配になるわ。
その部分はモルディウスも内心の呟きのみに留める。
その近くでは、白玉 纒(ma0300)の駆る『ウォードス・マソン』も瓦礫撤去作業を始めている。
「ふっふっふ、こんな事もあろうかと、というやつっす」
纒、機体の中でドヤ顔を見せる。
纒が搭乗する『ウォードス・マソン』は機体の色を暗緑黄色に変更し、肩の側面や脛の部分も可動部への装甲を追加したり、延長大型化を行ったりするなど、様々な改修が施されている。
「作業用装備もあったりするので、こういう仕事だってこなせるっす」
纒の言う通り、この機体が纏う平面の大型装甲は、もともと土木作業に使用することも想定した追加装備でもあるようだ。
「同じ巨神機でも、壊すだけじゃないってところを見せるっす」
――住民を助けたい。
――巨神機が壊すだけじゃないとアピールしたい。
纒はそう願いながら機体と装備を操作し、これから炊き出しを行う場所の周囲から順次瓦礫を押し出し、運んでいく。
その一方で、纒は村を破壊した『ゼラー隊』に対しては、『出会ったら、笑顔で殴りたい』と思うほどの怒りを抱いていた。
「よーし、がれき撤去なら任せてくれよ」
歩夢(ma0694)も作業を請け負うと、自身の『アルテュール・パラディン』に搭乗する。
「アルテュール・パラディン。歩夢、出る!」
歩夢は機体の中よりそう叫ぶと、『アルテュール・パラディン』を村の中央よりやや東側へと進ませる。
歩夢は仮置き場の周囲から瓦礫を撤去することで、仮置き場周囲が通りやすくなるよう努めていた。
『少しでも力になれる様に動くつもりだよ』
機体の外部スピーカーを介し、歩夢は周囲で作業を見守る村人達を安心させるため、声をかけることも忘れない。
『……集積所があっちだから、この辺りからお掃除だね』
『ヴァナディース・黒曜』を駆る鈴鳴 響(ma0317)は通信術式を介し、『グランドウォードス・黒剛』を駆る麻生 遊夜(ma0279)とのやり取りを交わす。
『それじゃ俺達はこの辺りを担当しよう。さぁ、お片付けの時間だ!』
遊夜も響の『ヴァナディース・黒曜』がいる場所から始めることを決め、共に瓦礫の撤去へと動く。
「……さぁ黒曜、出番だよー」
響は『ヴァナディース・黒曜』に声をかけると、遊夜の『グランドウォードス・黒剛』についていく形で瓦礫を撤去し始める。
響の操作に従い、『ヴァナディース・黒曜』は巨神剣「ソードスタッフ」を駆使して瓦礫の細分化や運び出しを行い、時には三又槍「アストラビ」を使って瓦礫を持ち上げ、仮置き場まで運んでいく。
――ユーヤを筆頭に皆と分担して効率良く処理と運搬をしたいね。
遊夜が操作する『』も、巨神剣「ソードスタッフ」を振るって瓦礫の大きさを整えたり、「ソードスタッフ」をスコップ代わりにして瓦礫の掘り出しを行ったりして、その場より瓦礫を撤去していく。
『動きは遅いが出力は最高峰だからな、この程度の瓦礫なら楽勝だ』
――出来れば整地もしときたいな。
内心遊夜がそのようなことを考えていると、響から通信術式を介して要請が届く。
『……ん。ユーヤ……こっちの瓦礫、運んでおく。……そっちは、お願いね』
遊夜と響は通信術式を介してやり取りを交わし、手分けして瓦礫の撤去を進める。
『白玉さんやモッさんも張り切ってんな、良い事だ』
作業の中、遊夜は纒の『ウォードス・マソン』やモルディウスの『トルピオン・ドンナ』が効率よく瓦礫を撤去している姿を見たのか、通信術式を介しそのような呟きが響のもとへ届く。
遊夜からの通信術式を聞いた響は、自身も纒やモルディウス達がいる方角へと視線を向けて現状を確認する。
『……ん、これだけ居れば……終わるのも早い、かな?』
通信術式を介して響は遊夜に賛意を示すと、そのまま響と遊夜は瓦礫の撤去作業を再開する。
「ズロイさまらしいですね。今回は好意に甘えさせていただきます」
そして『アルテュール・アマテラス』を駆る川澄 静(ma0164)は、今回ズロイが村に残した『置き土産』を素直に受け取ることにした。
「まずは巨神機で片付けましょうか。封神演武で飛行も使えますよ」
既に静は『アルテュール・アマテラス』の中で、封神演武へのカウントを続けていた。
カウントを終えたところで静は封神演武を起動し、機体を宙へ飛翔させる。
「まず大きくて重い物から片付けましょう」
静は村の炊き出しが行われる予定の場所に近いところから、手を付け始める。
静はその中でも大きめの瓦礫がある場所へ機体を降ろすと、神器「草薙剣」などを駆使して瓦礫を運ぶことのできるサイズへと切り揃える。
そして封神演武が効果を発揮している間に、静は『アルテュール・アマテラス』に瓦礫を抱えこませてから、仮置き場へと運んでいく。
「最後に普通の状態で、細かな部分も丁寧に片付けますね」
なお静は大きめの瓦礫を運び終えた後、機体を降りて巨大化などを駆使し、小型の瓦礫も撤去するつもりだった。
●調理中
毅は『フィーニクス』を操作し、ディメンションカッターを駆使して瓦礫を手ごろな大きさに切り分けると、『フィーニクス』に運ばせる形で仮置き場と瓦礫の散乱する場所を往復する。
その一方で毅は飛行している間、『フィーニクス』の中より周囲を見渡し、撤去作業の現状を確認していた。
「無駄のない形で作業を進行させよう」
機体の中より毅は手が足りないと思われる場所を探し、その場所へ『フィーニクス』を降下させると、撤去作業を支援する。
やや離れた場所では、機体を降りた静が巨大化スキルなどを駆使して細かい瓦礫の撤去を続けていた。
そして瓦礫の片付けが完了したところで、咎人達は機体から降りると炊き出しへと移行し、静も後に続く。
なお静は作業の中で、自然物会話スキルを駆使して周囲にある石などに、瓦礫を片づけ忘れた場所がないか聞いていたが、答えは得られなかったようだ。
「瓦礫の撤去は無事に完了。お疲れさまでした」
瓦礫の撤去完了を確認した毅は機体から降り、仲間達を労う。
現場にある食材をもとにして、咎人達が主に作る料理はカレーだった。
毅も仲間達と共に、できる範囲のことを行い始める。
「住民への気遣いはズロイさまらしいですね。ありがたく頂きます」
静はズロイがこの村へ残した食材を使うことに抵抗はない。
モルディウスも、目利きスキルなどを駆使して食材の中で悪いものがないかを調べていた。
「まあ、戦場で顔合わしたら殺しあう仲なんは変わらんけどなー」
そのあたりはモルディウスも割り切っている。
問題ないことを確認した上で、モルディウスは借りた調理器具や料理レシピ本、料理スキルを駆使して具材となるものを細かく刻んでいく。
「家事ならお任せくださいませ! けっこう得意なのですよ」
静は厨房にある調理器具と家事スキルを駆使して、カレーが出来上がるまでに必要な作業を引き受ける。
「下拵え程度のことしかできませんが、カレー作りを手伝います」
暁斗も野菜の皮をむき、切り分けた肉と一緒に大型の鍋へ投入する。
今回は大人数のため、下ごしらえの必要な食材は大量に存在していたが、静や暁斗は手際よく鍋に投入していく。
「味付け等は、調理が得意な方にお任せしたいのですが……」
丁寧にアクを取りながら、暁斗はより上手な人に後の調理を任せることにした。
「ポルタさまもよかったら一緒にお料理しませんか?」
ここで静は、近くを通りかかったポルタに声をかける。
「こちらの作業が終わり次第、参ります」
現在ポルタは村の各地で兵士達と共に様々な作業を行っていたので、その後でならと応じた。
やや離れたところでは、京四郎が料理スキルや家事スキルをフル活用し、丁寧な仕上げを心掛けながら大量の食材をさばいていた。
「戦闘用神威もこんな感じに日常でも役立つものさ」
なお京四郎はNトランサーを発動してナイトメアの力を開放すると、青白いオーラや残像を纏い、作業を進めている。
「……材料の数も多いしな」
作業の中、京四郎は本音ともつかない呟きを漏らす。
「カレー♪ カレー♪ 美味しいカレーぇ♪」
その間にも美夕は料理スキルを駆使して食材を調理し、カレーを作り上げていく。
――できれば味にも拘りたいところだね。
そのように考えた美夕は、食べる人の状態にも目を向ける。
「肉体労働の後だし少し濃い目につくっていこうかな」
そのように考えた美夕は、自身が作るカレーの分は、少し味付けを濃くする形に整える。
「食べて元気になる様に。頑張って作るからね!」
周囲で作業を見守る村人達に、美夕は笑顔で語りかける。
(気に入ってもらえたなら、レシピは書き残していこう)
美夕は自分達の作業が終わった後、自分が作った料理のレシピをこの村に残すつもりだった。
「がんばってたくさん作るから皆、食べてねー♪」
美夕は村人達に笑顔を振りまきながら調理を進める近くでは、纒が別の料理を作り始めていた。
「パンもいいけど、カレーにはこっち(ナン)も良いと思うっすよ」
いま纒が作っているのは『ナン』というパンの一種だ。
纒が持つ知識の中では、このナンもカレーに添えることのできる食べ物で、材料もこの場に揃っている。
「普通に作るのもいいっすけど。ここはゴマやチーズ入りのナンも一緒に用意するっす」
纒は普通に作る以外にも、チーズなど様々な食材を入れたナンも作成していく。
作り方自体は割とシンプルなため、纒は効率よくナンを作っていく。
やがて各所の作業を終わらせたポルタも厨房に到着し、静はポルタが作る分の料理を手伝う。
「ではお教えします」
静が家事スキルを駆使しながら、ポルタの調理をサポートする横で、遊夜や響は互いに協力し合う形で、カレー作りを進めていた。
「これでも料理は得意でな。特にカレーは作り慣れている。任せてくれ」
遊夜は響と一緒に丁寧なアク取りを続けながら、料理スキルと秘伝のカレーレシピも駆使することで、カレーを美味に仕上げていく。
「干し肉にフライシュケーゼ(茹でソーセージの一種)も追加したものを提供したいところだな」
旨味とボリュームを増やすことも兼ねて、遊夜は投入する具材を増やす。
「……ん、ボク達のカレーは……美味しいよ」
響も家事スキルや秘伝のカレーレシピを駆使して遊夜が作るカレーに手を加え、美味しいものができるよう心掛ける。
「……ん。隠し味も……厳選してるから」
――麻生家式カレーがボクの味なの!
隠し味として本命チョコの一部を使うことで、響はカレーのコクを深いものにしていく。
なお料理に変なアレンジを加えないよう、モルディウスは目を光らせていたが、そうした事態は発生しなかったため、モルディウスも自身が作るカレーを完成させた。
●実食
そして咎人達がカレーを完成させたところで、村の住民達が厨房前に並び始める。
「配膳を手伝います」
暁斗は前に並んだ村人達へカレーを配る。
受け取った村人達は食事処としてなる場所に向かい、席につくとカレーを食べ始める。
一瞬、その場が静まり返った。
村人達は口の中にカレーを入れたまま、静止していた。
時間にして、数秒経った頃だろうか。
村人達の表情が一様に緩み、『ふおお』や『ほおお』ともつかない声が漏れる。
正気にかえった村人達からカレーを食す動きが再開し、食事場所が喧騒に満ちていく。
咎人達の作ったカレーは、それほど美味だったようだ。
「よ、カレーもらえるか?」
カレー作りを手伝っていた歩夢は、他の人が作ったカレーを貰いにいく。
(一皿味わって味を説明できるようにしてから、配布を担うとしよう)
そんな算段をつけながら、歩夢は村人達が座る場所に近いところで席に着くと、実食へと移る。
「お、いいね、旨いじゃん」
歩夢が食したカレーは辛みがおさえられていて食べやすく、具材が持つそれぞれの旨さが複雑に絡み合い、美味を形成していた。
「ちょっともらうぜ。食いそびれているやついないか見てくるわ」
一通り食した歩夢は、鋭敏視覚スキルを駆使して周囲を見渡す。
そして未だ食していないと思われる村人達を発見すると、その場所を覚えた歩夢はカレーのある場所へと戻り、もらい受けた数人分のカレーを運ぶ。
「食わないと力でないよな。うまいカレーあるぜー」
歩夢は村人達のもとへ足を運んでは、そう言ってカレーを提供してまわり、全員にカレーが行き渡るよう配膳を続ける。
「今日を必死に生き抜き、明日へとつなげようとする人達の一助になれば幸いだ」
全員に配り終えたところで、歩夢は村人達に対しそのような言葉を送っていた。
そして遊夜と響も、自身の作ったカレーを味わい始めている。
今遊夜と響が食しているカレーは、コクが深い一方で辛さはマイルドになり、ほのかな甘みも加わることで、高級感もある仕上がりとなっている。
「うむ、美味い! 仕事の後、そして皆で作った料理……格別だ!」
「……ん。ふふっ……皆で頑張ったものね」
遊夜が微笑を浮かべてカレーを口に運べば、響も微笑で応じると、遊夜に甘える仕草を見せながら、一緒にカレーを食す。
その近くでは、纒が自身の作ったナンを無理強いしない範囲で村人達に提供し、自身もナンと共にカレーを食していた。
「モチモチして食べ応えあるっす」
今回作ったカレーとナンの相性は良く、纒が一口大にちぎったナンでカレーをすくい、一緒に食せばカレーの辛みとナンの甘味が合わさり、纒の舌に美味を教えてくる。
「ご一緒に食べてもよろしいでしょうか?」
暁斗は村人達の中へと入り込むと、村人達と一緒になってカレーを食べ始める。
「皆さんのお話を聞きたいです」
ある程度カレーを食したところで、暁斗は村人達との交流を始めた。
やがて暁斗と村人達の間で会話が弾み、互いに交流を深めていく。
そしてポルタも席につき、周囲にいる村人達と同じカレーを食べ始めた。
それまで京四郎もカレーを食べていたが、ポルタが近くに来たことに気付いたため、あることを聞いてみる。
京四郎は話術スキルも駆使しながら、気になったことをポルタに尋ねるつもりだった。
「……ところで、ポルタは普段は普通に料理したりするんだろうか?」
京四郎からの問いに対し、ポルタはこう応じる。
「必要に応じて、というところですね」
近くでカレーを食べながら、京四郎とポルタの会話を見ていたモルディウスは、静と共にカレーを作っていたポルタの様子を思い出す。
(ポルタ嬢の料理、なぁ……。なんかこう、ダメそうなイメージやな?)
モルディウスは本人が聞いたら怒りそうなことを内心考えていたが、その場では沈黙を保っていた。
●完了
村人達全員が食事を終え、食休みも十分取ったところで咎人達への依頼は完了扱いとなる。
「ポルタさん。今回もお役に立てたでしょうか?」
暁斗は帰還する前に、ポルタにそんな伺いを立てていた。
「もちろんです。今回は本当にありがとうございました」
ポルタも暁斗にそう答え、村人達も暁斗や他の咎人達1人1人に感謝を伝えてきた。
「気に入ってもらえたみたいだから、あたしのレシピを残していくよ」
美夕は支給された紙と筆記用具を使い、自身が作ったカレーのレシピを書き上げ。村人達へ進呈していた。
帰還する途中、遊夜と響はズロイ達について意見をかわしている。
「痛い出費だろうし苦労しているだろうに、相変わらず紳士だな」
遊夜が苦笑気味にそう言うと、響は含み笑いで応じる。
「……ん。その分原因になった……あの人達は、大変だろうね」
響の言う『あの人達』とは村を破壊した『ゼラー隊』を指すが、2人の話を耳にしたモルディウスもズロイのことを脳裏に浮かべる。
(敵対する必要がない時なら、軽く一杯酌み交わしたい気がするな)
モルディウス内心そんなことも考えながら、苦笑を浮かべて帰路についた。





