●南と西
咎人達は簒奪者ズロイ(mz0063)の『八つ当たり』に対処するため、蓄音機型従魔の群れを迎え撃つ。
まずは南側より川澄 静(ma0164)とソテル(ma0693)が攻勢に出た。
「妖怪の穢れを祓ったり八つ当たりしたりするのもズロイさまらしいですね」
鬼鎧「光翼天使」を装備する静は、オルリアを介して知ったズロイの動向についてそう評する。
「物を大切にしない人間が悪いというズロイさまの意見もわかります」
――まだ使えた蓄音機を捨てるなんて、もったいないとは思います。
理解はできるものの、静はズロイの『八つ当たり』を実行させるつもりはない。
「ズロイ君、どの世界でも初手文句から入りません?」
ソテルは『頑張り屋さんな子うさぎ達』に乗りながら、ズロイの『八つ当たり』に対して首を傾げる。
「年ですかね?」
もしこの場にズロイがいたら、ソテルの言葉は深く突き刺さっていただろう。
そのまま静とソテルは従魔達への横撃をかける。
静は神がかりの舞を発動し、周囲のイデアを取り込むことで技の発動を素早く行えるようにすると、極楽蝶へのカウントを終わらせて発動し、飛行能力を得た。
続けて静は『神がかりの舞』による効果があるうちに、闇の人幻舞へのカウントを終わらせて発動し、その歌舞で人幻界における発展主義者の力を表現すると、範囲内にいた自身やソテルにその力を付与していく。
そして静は守り刀「白鞘巻」に魔力を込めると、捕捉した従魔に向け3度魔法攻撃を放ち、最初の一撃で従魔はシールドを破られ、続く攻撃が従魔の身を穿ち、その生命を削っていく。
「闇舞、ありがとうございます」
ソテルは静に礼を述べると、『天の光はすべて星』を発動し、自身の能力を向上させる。
――イデアの小さな輝きは、いつか大きな願いへと変わる。
――星に願いを掛ける時、その輝きの正体を人は知らない。
――誰に見送られることもなく深淵に消えようとする者たちに、せめてわたしの力を貸そう。
ソテルは『天の光はすべて星』の効果によって、それまで続けていたパンプキンパレードへのカウントを終わらせて発動すると、従魔達の間を高速で駆け抜ける
(また拗らせたと聞いて。ちゅ多様性万歳ちゅ可愛くてごめん)
ソテルは内心そのようなことを呟きながら、魔法のお菓子を振りまいて駆け回り、撒かれたお菓子は魔法攻撃と化して従魔達にその威力を炸裂させた。
その一撃で従魔はシールドを破られ、既に静の攻撃でシールドを失っていた従魔はさらに生命が削り取られていく。
そして西側でも咎人達は迎撃態勢を整えていた。
鬼鎧「鋼鬼」に乗る高柳 京四郎(ma0078)は、東側より現れた従魔達を見て、疑問を抱く。
「蓄音機……ズロイは一体何を考えてこんな従魔を?」
京四郎はズロイの基準がよくわからないが、今は従魔退治が先と意識を切り替える。
「まぁ何にしても、今回は特に妖怪にとっては良い迷惑だからな」
京四郎は神降ろしの舞を発動し、周囲のイデアを取り込むことで技の発動を素早くすると、森羅斬劾へのカウントを短縮した。
続けて京四郎は熟練戦士の心得を使うことで、自身の所作より淀みを無くしていく。
「遅いし少ない。これなら各個撃破出来るか?」
軍用魔導アーマー「V-01」を駆る麻生 遊夜(ma0279)は従魔達の動きからそう判断すると、傍らにいる鈴鳴 響(ma0317)も軍用魔導アーマー「V-01」に乗った状態でコクコクと頷く。
「……ん、バラバラで来てる……すごく倒しやすそう、だね?」
響はそう言いながらも首を傾げ、遊夜は従魔達の抱える『何か』に不安を抱く。
「……嫌な予感がするが」
遊夜やこの場にいる咎人達は、ズロイが妖怪達に同情し、今回の一件を引き起こしたと聞いている。
「分からんでもないから困る……ま、それでも止めなきゃならんのだが」
「……ん、回り回って……こっちの不利益になるから、仕方ない」
遊夜は重々しく呟き、響も『はふぅ』とため息をつくと、それぞれ従魔達を迎え撃つ。
「……久々にブッ放すか。悪いが俺の八つ当たりにも付き合ってくれや」
まず遊夜がルインバレットを発動し、構えたタイプライター1925より破壊の魔弾を撃ち放つ。
「兄サマト結バレルノハ私ダッタノニ!」
すると遊夜が放ったルインバレットは、狙った対象ではなく女性らしき声を放った別の従魔にその威力が炸裂し、一撃でシールドを打ち破った。
「……ん、対象変更が厄介」
響は今の現象が従魔の能力だと見抜く。
「……でもそこまで強くない。火力集中が正解」
響の言う通り、今のところ従魔のシールドは一撃で破ることが可能で、動きも遅い。
「そうだな。確実に討ち取ろう」
響の考えに遊夜も頷気を返すとマジックマガジンを発動してサブマシンガンの弾倉を強化し、威力を高めた一射でシールドブレイクに陥った従魔を深く穿つ。
ダメージを与え、怯んだ従魔に遊夜はチェインアタックで追撃をかけ、さらに命中弾を浴びせると、その生命をさらに削り取った。
響も刻印起動:射撃を使い自身の射撃能力を向上させると、ストームアサルトSGを同じ従魔に向け、ブレイクバーストによる追撃弾を射出する。
呪いの力を秘めた一射は、遊夜が攻撃した従魔へと命中する。
従魔のシールドが弱体化する効果が付与されると共に、その一撃で生命が尽きた従魔は地面に転がり、残骸と化す。
「……ん。1体を撃破」
響は目標を次の従魔に変更するとルインバレットを発動し、アサルトライフルより威力を増した魔弾が撃ち放たれ、従魔のシールドを一撃で破砕した。
そのまま響はマジックマガジンを発動し、アサルトライフルの弾倉を強化することで威力を高めた一撃を放ち、従魔を貫いた。
響の一射を受けた従魔はその生命を削り取られ、宙でよろめいた。
「瑠璃香とあろうものが、ズライ人に懐地界進出の遅れをとってしまったのですよ」
鬼鎧「無銘」を装備する瑠璃香(ma0653)は、そう言いながらも周囲を見渡し、従魔達の位置を把握する。
(懐地界へ初遊びに来たのですよ!)
動機は内心の叫びにとどめると、瑠璃香はズロイの居場所を探す。
「ズロイお兄ちゃんはいないのですかね?」
――逃げたのですか?
瑠璃香はズロイがいないことを知り、正面にいる従魔達へと向き直る。
「瑠璃香も妖怪さんと遊びたいですよ」
呟きと共に瑠璃香はワイルドアクションを発動し、素早い身のこなしとスタミナで自身の行動権を増やす。
続けて瑠璃香が月季を発動し、響が攻撃した従魔との距離を詰めるなり神剣「天羽々斬」を斬り上げ、瑠璃香の軌跡をたどるように黒薔薇の花弁が舞う。
その斬撃で従魔の身に斬痕を刻みつけると、瑠璃香はさらに「天羽々斬」の斬撃を見舞う。
――敵を切り裂く剣閃は、何処までも黒く――無慈悲。
立て続けの攻撃で生命を断たれた従魔は地面を転がり、沈黙する。
そして瑠璃香は南側にいる従魔2体へと極光弾を発動し、光の波動が放たれた。
この2体は既に静やソテルからの攻撃で生命を削られていたが、瑠璃香の極光弾を浴びたことでさらに損傷が蓄積し、1体は生命が尽きて地面に転がり沈黙した。
そして瑠璃香は熟練戦士の心得を使うことで、自身の所作より淀みを無くしていくと、入れ違いに京四郎が残る従魔を射程に捉えると、御封刃を発動して切り込んだ。
京四郎の神剣「天羽々斬」は、鋼術を用いた一撃と化して従魔の守りごと生命を断ち切り、左右に両断された従魔は地面に転がり、残骸と化した。
●北と東
機動装甲服を装備する天野 イサナ(ma0022)は宙に浮遊し、北側から進出すると、茨木 魅琴(ma0812)や伊吹 瑠那(ma0278)も北側より進出し、従魔達への包囲を始めていた。
「壊れた機械が喧しいな。さっさと片付けるか」
イサナから見れば、従魔達はただの撃破対象でそれ以上の感情はない。
「人に害なす従魔は殲滅する。それだけだ」
敵熱核式高速チャージを発動し、イサナはエアリアルバーストへのカウントを終わらせる。
「魔群を滅ぼせ、エアリアルバースト……」
呟きと共に、イサナは紅極剣「フォルトゥナ」と改造暗器「スズメバチ」を乱射し、眼下の従魔達へと猛射を浴びせかける。
範囲内にいた従魔達はシールドを打ち破られ、体勢が崩れたところでイサナはブレイクポイントを発動し、追撃の一射で従魔の1体を撃ち抜いた。
そして魅琴も機動装甲服S型を装備した状態で、宙に浮き上がる。
「さあ来なさい。まとめて可愛がって差し上げますよ」
熱核式高速チャージを使った後、魅琴はストライクフェアリーへのカウントを終わらせる。
「従魔の完全殲滅を狙います」
魅琴はストライクフェアリーを使うことで、超巨大凍結ミサイル「ギガンテックフリーザー」を先程イサナが攻撃を加えた従魔達へと発射する。
着弾した場所より爆発が巻き起こり、イサナの攻撃でシールドブレイクに陥っていた従魔達は生命を削られ、移動不能の効果が付与されていく。
続けて魅琴はブレイクダウンを発動し、DMR-カシオペアより放たれた追撃の一射が従魔達の中でその威力を炸裂させ、さらに損傷を蓄積させていく。
「瑠那様、思う存分に斬って差し上げてくださいませ」
魅琴は伊吹 瑠那(ma0278)に頭を下げ、その場を瑠那に譲る。
「相変わらず厚かましいものだな、ズロイ」
瑠那から見れば、ズロイの行動は妖怪のためではなく独りよがりだ。
まず瑠那はアンバークイーンを発動し、薔薇の棘を自身に纏わせ、自身の能力を向上させる。
「貴様の下らんお遊びに同調する気はないが」
瑠那は続けて渇愛を発動し、射程内で損傷を帯びた従魔をイデアエネルギーで作られた薔薇の茨で打ち据える。
その威力に従魔が絶命して地面に倒れると、瑠那は棘のようなエフェクトを残し、近くにいた従魔へのキルドライブを仕掛ける。
「精々私を楽しませろ」
従魔の懐まで飛び込んだ瑠那より紅蓮炎神が縦横に振るわれ、立て続けに斬撃を浴びた従魔は生命を刈り取られ、地面に転がり動かなくなる。
そして瑠那は朱葬を発動すると、射程内でシールドブレイクから回復していない従魔へと切り込んだ。
――誰そ彼の夢――剣閃に咲く、朱い灰。動きを封ずる荊。
――祈れば祈るほど、その朱は滲み。
――願えば願うほど、葬れと鬼が哭く。
威力を増した紅蓮炎神が斜めに斬り下ろされ、従魔の身を深々と斬り裂き、生命を大幅に削ると共に移動を妨げる効果が付与される。
それまで行動を控え、仲間達の動向を見つめていた歩夢(ma0694)も、残る従魔の掃討にかかる。
「『怒るべき時は怒りなさい』か……それは良いと思うけど、なあ……」
歩夢はズロイの言い分に一定の理解を示すものの、止めるべきだと考える。
「判らないでもないが、風評被害は避けたいのでね」
花飾りの白馬の上から残る従魔の位置を確認した歩夢はアルタ―ワープを発動し、自身をその近くまで転移させた。
「それでも見過しちゃいけない事もある。止めてやらないとさ」
従魔達を直線上に捕捉できる位置に転移した歩夢は、喪われし蒼穹の花を発動すると蒼光の斬撃が迸り、従魔2体のみを薙ぎ払う。
既に瑠那の攻撃で生命を大幅に削られていた従魔は、歩夢の攻撃に耐え切れず絶命して地面に転がり、残る1体にも歩夢のブレイクエンドが襲いかかる。
歩夢のゼロブレイド・プライムに斬り裂かれ、生命が尽きた従魔は地面に落下し、残骸の仲間入りを果たした。
●2回目
従魔達を全て撃破した咎人達は態勢を整え、新手の従魔達への迎撃を始める。
「……ん、纏まって来てたら……もう少し、厄介だった……かな?」
新手を見た響が首を傾げて言った通り、従魔達はバラバラに進んできたが、今度は従魔達もそれぞれ『声』を発してきた。
「ボ、ボクハ前カラママノコトガ!」
牛のような男の鳴き声(誤字にあらず)が連続して響き渡ると、従魔達は守りを固め――。
「息子チャンノ子供ハアタシガ産ムノヨ!」
従魔達より鶏のように甲高い、老女と思しき罵声が響くと共に、正面にいた咎人達へと魔法攻撃を放ってくる。
既にカバーゾーンを発動していた遊夜は、範囲内にいた仲間達への攻撃を自身に変更し、全て受け止める。
「我が信念と矜持の楯は堅牢なり! この程度じゃ倒れてやれんなぁ!」
攻撃を繰り返し受けたことで遊夜はシールドブレイクに陥り、ダメージも受けたものの、遊夜は自身の堅牢さを誇る。
「息子チャンノ子供ハ――」
従魔のうち2体が南側へ進路を変え、その先にいた静へと『鶏声』を放ってくると、静は蟷螂流しを駆使して対抗する。
「対象の変更は貴方達の専売特許ではありませんよ!」
叫びと共に、静は魔法攻撃を受け流し、その威力に自らの力を上乗せして跳ね返すと、射程内にいた別の従魔に命中し、そのシールドを一撃で打ち破った。
「……ズロイは昼ドラにでもはまったのか」
従魔からの『声』を一通り聞いた京四郎は、声を発した当事者達の関係を想像したのか、森羅斬劾へのカウントを続けつつ内心頭を抱えている。
恐らくズロイの性質から鑑みて、一連の『声』は本物だろう。
確かにこんな言葉を口走ったと周囲の人々に知られたら、その家にいる住民達は大恥をかく。
――その発言を後悔するくらいには。
「ったく胸糞悪いなぁ……どっちにとは言えないけどさ」
歩夢も一連の『声』を聞いていたのか、若干表情が強張っている。
「とは言え、俺達がどうこうするって訳にもなぁ……これ……」
京四郎は歩夢の抱いた感情に理解を示しつつ、溜息をつく。
住民達の事情に口を挟む権限などないことは、京四郎も承知している。
「とりあえず従魔は倒せばどうにかなるが……問題はもっと根深いようだ」
「根深くても当面やることは変わらない、でしょ? 高柳さん」
京四郎と歩夢はそのようなやり取りを交わしてから、歩夢は再び自身の行動を後に回し、京四郎が前に出る。
まず京四郎は共鳴鋼を発動し、「天羽々斬」に込められた霊力を開放することで自身の能力を強化すると、森羅斬劾へのカウントを終わらせた。
直後、京四郎は射程内にいた従魔に付与されていた加護を斬り裂くと共に自身へと取り込み、破魔の一撃を炸裂させる。
強化を解除された従魔が一撃でシールドを断ち割られると、京四郎は御封刃を発動して素早く追撃し、鋼術を用いた一撃が従魔の防御ごとその身を斬り裂き、損傷を負わせる。
そのまま京四郎は霊剣解放Ⅱを発動し、加護の力を一気に解放すると、破壊力のある一撃を連続で放つ。
立て続けに斬撃を浴びた従魔は一気に生命を刈り取られて力尽き、地面に落ち残骸と化す。
一方南側にいた静やソテルも、京四郎達の話を聞いて思うところがあったようだ。
「噂が広がったら大変ですね」
静は闇の人幻舞や、1カウントを設けてロングアクションとした奉舞「布都御魂」へのカウントを続けながらそう呟くと、ソテルも頷きで応じる。
「確かに根深いですね、ズロイ君が特殊性癖の擁護者として立つとは」
ソテルはズロイが声の主達を『応援』するために、従魔達を差し向けてきたと解釈したようだが、今は従魔退治へと意識を向けている。
まず静はグレーシアスを発動し、舞踊の動作を取り入れることにより、一時的に限界を超えた能力を獲得する。
続けて静は闇の人幻舞へのカウントを終わらせて発動し、歌舞で発展主義者の力を表現してその力を自身やソテルに付与していく。
(まだ使えた蓄音機を捨てるなんて――)
そして静は内心そんな呟きを発しつつも、奉舞「布都御魂」へのカウントを終わらせて発動し、自身を勢いよく前方へと射出した。
霊力を帯びた静が従魔達の隙間へと躍り込み、すれ違いざまに放たれた「白鞘巻」の魔法攻撃が従魔達へと連続で叩き込まれる。
既に静の蟷螂流しによってシールドを失っていた従魔は、静の連撃に耐え切れず絶命し、地面へと落下し残骸と化す。
もう1体も一撃目でシールドを破られ、2撃目で生命の大半を削り取られてよろめき、そのまま静が駆け抜けると、神魔飛行を駆使したソテルが宙に浮かび、その後を引き継ぐ。
「仲間を増やすにしても、カミングアウトの強制はよくないと思います」
ソテルはズロイがそういう性癖の持ち主だと言いながら、コスチュームチェンジⅡを発動すると煌めきに包まれ、一時的に幻の衣装を纏うことで自身の能力を向上させた。
そのままソテルは闇の人幻舞が効果を発揮している間に、神杖「神愛の飾杖」を静が損傷を負わせた従魔に向け、魔法攻撃を撃ち放つ。
放たれた魔法の一撃は従魔の身を穿ち、その一撃で絶命した従魔は地面に転がり、沈黙した。
そしてソテルはキャンディーシャワーⅡを発動し、宙を飛びながら真下に向けキャンディー型爆弾をばらまき、爆発が巻き起こる。
範囲内にいた従魔はまともに威力を浴びてシールドを打ち破られ、体勢を崩す。
「やれやれ、気が滅入りそうだ。教育にも悪い、さっさと倒そう」
従魔達が射程内まで近づくのを待つ間、シールドを回復した遊夜も、京四郎と似たような見解に至ったのかため息をつきながらもサブマシンガンを構えなおす。
狙うのは――先程ソテルがキャンディーシャワーⅡを浴びせ、シールドを失った従魔。
「……ん、いらっしゃい……ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?」
響も忍び笑いを漏らし、遊夜と同じ目標にアサルトライフルを向けた。
そして刻印起動:射撃を使い、自身の能力を向上させた響は遊夜と共にルインバレットを発動し、アサルトライフルとサブマシンガンより破壊の魔弾がそれぞれ撃ち放たれ、従魔の身を穿つ音が2度響く。
ダメージを与えたところで、遊夜が続けざまにチェインアタックによる追撃を放ち、響もブレイクバーストを発動して追撃の一射を浴びせかける。
遊夜と響からの追撃を受けた従魔は、その時点で生命が尽きて地面に転がり、残骸と化した。
「皆レコード文通、お返事吹き込んでズロイにお返ししようですよ」
それまで従魔達の姿や『声』を見聞きしていた瑠璃香は、戦いの中でそのような提案を出していた。
オルリアの『駅』に蓄音機があるので不可能ではないが――。
「『~下さい』と人にお願いする時は、相応のおみあげつけるですよ」
ストライクイーグルを発動し、北側に残る従魔へと突っ込んだ瑠璃香より「天羽々斬」が真横に振りぬかれ、従魔のシールドを一撃で切り割った。
続けて極光弾を発動した瑠璃香は近くにいた別の従魔も巻き込む形で光の波動を放ち、従魔のシールドを打ち破ると共に、傍にいる従魔の生命を削り取る。
「瑠璃香は八つ当たりよりハつ橋が欲しいの次よろしくですよ」
さらに瑠璃香は女王首切鎌を使い、蟷螂の腕に似た折り畳み式の武器に威力を乗せて、傍にいる従魔を深々と斬り裂いた。
「ズロイとレコードで文通するのですよ!」
そして瑠璃香はカウントを終えた鬼焔斬舞を発動すると、炎のようなオーラを全身にまとい、前方に「天羽々斬」を突き出すと回転しながら前進し、範囲内にいた従魔達をまとめて2度斬り裂いた。
従魔たちの内、既に損傷が蓄積していた個体は一撃目で上下に断ち割られて絶命し、奥にいた個体も立て続けに斬撃を浴び、大幅に生命を削られる。
そして瑠璃香の攻撃を受けた後、シールドが回復した個体も含め、残る従魔達をイサナ、魅琴、瑠那、そして歩夢が押し包む。
「やり方がわかりづらく回りくどい。悪趣味な簒奪者だな」
イサナが従魔に込められた『声』からズロイの意図は悪趣味と断ずる。
「ズロイ、悪い噂は聞いておりましたが案の定趣味が悪いですね」
瑠那と共に、イサナの近くにいた魅琴も似たような見解を口にし、瑠那は尊大な口調でこう言った。
「この程度なら児戯にすぎんぞ」
迷惑がられる『遊び』はその趣味嗜好を認識されても、嫌われるだけだ。
「まあ……こういうのを見たら嫌気がさすのはわかるんだけど、ね」
歩夢は周囲に散乱する従魔の残骸を見渡し、同じような光景をズロイも見たのだと推測したのか、ある程度理解は示しつつも、攻撃の手は緩めない。
そして短いやり取りの後、イサナと魅琴は従魔隊の頭上へと駆け上がり、瑠那と歩夢も従魔達を倒しにかかる。
まず魅琴は熱核式高速チャージを発動することで、ストライクフェアリーへのカウントを終わらせると、超巨大レールガンの引き金が引かれ、直線上にいた従魔達をまとめて薙ぎ払う。
攻撃を受けた従魔達は一撃でシールドが破砕し、その防御も低下する中、魅琴に合わせる形でイサナもフェアリーバレットを発動して翡翠の輝きを帯びた一射を放ち、従魔の身に命中弾を打ち込んだ。
間髪入れず、魅琴はブレイクダウンによる追撃を放つと、着弾地点より周囲へとその威力がぶちまけられ、範囲内にいた従魔を引き裂いた。
既に瑠璃香の攻撃で損傷が蓄積していた従魔は絶命して地面に叩きつけられ、残骸の仲間入りを果たす。
イサナもクイックショットによる追撃を放ち、先程フェアリーバレットで貫いた従魔の生命をさらに削り取る。
「今度はこっちからだ」
ここで瑠那が生への渇望を発動し、その効果があるうちに『死への渇望』へのカウントを終わらせると、歩夢もエクストーラスを発動することで汎用性を捨て、能力を一点に集中する。
そして瑠那の『死への渇望』と歩夢のラウンドセイバーがほぼ同時に発動し、残る2体の従魔へと襲いかかった。
自らの血で紅蓮炎神を覆い、朱き刃と成した瑠那の斬撃が3度従魔達へと繰り出され、移動しながら振るわれる歩夢のゼロブレイド・プライムも2度従魔達を斬り裂き、まとめて切り刻む。
そして瑠那のキルドライブ、歩夢のブレイクエンドが発動される前に従魔達は力尽き、寸断された残骸が地面に散乱した。
「貴方が天罰代行者を気取るのは盗人猛々しいというものですよ」
残骸と化した従魔達を見おろしながら、最後に魅琴はズロイに向け痛烈な一言を放っていた。
●終わりに
全ての従魔達が撃破されたところで、待機していたオルリアや真継 優輝が姿を見せる。
「増援含め制圧完了。片づけは任せて退却だ」
イサナはオルリア達に結果を報告すると、そのまま帰路に就く。
「やれやれ、本当にやれやれだ……」
ヒー・リショナー(mz0073)からヒールを受け、生命を回復した遊夜は大きなため息をつくと、響が上機嫌で遊夜に抱き着いた。
「……ん、ユーヤもお疲れ様……ボク頑張った!」
「おぅ、響もお疲れさんだな」
甘え始めた響の頭を撫でながら、遊夜は響を労う。
「それで結局、ズロイ君はなにがしたかったのでしょうか?」
周囲の残骸を見渡しながら、ソテルはズロイの意図が何だったのか分からず考え込む仕草を見せる。
「真に恐ろしいのは妖怪じゃなくて、人の情念とかそんな物なのかもなぁ」
京四郎は人間達に捨てられた後、ズロイによって従魔化され、この場で残骸と化した蓄音機達を見ながら、そのような呟きを漏らしていた。
咎人達は簒奪者ズロイ(mz0063)の『八つ当たり』に対処するため、蓄音機型従魔の群れを迎え撃つ。
まずは南側より川澄 静(ma0164)とソテル(ma0693)が攻勢に出た。
「妖怪の穢れを祓ったり八つ当たりしたりするのもズロイさまらしいですね」
鬼鎧「光翼天使」を装備する静は、オルリアを介して知ったズロイの動向についてそう評する。
「物を大切にしない人間が悪いというズロイさまの意見もわかります」
――まだ使えた蓄音機を捨てるなんて、もったいないとは思います。
理解はできるものの、静はズロイの『八つ当たり』を実行させるつもりはない。
「ズロイ君、どの世界でも初手文句から入りません?」
ソテルは『頑張り屋さんな子うさぎ達』に乗りながら、ズロイの『八つ当たり』に対して首を傾げる。
「年ですかね?」
もしこの場にズロイがいたら、ソテルの言葉は深く突き刺さっていただろう。
そのまま静とソテルは従魔達への横撃をかける。
静は神がかりの舞を発動し、周囲のイデアを取り込むことで技の発動を素早く行えるようにすると、極楽蝶へのカウントを終わらせて発動し、飛行能力を得た。
続けて静は『神がかりの舞』による効果があるうちに、闇の人幻舞へのカウントを終わらせて発動し、その歌舞で人幻界における発展主義者の力を表現すると、範囲内にいた自身やソテルにその力を付与していく。
そして静は守り刀「白鞘巻」に魔力を込めると、捕捉した従魔に向け3度魔法攻撃を放ち、最初の一撃で従魔はシールドを破られ、続く攻撃が従魔の身を穿ち、その生命を削っていく。
「闇舞、ありがとうございます」
ソテルは静に礼を述べると、『天の光はすべて星』を発動し、自身の能力を向上させる。
――イデアの小さな輝きは、いつか大きな願いへと変わる。
――星に願いを掛ける時、その輝きの正体を人は知らない。
――誰に見送られることもなく深淵に消えようとする者たちに、せめてわたしの力を貸そう。
ソテルは『天の光はすべて星』の効果によって、それまで続けていたパンプキンパレードへのカウントを終わらせて発動すると、従魔達の間を高速で駆け抜ける
(また拗らせたと聞いて。ちゅ多様性万歳ちゅ可愛くてごめん)
ソテルは内心そのようなことを呟きながら、魔法のお菓子を振りまいて駆け回り、撒かれたお菓子は魔法攻撃と化して従魔達にその威力を炸裂させた。
その一撃で従魔はシールドを破られ、既に静の攻撃でシールドを失っていた従魔はさらに生命が削り取られていく。
そして西側でも咎人達は迎撃態勢を整えていた。
鬼鎧「鋼鬼」に乗る高柳 京四郎(ma0078)は、東側より現れた従魔達を見て、疑問を抱く。
「蓄音機……ズロイは一体何を考えてこんな従魔を?」
京四郎はズロイの基準がよくわからないが、今は従魔退治が先と意識を切り替える。
「まぁ何にしても、今回は特に妖怪にとっては良い迷惑だからな」
京四郎は神降ろしの舞を発動し、周囲のイデアを取り込むことで技の発動を素早くすると、森羅斬劾へのカウントを短縮した。
続けて京四郎は熟練戦士の心得を使うことで、自身の所作より淀みを無くしていく。
「遅いし少ない。これなら各個撃破出来るか?」
軍用魔導アーマー「V-01」を駆る麻生 遊夜(ma0279)は従魔達の動きからそう判断すると、傍らにいる鈴鳴 響(ma0317)も軍用魔導アーマー「V-01」に乗った状態でコクコクと頷く。
「……ん、バラバラで来てる……すごく倒しやすそう、だね?」
響はそう言いながらも首を傾げ、遊夜は従魔達の抱える『何か』に不安を抱く。
「……嫌な予感がするが」
遊夜やこの場にいる咎人達は、ズロイが妖怪達に同情し、今回の一件を引き起こしたと聞いている。
「分からんでもないから困る……ま、それでも止めなきゃならんのだが」
「……ん、回り回って……こっちの不利益になるから、仕方ない」
遊夜は重々しく呟き、響も『はふぅ』とため息をつくと、それぞれ従魔達を迎え撃つ。
「……久々にブッ放すか。悪いが俺の八つ当たりにも付き合ってくれや」
まず遊夜がルインバレットを発動し、構えたタイプライター1925より破壊の魔弾を撃ち放つ。
「兄サマト結バレルノハ私ダッタノニ!」
すると遊夜が放ったルインバレットは、狙った対象ではなく女性らしき声を放った別の従魔にその威力が炸裂し、一撃でシールドを打ち破った。
「……ん、対象変更が厄介」
響は今の現象が従魔の能力だと見抜く。
「……でもそこまで強くない。火力集中が正解」
響の言う通り、今のところ従魔のシールドは一撃で破ることが可能で、動きも遅い。
「そうだな。確実に討ち取ろう」
響の考えに遊夜も頷気を返すとマジックマガジンを発動してサブマシンガンの弾倉を強化し、威力を高めた一射でシールドブレイクに陥った従魔を深く穿つ。
ダメージを与え、怯んだ従魔に遊夜はチェインアタックで追撃をかけ、さらに命中弾を浴びせると、その生命をさらに削り取った。
響も刻印起動:射撃を使い自身の射撃能力を向上させると、ストームアサルトSGを同じ従魔に向け、ブレイクバーストによる追撃弾を射出する。
呪いの力を秘めた一射は、遊夜が攻撃した従魔へと命中する。
従魔のシールドが弱体化する効果が付与されると共に、その一撃で生命が尽きた従魔は地面に転がり、残骸と化す。
「……ん。1体を撃破」
響は目標を次の従魔に変更するとルインバレットを発動し、アサルトライフルより威力を増した魔弾が撃ち放たれ、従魔のシールドを一撃で破砕した。
そのまま響はマジックマガジンを発動し、アサルトライフルの弾倉を強化することで威力を高めた一撃を放ち、従魔を貫いた。
響の一射を受けた従魔はその生命を削り取られ、宙でよろめいた。
「瑠璃香とあろうものが、ズライ人に懐地界進出の遅れをとってしまったのですよ」
鬼鎧「無銘」を装備する瑠璃香(ma0653)は、そう言いながらも周囲を見渡し、従魔達の位置を把握する。
(懐地界へ初遊びに来たのですよ!)
動機は内心の叫びにとどめると、瑠璃香はズロイの居場所を探す。
「ズロイお兄ちゃんはいないのですかね?」
――逃げたのですか?
瑠璃香はズロイがいないことを知り、正面にいる従魔達へと向き直る。
「瑠璃香も妖怪さんと遊びたいですよ」
呟きと共に瑠璃香はワイルドアクションを発動し、素早い身のこなしとスタミナで自身の行動権を増やす。
続けて瑠璃香が月季を発動し、響が攻撃した従魔との距離を詰めるなり神剣「天羽々斬」を斬り上げ、瑠璃香の軌跡をたどるように黒薔薇の花弁が舞う。
その斬撃で従魔の身に斬痕を刻みつけると、瑠璃香はさらに「天羽々斬」の斬撃を見舞う。
――敵を切り裂く剣閃は、何処までも黒く――無慈悲。
立て続けの攻撃で生命を断たれた従魔は地面を転がり、沈黙する。
そして瑠璃香は南側にいる従魔2体へと極光弾を発動し、光の波動が放たれた。
この2体は既に静やソテルからの攻撃で生命を削られていたが、瑠璃香の極光弾を浴びたことでさらに損傷が蓄積し、1体は生命が尽きて地面に転がり沈黙した。
そして瑠璃香は熟練戦士の心得を使うことで、自身の所作より淀みを無くしていくと、入れ違いに京四郎が残る従魔を射程に捉えると、御封刃を発動して切り込んだ。
京四郎の神剣「天羽々斬」は、鋼術を用いた一撃と化して従魔の守りごと生命を断ち切り、左右に両断された従魔は地面に転がり、残骸と化した。
●北と東
機動装甲服を装備する天野 イサナ(ma0022)は宙に浮遊し、北側から進出すると、茨木 魅琴(ma0812)や伊吹 瑠那(ma0278)も北側より進出し、従魔達への包囲を始めていた。
「壊れた機械が喧しいな。さっさと片付けるか」
イサナから見れば、従魔達はただの撃破対象でそれ以上の感情はない。
「人に害なす従魔は殲滅する。それだけだ」
敵熱核式高速チャージを発動し、イサナはエアリアルバーストへのカウントを終わらせる。
「魔群を滅ぼせ、エアリアルバースト……」
呟きと共に、イサナは紅極剣「フォルトゥナ」と改造暗器「スズメバチ」を乱射し、眼下の従魔達へと猛射を浴びせかける。
範囲内にいた従魔達はシールドを打ち破られ、体勢が崩れたところでイサナはブレイクポイントを発動し、追撃の一射で従魔の1体を撃ち抜いた。
そして魅琴も機動装甲服S型を装備した状態で、宙に浮き上がる。
「さあ来なさい。まとめて可愛がって差し上げますよ」
熱核式高速チャージを使った後、魅琴はストライクフェアリーへのカウントを終わらせる。
「従魔の完全殲滅を狙います」
魅琴はストライクフェアリーを使うことで、超巨大凍結ミサイル「ギガンテックフリーザー」を先程イサナが攻撃を加えた従魔達へと発射する。
着弾した場所より爆発が巻き起こり、イサナの攻撃でシールドブレイクに陥っていた従魔達は生命を削られ、移動不能の効果が付与されていく。
続けて魅琴はブレイクダウンを発動し、DMR-カシオペアより放たれた追撃の一射が従魔達の中でその威力を炸裂させ、さらに損傷を蓄積させていく。
「瑠那様、思う存分に斬って差し上げてくださいませ」
魅琴は伊吹 瑠那(ma0278)に頭を下げ、その場を瑠那に譲る。
「相変わらず厚かましいものだな、ズロイ」
瑠那から見れば、ズロイの行動は妖怪のためではなく独りよがりだ。
まず瑠那はアンバークイーンを発動し、薔薇の棘を自身に纏わせ、自身の能力を向上させる。
「貴様の下らんお遊びに同調する気はないが」
瑠那は続けて渇愛を発動し、射程内で損傷を帯びた従魔をイデアエネルギーで作られた薔薇の茨で打ち据える。
その威力に従魔が絶命して地面に倒れると、瑠那は棘のようなエフェクトを残し、近くにいた従魔へのキルドライブを仕掛ける。
「精々私を楽しませろ」
従魔の懐まで飛び込んだ瑠那より紅蓮炎神が縦横に振るわれ、立て続けに斬撃を浴びた従魔は生命を刈り取られ、地面に転がり動かなくなる。
そして瑠那は朱葬を発動すると、射程内でシールドブレイクから回復していない従魔へと切り込んだ。
――誰そ彼の夢――剣閃に咲く、朱い灰。動きを封ずる荊。
――祈れば祈るほど、その朱は滲み。
――願えば願うほど、葬れと鬼が哭く。
威力を増した紅蓮炎神が斜めに斬り下ろされ、従魔の身を深々と斬り裂き、生命を大幅に削ると共に移動を妨げる効果が付与される。
それまで行動を控え、仲間達の動向を見つめていた歩夢(ma0694)も、残る従魔の掃討にかかる。
「『怒るべき時は怒りなさい』か……それは良いと思うけど、なあ……」
歩夢はズロイの言い分に一定の理解を示すものの、止めるべきだと考える。
「判らないでもないが、風評被害は避けたいのでね」
花飾りの白馬の上から残る従魔の位置を確認した歩夢はアルタ―ワープを発動し、自身をその近くまで転移させた。
「それでも見過しちゃいけない事もある。止めてやらないとさ」
従魔達を直線上に捕捉できる位置に転移した歩夢は、喪われし蒼穹の花を発動すると蒼光の斬撃が迸り、従魔2体のみを薙ぎ払う。
既に瑠那の攻撃で生命を大幅に削られていた従魔は、歩夢の攻撃に耐え切れず絶命して地面に転がり、残る1体にも歩夢のブレイクエンドが襲いかかる。
歩夢のゼロブレイド・プライムに斬り裂かれ、生命が尽きた従魔は地面に落下し、残骸の仲間入りを果たした。
●2回目
従魔達を全て撃破した咎人達は態勢を整え、新手の従魔達への迎撃を始める。
「……ん、纏まって来てたら……もう少し、厄介だった……かな?」
新手を見た響が首を傾げて言った通り、従魔達はバラバラに進んできたが、今度は従魔達もそれぞれ『声』を発してきた。
「ボ、ボクハ前カラママノコトガ!」
牛のような男の鳴き声(誤字にあらず)が連続して響き渡ると、従魔達は守りを固め――。
「息子チャンノ子供ハアタシガ産ムノヨ!」
従魔達より鶏のように甲高い、老女と思しき罵声が響くと共に、正面にいた咎人達へと魔法攻撃を放ってくる。
既にカバーゾーンを発動していた遊夜は、範囲内にいた仲間達への攻撃を自身に変更し、全て受け止める。
「我が信念と矜持の楯は堅牢なり! この程度じゃ倒れてやれんなぁ!」
攻撃を繰り返し受けたことで遊夜はシールドブレイクに陥り、ダメージも受けたものの、遊夜は自身の堅牢さを誇る。
「息子チャンノ子供ハ――」
従魔のうち2体が南側へ進路を変え、その先にいた静へと『鶏声』を放ってくると、静は蟷螂流しを駆使して対抗する。
「対象の変更は貴方達の専売特許ではありませんよ!」
叫びと共に、静は魔法攻撃を受け流し、その威力に自らの力を上乗せして跳ね返すと、射程内にいた別の従魔に命中し、そのシールドを一撃で打ち破った。
「……ズロイは昼ドラにでもはまったのか」
従魔からの『声』を一通り聞いた京四郎は、声を発した当事者達の関係を想像したのか、森羅斬劾へのカウントを続けつつ内心頭を抱えている。
恐らくズロイの性質から鑑みて、一連の『声』は本物だろう。
確かにこんな言葉を口走ったと周囲の人々に知られたら、その家にいる住民達は大恥をかく。
――その発言を後悔するくらいには。
「ったく胸糞悪いなぁ……どっちにとは言えないけどさ」
歩夢も一連の『声』を聞いていたのか、若干表情が強張っている。
「とは言え、俺達がどうこうするって訳にもなぁ……これ……」
京四郎は歩夢の抱いた感情に理解を示しつつ、溜息をつく。
住民達の事情に口を挟む権限などないことは、京四郎も承知している。
「とりあえず従魔は倒せばどうにかなるが……問題はもっと根深いようだ」
「根深くても当面やることは変わらない、でしょ? 高柳さん」
京四郎と歩夢はそのようなやり取りを交わしてから、歩夢は再び自身の行動を後に回し、京四郎が前に出る。
まず京四郎は共鳴鋼を発動し、「天羽々斬」に込められた霊力を開放することで自身の能力を強化すると、森羅斬劾へのカウントを終わらせた。
直後、京四郎は射程内にいた従魔に付与されていた加護を斬り裂くと共に自身へと取り込み、破魔の一撃を炸裂させる。
強化を解除された従魔が一撃でシールドを断ち割られると、京四郎は御封刃を発動して素早く追撃し、鋼術を用いた一撃が従魔の防御ごとその身を斬り裂き、損傷を負わせる。
そのまま京四郎は霊剣解放Ⅱを発動し、加護の力を一気に解放すると、破壊力のある一撃を連続で放つ。
立て続けに斬撃を浴びた従魔は一気に生命を刈り取られて力尽き、地面に落ち残骸と化す。
一方南側にいた静やソテルも、京四郎達の話を聞いて思うところがあったようだ。
「噂が広がったら大変ですね」
静は闇の人幻舞や、1カウントを設けてロングアクションとした奉舞「布都御魂」へのカウントを続けながらそう呟くと、ソテルも頷きで応じる。
「確かに根深いですね、ズロイ君が特殊性癖の擁護者として立つとは」
ソテルはズロイが声の主達を『応援』するために、従魔達を差し向けてきたと解釈したようだが、今は従魔退治へと意識を向けている。
まず静はグレーシアスを発動し、舞踊の動作を取り入れることにより、一時的に限界を超えた能力を獲得する。
続けて静は闇の人幻舞へのカウントを終わらせて発動し、歌舞で発展主義者の力を表現してその力を自身やソテルに付与していく。
(まだ使えた蓄音機を捨てるなんて――)
そして静は内心そんな呟きを発しつつも、奉舞「布都御魂」へのカウントを終わらせて発動し、自身を勢いよく前方へと射出した。
霊力を帯びた静が従魔達の隙間へと躍り込み、すれ違いざまに放たれた「白鞘巻」の魔法攻撃が従魔達へと連続で叩き込まれる。
既に静の蟷螂流しによってシールドを失っていた従魔は、静の連撃に耐え切れず絶命し、地面へと落下し残骸と化す。
もう1体も一撃目でシールドを破られ、2撃目で生命の大半を削り取られてよろめき、そのまま静が駆け抜けると、神魔飛行を駆使したソテルが宙に浮かび、その後を引き継ぐ。
「仲間を増やすにしても、カミングアウトの強制はよくないと思います」
ソテルはズロイがそういう性癖の持ち主だと言いながら、コスチュームチェンジⅡを発動すると煌めきに包まれ、一時的に幻の衣装を纏うことで自身の能力を向上させた。
そのままソテルは闇の人幻舞が効果を発揮している間に、神杖「神愛の飾杖」を静が損傷を負わせた従魔に向け、魔法攻撃を撃ち放つ。
放たれた魔法の一撃は従魔の身を穿ち、その一撃で絶命した従魔は地面に転がり、沈黙した。
そしてソテルはキャンディーシャワーⅡを発動し、宙を飛びながら真下に向けキャンディー型爆弾をばらまき、爆発が巻き起こる。
範囲内にいた従魔はまともに威力を浴びてシールドを打ち破られ、体勢を崩す。
「やれやれ、気が滅入りそうだ。教育にも悪い、さっさと倒そう」
従魔達が射程内まで近づくのを待つ間、シールドを回復した遊夜も、京四郎と似たような見解に至ったのかため息をつきながらもサブマシンガンを構えなおす。
狙うのは――先程ソテルがキャンディーシャワーⅡを浴びせ、シールドを失った従魔。
「……ん、いらっしゃい……ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?」
響も忍び笑いを漏らし、遊夜と同じ目標にアサルトライフルを向けた。
そして刻印起動:射撃を使い、自身の能力を向上させた響は遊夜と共にルインバレットを発動し、アサルトライフルとサブマシンガンより破壊の魔弾がそれぞれ撃ち放たれ、従魔の身を穿つ音が2度響く。
ダメージを与えたところで、遊夜が続けざまにチェインアタックによる追撃を放ち、響もブレイクバーストを発動して追撃の一射を浴びせかける。
遊夜と響からの追撃を受けた従魔は、その時点で生命が尽きて地面に転がり、残骸と化した。
「皆レコード文通、お返事吹き込んでズロイにお返ししようですよ」
それまで従魔達の姿や『声』を見聞きしていた瑠璃香は、戦いの中でそのような提案を出していた。
オルリアの『駅』に蓄音機があるので不可能ではないが――。
「『~下さい』と人にお願いする時は、相応のおみあげつけるですよ」
ストライクイーグルを発動し、北側に残る従魔へと突っ込んだ瑠璃香より「天羽々斬」が真横に振りぬかれ、従魔のシールドを一撃で切り割った。
続けて極光弾を発動した瑠璃香は近くにいた別の従魔も巻き込む形で光の波動を放ち、従魔のシールドを打ち破ると共に、傍にいる従魔の生命を削り取る。
「瑠璃香は八つ当たりよりハつ橋が欲しいの次よろしくですよ」
さらに瑠璃香は女王首切鎌を使い、蟷螂の腕に似た折り畳み式の武器に威力を乗せて、傍にいる従魔を深々と斬り裂いた。
「ズロイとレコードで文通するのですよ!」
そして瑠璃香はカウントを終えた鬼焔斬舞を発動すると、炎のようなオーラを全身にまとい、前方に「天羽々斬」を突き出すと回転しながら前進し、範囲内にいた従魔達をまとめて2度斬り裂いた。
従魔たちの内、既に損傷が蓄積していた個体は一撃目で上下に断ち割られて絶命し、奥にいた個体も立て続けに斬撃を浴び、大幅に生命を削られる。
そして瑠璃香の攻撃を受けた後、シールドが回復した個体も含め、残る従魔達をイサナ、魅琴、瑠那、そして歩夢が押し包む。
「やり方がわかりづらく回りくどい。悪趣味な簒奪者だな」
イサナが従魔に込められた『声』からズロイの意図は悪趣味と断ずる。
「ズロイ、悪い噂は聞いておりましたが案の定趣味が悪いですね」
瑠那と共に、イサナの近くにいた魅琴も似たような見解を口にし、瑠那は尊大な口調でこう言った。
「この程度なら児戯にすぎんぞ」
迷惑がられる『遊び』はその趣味嗜好を認識されても、嫌われるだけだ。
「まあ……こういうのを見たら嫌気がさすのはわかるんだけど、ね」
歩夢は周囲に散乱する従魔の残骸を見渡し、同じような光景をズロイも見たのだと推測したのか、ある程度理解は示しつつも、攻撃の手は緩めない。
そして短いやり取りの後、イサナと魅琴は従魔隊の頭上へと駆け上がり、瑠那と歩夢も従魔達を倒しにかかる。
まず魅琴は熱核式高速チャージを発動することで、ストライクフェアリーへのカウントを終わらせると、超巨大レールガンの引き金が引かれ、直線上にいた従魔達をまとめて薙ぎ払う。
攻撃を受けた従魔達は一撃でシールドが破砕し、その防御も低下する中、魅琴に合わせる形でイサナもフェアリーバレットを発動して翡翠の輝きを帯びた一射を放ち、従魔の身に命中弾を打ち込んだ。
間髪入れず、魅琴はブレイクダウンによる追撃を放つと、着弾地点より周囲へとその威力がぶちまけられ、範囲内にいた従魔を引き裂いた。
既に瑠璃香の攻撃で損傷が蓄積していた従魔は絶命して地面に叩きつけられ、残骸の仲間入りを果たす。
イサナもクイックショットによる追撃を放ち、先程フェアリーバレットで貫いた従魔の生命をさらに削り取る。
「今度はこっちからだ」
ここで瑠那が生への渇望を発動し、その効果があるうちに『死への渇望』へのカウントを終わらせると、歩夢もエクストーラスを発動することで汎用性を捨て、能力を一点に集中する。
そして瑠那の『死への渇望』と歩夢のラウンドセイバーがほぼ同時に発動し、残る2体の従魔へと襲いかかった。
自らの血で紅蓮炎神を覆い、朱き刃と成した瑠那の斬撃が3度従魔達へと繰り出され、移動しながら振るわれる歩夢のゼロブレイド・プライムも2度従魔達を斬り裂き、まとめて切り刻む。
そして瑠那のキルドライブ、歩夢のブレイクエンドが発動される前に従魔達は力尽き、寸断された残骸が地面に散乱した。
「貴方が天罰代行者を気取るのは盗人猛々しいというものですよ」
残骸と化した従魔達を見おろしながら、最後に魅琴はズロイに向け痛烈な一言を放っていた。
●終わりに
全ての従魔達が撃破されたところで、待機していたオルリアや真継 優輝が姿を見せる。
「増援含め制圧完了。片づけは任せて退却だ」
イサナはオルリア達に結果を報告すると、そのまま帰路に就く。
「やれやれ、本当にやれやれだ……」
ヒー・リショナー(mz0073)からヒールを受け、生命を回復した遊夜は大きなため息をつくと、響が上機嫌で遊夜に抱き着いた。
「……ん、ユーヤもお疲れ様……ボク頑張った!」
「おぅ、響もお疲れさんだな」
甘え始めた響の頭を撫でながら、遊夜は響を労う。
「それで結局、ズロイ君はなにがしたかったのでしょうか?」
周囲の残骸を見渡しながら、ソテルはズロイの意図が何だったのか分からず考え込む仕草を見せる。
「真に恐ろしいのは妖怪じゃなくて、人の情念とかそんな物なのかもなぁ」
京四郎は人間達に捨てられた後、ズロイによって従魔化され、この場で残骸と化した蓄音機達を見ながら、そのような呟きを漏らしていた。




