●陸戦
港に到着した咎人達は、陸と海の2方向から従魔達との交戦を開始する。
「これに乗るのはナイトメアとの決戦以来か……頼むぞ、FF03-Q」
北西側より進出した高柳 京四郎(ma0078)は自身が乗る『FF03-Q』に声をかけると、『FF-01』達――正確には従魔化されたアサルトコア(以下『偽AC』と略)を機体の中より見据える。
「さて……ACやキャリアーを模しただけの従魔に、元ライセンサーの実力を見せつけてやるとするか」
今回京四郎は『FF-03Q』の試運転も兼ねている。
「慣らしも兼ねて派手に行くぞ!」
まず京四郎はファングブーストを起動し機体の性能を向上させると、続けてデッドペネトレーションを起動し、『FF-03Q』は一気に偽ACの1体へと迫ると、威力と精度を増した斬艦刀「破軍」を斬り下ろす。
斬撃を浴びた偽ACはその身を裂かれると、さらに京四郎の攻撃は続き、跳ね上がった「破軍」が再度偽ACの身を斜めに切り裂き、京四郎がオーラブレードを起動する前に偽ACは絶命して倒れ、残骸と化す。
「更級 暁都。救援要請に応じ馳せ参じました」
更級 暁都(ma0383)も『アルテュール・ロウダー』の中から試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、機体を飛翔させて偽ACと交戦する。
「アサルトコアの装備品を従魔にするとは……許せませんね」
暁都は生前SALFのライセンサーだったこともあり、ズロイ(mz0063)がアサルトコア(以下『AC』と略)を従魔化したことに内心憤る。
『数が多いAC型従魔を片付け、キャリアー型従魔から引き離します』
通信術式を介し、周囲の僚機にそう伝えた暁都はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、巨神剣「ソードスタッフ」に魔力を収束させることで一時的に威力を向上させる。
続けて暁都はプリズムウォールを起動し、魔法による光の壁を宙に作り出すと、フォールブレイドを起動することで機体を回転させ、偽AC達のただ中へと『アルテュール・ロウダー』は飛びこんだ。
偽AC達と交錯する瞬間、『アルテュール・ロウダー』より「ソードスタッフ」が真横に振り抜かれ、範囲内にいた偽AC達をまとめて薙ぎ払う。
偽AC達は胴を斬られ、さらにその1体へと暁都が追撃を放ち、斬り下ろされた「ソードスタッフ」が偽ACを左右に断ち割ると、2つに割れた偽ACは力尽きて倒れ、動かなくなる。
「今度はACとキャリアーですか。あの男も随分物好きなものです」
西側より『ガルガリン』を進出させた茨木 魅琴(ma0812)は、機体の中でズロイの趣向をそう評すると、CAM飛行ブースターを稼働した『ガルガリン』は宙に駆け上がる。
『これよりAC型従魔を殲滅します』
通信術式を介し、自身の行動を周囲の仲間達に伝達した魅琴は、同じく宙に飛翔した偽ACを射程に捉えていく。
「一気に撃ち抜きましょう」
2体の偽ACを捕捉したところで魅琴はマルチシューターを起動すると共に、あわせて起動した高速演算によって、小型ミサイルランチャーより解き放たれた多数のミサイルは、高度な演算装置が偽AC達の動きを予測した射撃と化して、ロックした偽AC達へと襲いかかる。
宙に爆発の花が咲き、直撃を受けた2体の偽ACはその身が引き裂かれ、高度を低下させる。
さらに魅琴は小型ミサイルランチャーの追撃を放ち、ミサイル群が再び片方の偽ACへと突き刺さると、その威力で身を抉られた偽ACは生命が尽きて墜落し、地面に叩きつけられ沈黙する。
その間にも、同じ西側から透夜(ma0306)の駆るBD-01ACE『フィーニクスACE』が上空より偽AC達との戦闘に加わる。
『キャリアーまでの道を作る。陸上から行くなら使ってくれ』
透夜は通信術式を介して仲間達にそう伝えると、リジェクション・フォースを起動することでナイトメアが持つ防御能力を疑似的に再現する。
そのまま透夜が『フィーニクスACE』を東に飛ばすと、偽AC達の一部が次々と宙に駆けあがり、透夜の機体へと追いすがる。
「さてどれだけ着いて来るか。纏まれば薙ぎ払うのが楽なんだけどね」
透夜はある程度進んだところで機体をくるりと旋回させ、追ってきた偽AC達と相対する。
「やっていることは火事場泥棒だが、その影響がシャレにならないね」
透夜はズロイの所業をそう評しながらもプロトディメントレーザーへのカウントを終わらせて起動し、『フィーニクスACE』は偽AC達へと突っ込んだ。
交錯の瞬間、『フィーニクスACE』より無数のレーザーが偽AC達を撃ち抜き、貫かれた偽AC達が宙で体勢を崩す中を透夜の『フィーニクスACE』がすり抜ける。
さらに透夜は機体を最小半径で旋回させると、偽AC達の1体へとナイトブレイドの一撃を浴びせ、その身を斜めに断ち割った。
2つに割れた偽ACは墜落して地面に衝突し、そのまま残骸と化す。
その間に南西側からも、『ヴァナディース・マルデル』を駆る川澄 静(ma0164)が飛来する。
「やはり、ズロイさまの能力はやっかいですね……」
試作型巨神機飛行ブースターを稼働した静は、機体の中より従魔化された偽AC達を見据え、そう呟いた。
静の視点では、どの世界においても戦力を調達できるズロイの能力は脅威だ。
「今は少しでも、敵の数を減らしておきましょう」
静はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて発動すると、魔力を巨神突撃槍に収束させて一時的に威力を向上したうえで、偽AC達が直線上に並ぶよう『ヴァナディース・マルデル』を走らせる。
「直線状に敵複数、確認……ラインシェイクで突撃しますっ」
追ってくる偽AC達の配置を確認し、機体を反転させた静はラインシェイクを起動すると、突き出された巨神突撃槍より竜巻を巻き起こす。
竜巻は静の正面にいた偽AC達をまとめて薙ぎ払い、その身を引き裂かれた偽AC達は生命を大幅に削られる。
その中の1体へと静は追撃を行い、繰りこまれた巨神突撃槍が偽ACの胸を貫通した。
巨神突撃槍を繰り戻した『ヴァナディース・マルデル』の前で絶命した偽ACは墜落し、地面に叩きつけられ残骸を散乱させた。
●海戦
偽AC達との交戦が続く中、海の方面でも咎人達がキャリアー型従魔(以下『キャリアー』と略)を包囲し始めている。
『アルテュール・パラディン』を駆る歩夢(ma0694)は、水中よりキャリアーへと機体を進ませていたが、時折地上の様子も確認していた。
「へえ。そいつが高柳さんの愛機か。かっこいいじゃん」
京四郎の駆る『FF03-Q』を視認できた歩夢は『格好いい』と称賛する。
「こっちは今のところ使い慣れた巨神機、パラディンでいくよ」
そして歩夢は水中適正スラスターを稼働して『アルテュール・パラディン』を再び水中へと沈ませると、キャリアー周囲にいる偽ACから倒しにかかる。
「せっかくの海上戦だ。水の中からいかせてもらうぜ」
まず歩夢はスナイプポイントを起動し、機体が狙撃態勢に移行したところでブレイズシューターを起動し、バトルライフルより魔力により収束させた火炎弾を発射した。
火炎弾状イデアは偽AC達へと吸い込まれて爆発を巻き起こし、範囲内にいた偽AC達はその衝撃で身を裂かれ、損傷を負う。
さらに歩夢の操作でバトルライフルの銃撃が偽ACの1体へと突き刺さり、偽ACの損傷を深めていく。
「泥棒駄目! 絶対っ! すからね。逃がさないっす」
『ブリッツクリーク・宵』を駆る白玉 纒(ma0300)は、港にいる従魔達を全て倒すつもりだ。
なお纒は依頼の説明を受けた際、事件の発端となった『足を生やして逃げ出した』大型格納庫の映像を見て爆笑している。
――あはははっ! 何すかアレ! 面白いっす!
その大型格納庫は港に来ていないことが判明しているので、この港にいるのはキャリアー型とAC型従魔のみ。
そのことを思い出した纒は意識を切り替えると、今は任務を果たすため『ブリッツクリーク・宵』を操作する。
纒の乗る『ブリッツクリーク・宵』は濃い青をメインとして、原型機にあった他の色もそれぞれ別の色へと変更するカラーリングが施され、コックピットにも手が加えられている。
「ダッシュダッシュダーッシュ!」
纒はプロトディメントレーザーを起動して『ブリッツクリーク・宵』を偽AC達のただ中へと躍り込ませる。
「&ファイアーっす!」
偽AC達の間隙を、すれ違いざまに『ブリッツクリーク・宵』から放たれた無数のレーザーが薙ぎ、偽AC達を次々と撃ち抜いて駆け抜ける。
既に歩夢のブレイズシューターを受け、損傷していた偽AC達はレーザーに貫かれて力尽き、高度を落として水面に激突する。
さらに纒は機体を反転させ、サンダー・レイの一撃を偽ACの1体に命中させると、その一撃で偽ACは力尽きて墜落し、水面に叩きつけられ沈んでいく。
その間にも海上北東側より麻生 遊夜(ma0279)の駆る『高機動型ネルガル』と、鈴鳴 響(ma0317)の駆る『ヴァナディース・黒曜』がそれぞれ行動を開始する。
『目標を視認……随分ゴテゴテと砲塔をつけてやがる。こりゃ火力は侮れんな』
『……ん、こちらも確認。……どこから行っても、大量の砲塔が狙ってくる』
通信術式を介し、遊夜と響は自身が視認できた情報を共有していく。
『こちらは予定通り水中から奴を付け狙う、そっちは頼んだ』
水中適正スラスターを稼働し、水中を進む『高機動型ネルガル』の中より遊夜が響に打診すると、響は機体の中で首をかくりと傾けて思案する。
『……ん。固まらないよう、離れつつ狙うのが……良さそうかな?』
通信術式を介して響は承諾の意を返し、遊夜と連携しながらキャリアーめがけて進撃する。
響が搭乗する『ヴァナディース・黒曜』は、黒曜石めいた色と光沢が特徴とした響専用の機体で、ベースとなった機体に白銀の手甲や脚甲を取り付けるなど、様々な改修が施されている。
『やれやれ、順調に戦力確保しているようだな……本当に厄介な能力だ』
響との連絡を続けながら、遊夜はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、魔力をバトルライフルに収束させると一時的にその威力を高めた状態から撃ち放つ。
放たれた弾丸状イデアが水中を駆け抜け、キャリアー底部に突き刺さるとその威力を炸裂させ、底部を抉り取る。
さらに遊夜は連続でバトルライフルを発射し、2撃目、3撃目もキャリアー底部に命中してその生命を削っていく。
『……ん。本人が現地に居なくても良いのが凄いところ』
通信術式を介して遊夜の意見に首肯した響は、ソードスラストへのカウントを終わらせて起動すると、機体は瞬間的に加速し、その能力が向上する。
そして響は試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、水面を割って『ヴァナディース・黒曜』が上空へと駆けあがる。
ここでキャリアーが猛然と射撃を開始した。
活火山のような火線が水中と空中の両方へと噴出し、遊夜はアクロバットを起動することで『高機動型ネルガル』を沈み込ませ、殺到する火線を回避するとバトルライフルの一射で反撃し、キャリアーの底部をさらに穿つ。
響はスラッシュガードを起動して『ヴァナディース・黒曜』の巨神突撃槍で攻撃を防ぐと、そのままキャリアーへと肉薄し、巨神突撃槍でその船体を突き刺した。
素早く響は引き抜いた巨神突撃槍を三閃し、3度キャリアーの身へと突き通すとその生命を大きく削り取る。
「ちょっと数多くないですかね……」
夕凪 春花(ma0916)は試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、飛行する『ゴラ・アショーカ』の中より現状を見渡し、ため息をつく。
偽AC達の数が気がかりではあるものの、今はやるべきことを成すため春花は進撃する。
「先ずは母艦から潰させていただきます!」
宣告と共に春花はソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、瞬間的な加速によって機体の能力を強化するとキャリアーへと機体を飛翔させる。
「武装と推進系を優先して破壊します」
キャリアーへと肉薄できた春花はラインシェイクを起動すると、『ゴラ・アショーカ』の振るう巨神突撃槍より竜巻が巻き起こり、正面のキャリアーは命中した個所から砲塔部分がひしゃげ、抉り取られる。
さらに春花はキャリアーへと巨神突撃槍を立て続けに突き通してその船体を続けざまに穿ち、その損傷を深めていった。
●陸上は圧倒
地上での戦闘は、奥にいた偽AC達が西へと進撃したことで混戦となった。
「こう、勝手が違うとは解っているが」
京四郎は機体の中より斬りかかる偽ACを見据えながら、ヘルムヴィーゲ・パリングで対抗する。
斬撃を回避できたところで、『FF03-Q』に搭載された特殊EXISによってオーラを纏わせた武器がカウンターの一撃と化して偽ACへと叩きこまれ、その生命を削り取る。
「他機種のスキルも使えるのは何とも違和感があるものだな。今更だが……」
京四郎はそう言いながら、自身の中で折り合いをつけるとオーラブレードを起動し、オーラ状のイメージをまとわせた「破軍」が偽ACへと斬り下ろされると、偽ACの頭部から腰にかけて深々と断ち割った。
偽ACはその一撃で絶命し、左右に割れた残骸が地響きをあげて倒れこむ。
そして京四郎は新手の偽AC達が射程内に来たところでデッドペネトレーションを起動し、『FF-03Q』が港の中を高速で駆け抜ける。
一気に偽ACの1体へと迫った『FF-03Q』より「破軍」が斜めに切りあがり、偽ACの腰から肩にかけて斬痕を刻む。
さらに京四郎の操作で上に抜けた『破軍』が翻って落下し、偽ACの身を深々と斬り裂いた。
立て続けに斬撃を浴びた偽ACは生命が尽きて倒れ、元の残骸と化す。
『ヒーさん、僕達が被弾した際の援護をお願いします』
このとき暁都は『アルテュール・ロウダー』を飛翔させながら、通信術式を介してヒーに援護を要請していた。
その間にも暁都は機体を大きく旋回させ、偽ACより飛来する火線を回避する。
『承知した』
ヒーより承諾の意志が返ってきたところで、暁都は機体の中より残る偽AC達を見据える。
「生前騎乗していたFF-01が相手とは……少し戦いづらいです」
そんな呟きを漏らしながらも、機体を操作する暁都の手はよどみなく、射程内まで偽ACを引き付けたところで暁都はソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、機体を瞬間的に加速することでその能力を向上させる。
続けて暁都はサイドキックを起動すると、偽AC達の1体との距離を詰めた『アルテュール・ロウダー』より蹴撃が叩きつけられ、偽ACの身がひしゃげた。
そのまま暁都はフォールブレイドの起動へと移行し、回転した『アルテュール・ロウダー』が偽AC達へと躍り込み、「ソードスタッフ」が偽AC達をまとめて薙ぎ払う。
既に損傷が蓄積していた偽ACの1体は力尽きて墜落し、残る1体にも暁都の操作で「ソードスタッフ」の斬撃が立て続けに浴びせられる。
その連撃に耐え切れず、絶命した偽ACは落下して地面に衝突し、砕け散る。
「ズロイは何がしたいのでしょうね……」
砕け散ったACの残骸を見下ろしながら、機体の中で暁都はズロイの意図をはかりかねていた。
その南側でも魅琴の駆る『ガルガリン』と偽AC達との交戦が続いている。
「それにしてもこの世界、平和ボケが過ぎませんか?」
機体の中で魅琴は管理体制の甘さに苦言を呈しながらも、眼前の敵達から意識を逸らさない。
「従魔化させたところで所詮はスクラップですよ」
魅琴は通信術式を介し、周囲の僚機と連絡を取り合いながら偽AC達を直線上に並ぶよう誘引していく。
そして魅琴はマテリアルライフルを起動すると、あわせて高速演算も起動することで高度な演算装置が偽AC達の動きを予測し、紫色の光線が正確な一射と化して撃ち放たれる。
宙を閃き飛んだマテリアルライフルの一撃は、偽AC達をまとめて貫き、射抜かれた偽AC達のうち既に損傷が蓄積していた1体は生命を刈り取られて墜落し、地面に激突して残骸を散らす。
「観念なさい」
残る偽ACにも魅琴は小型ミサイルランチャーを撃ち放ち、ミサイルの群れがその威力を叩きつけた。
爆発の中で偽ACは絶命して砕け散り、細かくなった破片が地面に降り注ぐ。
そして西南方面でも静の『ヴァナディース・マルデル』は複数の偽ACと交戦していた。
「簒奪者もこの世界にゲートを作っているということでしょうか……?」
攻防の中で静はその可能性についても目を向ける。
この世界からズロイが(廃棄予定の)キャリアーやアサルトコアを集めようとしている以上、その可能性は低くない。
「その攻撃にあたるわけにはいかないのです!」
静はライトバッシュを起動することで巨神突撃槍に魔力を込め、偽ACからの攻撃を打ち払う。
「このままズロイさまのいいようにはさせませんよ!」
叫びと共に静はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動すると、魔力を巨神突撃槍へと収束させ、能力を向上させた。
続けて静がサイドキックを発動し、攻撃を浴びせてきた偽ACへと『ヴァナディース・マルデル』が飛び込むと、その脚部が唸りを上げて偽ACと激突した。
その衝撃で偽ACがよろめく中、静はさらにラインシェイクを起動して巨神突撃槍を前方へと突き出し、その先より竜巻を巻き起こす。
竜巻は偽AC達を押し包み、既に静の攻撃で生命を削られていた偽AC達はその威力に耐え切れず解体され、破片となって地面にまき散らされた。
●海の敵も掃討
この時点で透夜は追ってきた偽ACを倒し、『フィーニクスACE』を海上まで飛ばしていた。
『海上へ出る奴らを殲滅する。陸側の相手は暫く任せたよ』
通信術式を介して陸上にいる味方にそう伝えると、透夜はガネットファングとサンダーストームへのカウントをそれぞれ続けながら、海上に飛行する偽AC達へと機体を突進させる。
偽AC達は透夜の『フィーニクスACE』に火線を殺到させるが、透夜は『フィーニクスACE』の機動を捻じ曲げて躱し、そのまま偽AC達の間を突破したところで、機体を反転させた。
「残った奴らを一気に叩いてしまおう。従魔化でも補えない位にね」
まず透夜はガネットファングへのカウントを終わらせて発動し、様々な轟音を散らして放たれたマルチミサイル攻撃が、射程内の偽AC達へと突き刺さり、その威力をぶちまける。
「ブースター破壊に水中落下、従魔化はどれだけ対応できるかね」
続いて透夜はサンダーストームへのカウントも終わらせて起動し、『フィーニクスACE』を中心として無数の雷撃が周囲を席巻し、範囲内にいた偽AC達を手荒く打ち据えた。
さらに透夜は損傷を蓄積させた偽ACの1体へとナイトブレイドの一撃を浴びせ、その一撃で生命が尽きた偽ACは墜落し、海面に激突する。
やや離れた空域では、纒の『ブリッツクリーク・宵』が偽AC達と交戦していた。
「おっとシールド展開!」
纒はアブソーブシールドを起動して、空間に生じたひずみが飛来した火線を遮断する。
「ふー、ちょっと焦るっす」
機体の中で纒は安堵の息を漏らすと、それと前後して歩夢からの連絡が通信術式を介し纒へと届く。
『今海上でフリーの敵はどのくらいいるかな?』
問われた纒は機体の中より周囲を見渡すと、通信術式を介して残る敵の数と位置を歩夢に報せていく。
「空を飛ぶのは得意みたいだが、海の中にいる相手への攻撃精度は果たして、どんなもんかな?」
纒より偽AC達の位置を聞いた歩夢は『アルテュール・パラディン』を海中に潜らせたまま、敵がいる方角へと突き進む。
「ズロイさん色んなところで泥棒(?)しまくりっすね」
纒は周囲に残る偽ACや遠ざかるキャリアーを見据えながら、ズロイが戦力増強をはかる意図を考えていた。
(何か大きな企みでもあるんすかね?)
纒は内心そう思いながら機体の中よりプロトディメントレーザーを起動し、『ブリッツクリーク・宵』は残る偽AC達のただ中かへと突撃する。
『ブリッツクリーク・宵』はすれ違いざまに無数のレーザーを偽AC達へと放ち、次々と射抜いていく。
そして歩夢も突撃射撃を起動し、『アルテュール・パラディン』は偽AC達の真下まで移動すると海中からバトルライフルを撃ち放ち、宙へと駆け上がった弾丸状イデアは狙い過たず偽ACの身を貫いた。
挟撃された偽AC達はその威力に耐え切れず墜落し、辛うじて生命が残る偽ACも『ブリッツクリーク・宵』のサンダー・レイと、『アルテュール・パラディン』のバトルライフルがほぼ同時に襲いかかり、その身が貫かれたところで絶命し、落下して海面に激突した。
海上に出た偽AC達が全滅したところで、その動向にも注意を払っていた春花が通信術式を介し、周囲の僚機と連絡をとり始める。
『えっと……撃破した敵の数はこれで全部でしょうか?』
春花は通信術式を介し、現在の戦況を大まかに把握すると、ソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、『ゴラ・アショーカ』を瞬間的に加速することで、一時的に機体性能を向上させた。
「後は手あたり次第破壊して回りましょう」
そして春花は『ゴラ・アショーカ』をキャリアーとの距離を詰めると、巨神突撃槍で船体を貫いた。
『ゴラ・アショーカ』は巨神突撃槍を素早く引き抜き、さらに連続でキャリアーを刺し貫き、その生命を削り取る。
春花からやや離れた海域では、遊夜と響もそれぞれ水中と空中からキャリアーへの挟撃に移りつつあった。
『ここらで少しでも削らんとな』
遊夜としては、ズロイの手駒となりうるものはこの場で可能な限り潰すつもりでいる。
『……ん、従魔にしたら……勝手に集まって、くれるもの……ね』
響も遊夜に賛意を示すと共に、機体の中で『はふぅ』と息を吐く。
通信術式を介し短いやり取りの後、まずは遊夜の『高機動型ネルガル』が海中を突進する。
するとキャリアーは水中に生やした砲塔より射撃を始め、放たれた攻撃が『高機動型ネルガル』やその周囲へと殺到する。
これに対し遊夜はアクロバットを起動して対抗し、『高機動型ネルガル』は水中で転進することでキャリアーからを回避すると、そのままバトルライフルの一射を放ち、キャリアー底部に弾痕を刻んだ。
「火力も範囲もかなりのもんだ、だが対処は可能……」
遊夜はキャリアーからの範囲攻撃にあおられながら、ある意図を秘めて潜航し続ける。
そしてその意図はすぐに明らかとなった。
「……ん、船体に取り付いた。……やられる前に、やらないと」
遊夜がキャリアーの注意を引き付ける間に、響の『ヴァナディース・黒曜』はキャリアーへの着艦に成功していた。
『俺を狙うなら他が動きやすい、逆も然りってな』
『……ん。攻撃はしやすい、とても狙い目』
通信術式を介し、遊夜と響は互いの作戦が成功したと確信する。
『優柔不断が一番損だぜー?』
機体の中で遊夜が不敵な笑みを浮かべると、フォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、バトルライフルへと魔力が収束し、一時的に威力を向上させた状態より連続で引き金を引いた。
『高機動型ネルガル』より放たれた弾丸状イデアが、キャリアー底部を次々と貫いていく。
『……ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?』
底部に遊夜からの攻撃が食い込む中、響も含み笑いと共にソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、『ヴァナディース・黒曜』は瞬間的に加速することで機体性能を強化する。
その状態から響はサイドキックを起動し、『ヴァナディース・黒曜』の脚部をキャリアーの船体に激突させると、蹴撃を受けた個所が大きくひしゃげた。
続けて響が巨神突撃槍の刺突を繰り出すたびに、キャリアーを穿つ深さが増していき、既に損傷が蓄積していたキャリアーは響の連続攻撃に耐え切れず、転覆した。
生命を失ったキャリアーは損傷した箇所よりなだれ込む海水に浮力を奪われ、海底へと沈んでいった。
●殲滅完了
『撃ち洩らしとかないですか?』
キャリアーの沈没を確認した春花は、陸上にいる仲間達と連絡を取り始める。
『撃破確認、お疲れさんだ。それじゃ陸の方の手伝いに行くとしよう』
同じくキャリアー撃沈を確認した遊夜が通信術式を介し、響の労をねぎらうと共に陸上への加勢を提案した。
『……ん、ユーヤもお疲れ様……もう終わってたり、するかも?』
響も遊夜の労をねぎらう中、その可能性に気づいたのか機体の中で首を傾げる。
やがて陸上の方でも全ての偽ACの撃破が確認される。
こうして港における戦闘は咎人達の勝利で幕を閉じた。
港に到着した咎人達は、陸と海の2方向から従魔達との交戦を開始する。
「これに乗るのはナイトメアとの決戦以来か……頼むぞ、FF03-Q」
北西側より進出した高柳 京四郎(ma0078)は自身が乗る『FF03-Q』に声をかけると、『FF-01』達――正確には従魔化されたアサルトコア(以下『偽AC』と略)を機体の中より見据える。
「さて……ACやキャリアーを模しただけの従魔に、元ライセンサーの実力を見せつけてやるとするか」
今回京四郎は『FF-03Q』の試運転も兼ねている。
「慣らしも兼ねて派手に行くぞ!」
まず京四郎はファングブーストを起動し機体の性能を向上させると、続けてデッドペネトレーションを起動し、『FF-03Q』は一気に偽ACの1体へと迫ると、威力と精度を増した斬艦刀「破軍」を斬り下ろす。
斬撃を浴びた偽ACはその身を裂かれると、さらに京四郎の攻撃は続き、跳ね上がった「破軍」が再度偽ACの身を斜めに切り裂き、京四郎がオーラブレードを起動する前に偽ACは絶命して倒れ、残骸と化す。
「更級 暁都。救援要請に応じ馳せ参じました」
更級 暁都(ma0383)も『アルテュール・ロウダー』の中から試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、機体を飛翔させて偽ACと交戦する。
「アサルトコアの装備品を従魔にするとは……許せませんね」
暁都は生前SALFのライセンサーだったこともあり、ズロイ(mz0063)がアサルトコア(以下『AC』と略)を従魔化したことに内心憤る。
『数が多いAC型従魔を片付け、キャリアー型従魔から引き離します』
通信術式を介し、周囲の僚機にそう伝えた暁都はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、巨神剣「ソードスタッフ」に魔力を収束させることで一時的に威力を向上させる。
続けて暁都はプリズムウォールを起動し、魔法による光の壁を宙に作り出すと、フォールブレイドを起動することで機体を回転させ、偽AC達のただ中へと『アルテュール・ロウダー』は飛びこんだ。
偽AC達と交錯する瞬間、『アルテュール・ロウダー』より「ソードスタッフ」が真横に振り抜かれ、範囲内にいた偽AC達をまとめて薙ぎ払う。
偽AC達は胴を斬られ、さらにその1体へと暁都が追撃を放ち、斬り下ろされた「ソードスタッフ」が偽ACを左右に断ち割ると、2つに割れた偽ACは力尽きて倒れ、動かなくなる。
「今度はACとキャリアーですか。あの男も随分物好きなものです」
西側より『ガルガリン』を進出させた茨木 魅琴(ma0812)は、機体の中でズロイの趣向をそう評すると、CAM飛行ブースターを稼働した『ガルガリン』は宙に駆け上がる。
『これよりAC型従魔を殲滅します』
通信術式を介し、自身の行動を周囲の仲間達に伝達した魅琴は、同じく宙に飛翔した偽ACを射程に捉えていく。
「一気に撃ち抜きましょう」
2体の偽ACを捕捉したところで魅琴はマルチシューターを起動すると共に、あわせて起動した高速演算によって、小型ミサイルランチャーより解き放たれた多数のミサイルは、高度な演算装置が偽AC達の動きを予測した射撃と化して、ロックした偽AC達へと襲いかかる。
宙に爆発の花が咲き、直撃を受けた2体の偽ACはその身が引き裂かれ、高度を低下させる。
さらに魅琴は小型ミサイルランチャーの追撃を放ち、ミサイル群が再び片方の偽ACへと突き刺さると、その威力で身を抉られた偽ACは生命が尽きて墜落し、地面に叩きつけられ沈黙する。
その間にも、同じ西側から透夜(ma0306)の駆るBD-01ACE『フィーニクスACE』が上空より偽AC達との戦闘に加わる。
『キャリアーまでの道を作る。陸上から行くなら使ってくれ』
透夜は通信術式を介して仲間達にそう伝えると、リジェクション・フォースを起動することでナイトメアが持つ防御能力を疑似的に再現する。
そのまま透夜が『フィーニクスACE』を東に飛ばすと、偽AC達の一部が次々と宙に駆けあがり、透夜の機体へと追いすがる。
「さてどれだけ着いて来るか。纏まれば薙ぎ払うのが楽なんだけどね」
透夜はある程度進んだところで機体をくるりと旋回させ、追ってきた偽AC達と相対する。
「やっていることは火事場泥棒だが、その影響がシャレにならないね」
透夜はズロイの所業をそう評しながらもプロトディメントレーザーへのカウントを終わらせて起動し、『フィーニクスACE』は偽AC達へと突っ込んだ。
交錯の瞬間、『フィーニクスACE』より無数のレーザーが偽AC達を撃ち抜き、貫かれた偽AC達が宙で体勢を崩す中を透夜の『フィーニクスACE』がすり抜ける。
さらに透夜は機体を最小半径で旋回させると、偽AC達の1体へとナイトブレイドの一撃を浴びせ、その身を斜めに断ち割った。
2つに割れた偽ACは墜落して地面に衝突し、そのまま残骸と化す。
その間に南西側からも、『ヴァナディース・マルデル』を駆る川澄 静(ma0164)が飛来する。
「やはり、ズロイさまの能力はやっかいですね……」
試作型巨神機飛行ブースターを稼働した静は、機体の中より従魔化された偽AC達を見据え、そう呟いた。
静の視点では、どの世界においても戦力を調達できるズロイの能力は脅威だ。
「今は少しでも、敵の数を減らしておきましょう」
静はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて発動すると、魔力を巨神突撃槍に収束させて一時的に威力を向上したうえで、偽AC達が直線上に並ぶよう『ヴァナディース・マルデル』を走らせる。
「直線状に敵複数、確認……ラインシェイクで突撃しますっ」
追ってくる偽AC達の配置を確認し、機体を反転させた静はラインシェイクを起動すると、突き出された巨神突撃槍より竜巻を巻き起こす。
竜巻は静の正面にいた偽AC達をまとめて薙ぎ払い、その身を引き裂かれた偽AC達は生命を大幅に削られる。
その中の1体へと静は追撃を行い、繰りこまれた巨神突撃槍が偽ACの胸を貫通した。
巨神突撃槍を繰り戻した『ヴァナディース・マルデル』の前で絶命した偽ACは墜落し、地面に叩きつけられ残骸を散乱させた。
●海戦
偽AC達との交戦が続く中、海の方面でも咎人達がキャリアー型従魔(以下『キャリアー』と略)を包囲し始めている。
『アルテュール・パラディン』を駆る歩夢(ma0694)は、水中よりキャリアーへと機体を進ませていたが、時折地上の様子も確認していた。
「へえ。そいつが高柳さんの愛機か。かっこいいじゃん」
京四郎の駆る『FF03-Q』を視認できた歩夢は『格好いい』と称賛する。
「こっちは今のところ使い慣れた巨神機、パラディンでいくよ」
そして歩夢は水中適正スラスターを稼働して『アルテュール・パラディン』を再び水中へと沈ませると、キャリアー周囲にいる偽ACから倒しにかかる。
「せっかくの海上戦だ。水の中からいかせてもらうぜ」
まず歩夢はスナイプポイントを起動し、機体が狙撃態勢に移行したところでブレイズシューターを起動し、バトルライフルより魔力により収束させた火炎弾を発射した。
火炎弾状イデアは偽AC達へと吸い込まれて爆発を巻き起こし、範囲内にいた偽AC達はその衝撃で身を裂かれ、損傷を負う。
さらに歩夢の操作でバトルライフルの銃撃が偽ACの1体へと突き刺さり、偽ACの損傷を深めていく。
「泥棒駄目! 絶対っ! すからね。逃がさないっす」
『ブリッツクリーク・宵』を駆る白玉 纒(ma0300)は、港にいる従魔達を全て倒すつもりだ。
なお纒は依頼の説明を受けた際、事件の発端となった『足を生やして逃げ出した』大型格納庫の映像を見て爆笑している。
――あはははっ! 何すかアレ! 面白いっす!
その大型格納庫は港に来ていないことが判明しているので、この港にいるのはキャリアー型とAC型従魔のみ。
そのことを思い出した纒は意識を切り替えると、今は任務を果たすため『ブリッツクリーク・宵』を操作する。
纒の乗る『ブリッツクリーク・宵』は濃い青をメインとして、原型機にあった他の色もそれぞれ別の色へと変更するカラーリングが施され、コックピットにも手が加えられている。
「ダッシュダッシュダーッシュ!」
纒はプロトディメントレーザーを起動して『ブリッツクリーク・宵』を偽AC達のただ中へと躍り込ませる。
「&ファイアーっす!」
偽AC達の間隙を、すれ違いざまに『ブリッツクリーク・宵』から放たれた無数のレーザーが薙ぎ、偽AC達を次々と撃ち抜いて駆け抜ける。
既に歩夢のブレイズシューターを受け、損傷していた偽AC達はレーザーに貫かれて力尽き、高度を落として水面に激突する。
さらに纒は機体を反転させ、サンダー・レイの一撃を偽ACの1体に命中させると、その一撃で偽ACは力尽きて墜落し、水面に叩きつけられ沈んでいく。
その間にも海上北東側より麻生 遊夜(ma0279)の駆る『高機動型ネルガル』と、鈴鳴 響(ma0317)の駆る『ヴァナディース・黒曜』がそれぞれ行動を開始する。
『目標を視認……随分ゴテゴテと砲塔をつけてやがる。こりゃ火力は侮れんな』
『……ん、こちらも確認。……どこから行っても、大量の砲塔が狙ってくる』
通信術式を介し、遊夜と響は自身が視認できた情報を共有していく。
『こちらは予定通り水中から奴を付け狙う、そっちは頼んだ』
水中適正スラスターを稼働し、水中を進む『高機動型ネルガル』の中より遊夜が響に打診すると、響は機体の中で首をかくりと傾けて思案する。
『……ん。固まらないよう、離れつつ狙うのが……良さそうかな?』
通信術式を介して響は承諾の意を返し、遊夜と連携しながらキャリアーめがけて進撃する。
響が搭乗する『ヴァナディース・黒曜』は、黒曜石めいた色と光沢が特徴とした響専用の機体で、ベースとなった機体に白銀の手甲や脚甲を取り付けるなど、様々な改修が施されている。
『やれやれ、順調に戦力確保しているようだな……本当に厄介な能力だ』
響との連絡を続けながら、遊夜はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、魔力をバトルライフルに収束させると一時的にその威力を高めた状態から撃ち放つ。
放たれた弾丸状イデアが水中を駆け抜け、キャリアー底部に突き刺さるとその威力を炸裂させ、底部を抉り取る。
さらに遊夜は連続でバトルライフルを発射し、2撃目、3撃目もキャリアー底部に命中してその生命を削っていく。
『……ん。本人が現地に居なくても良いのが凄いところ』
通信術式を介して遊夜の意見に首肯した響は、ソードスラストへのカウントを終わらせて起動すると、機体は瞬間的に加速し、その能力が向上する。
そして響は試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、水面を割って『ヴァナディース・黒曜』が上空へと駆けあがる。
ここでキャリアーが猛然と射撃を開始した。
活火山のような火線が水中と空中の両方へと噴出し、遊夜はアクロバットを起動することで『高機動型ネルガル』を沈み込ませ、殺到する火線を回避するとバトルライフルの一射で反撃し、キャリアーの底部をさらに穿つ。
響はスラッシュガードを起動して『ヴァナディース・黒曜』の巨神突撃槍で攻撃を防ぐと、そのままキャリアーへと肉薄し、巨神突撃槍でその船体を突き刺した。
素早く響は引き抜いた巨神突撃槍を三閃し、3度キャリアーの身へと突き通すとその生命を大きく削り取る。
「ちょっと数多くないですかね……」
夕凪 春花(ma0916)は試作型巨神機飛行ブースターを稼働し、飛行する『ゴラ・アショーカ』の中より現状を見渡し、ため息をつく。
偽AC達の数が気がかりではあるものの、今はやるべきことを成すため春花は進撃する。
「先ずは母艦から潰させていただきます!」
宣告と共に春花はソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、瞬間的な加速によって機体の能力を強化するとキャリアーへと機体を飛翔させる。
「武装と推進系を優先して破壊します」
キャリアーへと肉薄できた春花はラインシェイクを起動すると、『ゴラ・アショーカ』の振るう巨神突撃槍より竜巻が巻き起こり、正面のキャリアーは命中した個所から砲塔部分がひしゃげ、抉り取られる。
さらに春花はキャリアーへと巨神突撃槍を立て続けに突き通してその船体を続けざまに穿ち、その損傷を深めていった。
●陸上は圧倒
地上での戦闘は、奥にいた偽AC達が西へと進撃したことで混戦となった。
「こう、勝手が違うとは解っているが」
京四郎は機体の中より斬りかかる偽ACを見据えながら、ヘルムヴィーゲ・パリングで対抗する。
斬撃を回避できたところで、『FF03-Q』に搭載された特殊EXISによってオーラを纏わせた武器がカウンターの一撃と化して偽ACへと叩きこまれ、その生命を削り取る。
「他機種のスキルも使えるのは何とも違和感があるものだな。今更だが……」
京四郎はそう言いながら、自身の中で折り合いをつけるとオーラブレードを起動し、オーラ状のイメージをまとわせた「破軍」が偽ACへと斬り下ろされると、偽ACの頭部から腰にかけて深々と断ち割った。
偽ACはその一撃で絶命し、左右に割れた残骸が地響きをあげて倒れこむ。
そして京四郎は新手の偽AC達が射程内に来たところでデッドペネトレーションを起動し、『FF-03Q』が港の中を高速で駆け抜ける。
一気に偽ACの1体へと迫った『FF-03Q』より「破軍」が斜めに切りあがり、偽ACの腰から肩にかけて斬痕を刻む。
さらに京四郎の操作で上に抜けた『破軍』が翻って落下し、偽ACの身を深々と斬り裂いた。
立て続けに斬撃を浴びた偽ACは生命が尽きて倒れ、元の残骸と化す。
『ヒーさん、僕達が被弾した際の援護をお願いします』
このとき暁都は『アルテュール・ロウダー』を飛翔させながら、通信術式を介してヒーに援護を要請していた。
その間にも暁都は機体を大きく旋回させ、偽ACより飛来する火線を回避する。
『承知した』
ヒーより承諾の意志が返ってきたところで、暁都は機体の中より残る偽AC達を見据える。
「生前騎乗していたFF-01が相手とは……少し戦いづらいです」
そんな呟きを漏らしながらも、機体を操作する暁都の手はよどみなく、射程内まで偽ACを引き付けたところで暁都はソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、機体を瞬間的に加速することでその能力を向上させる。
続けて暁都はサイドキックを起動すると、偽AC達の1体との距離を詰めた『アルテュール・ロウダー』より蹴撃が叩きつけられ、偽ACの身がひしゃげた。
そのまま暁都はフォールブレイドの起動へと移行し、回転した『アルテュール・ロウダー』が偽AC達へと躍り込み、「ソードスタッフ」が偽AC達をまとめて薙ぎ払う。
既に損傷が蓄積していた偽ACの1体は力尽きて墜落し、残る1体にも暁都の操作で「ソードスタッフ」の斬撃が立て続けに浴びせられる。
その連撃に耐え切れず、絶命した偽ACは落下して地面に衝突し、砕け散る。
「ズロイは何がしたいのでしょうね……」
砕け散ったACの残骸を見下ろしながら、機体の中で暁都はズロイの意図をはかりかねていた。
その南側でも魅琴の駆る『ガルガリン』と偽AC達との交戦が続いている。
「それにしてもこの世界、平和ボケが過ぎませんか?」
機体の中で魅琴は管理体制の甘さに苦言を呈しながらも、眼前の敵達から意識を逸らさない。
「従魔化させたところで所詮はスクラップですよ」
魅琴は通信術式を介し、周囲の僚機と連絡を取り合いながら偽AC達を直線上に並ぶよう誘引していく。
そして魅琴はマテリアルライフルを起動すると、あわせて高速演算も起動することで高度な演算装置が偽AC達の動きを予測し、紫色の光線が正確な一射と化して撃ち放たれる。
宙を閃き飛んだマテリアルライフルの一撃は、偽AC達をまとめて貫き、射抜かれた偽AC達のうち既に損傷が蓄積していた1体は生命を刈り取られて墜落し、地面に激突して残骸を散らす。
「観念なさい」
残る偽ACにも魅琴は小型ミサイルランチャーを撃ち放ち、ミサイルの群れがその威力を叩きつけた。
爆発の中で偽ACは絶命して砕け散り、細かくなった破片が地面に降り注ぐ。
そして西南方面でも静の『ヴァナディース・マルデル』は複数の偽ACと交戦していた。
「簒奪者もこの世界にゲートを作っているということでしょうか……?」
攻防の中で静はその可能性についても目を向ける。
この世界からズロイが(廃棄予定の)キャリアーやアサルトコアを集めようとしている以上、その可能性は低くない。
「その攻撃にあたるわけにはいかないのです!」
静はライトバッシュを起動することで巨神突撃槍に魔力を込め、偽ACからの攻撃を打ち払う。
「このままズロイさまのいいようにはさせませんよ!」
叫びと共に静はフォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動すると、魔力を巨神突撃槍へと収束させ、能力を向上させた。
続けて静がサイドキックを発動し、攻撃を浴びせてきた偽ACへと『ヴァナディース・マルデル』が飛び込むと、その脚部が唸りを上げて偽ACと激突した。
その衝撃で偽ACがよろめく中、静はさらにラインシェイクを起動して巨神突撃槍を前方へと突き出し、その先より竜巻を巻き起こす。
竜巻は偽AC達を押し包み、既に静の攻撃で生命を削られていた偽AC達はその威力に耐え切れず解体され、破片となって地面にまき散らされた。
●海の敵も掃討
この時点で透夜は追ってきた偽ACを倒し、『フィーニクスACE』を海上まで飛ばしていた。
『海上へ出る奴らを殲滅する。陸側の相手は暫く任せたよ』
通信術式を介して陸上にいる味方にそう伝えると、透夜はガネットファングとサンダーストームへのカウントをそれぞれ続けながら、海上に飛行する偽AC達へと機体を突進させる。
偽AC達は透夜の『フィーニクスACE』に火線を殺到させるが、透夜は『フィーニクスACE』の機動を捻じ曲げて躱し、そのまま偽AC達の間を突破したところで、機体を反転させた。
「残った奴らを一気に叩いてしまおう。従魔化でも補えない位にね」
まず透夜はガネットファングへのカウントを終わらせて発動し、様々な轟音を散らして放たれたマルチミサイル攻撃が、射程内の偽AC達へと突き刺さり、その威力をぶちまける。
「ブースター破壊に水中落下、従魔化はどれだけ対応できるかね」
続いて透夜はサンダーストームへのカウントも終わらせて起動し、『フィーニクスACE』を中心として無数の雷撃が周囲を席巻し、範囲内にいた偽AC達を手荒く打ち据えた。
さらに透夜は損傷を蓄積させた偽ACの1体へとナイトブレイドの一撃を浴びせ、その一撃で生命が尽きた偽ACは墜落し、海面に激突する。
やや離れた空域では、纒の『ブリッツクリーク・宵』が偽AC達と交戦していた。
「おっとシールド展開!」
纒はアブソーブシールドを起動して、空間に生じたひずみが飛来した火線を遮断する。
「ふー、ちょっと焦るっす」
機体の中で纒は安堵の息を漏らすと、それと前後して歩夢からの連絡が通信術式を介し纒へと届く。
『今海上でフリーの敵はどのくらいいるかな?』
問われた纒は機体の中より周囲を見渡すと、通信術式を介して残る敵の数と位置を歩夢に報せていく。
「空を飛ぶのは得意みたいだが、海の中にいる相手への攻撃精度は果たして、どんなもんかな?」
纒より偽AC達の位置を聞いた歩夢は『アルテュール・パラディン』を海中に潜らせたまま、敵がいる方角へと突き進む。
「ズロイさん色んなところで泥棒(?)しまくりっすね」
纒は周囲に残る偽ACや遠ざかるキャリアーを見据えながら、ズロイが戦力増強をはかる意図を考えていた。
(何か大きな企みでもあるんすかね?)
纒は内心そう思いながら機体の中よりプロトディメントレーザーを起動し、『ブリッツクリーク・宵』は残る偽AC達のただ中かへと突撃する。
『ブリッツクリーク・宵』はすれ違いざまに無数のレーザーを偽AC達へと放ち、次々と射抜いていく。
そして歩夢も突撃射撃を起動し、『アルテュール・パラディン』は偽AC達の真下まで移動すると海中からバトルライフルを撃ち放ち、宙へと駆け上がった弾丸状イデアは狙い過たず偽ACの身を貫いた。
挟撃された偽AC達はその威力に耐え切れず墜落し、辛うじて生命が残る偽ACも『ブリッツクリーク・宵』のサンダー・レイと、『アルテュール・パラディン』のバトルライフルがほぼ同時に襲いかかり、その身が貫かれたところで絶命し、落下して海面に激突した。
海上に出た偽AC達が全滅したところで、その動向にも注意を払っていた春花が通信術式を介し、周囲の僚機と連絡をとり始める。
『えっと……撃破した敵の数はこれで全部でしょうか?』
春花は通信術式を介し、現在の戦況を大まかに把握すると、ソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、『ゴラ・アショーカ』を瞬間的に加速することで、一時的に機体性能を向上させた。
「後は手あたり次第破壊して回りましょう」
そして春花は『ゴラ・アショーカ』をキャリアーとの距離を詰めると、巨神突撃槍で船体を貫いた。
『ゴラ・アショーカ』は巨神突撃槍を素早く引き抜き、さらに連続でキャリアーを刺し貫き、その生命を削り取る。
春花からやや離れた海域では、遊夜と響もそれぞれ水中と空中からキャリアーへの挟撃に移りつつあった。
『ここらで少しでも削らんとな』
遊夜としては、ズロイの手駒となりうるものはこの場で可能な限り潰すつもりでいる。
『……ん、従魔にしたら……勝手に集まって、くれるもの……ね』
響も遊夜に賛意を示すと共に、機体の中で『はふぅ』と息を吐く。
通信術式を介し短いやり取りの後、まずは遊夜の『高機動型ネルガル』が海中を突進する。
するとキャリアーは水中に生やした砲塔より射撃を始め、放たれた攻撃が『高機動型ネルガル』やその周囲へと殺到する。
これに対し遊夜はアクロバットを起動して対抗し、『高機動型ネルガル』は水中で転進することでキャリアーからを回避すると、そのままバトルライフルの一射を放ち、キャリアー底部に弾痕を刻んだ。
「火力も範囲もかなりのもんだ、だが対処は可能……」
遊夜はキャリアーからの範囲攻撃にあおられながら、ある意図を秘めて潜航し続ける。
そしてその意図はすぐに明らかとなった。
「……ん、船体に取り付いた。……やられる前に、やらないと」
遊夜がキャリアーの注意を引き付ける間に、響の『ヴァナディース・黒曜』はキャリアーへの着艦に成功していた。
『俺を狙うなら他が動きやすい、逆も然りってな』
『……ん。攻撃はしやすい、とても狙い目』
通信術式を介し、遊夜と響は互いの作戦が成功したと確信する。
『優柔不断が一番損だぜー?』
機体の中で遊夜が不敵な笑みを浮かべると、フォゾンエンハンサーへのカウントを終わらせて起動し、バトルライフルへと魔力が収束し、一時的に威力を向上させた状態より連続で引き金を引いた。
『高機動型ネルガル』より放たれた弾丸状イデアが、キャリアー底部を次々と貫いていく。
『……ふふっ、うふふ……さぁ、遊ぼう?』
底部に遊夜からの攻撃が食い込む中、響も含み笑いと共にソードスラストへのカウントを終わらせて起動し、『ヴァナディース・黒曜』は瞬間的に加速することで機体性能を強化する。
その状態から響はサイドキックを起動し、『ヴァナディース・黒曜』の脚部をキャリアーの船体に激突させると、蹴撃を受けた個所が大きくひしゃげた。
続けて響が巨神突撃槍の刺突を繰り出すたびに、キャリアーを穿つ深さが増していき、既に損傷が蓄積していたキャリアーは響の連続攻撃に耐え切れず、転覆した。
生命を失ったキャリアーは損傷した箇所よりなだれ込む海水に浮力を奪われ、海底へと沈んでいった。
●殲滅完了
『撃ち洩らしとかないですか?』
キャリアーの沈没を確認した春花は、陸上にいる仲間達と連絡を取り始める。
『撃破確認、お疲れさんだ。それじゃ陸の方の手伝いに行くとしよう』
同じくキャリアー撃沈を確認した遊夜が通信術式を介し、響の労をねぎらうと共に陸上への加勢を提案した。
『……ん、ユーヤもお疲れ様……もう終わってたり、するかも?』
響も遊夜の労をねぎらう中、その可能性に気づいたのか機体の中で首を傾げる。
やがて陸上の方でも全ての偽ACの撃破が確認される。
こうして港における戦闘は咎人達の勝利で幕を閉じた。





