ゲドゥルとカルメン 雪と温泉
天田洋介
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シナリオ形態
ショート
難易度
Easy
判定方法
カジュアル
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100 SC
参加人数
4人~8人
優先抽選
50 SC
報酬
500 EXP
10,000 GOLD
10 FAVOR
相談期間
4日
抽選締切
2024/03/08 10:30
プレイング締切
2024/03/12 10:30
リプレイ完成予定
2024/03/22
関連シナリオ
  1. オープニング
  2. -
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ

 早朝のイデアゲート近く。ゲドゥルたちが待っていると、遠くに人影が浮かび上がった。
「やっほーまた来た! っていつもいってるよね! ヤバい! ウケる!」
 最初にやって来たのは翠鈴(ma1446)である。
「今日はいつもの湖じゃないの? 雪山温泉? マジで? ヤバい!」
 翠鈴がゲドゥルから行き先について教えてもらっていると、何かが高速で通り過ぎていく。勢いがつきすぎて止まれなかった吉兆(ma0987)は、即座に引き返してきた。
「みんなで温泉旅行とか最高じゃんゲドゥルさん……!」
 吉兆はこの日をとても楽しみにしていたようである。
「ゲドゥルさん、カルメンさん。お誘い、ありがとうございます」
「あ、いや」
 次に現れた更級 暁都(ma0383)の丁寧なお辞儀に、カルメンは少しだけ戸惑う。その様子をカメラに収めたのが、参加者4番目のエイリアス(ma0037)であった。
「挨拶が遅れました。お声を掛けて下さりありがとうございます」
 エイリアスは旅の間、思い出を残すために写真を撮るという。ゲドゥルは握手で感謝を表した。
 続いての登場は、紫明(ma1226)とイサラ(ma0832)だ。
「冬の行楽なんて嬉しいじゃない、有難ね、ゲドゥル、カルメン。温泉って事なら普段の疲れも癒せそうね? しかも酒と旨い物付きで」
「普段街ん中で暮らしてるから、雪山の温泉宿とか最高っスよね!」
 紫明とイサラも、とても楽しみにしていたようである。
 最後は紅緒(ma0215)と藍紗(ma0229)がやってきた。
「今日は仕事じゃなくて遊びに行けるの? ありがとうげどる! かるめん!」
「ゲドゥル殿らは顔が広いのう? 異国の横文字の名ばかりと思うておったが、山田とは。山に田、何やら耳に馴染んだ音じゃ、ふふ」
 紅緒や藍紗とも挨拶を交わしたところで出発である。
 カルメンとゲドゥルが雪合戦をしたいと望んだところ、旅の仲間たちは大いに張り切り出した。


 ゲートを抜けた先の大地は雪に覆われていた。近くの丸太小屋には管理人がいて、ゲドゥルが山田温泉宿行きのためにスノーモービルを人数分借りる。
「全力でカルメンさんたちを護るぜ!一人でもケガなんかしたら、楽しみが半減どころじゃなくなっちゃうからな!」
 吉兆はゴーグルをおろして目を覆う。
「イタズラ好きのウサギさんがいるらしいですね。警戒しないといけません」
 エイリアスは吉兆に話しかけながらシートに座り、ハンドルの調子を確かめる。
「バイクの要領で運転すれば良いでしょうか……?」
「動かし方はほぼ同じ。すぐに慣れるさ」
 更級はカルメンの操作を真似て、自身もエンジンを始動させた。
「スノーモービルってチョーおもしろそうー!」
 翠鈴は自信なさげだったが、ゲドゥルに教えてもらってすぐに理解する。後ろのボックスに荷が入っているので、温背の人に渡して欲しいとのことだった。
「雪兎ってどんなんスかね? カワイーけどおっかねーってカンジ?」
「地図で雪兎が出て来そうな辺りを押さえてある。もう少し登った辺りが怪しいんよ」
 イサラと紫明はアクセルを軽く吹かして暖気させる。雪兎の分布については、紫明だけでなくエイリアスも把握していた。
「これがアクセルね」
 紅緒が試したところ、スノーモービルは急発進した。
「紅緒よ、そんなに急くではないぞ」
 藍紗が紅緒を追いかけていく。他の一同もあわせて山登りの開始である。
 雪が降ったばかりなのか、望む斜面に轍は一切無かった。雪化粧した針葉樹の間を通り抜けていくうちに、最初はぎこちない操縦だった者もすぐに慣れていく。
 エイリアスと紫明がほぼ同時に片手を挙げた。
 雪兎がよく見かけられる生息地域に入った合図である。ゲドゥルとカルメンが乗るスノーモービルを、仲間たちで取り囲むようにして走った。
「追いかけてきます」
 エイリアスが後方を指さしたので、多くの者がバックミラーを覗いた。数匹の雪兎らしき何かが、高く跳ねながら追いつこうとしている。
「進行方向右からも何羽か。挟み撃ちにされたらたまんないし、止まって脅したほうがいいかもね」
 紫明の案に全員が賛成して、斜面が緩やかになった付近で停止した。
「悪戯兎はフォローガードにて阻ませて頂くゆえ安心を、御二方」
「来たわね! うさぎだからって容赦はしないわよ!」
 藍紗と紅緒は自らフォローガードで盾となり、雪兎によるゲドゥルとカルメンへのアタックを阻止する。
「その程度で負けないっす!」
 イサラもフォローガードで受けとめつつ、逆に雪兎を突進でハネ飛ばした。
「雪ウサちゃんアタックしてゴメンねー! おうちにお帰り!」
 翠鈴も拳を輝かせた迎撃ストレートで、次々と雪兎を弾いていく。
「もっとカワイイの想像してたけど、襲撃とかエグいな!」
 吉兆も躱さずに敢えて身体を張って阻止していった。ぶつかったとしても死を感じる程ではなく、適当にいなして戦意を喪失させていった。
「イタズラ好きな雪兎のようで……。行く手を遮らないでください」
 更級は雪兎の背後に回りこんでから人魚の声を浴びせて、ふらふらにさせる。反撃を食らった雪兎たちが次々と敗走していく。
「こんなもんかね。仕事はキッチリこなしとかないと、この先の旨いもんが味気なくなっからね、くはは」
 紫明がフォローガードで弾いた雪兎も、そそくさと逃げていった。
「辺りには一羽もいないみたいです」
 エイリアスがカメラで周囲を確認してくれる。それからは何事もなく、山の中腹にある山田温泉宿に到着したのだった。


 宿部屋を決めてから昼食をとり、午後からは自由時間となる。ゲドゥルとカルメンが希望した通り、雪合戦が行われることとなった。雪積もる広い庭に全員が集まる。
「雪合戦っスか! そんなら人間種の意地を見せてやるっスよ!」
「雪合戦がしたいってのは、雪玉を喰らいたくて堪らないってこと? なんつってね、くはは」
 イサラや紫明は大きく身体を捻らせながら、準備運動に余念がない。
「げどる、かるめん、剛力種の雪玉は痛いから、覚悟してね?」
「雪合戦ならば、我ら侍を名乗るものとしては避けて通れぬ申し出じゃな。刀折れ、矢尽きたならば、たとえ雪でも得物として戦えと、もののふの心得にはあるからのう? 手加減無用にて臨ませて頂くとしようかの、ふふ」
 紅緒と藍紗は腰に両手を当てて、やる気満々のポーズだ。
「赤い雪玉の吉兆と呼ばれた俺に、ソレを言っちゃったからには覚悟して貰わないとな!」
 吉兆の瞳は燃えるようにぎらついている。
 ルールは簡単で、スタートからの5分間は雪玉を握るための準備時間だ。その後はそれぞれが降参するまでのバトルロワイヤルである。
「それでは、この岩の上に置いた砂時計の砂が落ちきったら雪合戦の開始です」
 ゲドゥルが5秒のカウントダウンに合わせて、砂時計をひっくり返す。そして各々に雪玉を握っていく。
「雪合戦はセンパイも後輩もないからフルパワーで行くよー!」
 翠鈴が握った雪玉は、まるでおむすびのようだ。
「これでいいです」
 エイリアスはざっと仲間たちをカメラに収めてから、雪玉作り。小さな手でも投げられるような大きさで仕上げていった。
「んっ? あれって」
 吉兆が雪玉を置いたとき、枯れ草の茂みに雪兎を見かける。イタズラしようか迷ってそうな様子なので「食っちゃうぞー!」と脅してみた。するとまさに脱兎の如く姿を消したが、翠鈴とエイリアスに目撃される。ちょっと恥ずかしかった吉兆であった。
「これは懐かしいですね……。おもいっきり楽しみましょう。やるからには本気でいきますよ」
 更級は淀みない動きで、わずかな間に雪玉の山を築いていく。その早さは随一である。
「先手必勝!」
 砂時計が落ちきった瞬間、カルメンが大きく振りかぶって雪玉を投げる。見事吉兆の顔面に命中。剥がれるのように雪が落ちると、彼の顔が真っ赤になっていた。
「赤い雪玉のアダ名は、顔面に食らって赤く染めた事に由来する」
 ぼりぼりと頬をかいてから吠えた吉兆は、やたらめったらに雪玉を投げ始める。Tホールで狙った相手の背後に移動。その上で雪玉二連投など、雪合戦に全力を注いだ。
(え? 大人げない? 剛力種の弾丸みたいな雪玉食らっちゃうかもしれないのに? ハンデ! これはハンデだから!)
 そう心の中で呟いた吉兆である。
「負けないんだから!」
 紅緒は雪玉を剛速球で投げた。
「その調子じゃ」
 藍紗が手渡すおかげで、まるで連射のように紅緒の雪玉が飛んでいく。
 似たようなことはゲドゥルたちもやっていた。彼が雪玉係を担当しているので、カルメンも凄まじい連射速度であった。
「いたっ! やったわね! お返しよ!」
「その言葉、そっくり返す」
 紅緒とカルメンが放った雪玉が空中でぶつかり合い、白煙のように散り散りとなった。
「もーあっちこっちから飛んできてワケ分らんくなってるじゃん! こーなりゃヤケだー! そりゃー! たのしー!」
 雪玉を数発を四方八方から当てられて、翠鈴は笑いながらバーサーカーモードに入る。
「ちょいといい?」
 紫明はこっそりと藍紗に近づいて、指揮を一任した。挑まれたからにはゲドゥルとカルメンを自分たちで仕留めたいと説得したのである。事前に決めたわけではなかったが、陣営は自然と二手に分かれていく。
 紅緒とイサラが雪玉を抱えて、ゲドゥル側へと迫った。
(そうそう、私よかランクが上の紅緒とイサラを盾に、ズルい? これも戦略よ戦略)
 後方の紫明はコツとして一瞬だけ強く握ってから、雪玉を投げる。紅緒やイサラに気を取られたのか面白いように当たり、特に吉兆が転んでいた。
「つか紫明サン! アタシと紅緒っちの事タテにしてねっスか?! ズルい!」
 イサラはエクストーラスとトリニティフォースを駆使して、雪玉を投げていた。しかし前線故に反撃も凄まじく、すでに身体の三分の一が雪まみれの状態である。
「向こうは作戦を立てていますね。注意しないと」
「こちらは物量でいきましょう」
 エイリアスと更級の意見を採りいれて、ゲドゥルが指示を出す。「うりゃうりゃ」と声を合わせて、翠鈴と吉兆は雪玉の大砲と化していた。
 やがて一人がゲーム的に討ち死にし、次々と降参していく。残ったのは藍紗とゲドゥルだけ。

 ――合戦と 名づくのならば 雪打ちの 此処に示さん もののふの意地
 ――打てや打て 投げ討ち取れや ともがらの 遊び敵と 言ふぞまさしき

 最終的に立っていたのは藍紗のみだ。
 詠みを解説するならば「兵は拙速と尊ぶ、ならば直ちに雪玉を拵え、擲つが最良の策じゃ」とのことであった。


 存分に遊んだところ日が傾こうとしていた。晩食にはまだ時間があったので、一同で露天風呂に繰りだす。
「こいつばっかりは出掛けないと楽しめないのよね、温泉ってさ」
 湯を浴びてから、紫明はゆっくりと温泉に浸かる。咎人であったとしても、温泉の癒し効果は別格であった。
「そうっス。こーいう場所にこねーとなんスよね。いーっスね……シミるっス……。この後の料理も楽しみっスよ」
 イサラは掌で白いにごり湯を掬って顔を洗う。
「遊戯の後とはいえ凍えた身に温泉の熱きは沁み入るのう…好い」
「温泉って、いつまでも入ってられる気がする……寝そう」
「よいのか? この後は豪華海鮮尽くしの夕餉じゃ」
「そうだった。温泉宿っていうことは、おいしいものも食べられるっていう事よね? 楽しみ!」
 藍紗と紅緒ものんびりと温泉に浸かってくつろいでいた。
 少し遅れてきた翠鈴は、大急ぎでかけ湯をしてから「ざぶっ!」と湯に浸かる。
「夏のバカンスもいーけど冬のバカンスもいーよねーぇ……」
 表情がほぐれて、湯に溶けていくような翠鈴であった。
「こちらの湯は美肌効果があるみたいですよ」
「それはいいことを聞いた」
 エイリアスと並んで湯に浸かりながら、カルメンは世間話に花を咲かせた。

 男湯の暖簾を潜った者たちも、温泉をくつろいている。
「雪合戦でハッチャケすぎた体を温泉でいたわる……最高だな」
 吉兆は手拭いを頭に乗せながら湯船に漂う。顔の赤みもかなりひいていた。
「ゲドゥルさんたちが、こちらの宿に海の幸を卸していると聞いています」
「そうなんですよ」
 更級に訊ねられたゲドゥルは、この温泉宿との経緯を語る。
 温泉宿の山田は流刑街のどこかの店で、ゲドゥルが卸した魚介をのよさを知ったらしい。そしてわざわざ探しだしてまで、仕入れたいと望んだのだという。
「ゲドゥルさんのところの魚介は楽しみだけど、蟹はあるかな?」
「卸したばかりですから、きっとありますよ。楽しみにしていてください」
 吉兆はゲドゥルの返答に破顔してすぐ「痛っ」と呟く。雪合戦ではっちゃけ過ぎたようでそこら中が痛い。
 旅の一行はゆったりした気分で、温泉の雪景色を堪能するのだった。


 温泉で身も心もリフレッシュしたところで晩食となる。
「タタミの部屋っていいよね! エモい!」
 浴衣姿に着替えた翠鈴は、テーブルに並べられた料理に釘づけだ。綺麗に飾り付けられた海鮮の日本料理はどれも美味しそうである。
 全員が席に着いたところで晩食の宴が始まった。
「これなんだろ? でもいいか。全部食べちゃう! おっけーおっけー!」
 翠鈴が片っ端から頬張ると、知っている食材も含まれている。モグモグと食べて当てていくうちに、それが楽しくなっていく。
「タラバ、ズワイ、ケガニ……鍋と茹ででカニづくしだぜ……! 最高……!」
 吉兆は希望通りの蟹で大喜びだ。大きな口を開けてパクリと頂いていく。
「この焼きガニ、美味しいです」
 エイリアスは料理を作って頂いたことに感謝しながら味わっていった。
 吉兆がじっと見つめていたので、できたての焼きガニをお裾分け。すると蟹鍋を椀によそってくれた。大きな舟盛りが三つも用意されており、どのお刺身もとても美味しい。
「旬の魚とか詳しくないからげどるとかるめんも教えて、藍紗も!」
「紅緒、冬の醍醐味じゃ。私も手伝うゆえ、たんと食すがよい。ふふ」
 紅緒は藍紗のオススメでタラ鍋とカニとヒラメと頂いた。その際に藍紗が蟹の殻を剥いてくれる。
(母が如く…否、姉が如く、の)
 藍紗は美味しそうに食している紅緒を眺めて微笑んだ。自らも同じ料理を食べ勧めていく。特に寒ヒラメの刺身は絶品だった。
 紅緒は大きなエビフライも味わい、さらにブリの照り焼きも。ご飯はすでに2杯目である。
「この寒い時期、ブリも旬ですよ」
「うまいねぇ」
 ゲドゥルとカルメンに勧められて、紅緒はブリの刺身を口の中へ。すると瞳を輝かせて頷いていた。
「藍紗オススメのヒラメにマグロ、ブリもイイわよね。旬の魚」
「あったかいもんは身も心もあったまっていーっスよね藍紗サン!」
 一通り味わったところで、紫明とイサラは蟹鍋を堪能していく。身がしっかりと詰まっていて、「さすがは厳選食材」と二人して誉めたところ、ゲドゥルが照れていた。
 イサラはお一人様用の海鮮鍋も頂いている。大鍋では食べきれず、また紅緒と一緒だと食い尽くされそうだからといった理由からだ。
 紫明は熱燗が届いたところで、舟盛りの刺身を摘まみにして一献である。隣に座っているイサラにも勧めて、ゲドゥルたちも声をかけた。
「こりゃいい酒だ。どこで作っているんだろうねぇ」
「すっきりした味わいですね」
 カルメンやゲドゥルもいける口で、紫明は喜んで酌をする。新たな料理が運ばれてくる度に、紅緒と翠鈴が喜んでいた。
「どうです、楽しんでますか」
「魚介尽くしの晩餐。温泉といえば、これですね」
 ゲドゥルは焼けたばかりの牡蛎と蛤を皿に取って更級に渡す。その味の美味さに舌鼓を打つ。
「これも美味いねぇ。どうだい?」
 カルメンからの勧めで、更級は握り鮨も味わった。どれもよかったが、イカの甘味が特に鮮烈さを覚える。
 海鮮料理を存分に楽しんで、宴が終わったのはそれから一時間後だ。眠る前にもう一度温泉に入る者もいたという。
「明日の自由時間は、漢・吉兆のスキーテクニックを見せつけちゃうぜ」
 呟いた吉兆の背中に滴が落ちてきて、露天風呂に大声が響き渡る。
 そして一同は朝までぐっすりと眠りに就いたのだった。


 二日目の午前中は自由時間である。
 紅緒は藍紗を連れて温泉宿から野外へ。辺りを見渡すと、昨日雪合戦で遊んだ広場とは別にゲレンデが併設されていた。
「そりとかも面白そうだけど、昨日食べ過ぎちゃったから……今日はのんびり遊ぶわ。大きい雪だるまを作ろう、藍紗!」
「雪達磨を拵えるのならば、より大きいものとしようかの、紅緒」
 紅緒と藍紗が相談しているところに、紫明とイサラが近づく。
「紅緒たちは雪ダルマこさえんの? でっかいの期待してるわ。私はスキーに初挑戦。そういえばイサラはスキーじゃなくてソリ? オコサマだから? なんつって?」
「ソリに乗んのは単純に乗りて―からっスよ紫明サン! マジで!」
 紫明のからかいに抵抗しつつも、イサラの本心は違う。細長い板を履いて滑るなんてできる気がしなかったのである。ただソリが楽しそうだからというのも本心だ。
 ゲレンデで遊ぶつもりなのは紫明とイサラだけではない。翠鈴、更級、吉兆もそうだ。
 ソリに腰かけたイサラが雪面を蹴って滑走する。
「思っていた通り、速く滑れて楽しいっスよ!」
 軽くスラロームしたところで、真横に紫明がスキーで追いついてきた。
「結構巧いもんでしょ? どうよ?」
「勝負っス。あのなだらかになった杉の間がゴールっスよ!」
 突然に紫明とイサラのレースが始まる。
(スキーできるか、ちょっとだけ心配だよねー)
 翠鈴はひとまずみんなのやり方を見学することにした。
「スキーって、長い板履いて滑るだけでしょ? 簡単簡単!」
 颯爽と滑りだした吉兆だが、徐々に右へとそれていく。真っ直ぐにしようと努力はしているようだが、結局コースアウト。雪まみれになってコースに戻ってきた。
「久し振りなので、上手く滑れるかどうかですが」
 そんなことを呟きながらも、更級の滑りは見事である。雪面が膨らんだところで、ジャンプまで決めていた。
「お先に」
「それでは」
 カルメンとゲドゥルもスキーで降りていき、翠鈴は覚悟を決める。
「けっこーできる! やっほー!」
 翠鈴は真っ直ぐに滑れるのを確かめて、さらに体重移動で曲がってみた。それなりの手応えを感じて楽しくなる。
「これでよしです」
 エイリアスは仲間たちが遊ぶ姿をカメラに収めたあとで、周辺を散策した。そして自然の風景を撮っていく。雪景色や樹氷など、残して起きたい風景はたくさんある。
「ここの雪庇は危ないですね」
 索敵レーダーで探りつつ、蝙蝠マントで浮かんで、危険そうな場所も確かめた。エイリアスは後で宿の山田に伝えるつもりである。
 広場では、もうすぐ雪だるまの完成が近づいていた。
「あれっ?」
 紅緒は胴体を担当していたのだが、あまりに張り切りすぎて、自分の身長より大きな玉ができあがってしまう。
「これはすごいのう。さすがは紅緒じゃ」
 藍紗が作った頭を乗せるのに一苦労したものの、綺麗に組み合わさる。最後に炭を填め込んで顔にする際に、紅緒は藍紗にもちあげてもらった。
 やがて旅の仲間たちが広場に集まりだす。雪だるまを中心にして、エイリアスが記念写真を撮った。もちろん彼女自身も含めてである。

 まだ日が高いうちに帰路の時間となった。
「旅行でいっぱい遊んで食べた後って、帰る時がちょっとさびしい」
 スノーモービルで下りながら紅緒は呟いた。
「温泉宿でゆっくり、まったり過ごせて良かったです」
「楽しい旅で楽しめました」
 別れ際、紫明とエイリアスはそうゲドゥルたちに言い残して去っていく。
 後日旅行の写真がゲドゥルの元に届いた。機会がある度、各自に手渡されたのだった。

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